起立性調節障害とは

新起立試験のやり方とは?手順や起立試験との違いを解説

2022年12月3日

この記事の監修者

医師 錦惠那

医師 錦 惠那

内科一般・腎臓内科・透析科・産業医
保有資格:日本内科学会内科専門医・日本医師会認定産業医
2018年から起立性調節障害患者の診療を行い、累計30人以上の起立性調節障害患者を担当。

一般社団法人 起立性調節障害改善協会

みなさんは、起立性調節障害(OD)という病気をご存知でしょうか?

起立性調節障害は小学校高学年から中学生頃に多くみられ、軽症例を含めると小学生の約5%、中学生の約10%に症状がみられるとされています。

人が立ち上がると、重力によって血液の一部が下半身へ移動します。通常は自律神経が心拍数や血管の収縮を調節しますが、起立性調節障害ではこの働きがうまく機能せず、立ちくらみやめまい、頭痛、動悸、倦怠感、吐き気、腹痛、朝起きられないなどの症状が現れます。

起立性調節障害は身体的な症状が現れる病気ですが、心理的なストレスや学校・家庭などの環境が症状に影響する場合もあります。

また、一般的な血液検査や心電図検査では、起立性調節障害に特有の異常が確認できないこともあります。鉄欠乏性貧血や心臓の病気、甲状腺機能低下症、睡眠障害などでも似た症状が現れるため、診断時にはほかの病気が関係していないか確認することが大切です。

起立性調節障害が疑われる場合は、問診や身体診察、必要な検査に加えて、起立時の血圧や心拍数の変化を調べる「新起立試験」が行われます。

本記事では、新起立試験の具体的なやり方や手順、判定基準、保険点数、従来の起立試験やシェロングテストとの違いについて解説します。

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

新起立試験のやり方とは?手順を解説

起立性調節障害の診断では、症状や日常生活への影響を確認し、必要に応じて血液検査や心電図検査などを行います。その上で起立性調節障害が疑われる場合に、新起立試験を実施します。

起立性調節障害の症状は朝から午前中に強く現れることが多いため、新起立試験も原則として午前中に行うことが推奨されています。ただし、検査時間や事前の準備は医療機関によって異なります。

検査では心電図や血圧を測定する機器を装着し、ベッドの上で仰向けになって10分程度安静にします。その間に血圧や心拍数を複数回測定し、起立前の状態を確認します。

その後、患者自身に立ち上がってもらい、10分程度起立した状態を維持します。起立直後から血圧や心拍数を測定し、血圧が低下した場合は、起立前の状態へ回復するまでの時間も確認します。

起立中は、立ちくらみやめまい、動悸、吐き気などの症状が現れるかどうかも確認します。強い症状や失神が起こりそうになった場合は、安全のため検査を中止することがあります。

新起立試験で確認された血圧や心拍数の変化、症状などをもとに、起立性調節障害の診断や重症度を検討します。また、検査結果によっては、主に以下の4つのサブタイプに分類されます。

  • 起立直後性低血圧
  • 体位性頻脈症候群
  • 血管迷走神経性失神
  • 遷延性起立性低血圧

ただし、検査当日の体調や時間帯などによって結果が変わる可能性もあります。新起立試験の数値だけで判断するのではなく、普段の症状や日常生活への影響を含めて医師が総合的に診断します。

起立性調節障害の種類や、それぞれの特徴について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。

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新起立試験の血圧回復時間

横になった状態から立ち上がると、重力によって血液の一部が下半身へ移動するため、血圧が一時的に低下します。その後、血圧が起立前の状態へ回復するまでにかかる時間を「起立後血圧回復時間」といいます。

自律神経による血圧調節に大きな異常がない場合、起立後血圧回復時間は一般的に20秒未満とされています。

起立後血圧回復時間が25秒以上の場合、または起立後血圧回復時間が20秒以上で、起立直後の平均血圧低下率が60%以上の場合は、起立直後性低血圧の診断基準に該当します。

起立直後性低血圧は、起立性調節障害の中でも比較的多くみられるサブタイプです。立ち上がった直後に血圧が大きく低下し、立ちくらみやめまい、眼前暗黒感などの症状が現れます。

ただし、起立性調節障害にはほかのサブタイプもあり、血圧や心拍数の変化は一様ではありません。

例えば、体位性頻脈症候群では、起立直後に目立った血圧低下がみられない一方、起立中に心拍数が大きく増加します。小児の診断基準では、起立後3分以降の心拍数が115回/分以上、または起立中の心拍数増加が35回/分以上であることが目安とされています。

血管迷走神経性失神では、起立中に突然血圧や心拍数が低下し、失神に至ることがあります。失神する前に、吐き気や冷や汗、顔面蒼白、眼前暗黒感などが現れる場合もあります。

