「自分の子供が朝起きてこない。学校にも行きたがらない!」そんな経験はどんな親御さんでも経験したことがあると思います。
おそらくほとんどの親御さんは、その都度叱ってどうにか叩き起こして学校に行かせるでしょうし、ほとんどの子供はそのまま何事もなく登校するでしょう。
しかし、中には起立性調節障害(OD)のように学校に行きたくても本人の意思とは関係なく登校が難しくなるような病気も存在します。起立性調節障害の場合には本人の甘えなどは関係ないのです。
もし仮にあなたの子供が起立性調節障害だとしたら、そんな状況で叱って叩き起こすのは本人にとって非常に辛い経験になりますし、親御さんも事実を知れば辛い気持ちになるかと思います。
そこで本記事では起立性調節障害について分かりやすく解説し、これを読むことで学校に行きたがらない子供への適切な対処法を理解していただければ幸いです。
学校に行きたがらないのは甘えではなく病気の可能性が
子供が学校に行きたくないと主張する場合、親御さんはついついやる気の問題や甘えているだけだと感じてしまいがちです。
もちろん本当に甘えているだけの子供もいるでしょうし、最初から病気を疑うことは難しいでしょう。しかし、中には早く起きたくても起きられない、夜に寝たくても寝付けないことで学校に行きたくても行けなくなっていることに悩んでいる子供もいるのです。
具体的には、甲状腺機能低下症、鉄欠乏性貧血、うつ病、不整脈など様々な疾患の可能性が挙げられます。当然、起立性調節障害も原因疾患のひとつです。
場合によっては医療機関に受診して検査をすることも必要になると思います。
例えば甲状腺機能低下症や鉄欠乏性貧血は採血検査で診断が可能です。不整脈であれば心電図を取れば診断可能です。
なかでも、うつ病は誤診されやすく、誤って抗うつ薬などを処方されると起立性調節障害の症状が悪化する可能性があるため注意が必要です。うつ病はあくまで精神的な病気ですが、起立性調節障害は身体的原因による病気ですので混同してはいけません。
親御さんは子供が学校に行きたくないと訴えた時、これらの可能性を少しでも考えた上で行動を取る必要性があります。
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どうして遊びには行けるの?夜は元気になるの?
起立性調節障害の症状が甘えややる気の問題と混同されやすいのには病気としての特性が関係しています。
起立性調節障害の病態は一言で言えば自律神経のバランスが崩れることです。自律神経とは交感神経と副交感神経のことを指します。
交感神経は心臓や筋肉を活動的にする神経で、体をアクティブなモードにシフトチェンジしてくれます。起床時に活性化することで起床後の行動や運動をコントロールする神経です。
逆に副交感神経は体を休息モードにする神経で、睡眠に向けて活性化することで睡眠や休息に関与する神経です。
起立性調節障害ではこのバランスが崩れることで、朝起きても交感神経が活性化しませんので起床後の運動に心臓の動きが連動しないため体がついてきません。
逆に午後になると徐々に交感神経が活性化してくるため、夜間にも交感神経が活性化した状態が継続してしまい副交感神経が活性化するのがずれ込んでいきます。
結果的に朝は体調が優れず学校に行けなくても、午後には徐々に体調が改善していくため放課後には友達とは遊べてしまうのです。
副交感神経の活性化が深夜にずれ込むため夜間寝付けなくなる上に、午前中より元気な状態なのでつい遊びたくなり、一見夜更かししているだけのように見えてしまうのです。
これが起立性調節障害の子供の体に起きている症状の医学的解説になりますが、親御さんからしたら素直に受け止めることが難しいかと思います。
朝は起きない、午後になると元気で遊ぶ、夜は寝ないでスマホをいじる。これらの行動だけ見れば怒りたくなるのも無理はありません。
しかし、上記のとおり起立性調節障害の病態はまさにそういう状態を生み出してしまうのです。まずはそういう病気があるということを認識することが重要です。
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親の対応方法
では、学校に行きたがらない子供に対して親御さんはどういった対応を取ることが適切なのでしょうか?
まず、学校に行きたがらない子供に対して叱責することだけは絶対にやってはいけません。これには医学的な理由があります。
ストレスは自律神経と密接に関わっていますが、例えば緊張したときには無意識に交感神経が活性化してしまい心拍数が上昇し冷や汗をかきます。
逆に排尿や排便は副交感神経が活性化してリラックスしている時でないとできません。しかし、親御さんが子供に叱責してしまうとストレスでさらに自律神経のバランスが崩れる可能性があります。
つまり、不用意に注意したり干渉してしまうと子供にストレスを与えてしまい症状が悪化する可能性があるのです。
そこで親御さんがまず最初に取るべき行動は、起立性調節障害を疑っていれば医療機関で診断をつけることです。これはそのほかの重篤な疾患を否定する意味でも非常に重要です。
その後、起立性調節障害と診断された子供に対しての適切な行動は、子供のペースに合わせて見守ることです。当たり前のことを言っているようですが起立性調節障害の子供は子供なりに色々と考えて悩んでいます。
なぜ学校に行けないのか、いつまで治らないのか、家にいた方が楽なのに怒らないでほしい、こんなことを頭の中で考えながら自問自答して日々過ごしているのです。
親御さんに最も求められるのは、子供の気持ちに寄り添って尊重しながら一緒に出口を探してあげることです。親御さんが回復を信じれず焦ってしまっては子供がさらに不安になるだけなのです。
特に、このまま症状が治らず重症化してしまうことへの恐怖感は強いです。だからこそ親御さんが継続して支えてあげなくてはなりません。
下記記事では「起立性調節障害の治し方・子供に対して親御さんができること」をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
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【参考】
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)