思うように「運動」ができないという状況は、育ち盛りの子供にとって多大なるストレスを感じることでしょう。それに子供にとっての運動はこれ以上ないコミニケーションツールです。
起立性調節障害(OD)に罹患した子供は特に午前中体調が悪いことが多く、運動により起立性調節障害の症状が悪化する可能性が高いです。さらに病気を周囲の子供達に理解してもらうことは簡単ではなく、何も対策をしなければ難しい学校生活を送る可能性があるのです。
そんな時こそ、親御さんが適切な対応を取れなければ大切な子供の青春時代や人生そのものを大きく毀損してしまいます。本記事を読むことで少しでも起立性調節障害への対応法を理解していただければ幸いです。

激しい運動は控えてください
起立性調節障害と診断されている場合、体調が安定しない時期の激しい運動は控えた方がよいと考えられます。特に、立ちくらみやめまい、強い倦怠感がある場合は、無理に運動せず、医師や学校と相談しながら活動量を調整することが大切です。
起立性調節障害は、自律神経の働きや血圧・脈拍の調整がうまくいかないことが関係していると考えられています。
自律神経とはその名の通り、自律して自動的に体の状態に合わせて働く神経のことです。
本来であれば朝起きてから体はアクティブなモードに入り、交感神経が強く働くことでその後の運動や行動に体を適応させます。逆に睡眠中は副交感神経が強く働くことで休息モードに入るのです。
起立性調節障害では、朝起きた後に血圧や脈拍の調整がうまくいかず、立ち上がったときにめまいや立ちくらみ、倦怠感などが出ることがあります。午後になってようやく交感神経が強く働いてくると、徐々に行動や運動に適応できるようになっていきます。
なぜ激しい運動を控えるべきなのか
では、具体的になぜ激しい運動と起立性調節障害の相性が良くないのかを解説して行きます。
人間は睡眠中は血液が重力の影響を受けにくいため脳への血流が確保しやすいです。しかし、目覚めて起き上がると、重力の影響を強く受けて血液は頭ではなく下肢の方向に向かうため脳の血流は低下しやすい状態にあります。人間にはそのような状態のために自律神経があります。
脳への血流を維持するために、交感神経が強く働き足の血管を締めたり、心臓の鼓動を早めたりして自動で脳血流を確保するように働くのです。起立性調節障害の場合この代償反応が起きないので、脳血流が低下して立ちくらみや体調不良などが生じるのです。
さて、ここで激しい運動、例えばサッカーをイメージしてみましょう。長時間立っていなくてはいけませんし、さらに夏でも屋外で行うので大量に発汗する可能性があります。
前述したように立位(まっすぐに立った姿勢)は脳血流を低下させやすいです。湯船に浸かって血管が開いた状態で急に立ち上がるとクラっとするのと同じです。これが長時間の立位となると起立性調節障害の子供にとっては非常に不利な状況なのです。
さらに、発汗すると脱水になり血液の量が減ってしまいますので脳への血流も確保しにくくなってしまいます。このような状況では本来交感神経が働き心臓の拍動を高めることで脳への血流を補うのですが、それも起立性調節障害の子供では難しいのです。
このような理由から、長時間立ち続ける運動や大量に汗をかく激しい運動は、起立性調節障害の症状を強めるきっかけになることがあります。運動をする場合は、体調や気温、水分補給の状況を見ながら、無理のない範囲で行うことが大切です。

どんな部活は控えるべきなのか
起立性調節障害と相性の悪い要素は「長時間の立位」「暑い場所」「大量の発汗」などが挙げられます。これらの要素を満たすような運動は起立性調節障害の子供の場合控えたほうがいいと思います。
たとえば、サッカー、バスケットボール、テニス、野球、陸上などは、長時間の立位や走る動作、発汗を伴いやすいスポーツです。ただし、必ず参加できないというわけではなく、症状の程度や練習内容、気温、休憩の取り方によって調整できる場合もあります。
運動を再開する場合は、体調が比較的安定している時間帯に、短時間の散歩や軽い筋力トレーニングなど、無理のない運動から始める方法があります。
運動を始めるタイミングや具体的な進め方を知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。
また、スポーツドリンクなどで十分水分を補給したうえで、プールのなかで歩いたり、泳いだりする運動もおすすめです。水圧が血圧をサポートしてくれることや全身の筋肉をバランスよく鍛えることで、血圧の低下を予防しやすくなるからです。
起立性調節障害の特性上、午前中は体調が悪くても、午後になると症状が軽くなり、部活動に参加できる場合があります。ただし、周囲から誤解されることもあるため、本人の体調の波や起立性調節障害の特徴について、学校と事前に共有しておくことが大切です。
周囲の子供達から理解を得るのがなかなか難しいと思いますので、特に親御さんは学校と連携をとって慎重な対応が必要になります。限定的な部活動への参加を、あくまで筋力向上のための治療の一環だと説明すれば理解は得られやすいかもしれません。
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体育の授業は体調に応じて見学を行い、参加できない場合のケアを想定
前述したように子供にとって運動は重要なコミニュケーションツールの一つですから、体調が安定しており、医師や学校とも相談できている場合は、無理のない範囲で体育に参加することも選択肢になります。
ただし、周囲の子どもたちは、起立性調節障害の症状や体調の波を十分に理解できないことがあります。そのため、本人が傷ついたり誤解されたりしないよう、必要に応じて学校側と説明の仕方を相談しておくと安心です。
本人の許可を得たうえで、担任から周囲に必要な範囲で説明してもらったり、学校側と対応を共有したりすることで、本人が過ごしやすい環境を整えられる場合があります。
また、症状が改善したり、本人の中での対応策を身につけられれば活動の幅を広げることも可能かと思います。以下の記事では起立性調節障害への対応などが詳しく解説されていますのでぜひ参照ください。
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【参考】
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)






