- 「起立性調節障害の子どもが、首や肩がこると言っている」
- 「首こりは起立性調節障害と関係があるの?」
このような疑問やお悩みをお持ちの方も少なくないでしょう。
起立性調節障害は、立ちくらみや朝起きられない、頭痛などの症状がよく知られていますが、実際には首こりや肩こりを訴える子どもも少なくありません。首や肩の不調が続くと、頭痛やだるさが強くなったり、勉強や睡眠に集中しにくくなったりすることもあります。
一方で、首こりはスマートフォンの使いすぎや姿勢の悪さなど、起立性調節障害以外の原因でも起こるため、「何が原因なのか」「どう対処すれば良いのか」が分かりにくい症状でもあります。
そこで、この記事では起立性調節障害で首こりが起こる原因や、起立性調節障害による首こりの特徴、自宅でできる対策、病院を受診する目安を解説します。お子さんの首こりにどう向き合えば良いかが分かるため、ぜひご一読ください。
起立性調節障害で首こりが起こることはある?
結論からお伝えすると、起立性調節障害の子どもが首こりや肩こりを訴えることはあります。
ただし、首こりは起立性調節障害の診断基準に含まれる代表的な症状ではないため、「首こりがある=起立性調節障害」というわけではありません。ここでは、起立性調節障害と首こりの関係について解説します。
首こり・肩こりを訴える子どもは少なくない
起立性調節障害の子どもの中には、首こりや肩こりを訴える子どもも少なくありません。
起立性調節障害は、自律神経の働きがうまくいかず、起立時に脳や体への血流が低下することで、立ちくらみ、めまい、朝起きられない、倦怠感、頭痛、動悸などのさまざまな症状をきたす病気です。
日本小児心身医学会のガイドラインで示されている身体症状の項目には「首こり」は含まれていませんが、頭痛や倦怠感、疲れやすさといった症状と一緒に、首や肩の重さ・張りを訴えるケースが見られます。
特に、頭痛を伴う起立性調節障害の子どもでは、後頭部から首にかけての痛みやこりを感じることもあるため、首こりもお子さんがつらさを感じているサインの一つとして受け止めることが大切です。
首から肩にかけての痛みは「コートハンガー痛」と呼ばれることも
起立時に血圧が下がりやすい病気では、首の後ろから肩にかけて痛みやこりを感じることがあり、海外ではその範囲がハンガー(洋服掛け)の形に似ていることから「コートハンガー痛(Coat hanger pain)」と呼ばれています。
コートハンガー痛は、主に起立性低血圧や体位性頻脈症候群(POTS)など、自律神経の不調によって立っているのがつらくなる状態で報告されている症状です。立っているときや座っているときに強くなり、横になると和らぐのが特徴とされています。
なお、日本の小児の起立性調節障害でコートハンガー痛がどの程度起こるかは、まだ十分に分かっていません。あくまで「起立性調節障害と首こりが関係している可能性がある」という一つの考え方として知っておくと良いでしょう。
起立性調節障害で首こりが起こる主な原因
起立性調節障害の子どもが首こりを感じる原因は1つではなく、体の仕組みによるものと、生活習慣によるものが重なっていることが多いです。
具体的には、下記のような原因が考えられます。
なお、首こりの原因は子どもによって異なるため、1つの原因に決めつけず、生活全体を見直すことが重要です。
首や肩の筋肉への血流が不足しやすい
起立性調節障害で首こりが起こる原因として、首や肩の筋肉への血流が不足しやすい点が挙げられます。
私たちが立ち上がると、重力によって血液が下半身にたまりやすくなります。通常は自律神経(交感神経)が働いて下半身の血管を縮め、心臓や脳へ血液を戻しますが、起立性調節障害ではこの調節がうまく働かず、上半身への血流が低下しやすくなります。
首や肩の筋肉は、頭を支えるために起きている間ずっと働き続けている筋肉です。そのため、血流が不足すると酸素が行き渡りにくくなり、こりや重だるさ、痛みとして感じられることがあると考えられています。
自律神経の乱れで筋肉が緊張しやすい
起立性調節障害で首こりが起こる原因として、自律神経の乱れによって筋肉が緊張しやすい点も挙げられます。
自律神経は血圧や心拍だけでなく、血管の収縮や筋肉の緊張、睡眠などにも関わっています。起立性調節障害では、朝に交感神経がうまく働かず、夜になると逆に交感神経が高ぶって寝付けないなど、自律神経のリズムが乱れやすい状態です。
体がリラックスできる時間が少なくなると、首や肩の筋肉がこわばったままになりやすく、首こりにつながることがあります。また、睡眠の質が下がることで疲れが抜けにくくなり、こりが慢性化する場合もあるため注意が必要です。
