起立性調節障害とは

起立性調節障害における硬膜外酸素注入療法とは?期待できる効果を解説

2023年6月18日

この記事の監修者

医師(匿名)

医師歴:10年
勤務病院:某3次救急病院

一般社団法人 起立性調節障害改善協会

大切なお子さんがなかなか改善しない体の不調を訴えている場合、一緒に生活する親御さんも子供と同じように辛い思いや経験をしているはずです。中でも起立性調節障害(OD)は親子を困らせる非常に厄介な病気と言えます。

ODとは、肉体が急激に成長する小学生や中学生で発症しやすい身体疾患であり、身体の成長に対して自律神経の成長が追いつかないことで脳血流が低下し、めまいやふらつき・腹痛・嘔気嘔吐などさまざまな症状をきたす疾患です。

小学生の約5%、中学生の約10%が発症すると言われており、決して稀ではない疾患です。一般的にODの治療には特効薬などはなく、日常行動からケアしていく非薬物療法、心理ケア、食事療法などが実施され、多くの子供は自然経過で改善します。

しかし、中には重症化する子供もいて、特効薬や確立された治療法もないため、とくに有効な手立てなく、長く病気に苦しむ可能性もあります。しかし、近年では「硬膜外酸素注入療法」という新たな治療法が注目を集めています。

そこで、本記事ではODに対する「硬膜外酸素注入療法」について分かりやすく解説していきます。本記事を読むことで「硬膜外酸素注入療法」の効果などについて理解でき、治療の一助となれば幸いです。

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起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

起立性調節障害における硬膜外酸素注入療法とは

ODに対する硬膜外酸素注入療法とは、硬膜外腔に対して酸素などの気体を注入し、硬膜外腔の内圧を一時的に高めることでODの症状を緩和するという新たな治療法です。

そもそも、この治療法を理解するためにはODがどのような病気で、硬膜外酸素注入療法がどのように関与しているかを把握する必要があります。

脳は非常に酸素需要の高い臓器であり、栄養分が常に安定して供給されるように血流が維持されています。しかし、肉体が急激に成長する小学生や中学生では、心臓から脳の距離が急速に離れていきます。

本来であれば、交感神経や副交感神経を含む自律神経がうまく作動することで、脳と心臓の距離が離れても脳血流は維持されます。しかし、なんらかの原因で自律神経が乱れると、交感神経がうまく活性化せず血圧が低下し、脳血流が低下してしまいます。

特に、起立時は重力に従って血流が下肢方向に多く流れていくため、より高い位置にある脳の血流は低下しやすく、起立とともに症状が現れることから起立性調節障害と呼びます。

脳血流の低下に伴い、ふらつき・めまい・嘔気嘔吐・腹痛などさまざまな症状が出現します。お風呂上がりに湯船から立ち上がり、クラクラした経験がある方も多いと思いますが、まさにODの疑似体験と言えます。つまり、ODの本態はあくまで自律神経の乱れにあり、精神疾患ではなく身体疾患であるという理解が重要です。

次に、硬膜外酸素注入療法では、その名の通り硬膜外腔に酸素や空気、ヘリウムなどの気体を注入する治療法です。脳や脊髄は脳脊髄液と呼ばれるプールのような液体に浮かんでおり、その周囲を3つの膜に覆われて守られています。

3つの膜は内側から軟膜・クモ膜・硬膜の順に並んでおり、硬膜の外側には靭帯や筋肉や皮下脂肪があります。硬膜外腔とは、硬膜の外側で靭帯や筋肉の内側にある幅1~2mmほどの空間のことを指し、脊髄から分岐した神経が走行しています。

実は硬膜外腔を用いた医療は日常的に活用されており、手術中の鎮痛に行われる「仙骨硬膜外腔麻酔」と呼ばれる麻酔方法が挙げられます。背中から針を刺し、硬膜外腔に局所麻酔薬を注入することで付近を走行する神経を遮断し鎮痛を行う麻酔法です。

また、他にも「硬膜外腔自家血注入療法(ブラッドパッチ)」と呼ばれる手技も挙げられます。なんらかの原因で硬膜やクモ膜に穴が空くと、脳脊髄液が流出して頭痛などの症状が出現するため、自身の血液を採取して、直接硬膜外腔に注入する手技のことです。

血液で穴にパッチを当てることから、ブラッドパッチと呼ばれています。つまり、これまでも硬膜外腔に関連した医療手技は日常的に行われており、硬膜外麻酔では局所麻酔薬を、ブラッドパッチでは血液を注入してます。

