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起立性調節障害とは?子ども・大人別に特徴を解説

起立性調節障害とは

起立性調節障害(OD)は中学生の1割に存在すると言われおり、小学生から大人まで誰もが疾患する可能性のある病気です。

しかし、見た目では分かりにくい病気のため、周囲から理解されず「ただのサボり癖では?」と思われることが多々あります。

まずは親御さん自身が起立性調節障害について理解し、目の前の現状をサボり癖や怠けと考えないことが大切です

起立性調節障害の治療法

起立性調節障害の治し方には、大きく分けて「薬物療法」と「非薬物療法」があります。

起立性調節障害の薬物療法

基本的には、起立性調節障害には
「この薬を飲めば良くなる」という特効薬はありません。

血圧を上げる薬を出される所もありますが、起立性調節障害の原因を解決するわけではありません。

ですので、薬ではなく副作用も少ない
「非薬物療法」で対処してくことをお勧めしています

非薬物療法には、主に4つが挙げられます。

  • 睡眠リズムを整える
  • 光環境を整える
  • 腸内環境を整える
  • 足りない栄養の補給

それぞれの治療法の詳細は動画解説をぜひご覧ください。

子どもの起立性調節障害の特徴

子どもの起立性調節障害の特徴

子どもの起立性調節障害の特徴として、症状に日内変動が大きい点が挙げられます。午前中にうまく交感神経が活性化しないため、体がアクティブに動けずうまく活動を起こすことができません。

そのため午前中は症状が重く、起立時にめまいやふらつきが強く生じて、通学や学業に大きな支障をきたします。一方で、時間の経過とともに副交感神経が抑制され、交感神経が活性化してくることで脳血流が増加するため症状が改善していきます。

その結果、夕方や午後に症状が改善するため、夜に元気になり逆に不眠症状が出現し、その影響でさらに翌日の朝に起きられなくなる負のスパイラルに陥る子どもも多いです。

そのため、徐々に睡眠相が交代する「睡眠相後退症候群」を併発する子どもも多く、注意が必要です。放置すると重症化する可能性もあるため、症状が当てはまる方は医療機関に受診しましょう。

【関連記事】起立性調節障害とは?

大人の起立性調節障害の特徴

大人の起立性調節障害の特徴

大人の起立性調節障害の特徴は基本的に子どもと大きな違いはなく、起立時や起床時のめまい・ふらつき・起床困難・腹痛・嘔気などさまざまな症状が出現します。

子どもの場合は症状の悪化によって学業や進学に影響はありますが、中学生までは義務教育のため、基本的に問題なく進学できます。高校での過ごし方も選択肢が多く、通信制やサテライトなどの選択肢を選べば、問題なく進学できるでしょう。

一方で、大人で発症した場合は社会生活に大きな支障をきたすため、影響は非常に大きいです。仕事も十分にできなくなり、家庭にも影響を与えてしまうでしょう。

仕事や家庭に悪影響が及べば、それ自体がストレスとなってさらに自律神経の乱れを生み、病状にも悪影響を与えるため、早期発見・早期治療が重要です。

起立性調節障害はいつ頃発症しやすいのか

起立性調節障害はいつ頃から発症しやすいのか

起立性調節障害は小学生高学年から中学生にかけてとくに多くみられる病気であり、いわゆる「思春期」と重なります。

この時期は体の機能や心のあり方が子供から大人へと変化してき、その変化が自律神経にまで及ぶため、交感神経と副交感神経のバランスが取りづらくなるのです。

小学生で約5%、中学生では約10%の子供が起立性調節障害の症状がでると言われています。やはり、身体・精神が急成長する中学1年から3年生にかけての時期に、最も起立性調節障害を発症しやすいと言えるでしょう