スマホやゲームでうつむき姿勢が続く
起立性調節障害で首こりが起こる原因として、スマホやゲームでうつむき姿勢が続く点も挙げられます。
起立性調節障害の子どもは、体調不良で家にいる時間が長くなりやすく、スマホやゲーム、動画視聴の時間が増える傾向があります。うつむいた姿勢では頭の重さが首に大きな負担としてかかるため、長時間続けると首の後ろの筋肉が疲れ、首こりの原因になります。
さらに、夜遅くまでスマホを見ることで寝付きが悪くなり、朝起きられない症状を悪化させる悪循環に陥ることもあります。スマホやゲームとの付き合い方については、下記の記事も参考にしてください。
横になって過ごす時間が長く運動量が減る
起立性調節障害で首こりが起こる原因として、横になって過ごす時間が長く、運動量が減る点も挙げられます。
体調がつらい時間帯は横になって休むことも大切ですが、寝たきりに近い生活が続くと全身の筋力が落ち、首や肩まわりの筋肉も硬くなりやすくなります。また、ソファやベッドで頭だけを起こしてスマホを見るなど、首に負担のかかる姿勢をとりがちな点にも注意が必要です。
運動量が減ることで下半身の筋肉のポンプ作用も弱まり、立ったときに血液が下半身にたまりやすくなるため、起立性調節障害の症状そのものが悪化する可能性もあります。
不安やストレスで体に力が入りやすい
起立性調節障害で首こりが起こる原因として、不安やストレスで体に力が入りやすい点も挙げられます。
起立性調節障害の子どもは、学校に行けないことへの罪悪感や、勉強の遅れ、周囲の理解が得られないことへの不安など、さまざまなストレスを抱えやすい状態にあります。
人は緊張や不安を感じると、無意識に肩をすくめたり歯を食いしばったりして、首や肩に力が入りやすくなります。また、ストレスは自律神経の乱れを招くため、起立性調節障害の症状と首こりの両方を悪化させる可能性があります。
起立性調節障害による首こりの特徴と見分け方
首こりは多くの原因で起こるため、起立性調節障害によるものかどうかを症状だけで判断することはできません。ただし、起立性調節障害が関係している首こりには、いくつかの特徴が見られることがあります。
立っているときや午前中に強く、横になると和らぐ
起立性調節障害が関係している首こりの特徴として、立っているときや午前中に強く、横になると和らぐ点が挙げられます。
起立性調節障害の症状は、起床時から午前中に強く、午後から夕方にかけて軽くなることが多いです。また、立ったり座ったりして頭が心臓より高い位置にあると脳や首への血流が低下しやすく、横になると改善しやすい特徴があります。
首こりも同様に、「朝や立っているときにつらい」「横になると楽になる」といった傾向がある場合は、起立性調節障害が関係している可能性があります。
頭痛・めまい・立ちくらみなどを伴いやすい
起立性調節障害が関係している首こりの特徴として、頭痛・めまい・立ちくらみなどを伴いやすい点も挙げられます。
首こりだけが単独で起こるのではなく、下記のような起立性調節障害の症状が一緒に見られる場合は、起立性調節障害の可能性を考えましょう。
- 立ちくらみやめまいを起こしやすい
- 朝なかなか起きられず、午前中に調子が悪い
- 立っていると気分が悪くなる
- 少し動くと動悸や息切れがする
- 頭痛や倦怠感があり、疲れやすい
当てはまる項目が多い場合は、下記のセルフチェックも参考にしてみてください。
姿勢や使いすぎによる首こりとの違い
スマホの使いすぎや勉強中の前かがみ姿勢などによる一般的な首こりは、同じ姿勢を長く続けた後に強くなり、休憩やストレッチで和らぐことが多いです。時間帯による差はそれほど大きくありません。
一方で、起立性調節障害が関係している首こりは、時間帯や体の向き(立っているか横になっているか)によって症状の強さが変わりやすい点が異なります。また、雨の日や気圧が下がる日に悪化しやすいケースもあります。
ただし、実際には両方の原因が重なっていることも多いため、どちらか一方と決めつけず、気になる場合は医師に相談しましょう。
起立性調節障害の首こりを和らげるために自宅でできる対策
起立性調節障害による首こりを和らげるためには、首や肩そのもののケアに加えて、起立性調節障害の症状を軽くするための生活習慣を整えることが大切です。
具体的には、下記のような対策が挙げられます。
なお、すでに治療を受けている場合は、主治医の指示を優先してください。
水分と塩分をしっかりとる
起立性調節障害の首こり対策として、水分と塩分をしっかりとることが挙げられます。