しかし、硬膜外酸素注入療法では局所麻酔薬でもなく自身の血液でもなく、気体を注入する治療法です。具体的な方法としては、背骨と背骨の間のくぼみから針を穿刺し、針が硬膜外腔に到達したところで酸素や空気を50〜100mlほど注入します。

この時、腰部や胸部の背骨から穿刺しても効果は得られますが、腰部や胸部には脊髄が走行しているため、誤って深く穿刺しすぎて針がクモ膜下腔や脊髄に到達する危険性を回避するため、仙骨部からの穿刺が一般的です。

注入する気体は酸素が一般的ですが、施設によって空気やヘリウムを使用する施設もあるようです。酸素は比較的早く血液内に吸収されてしまうため、効果持続時間は空気やヘリウムと比較すると長くありません。

そこで、酸素を使用する場合は硬膜外腔に注入後、酸素を口から吸ってもらい、血液内の酸素濃度を上昇させることで、硬膜外腔から血液への吸収を遅らせ、治療効果の向上も期待されます。

気体を注入することでなぜODが改善するのか、細かい機序までは判明しておりませんが、硬膜外腔に気体が入ることで圧が上がり、自律神経に何らかの影響を与えることで症状が改善していると考えられています。

また、穿刺時には針の痛みがあるものの、期待を注入するだけなので大きな痛みを伴わない点も硬膜外酸素注入療法の大きなメリットと言えます。

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

硬膜外酸素注入療法の対象者

どのような方が硬膜外酸素注入療法の対象となるのでしょうか?まず、ODの場合は小学生や中学生の子供が多いため、背中から針を刺されるという行為を許容できるかどうかの問題があります。

また、硬膜外腔の付近には血管が豊富に走行しているため、血液の凝固能が正常ではない子供の場合、万が一血管を穿刺してしまった場合に出血のコントロールがつかなくなるため、穿刺自体ができません。

最悪の場合、多量の出血が脊髄そのものを圧迫してしまい、さらなる神経障害をきたす可能性もあるため、凝固能が正常かどうかは非常に重要です。

特に小児の場合、先天的に凝固能力の低い血友病や特発性血小板減少性紫斑病、もしくはなんらかの理由で血液をサラサラにする薬を内服している場合に、穿刺が困難となります。他にも、生まれながらに脊椎の異常な変形を持つ子供は穿刺の適応から外れる可能性が高いです。

また、医学的な理由とは別に、この治療法は保険適応外のため、現状では全額自己負担を求められます。医療費の支払い能力も、治療対象となるかどうかを問われるポイントの1つとなるでしょう。

硬膜外酸素注入療法で期待できる効果

硬膜外酸素注入療法で期待できる効果として、起立時の血圧低下や脈拍の異常な変化の抑制が挙げられます。自律神経になんらかの機序で作用し、本来の働きを取り戻すことで、起床時の血圧低下や異常な脈拍の変化が正常化すると考えられます。

また、自律神経の機能が正常化して、起床後や起立時にも脳血流が維持されれば、めまいやふらつき、倦怠感、嘔気嘔吐などの症状の出現を予防できる可能性があります。

さらに、自律神経は血圧や脈拍以外にも、発汗・睡眠・体温・排尿・排便など多くの生理機能をコントロールしているため、自律神経の乱れが改善することで発汗異常や睡眠の乱れ、消化管の不調など様々な機能を正常化する効果も期待されます。

一方で、これまでODに確立された治療法はなく、現状では日常行動から脳血流が低下しないように注意して行動する非薬物療法が標準治療とされています。

そのため、硬膜外酸素注入療法を実施している医療施設は少なく、比較的最近の医療であるため、長期的なデータは十分揃っていません。その効果については、今後さらなるデータが揃い、新たな知見が待たれるところです。

硬膜外酸素注入療法を取り入れた方の声

硬膜外酸素注入療法を取り入れている方の実際の声をご紹介します。

特に多い声としては、非常にリスクが少なく、痛みもそこまで感じずに治療可能なようです。また、1回の穿刺で永続的な効果が得られる訳ではなく、複数回繰り返すことで徐々に効果の持続性が増していくとの声が多いです。

一方で効果には個人差も大きく、子供によっては改善の見られないケースもあるようです。

繰り返しになりますが、ODの治療には確立された治療法はなく、自分の体にあった治療法を模索することが重要です。

下記記事では起立性調節障害の治し方についてさらに詳しく解説されているため、ぜひ参考にしてください。

【参考】
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)
起立性調節障害について

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

トトノエライトプレーン

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