起立性調節障害とは

HSPと起立性調節障害の関係性を解説-子どもへの接し方を紹介

2023年6月10日

この記事の監修者

医師(匿名)

医師歴:10年
勤務病院:某3次救急病院

一般社団法人 起立性調節障害改善協会

HSPとは、音や光、周囲の感情などの刺激を敏感に受け取りやすい人を表す言葉です。病名ではなく、生まれ持った気質を表す心理学的な概念とされています。

一方、起立性調節障害(OD)は、自律神経による循環調節がうまく働かないことで、めまいや立ちくらみ、朝の起床困難などが現れる身体疾患です。

HSPとODは異なるものですが、外見から状態が分かりにくいことや、ストレスが心身の状態に影響する場合があることなど、共通する部分もあります。ただし、HSPの子供がODになりやすいという直接的な関係は、医学的に明らかになっていません。

そこで本記事では、HSPとODの関係について分かりやすく解説します。両者の違いや共通点、子供への接し方を理解するための参考にしてください。

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

HSPは起立性調節障害になりやすい?

結論からいえば、HSPの特性を持つ子供が起立性調節障害になりやすいかどうかは、医学的に明らかになっていません。

HSPとODには、周囲から状態を理解されにくい、ストレスの影響を受ける場合があるといった共通点があります。ただし、HSPは気質を表す心理学的な概念であり、ODは身体疾患です。両者を同じものとして扱わないことが大切です。

HSPとは

HSPとは「Highly Sensitive Person」の略で、音や光、周囲の感情などの刺激を敏感に受け取りやすい人を表す言葉です。病名や医学的な診断名ではなく、感覚処理感受性と呼ばれる気質をもとにした心理学的な概念です。

米国の心理学者であるエレイン・N・アーロン博士によって提唱され、全人口の15〜20%、およそ5人に1人が当てはまると説明されることがあります。ただし、この割合はあくまで1つの目安であり、調査方法などによって異なります。

HSPには、次の4つの特徴があるとされ、それぞれの頭文字を取って「DOES」と呼ばれています。

「D:Depth of Processing」は、物事を深く考え、さまざまな情報を関連づけて処理する傾向を指します。周囲の状況を詳しく把握できる一方で、考える情報が多くなり、疲れを感じる場合があります。

「O:Overstimulation」は、音や光、人混みなど、周囲から多くの刺激を受けると圧倒されやすい傾向を指します。刺激の多い環境では、心身の疲労を感じやすくなることがあります。

「E:Emotional Response and Empathy」は、感情の反応が強く、他者の気持ちに共感しやすい傾向を指します。相手の気持ちを理解しやすい一方で、周囲の感情に影響を受ける場合もあります。

「S:Sensitivity to Subtleties」は、ほかの人が気づきにくい音や光、表情の変化など、わずかな刺激を察知しやすい傾向を指します。

これらの特徴には個人差があり、すべてが同じように現れるわけではありません。また、刺激を敏感に受け取ることは短所だけではなく、細かな変化に気づきやすいなどの長所につながることもあります。

HSP自体は病気ではありません。ただし、本人の特性と生活環境が合わず、強い負担が続いた場合は、不安や抑うつ、頭痛、腹痛などの心身の不調が現れることがあります。

起立性調節障害とは

一方、ODは、起立した際の血圧や心拍数などを調節する自律神経の働きがうまく機能せず、さまざまな症状が現れる身体疾患です。

自律神経は、血圧、脈拍、睡眠、体温、排尿、排便など、身体のさまざまな生理機能を調節しています。

寝ている状態から立ち上がると、重力によって血液が下半身へ移動します。健康な状態では、交感神経が血管を収縮させ、心拍数などを調節することで、血圧と脳への血流を保ちます。

ODではこうした循環調節がうまく働かないため、起床時や午前中を中心に、めまい、ふらつき、吐き気・嘔吐、腹痛、頭痛などの症状が現れます。身体が大きく成長する思春期に発症しやすい傾向があります。

HSPと起立性調節障害の違い

HSPは刺激の受け取り方に関する気質を表す概念ですが、ODは自律神経による循環調節の異常が関係する身体疾患です。HSPがODの直接的な原因になることや、HSPの子供がODを発症しやすいことは、医学的に証明されていません。