体内の水分量が少ないと血液の量も減り、立ったときに脳や上半身へ血液が届きにくくなります。起立性調節障害の治療では、水分を1日1.5〜2リットルほどを目安にとることや、塩分をやや多めにとることがすすめられることがあります。
特に朝は脱水気味になりやすいため、起き上がる前にコップ1杯の水を飲むなど、こまめな水分補給を意識しましょう。ただし、塩分の量は体質や持病によって適量が異なるため、医師に相談した上で調整してください。
起き上がるときはゆっくり段階的に
起立性調節障害の首こり対策として、起き上がるときはゆっくり段階的に動くことも大切です。
急に起き上がると血圧が下がり、脳や首への血流が一気に低下しやすくなります。朝起きるときは、いきなり立ち上がらず、下記のように段階を踏んで体を起こしましょう。
- 布団の中で手足を軽く動かす
- 横向きになってからゆっくり上半身を起こす
- 座った状態でしばらく休む
- 頭を少し下げた姿勢から、30秒ほどかけて立ち上がる
日中も、長時間立ちっぱなしにならないよう、こまめに座る・足踏みをするなどの工夫が有効です。
首や肩を温めて血流を促す
起立性調節障害の首こり対策として、首や肩を温めて血流を促すことも挙げられます。
蒸しタオルや市販の温熱シートなどで首の後ろや肩を温めると、筋肉の緊張がほぐれやすくなります。寒い季節は、ネックウォーマーやストールで首元を冷やさないようにするのも良いでしょう。
一方で、熱いお湯での長湯は血管が広がって血圧が下がり、立ちくらみや気分不良を起こしやすくなります。入浴はぬるめのお湯で短時間にし、湯船から出るときはゆっくり立ち上がるよう注意しましょう。
無理のない範囲で軽いストレッチをする
起立性調節障害の首こり対策として、無理のない範囲で軽いストレッチをすることも効果的です。
首や肩まわりの筋肉をやさしく動かすことで、血流が促され、こりが和らぎやすくなります。めまいや立ちくらみを防ぐため、座った状態や横になった状態で行いましょう。
- 両肩をゆっくり耳に近づけるように上げ、ストンと下ろす(5回程度)
- 肩を前から後ろへ大きくゆっくり回す(前後各5回程度)
- あごを軽く引いたまま、首をゆっくり左右に傾けて10秒ほどキープする
首をぐるぐる勢いよく回したり、痛みを我慢して伸ばしたりするのは避けましょう。体調が良い時間帯には、散歩などの軽い運動を取り入れることも、全身の血流改善につながります。
スマホや勉強のときの姿勢と時間を見直す
起立性調節障害の首こり対策として、スマホや勉強のときの姿勢と時間を見直すことも重要です。
スマホは目の高さに近づけて持つ、タブレットはスタンドを使う、勉強のときは机と椅子の高さを合わせるなど、うつむく角度が深くならない工夫をしましょう。
また、30分〜1時間に1回は画面から目を離して首や肩を動かす、寝る前1時間はスマホを控えるなど、時間の区切りを決めておくことも大切です。ただし、スマホを一方的に取り上げるとストレスや親子関係の悪化につながることもあるため、お子さんと話し合いながらルールを決めると良いでしょう。
首に負担の少ない枕や寝姿勢を選ぶ
起立性調節障害の首こり対策として、首に負担の少ない枕や寝姿勢を選ぶことも挙げられます。
枕が高すぎたり低すぎたりすると、寝ている間に首の筋肉が緊張し、朝起きたときの首こりにつながることがあります。仰向けに寝たときに、首の自然なカーブが保たれ、顔がやや下向き〜まっすぐになる高さが目安です。
また、ベッドで頭だけを起こしてスマホや動画を見る姿勢は首への負担が大きいため、日中の休憩時も首を支えられるクッションなどを活用しましょう。家での過ごし方については、下記の記事も参考にしてください。
起立性調節障害の首こりで注意したいこと
首こりを早く和らげたいと思うあまり、かえって体に負担をかけてしまうケースもあります。ここでは、起立性調節障害の首こりで注意したいことを解説します。
首を強く揉んだり急にひねったりしない
首こりがつらいからといって、首を強く揉んだり、勢いよくひねったりするのは避けましょう。
首には太い血管や神経が通っているため、強い力でのマッサージや、首を急にひねって鳴らすような施術は、筋肉を傷めたり、まれに重い合併症につながったりするおそれがあります。
整体やマッサージ、鍼灸などを利用する場合は、起立性調節障害であることを伝えた上で、やさしい施術を受けるようにしましょう。鍼灸については、下記の記事で詳しく解説しています。
市販の痛み止めに頼りすぎない
首こりや頭痛がつらいときに市販の痛み止めを使うことはありますが、頻繁に使い続けることは避けましょう。
痛み止めを月に何度も使い続けると、かえって頭痛が起こりやすくなる「薬剤の使用過多による頭痛」につながることがあります。また、子どもには使用できる成分や量が決まっている薬もあります。
