起立性調節障害とは

起立性調節障害の子供を持つ親は仕事を辞めたほうが良いの?

2022年5月6日

この記事の監修者

医師 錦惠那

医師 錦 惠那

内科一般・腎臓内科・透析科・産業医
保有資格:日本内科学会内科専門医・日本医師会認定産業医
2018年から起立性調節障害患者の診療を行い、累計30人以上の起立性調節障害患者を担当。

一般社団法人 起立性調節障害改善協会

自分の大切な子供が風邪を引いたりお腹を壊してしまったら、仕事中でも気が気じゃなくなってしまう親御さんは少なくないと思います。特に子供が低学年の場合は心配事も多いと思います。

起立性調節障害(OD)の子供の場合、特に午前中はめまいや食思不振、嘔気、ふらつき、腹痛など様々な症状が出現します。場合によっては意識障害などが生じることもあります。

これらの症状は午前中や起床後に強く出現するため、症状が重い子供では通学に支障をきたしてしまうこともあります。そんな中、親御さんが働いている場合子供は1人になってしまいます。

起立性調節障害の子供を持つ親御さんにとって仕事との付き合い方は非常に難しい問題です。なかには、子供のために仕事を辞めて、家で一緒にいる時間を増やして支えてあげようと考える親御さんもいると思います。

普通の風邪や腸炎であれば、一時的に仕事を休み子供の側で看病することが適切な対応だと思いますが、起立性調節障害の場合は一概に仕事を辞めることが適切だと言い切れません。むしろ辞めないほうが良いこともあります。

そこで本記事では、起立性調節障害の子供における親御さんの仕事について分かりやすく解説していきます。

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

親は仕事をやめたほうが良いの?

起立性調節障害の子供は自律神経の発達が肉体の成長に追いつかず、交感神経がうまく活性化できないため起立時や起床時に脳血流が低下する病気です。その疾患の特性上、午前中は特に症状が強く出現します。

共働きしている親御さんであれば、ちょうど自分の出勤するタイミングで子供の具合が悪化し、通勤後も子供が学校生活を無事に送れているのか不安を抱きながら働くことになると思います。

起立性調節障害の場合、適切な運動や食事、睡眠を取ることが治療の一環になりますが、子供が低学年の場合1人でそれらを管理して病気と付き合って行くのは現実的に困難であると思います。

子供の年齢や自立度によっては、思い切って休職してそばにいてあげるべきですが、逆にある程度自立した中学生の場合は親御さんが仕事を辞めることが一概に適切な対応であるとは言えません。

子供の自立度や症状の度合いにもよりますが、結論から言えば中学校高学年や高校生の子供であれば働いている親御さんが無理に休職する必要性はありません。

もちろん親が休職や退職して子供のそばにいる時間が増えれば多くのメリットもあります。一緒に運動することで子供の筋力を維持したり、適切な食事を提供して子供の栄養不足を補うこともできます。

不足している栄養を十分量補給したり運動によって筋力を維持することで、自律神経はより安定するため起立性調節障害の症状が改善し、子供が本来の生活に戻れる可能性も上がると思います。それでも尚、筆者が親御さんの退職や休職を勧めない理由をこれから解説していきます。

親が仕事を辞めて症状が改善するとは限らない

まず第一に、親御さんがせっかく仕事を辞めたとしても子供の症状が必ず改善するとは限らないのです。そもそも起立性調節障害は精神的な疾患ではなく、あくまで自律神経のバランスが崩れる身体的疾患です。

生活やキャリアのためにせっかく手にした仕事を手放しても、子供の症状が改善しなかったら後悔する可能性もあります。しかしODが身体的疾患である以上そうなる可能性も十分にあり得るのです。

起立性調節障害の子供は罹患から約2.3年で80%近くが自然寛解すると言われています。これは、急激な肉体の成長がある程度落ち着くことで自律神経の発達が自然と追いついてくるからだと言われています。日常生活に支障をきたすほど重症化する子供は全体の1%であり、統計的に見ても自然に症状が軽快する可能性の方が十分に見込めるのです。

起立性調節障害の子供が症状に悩む中で、行うべき5つのことがあります。それは食べること、動くこと、笑うこと、眠ること、学ぶことです。

子供が中学生、しかも高学年ともなれば、ある程度自分で食事や運動は管理できます。家の中でもできうる限りの運動を行うことで夜間の睡眠の質も向上します。

学業の遅れも体調の改善する夕方に塾に通うか、費用面で問題なければ家庭教師をつけることも可能です。ある程度子供が自立していて、5つのことが自分のペースでできるのであれば、無理に仕事を辞める必要はありません。