発症してから1年後には約半数が、2〜3年後には約8割が回復すると言われていますが、重症の場合は大人になっても症状が残ることもあります。

起立性調節障害を発症しやすい人の特徴

起立性調節障害は自律神経系である交感神経と副交感神経のバランスが乱れることで様々な症状がみられる病気です。

自律神経の乱れを引き起こす原因である、ストレス、生活習慣の乱れの要素を多くもっている方に発症のリスクがあります。また、遺伝的な要素や体質も影響しています。

遺伝的要素や体質

起立性調節障害の方の約半数に遺伝の可能性が指摘されています。

また、自律神経の働きにも個人差があり、人により朝起き辛く、立ちくらみが起こりやすいということもあります。

水分・塩分摂取不足

水分と塩分は血圧の調整に大きくかかわっており、不足することで血管内を循環する血流が不足しやすく、立ちくらみなどの症状が起こりやすくなります。

心臓病や腎臓病など基礎疾患がある方は水分や塩分摂取を制限しましょう。

筋力(特に下肢)低下

下肢の筋力は立位になる際に、重力の影響で下肢に溜った血液を心臓に押し戻すための重要なポンプ機能をはたしています。

下肢の筋力が不足すると、下肢に溜った血液を心臓に押し戻すことができず、症状を来しやすくなります。

精神的なストレス

真面目な人、精神的なストレスを受けやすい/溜め込みやすい人は、自律神経の乱れが起こりやすくなります。

生活習慣の乱れ

栄養バランスの乱れ、過剰な間食、食事の時間が不規則、運動習慣がないなどの生活習慣の乱れは自律神経の乱れを招きます。バランスのとれた食事、適切な運動習慣を取り入れましょう。

また、睡眠の乱れも自律神経の乱れを引き起こします。十分な休養を取りましょう。

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

起立性調節障害の症状

起立性調節障害の主な症状

起立性調節障害とは、自律神経の調節がうまくいかなくなると引き起こる病気です。

自律神経には体を活動させるための「交感神経」と、体を休ませるための「副交感神経」の2種類があります。これらのバランスが崩れることで血液循環に問題が生じ、さまざまな症状を引き起こします。

起立性調節障害の主な症状は下記のとおりです。

  • 寝つきが悪い
  • 朝起きるのがつらい
  • 倦怠感がある
  • 食が細くなる
  • 立っていると気分が悪い
  • 立ちくらみがよく起こる
  • イライラしやすい
  • 集中力が続かない
  • 動悸や息切れがする
  • 失神発作を起こす
  • 乗り物酔いをする
  • 風邪をひいていないのに発熱する
  • 顔色が優れない、青白い
  • ストレスを感じると気分が悪くなる

このように、起立性調節障害にはさまざまな症状があります。複数項に当てはまり、他の病気の疑いがない場合は起立性調節障害の可能性が高いでしょう。

初期症状

起立性調節障害の初期症状

前述のように、起立性調節障害は小学生高学年から中学生にかけてよくみられます。前兆としては次のような症状・行動が挙げられます。

  • 以前と比べて朝起きるのがつらそう
  • 学校へ登校することに対して消極的になった
  • 午前中は倦怠感が強く、午後になると元気になる

起立性調節障害の初期症状はささいなものなので、見落としや誤解が起こりがちです。また、「健康な子供でも発症する可能性がある」ことを念頭に置かなければいけません。

小学生高学年から中学生にかけてのお子さんがいらっしゃる家庭では、症状・行動をつまびらかに観察し、起立性調節障害かどうかを早期段階で判明させることが重要です。

実は「親からのストレス」が起立性調節障害発症の原因になることも。知らずのうちにお子さんの起立性調節障害を発症・悪化させている可能性もあります。

小学生・中学生・高校生・大人別の症状

続いて、起立性調節障害の症状を小学生・中学生・高校生・大人と、成長別に見ていきましょう。

起立性調節障害の小学生・中学生・高校生・大人別の症状

小学生の症状

小学生では寝つきが悪い、早朝起きられない、午前中の倦怠感が強いなど身体的な症状が多くみられます。

とりわけ小学生高学年から身体的・精神的変化が起こるため、十分な観察が必要です。

中学生の症状

中学生となると精神的な変化も強くなるため、小学生時の症状に加えて自己肯定感が低くなったり、イライラしやすくなる傾向があります。

「単なる反抗期だろう」と誤解されることも多く、親との気持ちのすれ違いが症状を悪化させる原因になることも。

高校生の症状

高校生の場合では不登校に至るケースは少ないものの、午前中の授業に集中できず学力が著しく低下することがあります。

午前中は保健室へ行くことが多いお子さんを持つ方は、起立性調節障害を疑ってみましょう。

大人の症状

起立性調節障害は大人でも発症する病気です。

仕事のことを考えると気分が重くなる、しばしば遅刻をする、午前中は仕事に集中できない、日々の体調が安定しないなどの症状を感じている方は起立性調節障害かもしれません。