痛み止めが手放せない状態が続く場合は、自己判断で続けず、医師や薬剤師に相談しましょう。
「首こりが起立性調節障害の原因」と決めつけない
インターネットなどでは「首こりを治せば起立性調節障害が治る」といった情報を見かけることもありますが、首こりが起立性調節障害の直接の原因であるという医学的な根拠は、現時点では十分ではありません。
首こりのケアで体が楽になることはありますが、それだけで起立性調節障害が治るとは限りません。首こりのケアだけに頼るのではなく、医療機関での診断や、生活習慣の改善、必要に応じた薬物療法など、起立性調節障害そのものへの対応を並行して行うことが大切です。
首こりで病院を受診する目安と何科に行くべきか
多くの首こりは生活習慣の見直しで和らぐことがありますが、中には早めに受診が必要なケースもあります。ここでは、受診の目安と受診先について解説します。
すぐに受診したほうが良い症状
首こりや首の痛みに加えて、下記のような症状がある場合は、起立性調節障害以外の病気が隠れている可能性があるため、早めに医療機関を受診しましょう。
- これまでに経験したことのない突然の激しい頭痛や首の痛みがある
- 発熱があり、首が痛くて前に曲げにくい
- 手足のしびれや力が入りにくい、ろれつが回らないなどの症状がある
- 転倒や事故など、首にけがをした後から痛みが続いている
- 意識を失って倒れた、またはけいれんを起こした
特に、意識がおかしい、手足が動かしにくいなどの症状が急に現れた場合は、ためらわず救急車を呼ぶなどの対応をとってください。
首こりと起立性調節障害が気になる場合の受診先
首こりに加えて、朝起きられない、立ちくらみ、頭痛などの起立性調節障害が疑われる症状がある場合は、まずは小児科を受診しましょう。中学生・高校生でも小児科で診てもらえることが多く、思春期の子どもの診療に詳しい小児科や、心身症に対応している小児科がおすすめです。
高校生以上や大人の場合は、内科や循環器内科が受診先の候補になります。また、首の痛みが強い、しびれがあるなど、首そのものの異常が心配な場合は整形外科の受診も検討しましょう。
起立性調節障害に対応している病院は、下記のページで紹介しています。
起立性調節障害の首こりに関するよくある質問
首こりを治せば起立性調節障害も治りますか?
首こりを和らげることで、頭痛や体のだるさが軽くなり、過ごしやすくなることはあります。ただし、首こりが起立性調節障害の直接の原因であるとはいえないため、首こりを治すだけで起立性調節障害が治るとは限りません。
起立性調節障害そのものの改善には、水分・塩分の摂取や生活リズムの調整、適度な運動、必要に応じた薬物療法など、総合的な対応が必要です。
大人の起立性調節障害でも首こりは起こりますか?
大人の起立性調節障害でも、首こりや肩こりを感じることはあります。大人の場合は、デスクワークによる姿勢の負担や仕事のストレスなども重なりやすいため、首こりが慢性化しやすい傾向があります。
大人の起立性調節障害については、下記の記事も参考にしてください。
着圧ソックスは首こりに効果がありますか?
着圧ソックスは首こりに直接効くものではありませんが、下半身に血液がたまるのを防ぎ、立ったときに上半身や脳へ血液を届きやすくする効果が期待できます。そのため、起立性調節障害による立ちくらみやだるさの軽減を通して、間接的に首や肩の不調が楽になる可能性があります。
起立性調節障害の首こりは、体の仕組みと生活習慣の両面から対策しよう
この記事では、起立性調節障害で首こりが起こる原因や特徴、自宅でできる対策、受診の目安について解説しました。
起立性調節障害の子どもが首こりを感じる背景には、首や肩の筋肉への血流不足や自律神経の乱れといった体の仕組みに加え、うつむき姿勢や運動不足、ストレスなどの生活習慣が重なっていることが多いです。
首こりを和らげるためには、首や肩を温める、軽いストレッチをする、スマホや勉強のときの姿勢を見直すといったケアに加えて、水分・塩分の摂取やゆっくり起き上がるなど、起立性調節障害そのものの症状を軽くする対策を並行して行いましょう。
首こりを「ただの姿勢の問題」「気のせい」と片付けず、お子さんのつらさのサインとして受け止めることが大切です。症状が続く場合や、強い頭痛・しびれなどを伴う場合は、本人や家庭だけで抱え込まず、医療機関に相談しましょう。
起立性調節障害の治し方や、家庭で親ができることについて詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。