むしろ自然に子供の症状が改善するのを見守った方が、良い結果を得られる可能性が高いです。

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

親が仕事をやめることで子どもにストレスを与える可能性も

次に、親御さんが仕事を辞めた場合のリスクについて説明します。起立性調節障害で特に思春期を迎える子供にとっては、親は誰よりも頼りたい存在であると同時に、干渉して欲しくない相手でもあるのです。

これは明らかに親に対する矛盾した感情ですが、親御さんは思春期の子供の複雑な感情を理解してあげなくてはなりません。中学生の子供であれば、きっと仕事を辞めた理由が自分にあることは理解してしまいます。

それがかえって子供に精神的ストレスを与えてしまい、ストレスにより自立神経のバランスがさらに乱れてODの症状が増悪してしまうことも十分に考えられます。

起立性調節障害の子供にとって、親にしてもらって一番ありがたかったことは「放っておいてもらえたこと」と答えたというエピソードもあります。せっかく仕事を辞めて子供に干渉する時間が増えても、子供にとっては幸せでは無い可能性があるのです。

起立性調節障害で一番不安になり一番症状のことを考えているのは親御さんではなく子供本人です。親御さんはそんな子供のペースに合わせて、程よい距離感で付き合っていく必要があります。

まとめ

本記事では、起立性調節障害の子供を持つ親御さんの仕事について解説しました。結論を言えば、子供がある程度自立している年齢であれば無理に干渉せず仕事を継続したほうが良いかと思います。

実際に仕事を辞めても症状が良くなる保証はない上に、悪化する可能性もあるため慎重に判断する必要があります。

下記記事では、起立性調節障害の子供に対して他に親ができることが非常によくまとめられています。日常での接し方や、学業の遅れに対する対応などが詳しく記載されていますので、せひ参考にしてみてください。

関連記事:起立性調節障害の治し方・親ができること・治った方の事例を解説

【参考】
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)

【無料】起立性調節障害診断

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

トトノエメガネ

トトノエライトプレーン

【無料】起立性調節障害の相談窓口

開志創造高校 ナイトスクーリング

関連記事:起立性調節障害とは

・起立性調節障害の子供に親ができること・治療法・治った方の事例

・起立性調節障害の方の体験談

・起立性調節障害が治った人の声

・起立性調節障害における「光療法」効果や仕組みを解説

・起立性調節障害の原因は?発症期間や発症しやすい人の特徴

・起立性調節障害の症状を小中高生別に解説|重症・中等症・軽症の事例

・起立性調節障害患者の血圧数値はどれくらい?測定方法なども紹介

・起立性調節障害 6つの種類とその特徴【医師解説】

・起立性調節障害 重症での入院基準は?入院中の治療や期間を紹介

・起立性調節障害の子供はどうして遊びには行けるの?

・起立性調節障害はいつまで続くの?治療期間とは

・起立性調節障害は治る病気?それとも治らない?

・起立性調節障害に効果的な薬はある?その種類や薬物療法について解説

・起立性調節障害が「難病指定」されない理由|今後指定される可能性について解説

・季節や気圧によって起立性調節障害の症状が悪化|対応方法や原因を解説

・小学生でも起立性調節障害になる?原因や主な症状とは

・中学生の起立性調節障害。原因・症状・生活への影響・うつ病との違いとは

・高校生の起立性調節障害。原因・症状・うつ病との違いとは

・起立性調節障害のセルフチェックリスト(子ども)|すぐにできる診断テスト

・大人の起立性調節障害セルフチェック項目|診断テスト

・大人の起立性調節障害について

・全記事の一覧

関連記事:子どもへの対応

起立性調節障害に対応している病院紹介
本コンテンツは一般社団法人 起立性調節障害改善協会が独自に制作しています。メーカー等から商品・サービスの無償提供を受けることや広告を出稿いただくこともありますが、メーカー等はコンテンツの内容やランキングの決定に一切関与していません。当協会では編集ポリシーに則って製品・サービスを紹介しており、企業等の意見を代弁するものではありません。当記事では正確な情報提供に努めておりますが、内容の正確性を保証するものではありません。サイト内に表示している広告については、広告掲載ポリシーをご覧ください。当記事で記載している価格は全て税込み表記です。記事内容についてのご意見・誤字脱字のご指摘はお問い合わせフォームからお寄せください。

-起立性調節障害とは
-