起立性調整障害のお子さんは一日のうちで早朝起床時が最も大きな難関ですが、起床後も様々な症状に悩まされ、登校が難しいことも多く、結果的に、家での時間が多い傾向にあります。
この記事では家での過ごし方について、起床時から就寝時まで詳細にご紹介していきます。
お勧めの家での過ごし方
◆1日の最大の難関である早朝起床時
起立性調節障害の方にとって、一日の中での最大の難関は早朝起床時です。急に体位を変動させることで症状が出てしまいやすくなりますので、動作はゆっくりと行うことを心がけてください。
毎日できるだけ定時に起床できるようにご本人とご家族で相談し、工夫しましょう。
あらかじめ、起床時間や起こし方をご本人とご家族で決めておきましょう。実際に起床する際はあらかじめ決定した手順に沿って焦らずに行いましょう。
◆前日の寝る前
・目覚まし時計を定時に設定する
・水分や処方されている薬を事前に準備しておく
◆起床時
・目覚ましだけでは起床できないことが多く、ご家族は「朝になり起床時間になっていること」を穏やかに声掛けする
・本人が起きてこなくても、窓を開けて、太陽の光を部屋に入れる
・水分や処方されている薬を服用する
・声掛けを繰り返し行う
ご本人の目が覚めて起き上がる準備ができたら、
・横になったまま腕枕などで頭を少し上げる
・ゆっくりと起き上がり、ベッド上で座位を保つ(少しうつむいたままの姿勢が良い)
・足を下ろして、頭は下に下げ、前かがみになり、そのままゆっくりと立ち上がる
・立ちあがった後もうつむいた姿勢でゆっくりと歩きだす
起立性調節障害のお子さんは本来起床時間に活性化しているはずの交感神経の活性化が追い付かず、体や脳はまだ休んでいる状態です。
急激に起き上がらせたり、立ち上がると、脳血流が低下しやすくなるため、目が覚めてもベッド上で少しずつ体を起こす準備をすることが重要です。また、全ての動作はそーっと、ゆっくり行うことが非常に重要です。
◆朝食の摂取
血圧を維持し、脳への血流を保てるよう水分や塩分が含まれた食事を摂取しましょう。
起床後数時間はめまいやふらつき、全身倦怠感など様々な不調が見られることが多いため、体調が落ち着くまで、特に午前中はゆっくりとした動きを心がけましょう。
座位から立ち上がる時も、急に立ち上がらず起床時と同様にゆっくりと行いましょう。次第に交感神経の活性も追いついてくるため、昼食をとる時間帯になる頃には体調も回復してくることが多いです。
午後には学校に行ける場合もあります。午後に登校し、部活動の見学や軽い運動のみ参加することもいいでしょう。
自宅にいる場合でも、体調が改善していればストレッチやウォーキングなど軽い運動をすることはおすすめです。
◆夕食を摂取
夕食から睡眠までの時間が短いと、夜間に胃腸は過剰な消化吸収作業をしなければならなくなり消化器系に負担がかかってしまいます。
そのようになることで、睡眠の質が低下し、早朝に胃腸症状が見られやすくなったりと日常生活に悪影響を及ぼしてしまいます。
したがって、夕食はなるべく早めに摂取し、遅くても睡眠の2時間前までには済ませることが重要です。
◆入浴
自律神経のバランスを整えるためにも湯船につかることは重要です。しかしながら、注意点もあります。
入浴中は副交感神経が活性化されます。高温な環境でも副交感神経が活性化されやすいです。したがって、入浴中は副交感神経が働きます。
湯船につかっている際は立っている時よりも脳血流量が増加しますが、その後湯船から立ち上がると一気に血液が足に流れ込むため、脳血流は一時的に低下しやくなってしまうため注意が必要です。
⇒「38~40℃のぬるめのお湯」で「半身浴」を行い、立ち上がる時はゆっくりと。これが重要です。
◆定時に就寝
就寝前のスマホ操作は睡眠を誘導するホルモンの分泌を妨げてしまいます。また、スマホ操作で脳が興奮してしまい不眠の原因になってしまうため控えましょう。
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控えた方がよいNG行動や日常生活上の注意点
日常生活でのちょっとした行動が起立性調節障害の症状増悪や改善を遅らせてしまう可能性があります。下記に注意して毎日を過ごしてみてください。
・起床時など体位変換時は急に動かずに常にゆっくりと動くことを心がけましょう。
・食事は定時に摂取し、1日3食を守りましょう。
・水分をこまめに摂取し、塩分もやや多めにとりましょう。
・思春期の時期で特に女子は減量やダイエットしないことがとても重要です。
・体調がいい時は意識して運動も行いましょう。
・季節や天気にも注意し、炎天下での外出や運動は控えましょう。
・特に夏場は脱水に注意が必要です。
・激しい運動は症状を増悪させる可能性があるため控えることが望ましいです。ウォーキング、水泳、自転車乗車など強度がそれほど強くなく、全身を使った有酸素運動がおすすめです。
・就寝前のスマホ操作不眠の原因になってしまうため控えましょう。
本記事では起床時から就寝までの1日の過ごし方を注意点とともに解説してきました。しかしながら、注意してもなかなか症状が治まらずに悩んでいるお子さん、ご家族も多いと思います。症状や治療方法、改善への道のりも本当に人それぞれです。
下記記事では「起立性調節障害の治し方・子供に対して親御さんができること」をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
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【参考】
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)