起立性調節障害とは

起こす時、起きた後に不機嫌になる|起立性調節障害の子供の対応方法、注意点

2022年8月5日

この記事の監修者

医師 錦惠那

医師 錦 惠那

内科一般・腎臓内科・透析科・産業医
保有資格:日本内科学会内科専門医・日本医師会認定産業医

一般社団法人 起立性調節障害改善協会

 

起立性調節障害のお子さんは朝、特に起床時、症状が最もよくみられます。起床時に活性化しているはずの交感神経の活性化が追い付かず、なかなか起き上がることができないことは良くある症状の一つです。

親御さんが起こしてもなかなか起きてこない、すごく不機嫌で、起きた後も不機嫌が続き、なかなか活発にならないことを経験されている親御さんも多いのではないでしょうか。

この記事では、「起こす時や起きた後、何故不機嫌なのか」、その対応方法や対応時の注意点などを解説していきます。

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

なぜ起こす時や起きた後は不機嫌になるのか?

まずは、起立性調節障害という病気への理解を深めて頂くために、自律神経、起立性調節障害について解説していきます。

自律神経は呼吸や心臓の拍動、胃腸の消化機能など自分の意志ではコントロールできない生命維持に非常に重要で多様な働きを調整しています。自律神経には日内変動があり、食事など時間帯により優位に働く神経が異なります。

交感神経は体を活発にさせる神経であり、獲物を狩る際の戦闘態勢の状態とイメージするとわかりやすいです。瞳孔をひらき獲物を見て、心臓の拍動を増やし、末梢の血管を収縮させ、血圧を上げます。一方で、この時消化管の運動は抑え、排泄機能も抑えます。

副交感神経は体をリラックスさせる神経であり、交感神経とは反対の作用があります。

私たちは、朝起床頃より交感神経が優位になり、午後になると徐々に副交感神経の割合が増加していき、夜間には交感神経の働きは弱くなり、就寝が近くなる頃には副交感神経が優位に働き、睡眠中体を休めます。

起立性調節障害の子どもは交感神経と副交感神経の働きのバランスに不具合が生じ、適切に神経をスイッチすることができないため、色々な症状に悩まされます。

特に、朝は活性化されるべき交感神経がうまく活性化されないために体はなかなか覚醒状態にはなりません。朝起き上がることができず、起きたあともめまいやふらつき、吐き気など体調不良が続きます。

時間とともに症状は和らぎ、午後からの活動は特に問題ないことが多いです。

また、起き上がる際と同様に、立ち上がる際にも症状が見られやすいです。起立性調節障害がない方の場合の立ち上がる際にみられる体の変化を説明します。

座っている時には、重力に従って、血液は下肢に溜っています。そこから立ち上がると、心臓や脳への血流が下がってしまうことは容易に想像がつくと思います。

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

しかし、実際には私たちは立ち上がる際に失神することはありません。なぜなら、立ち上がる際に私たちの体は自動的に交感神経を活性化し、足などの末梢の血管を収縮させ、心臓、脳への血流を保っています。

起立性調節障害の子どもはこの交感神経の自動的な活性化に乏しいため、立ち上がる際にも多様な症状が出てしまうことが多いです。

起き上がる時、副交感神経が優位な状態の起立性調節障害の子どもの体はまだ寝ている状態であるため、倦怠感を感じ、不機嫌になってしまいます。また、起床後もめまいやふらつき、吐き気などの体調不良が見られるため、これも不機嫌につながってしまいます。

不機嫌になる原因は、起立性調節障害による自律神経の調整がうまくいかず、様々な体調不良があるためです。少しでも症状を和らげることが必要になってきます。

また、ご本人も朝起き上がれないことに対しいら立ちを感じていることも多く、「今日もまた症状がしんどかった」「すんなり起き上がれなかった」「明日も起き上がれないのかな」など不安やいら立ちが不機嫌につながっていることも多いと考えられます。

起き上がる時や起きた後の症状の出現を和らげることで不機嫌な状態は改善していくと思われます。

起立性調節障害の子どもを起こす際には、押さえておくべきポイントがあります。

病気の特性上、急に体位を変換すること(寝ている状態→体を起こす、座位→立位)で本来活性化されるべき交感神経の活性に不具合が生じているため、足など末梢の血管を収縮することができず、心臓や脳への血流が不足してしまい、多様な症状を引き起こしてしまします。

したがって、すべてにおいてゆっくりとした動作が必要になります。具体的な起こし方は下記記事でご紹介していますので、そちらをご覧いただけたらと思いますが、起き上がる際には起こす側、起きる側両者の協力が必要です。

 

 

親御さんもお子さんも病気への知識を再確認し、起きる際の手順も繰り返し確認しておくことが重要です。

症状がひどい場合は、昇圧剤などの処方されている薬や水分を摂取しましょう。上記でご説明したように、子ども自身も不安やいら立ちを感じていることがあるため、気持ちの面でも寄り添いサポートしてあげてください。無理をせず日々変化する体調を見ながら朝の時間を過ごしてください。

起こす際の注意点

上記記事でご紹介している起こし方をご覧いただいた上で、睡眠に関する生活習慣や環境なども整えることが重要です。

眠くなくても毎晩決まった時間にベッドに入り体を休めるようにしましょう。そして、朝の起床時間も決めましょう。起床時間には声掛けとともに、窓を開け日光を入れるようにしましょう。体に朝、晩のリズムを刻み、食事の時間もなるべく決めてしまいましょう。

起こす際には強く体を揺さぶったり、怒鳴って怒るようなことはさけましょう。ご本人は起きたくても起きあがれないので、ご家族の対応がストレスと感じてしまうと症状が更に悪化することがあります。余裕を持って複数回起こすよう促しましょう。

 

下記記事では「起立性調節障害の子供に対して親御さんができること」をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

◆起立性調節障害に関する他の記事はこちら

 

【参考】
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

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