起立性調節障害(OD)は、起立時の血圧や心拍数を調節する自律神経の働きがうまく機能せず、めまいやふらつき、腹痛、吐き気、倦怠感などが現れる身体疾患です。小学校高学年から中学生ごろに発症しやすく、小学生の約5%、中学生の約10%にみられるとされています。
治療では、生活習慣を整える非薬物療法や薬物療法、心理社会的な要因への対応などを組み合わせます。改善する子どもがいる一方、重症の場合は症状が長引き、学校生活や日常生活に大きな影響を及ぼすこともあります。
近年、一部の医療機関では、ODに対して「硬膜外酸素注入療法」または「硬膜外気体注入療法」と呼ばれる治療が行われています。ただし、現時点では標準治療として確立されておらず、効果や安全性に関する十分な研究データも揃っていません。
本記事では、硬膜外酸素注入療法の方法や対象者、報告されている効果について解説します。治療を検討する際は、効果やリスク、費用について医師から十分な説明を受けることが大切です。

起立性調節障害における硬膜外酸素注入療法とは
硬膜外酸素注入療法は、硬膜外腔へ酸素や空気などの気体を注入し、ODの症状改善を目指す治療法です。
まずはODで症状が現れる仕組みと、治療方法について解説します。
ODによって症状が現れる仕組み
私たちが立ち上がると、重力によって血液が下半身に移動し、心臓へ戻る血液量や脳への血流が一時的に低下します。通常は自律神経が血管を収縮させ、血圧や心拍数を調節することで脳への血流を維持します。
しかし、ODではこの調節がうまく働かず、血圧が低下したり、心拍数が過度に増加したりします。その結果、めまいやふらつき、頭痛、腹痛、吐き気、倦怠感などの症状が現れます。
ODは本人の怠けや気持ちの問題によって起こるものではありません。ただし、心理社会的なストレスが発症や症状の悪化に関係することもあります。
硬膜外酸素注入療法の方法
硬膜外酸素注入療法とは、脊柱管内にある硬膜外腔へ酸素や空気などの気体を注入する治療法です。「硬膜外気体注入療法(EGI)」と呼ばれることもあります。
実施施設の説明では、仙骨部などから針を刺し、硬膜外腔へ50〜100mL程度の気体を注入します。硬膜外腔の圧を一時的に変化させることで、自律神経に関係する症状の改善を目指す治療とされています。
ただし、ODに対してどのように作用するのかは明らかになっておらず、標準治療として確立されたものではありません。また、硬膜外腔へ針を刺すため、痛みや出血、感染、神経障害、空気塞栓などのリスクがあります。

硬膜外酸素注入療法の対象者
硬膜外酸素注入療法はODの標準治療ではないため、ODと診断されたすべての子どもが対象になるわけではありません。一般的な治療を行っても症状が改善しない場合などに、一部の医療機関で治療の選択肢として提示されることがあります。
ODの患者には小学生や中学生も多いため、背中や仙骨部から針を刺す処置を本人が受け入れられるかどうかも重要です。治療の内容や痛み、考えられるリスクについて、子ども本人にも年齢に応じた説明を行い、納得を得たうえで検討する必要があります。
また、硬膜外腔の周囲には血管や神経があるため、出血しやすい病気がある場合や、血液を固まりにくくする薬を使用している場合には、出血や硬膜外血腫のリスクが高まる可能性があります。
血友病や血小板減少症などの病気がある場合、抗凝固薬や抗血小板薬を使用している場合は、治療を受けられるかどうかについて慎重な判断が必要です。脊椎の変形や手術歴などがある場合も、穿刺が難しくなることがあります。
硬膜外酸素注入療法は保険適用外の自由診療として行われているため、治療費は原則として全額自己負担です。治療を検討する際は、1回あたりの費用だけでなく、通院や入院の必要性、複数回の治療を提案された場合の総額も確認しておきましょう。
対象となるかどうかは、ODの診断や重症度、これまでに行った治療、基礎疾患、血液検査の結果、服薬状況などを踏まえ、実施する医師が判断します。治療を受ける前に、期待できる効果だけでなく、科学的根拠の限界や代替となる標準的な治療、起こり得る合併症についても説明を受けることが大切です。
硬膜外酸素注入療法で期待できる効果
硬膜外酸素注入療法を実施している医療機関からは、治療後にめまいやふらつき、頭痛、倦怠感などが軽減した例や、起立試験における血圧・脈拍の変化が改善した例が報告されています。また、発汗異常や睡眠の乱れ、消化器症状など、自律神経に関係する症状が改善したとする報告もあります。
ただし、現在確認できる情報は、特定の医療機関における少数例の報告や治療経験が中心です。治療を受けなかった患者との比較が十分に行われていないため、症状の改善が硬膜外酸素注入療法によるものか、自然経過や併用した治療によるものかを判断することは困難です。
そのため、硬膜外酸素注入療法によって起立時の血圧や脈拍が正常化する、脳血流が維持される、発汗・睡眠・排尿・排便などの機能が正常化すると断定することはできません。どのような患者に効果が期待できるのか、効果がどの程度続くのかについても、現時点では明らかになっていません。
ODの一般的な治療では、適切な水分・塩分摂取、起立時の動作の工夫、生活リズムの調整、運動療法などの非薬物療法を基本とし、症状や病型に応じて薬物療法や心理社会的な支援を組み合わせます。
硬膜外酸素注入療法は、こうした標準的な治療に代わることが確立された治療ではありません。実施している医療機関は限られており、長期的な有効性や安全性に関するデータも十分ではないため、治療を検討する際は慎重な判断が必要です。
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硬膜外酸素注入療法を取り入れた方の声
硬膜外酸素注入療法を取り入れている方の実際の声をご紹介します。
特に多い声としては、非常にリスクが少なく、痛みもそこまで感じずに治療可能なようです。また、1回の穿刺で永続的な効果が得られる訳ではなく、複数回繰り返すことで徐々に効果の持続性が増していくとの声が多いです。
一方で効果には個人差も大きく、子供によっては改善の見られないケースもあるようです。
繰り返しになりますが、ODの治療には確立された治療法はなく、自分の体にあった治療法を模索することが重要です。
下記記事では、起立性調節障害の治し方についてさらに詳しく解説されているため、ぜひ参考にしてください。
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