ただし、HSPの特性を持つ子供が、学校の人間関係や音、光などから強い負担を感じる場合は、ストレスや睡眠不足によってODの症状が悪化する可能性があります。

両者には、外見から状態が分かりにくく、周囲から理解されにくいという共通点があります。しかし、HSPの特性があることだけを理由に、めまいや起床困難などを気質の問題と判断しないことが大切です。

身体症状が続く場合は、HSPかどうかにかかわらず、小児科などの医療機関へ相談しましょう。

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

HSPと起立性調節障害の関係性

前述したように、HSPはあくまで気質であり病気ではありません。一方で、起立性調節障害は気質や精神疾患ではなくあくまで身体疾患であり、両者は全く別の存在です。

一方でHSPとODには共通点も多く、両者ともに通学に支障をきたしやすく、不登校の原因となりやすいです。また見た目に異常があるわけではないため、周囲から理解を得られにくい点も共通点の1つです。

HSPの場合、他の子供よりも過剰にストレスを感じやすく、それに伴い自律神経が乱れてしまうとODの症状を増悪させる可能性があるため、直接的な原因ではなくとも影響を与える可能性はあります。

しかし、ODだからと言ってHSPになるかといえば、そうではありません。HSPはあくまで生まれ持った気質であるため、ODが影響して後天的に気質がHSPに変化することは考えにくいです。

ストレスは起立性調節障害の直接的な原因とは限りませんが、症状に影響する可能性があります。起立性調節障害とストレスの関係について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。

HSPで起立性調節障害になった子どもへの接し方

HSPの特性を持つ子供が起立性調節障害を発症した場合、親御さんはどのように接すればよいのでしょうか。

大切なのは、すべての刺激から遠ざけることではなく、本人が負担に感じている刺激や状況を確認し、無理のない範囲で環境を調整することです。

刺激や人間関係への配慮

HSPの特性を持つ子供は、人間関係や周囲の感情を気にすることで、強い疲れを感じる場合があります。本人が安心して過ごせる人間関係を大切にし、無理に周囲の全員と仲良くするよう求めることは避けましょう。

学校での人間関係や環境が大きな負担になっている場合は、学校と相談した上で、一時的に休むことも選択肢の1つです。保健室登校や登校時間の調整など、本人の状態に合わせた方法も検討できます。

光を強く感じる場合は、照明を調整したり、必要に応じて帽子や光を抑える眼鏡などを使用したりする方法があります。就寝時に光が気になる場合は、遮光カーテンやアイマスクを使用するのもよいでしょう。

音が負担になる場合は、静かな場所へ移動する、耳栓やイヤーマフを使用するなどの方法があります。ただし、周囲の音が聞こえないことで危険が生じる場所では、使用方法に注意が必要です。

匂いが負担になる場合は、換気を行う、刺激の強い香料を避ける、必要に応じてマスクを使用するなど、本人に合った方法を検討しましょう。

子供の意思を尊重した接し方

HSPの特性を持つ子供は、周囲の表情や感情を細かく読み取り、自分の希望よりも相手の気持ちを優先してしまう場合があります。

親御さんが先に答えを決めるのではなく、「どうしたい?」「何がつらかった?」と尋ね、本人の気持ちや希望を確認することが大切です。

日頃から子供の言動を否定せず、安心して気持ちを話せる環境を整えましょう。ただし、すべてを受け入れなければならないということではなく、家庭でできることと難しいことを一緒に考えていくことが重要です。

ODで苦しむ子供を励まそうとして、「頑張れば学校へ行ける」「気にしすぎ」などと伝えると、本人の負担になる可能性があります。一方で、親御さんが先回りしてすべてを行うと、子供が自分で選択する機会を失う場合もあります。

子供との適切な距離を保ち、困っているときは手を差し伸べられるよう、普段の様子を見守りましょう。

HSPの特性には、細かな変化に気づきやすい、物事を深く考えられる、相手の気持ちを理解しやすいなどの長所もあります。苦手なことだけでなく、本人の得意なことや興味にも目を向けることが大切です。

本人が希望し、体調に無理がない場合は、簡単な家事など家庭内でできる役割を持つことで、達成感につながることがあります。ただし、役割を与えることを治療と考えたり、体調が悪いときにも無理に続けさせたりしないようにしましょう。

子供を励ますつもりでかけた言葉が、本人にとって負担になる場合もあります。起立性調節障害の子どもへの声のかけ方については、下記の記事も参考にしてください。

また、起立性調節障害の治療方法や家庭でできる対策については、下記の記事で詳しく解説しています。

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