起立性調節障害とは

起立性調節障害で活用される「光療法」効果ある?効果ない?

この記事の監修者

医師 星野綾美

医師 星野 綾美

五百山クリニック院長
内科
保有資格:医学博士(総合医療学)

 

起立性調節障害で活用される「光療法」効果ある?効果ない?

皆さんは「光療法」と呼ばれる治療法をご存知でしょうか?

光療法とは端的に言うと、日光に近い光を照射することで体内時計の時間をリセットして、睡眠をうまくコントロールする治療法であり、主に不眠症状などに用いられる治療法です。

また、光療法ではセロトニンやメラトニンなどのホルモン分泌にも影響を与えるため多くの疾患に幅広く用いられており、小児から成人や高齢者まで、多くの年齢層の罹患するような病気に対しても有効な治療法である可能性があります。

特に小児であれば起立性調節障害(OD)という疾患に対して用いられることが多く、起立性調節障害では急激な肉体の成長に自律神経の発達が付いていくことができずバランスが乱れ、睡眠障害をはじめとする様々な症状が出現してしまいます。

起立性調節障害の場合は多くの子供で自然経過で改善していきますが、中にはなかなか症状が改善せず非薬物療法や薬物療法を行なっても効果が得られずに重症化してしまう子供もいるため、そんな子供の治療の選択肢の1つとして光療法が有効です。

光療法の注意点として、起立性調節障害の本態はあくまで自律神経の乱れに伴う脳血流の低下であり、あくまで睡眠障害は起立性調節障害の症状に伴う副次的な症状であるため光療法を行なっても睡眠障害以外の症状に著効するわけではありません。

また、セロトニンの原料となるトリプトファンと呼ばれる物質の摂取量が少ないと、光療法を行っても効率よくセロトニンが分泌されないため、効果を得るにはトリプトファンを積極的に摂取することが重要です。

具体的には、バナナ、大豆、牛肉、豚肉、魚、乳製品(チーズ、豆乳)、卵、カボチャにトリプトファンが多く含まれていると言われています。

しかし、実際に光療法を検討している親御さんにとっては、果たして光を当てるだけでどこまで効果があるのか不安を抱く方も少なくないと思います。

そこで、本記事では起立性調節障害に対する光療法について分かりやすく解説するとともに、実際の効果についても解説します。

光療法によって期待される効果

最初に光療法がなぜ不眠症状に有効なのかを解説していきます。

光療法では最低でも2500-3000ルクスほどの強烈な光を、肌で浴びるだけではなく目の奥の網膜に投射することで効果を得ることができます。

太陽の光は曇りの日でも10000ルクス程度ありますが一般的な家庭用の蛍光灯は500ルクス程度しかないため、光療法ではかなり強い光を照射していることが分かるかと思います。

では、光を網膜に投射するだけでなぜ効果を得られるのでしょうか?ここでは理解しやすいように、人間の睡眠を2つのシステムに分けて説明します。

まずセロトニンとメラトニンのシステムについてですが、人間は起床後から太陽光を浴びることで脳内で神経伝達物質であるセロトニンを分泌します。

セロトニンは世間一般では幸せホルモンと呼ばれ、主な作用として脳の興奮を鎮めて精神を安定させることや食欲のコントロール、疼痛の抑制、眠気の抑制などが挙げられます。

つまり、セロトニン分泌が盛んになる日中であれば眠気が抑制されるため眠りにくくなるのです。日中にたくさん分泌されたセロトニンは、その後夜間になると脳の松果体と呼ばれる部位でメラトニンと呼ばれる睡眠ホルモンの原料として使われます。

そのため、日中に太陽光を浴びることでセロトニン分泌量が増加し、そのセロトニン分泌量に相関して夜間のメラトニン分泌量も増加していくわけです。このメラトニンというホルモンは眠気を誘発する作用があるため、睡眠にとって非常に重要なホルモンとなります。