遷延性起立性低血圧では、起立直後ではなく、起立後3~10分に収縮期血圧が起立前より15%以上、または20mmHg以上低下します。

こうした数値は、起立性調節障害のサブタイプを判断するための基準の一つです。実際の診断では、検査中の症状や普段の体調、ほかの病気の可能性なども含めて総合的に判断されます。

新起立試験の保険点数

新起立試験を受ける際に、検査費用がどの程度かかるのか気になる方も多いと思います。

新起立試験そのものは、診療報酬点数表に独立した検査項目として掲載されているわけではありません。実際の費用は、診察や血圧・心電図の測定、血液検査など、同時に行われる診療内容によって異なります。

また、外来で検査を受ける場合と、ほかの検査などを目的として入院する場合でも、自己負担額は大きく異なります。そのため、具体的な費用については、検査を受ける医療機関へ事前に確認することをおすすめします。

一方、専用のベッドを傾けながら血圧や心拍数、症状の変化を連続的に確認する「ヘッドアップティルト試験」は、診療報酬上の検査項目として定められています。

2026年度の診療報酬点数表では、ヘッドアップティルト試験は1,030点です(参照:「2026年度 医科診療報酬点数表」)。1点を10円として計算すると、検査料は10,300円となり、医療費の自己負担割合が3割の場合、検査料部分の自己負担は3,090円が目安です。

ただし、これとは別に初診料や再診料、血液検査などの費用がかかる可能性があります。

また、保険診療でヘッドアップティルト試験を算定できるのは、失神発作があり、ほかの原因が特定されず、神経調節性失神が疑われる場合などに限られます。起立性調節障害が疑われるすべての方に行う検査ではありません。

検査の必要性については、症状や失神歴などをもとに医師が判断します。

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

起立試験と新起立試験の違い

従来の起立試験と新起立試験の違いは、評価項目に起立後血圧回復時間があるか否かです。起立後血圧回復時間を評価することで、より厳密な診断が可能となります。

従来の起立試験では、仰向けから立位への体位変換時の血圧と脈拍の変化しか観察していないため、新起立試験の簡易版という位置付けです。

従来の起立試験には、患者自身が自分の足で立ち上がるシェロングテストと、専門の器具を使って強制的に立位状態を作り出すHead-up Tilt試験の2つの方法があります。

シェロングテストとは

上記で説明したように、シェロングテストは一言でいえば起立試験の中でも患者が能動的に起立する検査のことです。

もともとシェロング医師が起立性低血圧患者の状態把握のために生み出した検査方法であり、今日でも簡易的な起立性調節障害の検査として行われています。

これらの検査を受ける患者の中には、立位への体位変換によって急速に脳血流が低下し、場合によっては失神する患者も少なくありません。そこで、シェロングテストは患者自身で起立してもらうため、低負荷な検査と言えます。

それに対し、前述したHead-up Tilt試験では専用のベッドで強制的に仰臥位から傾斜をつけて立位の状態を作り出すため、シェロングテストと比較してより高負荷な検査と言えるでしょう。

シェロングテストの手順

実際のシェロングテストの手順は、まず仰向けで15分間安静になってもらいます。その後、1分ごとに2分間血圧と脈拍を測定します。その後、自分で立位を取ってもらい起立直後から1分おきに、1分後、2分後、3分後と血圧や脈拍の変化を測定していきます。

評価項目に起立後血圧回復時間がないため、起立性調節障害のサブタイプである起立直後性低血圧の診断はできないことになります。

まとめ

今回は、起立性調節障害の診断に用いられる新起立試験を中心に、従来の起立試験やシェロングテスト、ヘッドアップティルト試験の方法について解説しました。

起立性調節障害が疑われる場合は、問診や身体診察、必要に応じた血液検査や心電図検査などを行い、似た症状が現れるほかの病気が関係していないか確認します。

その上で新起立試験を行い、起立時の血圧や心拍数の変化、血圧回復時間、検査中の症状などを確認します。検査結果によっては、起立直後性低血圧や体位性頻脈症候群などのサブタイプを検討できます。

ただし、新起立試験の数値だけで起立性調節障害と診断されるわけではありません。普段の症状や日常生活への影響、ほかの病気の可能性などを含めて、総合的に判断されます。

新起立試験は午前中に行うことが推奨されていますが、検査の時間や手順、費用は医療機関によって異なります。検査を希望する場合は、新起立試験を実施しているか、外来で受けられるか、費用がどの程度かかるかを事前に確認しましょう。

検査によって起立性調節障害と診断された場合は、疾病への理解を深めた上で、非薬物療法を基本に、必要に応じて薬物療法や学校・家庭での環境調整などを組み合わせていきます。

起立性調節障害の治し方や、家庭で親ができることについて詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。

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【参考資料】
起立性調節障害(OD) 朝起きられない子どもの病気がわかる本/田中 大介
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)
起立性調節障害(OD)ドクターズファイル

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

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