大人の起立性調節障害に関する記事はこちら

関連記事:起立性調節障害の症状を小中高生別に解説|重症・中等症・軽症の事例

 

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

 

起立性調節障害の重症・中等症・軽症の例

起立性調節障害の重症・中等症・軽症

重症

起立性調節障害が重症化すると学校を不登校になったり、日常生活を送るのが難しいほど体調を崩したりもします。

したがって、重症の場合はうつ病との鑑別が難しく、子供だからといって起立性調節障害と決めつけるのは早計です。

うつ病は脳内で情報をやり取りする際に必要な「神経伝達物質(ホルモン)」のバランスが崩れ、脳の働きに障害が問題が生じている状態です。

起立性調節障害とは違ったアプローチでの診療が必要になるため、適切な診断が欠かせません。

中等症

中等症の場合では強い倦怠感、立ちくらみなどがよく見られます。

早朝起きられず学校に遅刻するケースが多く、サボり癖や学校嫌いで済ませられてしまうことが大半なので注意しましょう。

軽症

軽症の場合、「早起きるのはつらいが何とか準備をして登校する」というお子さんが多くいます。

また、登校に対して積極的ではあっても、立ちくらみやめまいを起こす際は起立性調節障害を発症している可能性を考えましょう。

起立性調節障害の4つのタイプ

起立性調節障害には4つのタイプが確認されており、お子さんがどのタイプに分類されるかをしっかりと把握することが大切です。

起立性調節障害 軽症・中等症・重症別の4つのタイプ

起立直後性低血圧(きりつちょくごせいていけつあつ)

起立直後の低血圧から回復が遅れ、立ちくらみや失神を起こすタイプです。

横になっているときと比べて上の血圧が20mmHg以上、下の血圧が10mmHg以上下がる場合に診断されます。

体位性頻脈症候群(たいいせいひんみゃくしょうこうぐん)

立っていると心拍数が上がり、動悸や息切れ、めまい、ふらつき、頭痛などを起こすタイプです。

症状が悪化すると日常生活が困難になる人もいます。

神経調節性失神(しんけいちょうせつせいしっしん)

脳への血流をコントロールする神経がうまく働かず、起立後に血圧が急低下し失神を起こすタイプです。

人によっては食後や排尿時など、特定の行動下で起きることもあります。

遷延性起立性低血圧(せんえんせいきりつせいていけつあつ)

起立直後の血圧反応は正常でも、数分後以降に血圧が徐々に低下するタイプです。

失神に至るケースもあり、収縮期の血圧が15%以上低下する場合に診断されます。

関連記事:起立性調節障害の6つの種類とその特徴とは?【医師解説】

起立性調節障害の診断方法・セルフチェック方法

「自分の子供が起立性調節障害かどうか把握したい」という方は、まずセルフチェックでの診断をおすすめします。

「子供が起立性調節障害がどうか分からない、知りたい」という方はぜひご一読ください。

関連記事:起立性調節障害のセルフチェックリスト(子ども)|すぐにできる診断テスト

関連記事:大人の起立性調節障害セルフチェック項目|診断テスト

起立性調節障害の診断方法

起立性調節障害の診断方法として最も重要なのは、問診を含む診察と、体位変換にともなう血圧や脈拍の変化をモニタリングする新起立試験の2つです。

問診では、立ちくらみやふらつきの有無・入浴による気分不快・動悸・午前中の体調不良・顔色不良・食思不振・腹痛・全身倦怠感・乗り物酔い・頭痛などの有無を確認します。

上記のうち、3つ以上当てはまる場合は新起立試験を行いさらに精査します。新起立試験では、体位変換による脈拍・血圧の変化をモニタリングし、その結果次第で起立直後性低血圧・体位性頻脈症候群・血管迷走神経性失神・遷延性起立性低血圧の4種に大別されます。