夜間になり、松果体からメラトニンが分泌されることで人間は入眠できるようになりますが、入眠以降は徐々に体内のメラトニンは消費されていき分泌量も低下し、逆に朝になり太陽光によってセロトニン分泌が始まると自然と覚醒に至ります。

これこそが、セロトニンとメラトニンによる睡眠システムです。

では次に、もう1つの睡眠システムとして体内時計(サーカディアンリズム)について解説します。人間の体内には体内時計が存在し、この体内時計によって朝は覚醒へ、夜は睡眠へ誘導されています。

地球の自転が1周期24時間であるのに対し、この体内時計は1周期が25時間であるため、本来であれば毎日1時間ずつ時間軸が後退していき、毎日就寝時間と起床時間が1時間ずつ後ろにズレ込んでいくわけですが、実際にはそうではありません。

この体内時計が地球の24時間周期にうまくコミットすることで、我々は毎日同じ時間に寝て同じ時間に起床できているのです。

具体的には、光刺激や運動、通学や通勤などの習慣的な行動などの情報がインプットされていき、体内時計の時間と現実世界の時間のズレが常に修正されていくわけです。

つまり人間は、セロトニンやメラトニンによるシステムと体内時計による2つのシステムによって、日々適切な睡眠を得ることができているわけです。

しかし、仮に日中外に出ることが少なく太陽光を浴びる機会が減ってしまうと、両方のシステムに大きな影響が出てしまうのです。太陽光を浴びなければ日中のセロトニン分泌量が低下してしまうため、夜間に分泌されるはずのメラトニンの分泌量も低下してしまいます。

睡眠に必要なホルモンであるメラトニンの分泌量が低下するため、うまく入眠できることができなくなってしまうわけです。さらに、日中太陽光を浴びる機会が減ってしまうと、体内時計のズレも修正されなくなってしまいます。

そのため、徐々に睡眠が後退してしまい(これを睡眠相後退症候群と言います。)朝起きる時間も遅くなっていき、日中太陽光を浴びる機会がさらに減少するといった負のスパイラルに陥ってしまうのです。

この2つのシステムの乱れによる負のスパイラルを解決する手段として、日中に光刺激を与える光療法が有効なのです。

起床後から午前中の間に毎日30分~2時間程度の光照射を1~2週間行うことで体内時計を元に戻し、十分なセロトニン分泌を得ることができます。

光療法が活用される病気

前述したように、光療法は起立性調節障害以外の病気にも有効な治療法です。

その中でも代表的な疾患は非季節性うつ病(いわゆる、うつ病)です。2015年にコロンビア大学のW.Lam氏らが報告して論文では、光療法単独でもうつ病患者44%に有効性を示したそうです。

そのほかにも、睡眠障害、認知症患者の昼夜逆転、せん妄、不安障害、アルコール依存に伴う睡眠障害など様々な疾患に対し有効だと言われています。

光療法による睡眠相の適正化が、様々なホルモンや機能、自律神経の働きを整えると考えられており、実際にこれらの疾患の治療に用いられています。

光療法で効果が出やすい人、出にくい人の特徴

光療法においてより効果が出やすくなるためには、照度と時間が重要です。

前述したようにある程度高い照度の光を与えないと体内時計のズレを修正できないため、治療には2500~10000ルクス程度の照度の光を用いる必要があります。

また、肌で光を浴びるだけでは効果はなく、網膜内にしっかりと光を入れてセロトニン神経を刺激する必要があります。

照射時間によっても効果は異なり、30分から2時間程度の照射を毎日繰り返すことで効果も高まっていきます。毎日コツコツと継続して治療を行える人の方が効果が高い印象です。

また、よりリラックスした状態で光療法を行うことでセロトニン分泌量も増加するため、例えば読書しながら光療法を行うのも効果を出やすくする手段の1つです。

 

◆起立性調節障害に関する他の記事はこちら

 

【参考】
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)

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