逆に、この4つに分類できないバイタルサイン(血圧・脈拍)の変化であれば別の病気を疑うべきです。

関連記事:起立性調節障害の診断方法を年代別に解説|受診すべき診療科も紹介

起立性調節障害の合併症

起立性調節障害の合併症

起立性調節障害の合併症として挙げられるのが不登校、集中力の著しい低下、睡眠障害、発達障害などです。

これに伴い学校での成績が低下したり、学校以外の部分でも行動が消極的になることがあります。

また、小学生高学年から高校生にかけての成長期では、起立性調節障害が長く続くことでうつ病を併発する恐れがあります。

うつ病の発症率は患者全体の約1割なので、10人に1人はうつ病を併発するということに。

思春期以後の女子は生理不順やPMS(月経前症候群)を併発するケースもあり、心身ともに辛い時期を過ごすことになります。

起立性調節障害が治った人の声

起立性調節障害が治った人の声をご紹介しています。治療方法は十人十色なので、色んな方の体験談をぜひご参考にされてください。

起立性調節障害が治った人の声

起立性調節障害の体験談

起立性調節障害は症状や経過が人によって異なるため、多くの体験談を知ることがみなさんの治療の糸口になるやもしれません。

下記記事では他の体験談についてよくまとめられています。ぜひ参考にしてみてください。

→起立性調節障害の体験談(全体)はこちら

起立性調節障害を光療法で克服した方の体験談
起立性調節障害の体験談(小学生)
起立性調節障害の体験談(中学生)
起立性調節障害の体験談(高校生)

起立性調節障害に関してよくある質問

ここからは起立性調節障害に関してよくある質問を紹介します。

起立性調節障害はどうして遊びにはいけるの?

起立性調節障害が遊びに行ける理由は、午後になると症状が改善するためです。起立性調節障害の症状には日内変動があり、特に午前中は交感神経が抑制されやすく、症状が出現しやすいです。

一方で、夕方や夜間に向けて症状が改善すると元気が出て、放課後には遊びに行ける子供が多いため、サボっていたり遊びに行けるイメージを持たれやすいです。

子供が夕方元気だから大丈夫だろうとタカを括らず、異変を感じたら早期に医療機関を受診するようにしましょう。

起立性調節障害は何歳ぐらいに多い?

起立性調節障害は特に小学生高学年から中学生にかけて発症することが多い病気です。

この時期、急激に身体が成長することによって、自律神経のバランスが乱れて起立性調節障害を発症します。とはいえ、高校生や大人まで、幅広い年齢で発症しうる病気であり、幼少期しか発症しない病気ではないため注意が必要です。

起立性調節障害は何人に1人発症する?

日本小児科学会の報告によれば、特に発症しやすい小学生・中学生では、軽症例も含めると10人に1人の子供が起立性調節障害を発症すると言われています。

各学年で12万人の起立性調節障害の子供がいると言われており、その中でも日常生活に支障をきたす重症例は全体の約1%、人数でいうと7万人と推定されます。

とはいえ、人によって出現する症状に個人差も大きく、これまでの多数の報告で挙げられている発症率には個人差が大きいです。

起立性調節障害は放置するとどうなる?

起立性調節障害は基本的に自然軽快する疾患と考えられていますが、中には放置した結果重症化する子供も1%程度います。

重症化すると、朝の起床困難によって通学や通勤など日常生活に大きな支障をきたすことになります。

自身のセルフケアだけでは自然軽快は難しいため、医療機関での薬物治療が必要となることも少なくありません。

起立性調節障害はストレスが原因?

起立性調節障害の原因はストレスではなく、あくまで身体の急激な発達に伴い発症する身体疾患です。

とはいえ、ストレスがかかると自律神経のうち、交感神経が活性化し、副交感神経が抑制されることで、自律神経が乱れます。

その結果、すでに発症している起立性調節障害がより悪化する可能性があるため、注意が必要です。症状を緩和するためにも、定期的にストレスは発散するようにしましょう。

起立性調節障害に関する調査結果

弊協会では、起立性調節障害で悩む方を対象に独自調査を行っております。

直近では2023年3月12日〜2023年3月24日に273名の方を対象としてアンケート形式による調査を行いました。

<調査項目>

  • 起立性調節障害に効果があった対策
  • 起立性調節障害を患っている方の登校頻度
  • 起立性調節障害を発症した時の年齢 等

調査結果は下記の「起立性調節障害の方へのアンケート結果」でご紹介していますので、ぜひご覧ください。

起立性調節障害に対応している病院紹介

大人の起立性調節障害に関する記事はこちら

【参考文献】
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)
小児心身医学会ガイドライン集
起立性調節障害 対応ガイドライン(岡山県庁)
起立性調節障害ガイドライン(大分県版)