起立性調節障害とは

起立性調節障害と発達障害の関係性|併発する可能性を解説

2023年5月20日

この記事の監修者

医師 錦惠那

医師 錦 惠那

内科一般・腎臓内科・透析科・産業医
保有資格:日本内科学会内科専門医・日本医師会認定産業医
2018年から起立性調節障害患者の診療を行い、累計30人以上の起立性調節障害患者を担当。

一般社団法人 起立性調節障害改善協会

起立性調節障害(OD)は小学校高学年から中学生で発症しやすい身体疾患であり、午前中や起床時に頭痛・ふらつき・めまい・嘔気嘔吐・腹痛などさまざまな症状をきたす疾患です。症状が辛いことで授業や通学など学業に支障をきたすことも稀ではありません。

一方で、発達障害とは広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)など、脳機能の発達に関係する障害であり、他者や周囲とのコミュニケーション能力に欠けてしまう疾患です。

発達障害の症状の1つに朝の起床困難や身体症状が挙げられることから、両者は症状が似ており、よく誤診されやすく、また実際にODに罹患する子供はなんらかの発達障害を併発しやすいことも知られています。

そこで、本記事ではODと発達障害の関係性について分かりやすく解説していきます。本記事を読むことで、ODと発達障害の関係や違いを理解し、適切な対処法を知っていただければ幸いです。

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起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

起立性調節障害は発達障害が原因?

起立性調節障害に罹患する子供は自閉症やADHDなどの発達障害を併発しやすいため、発達障害はODの原因なのでは?」と考える方も少なくありません。

結論から言えば、両者は病態の全く異なる別の病気であり、発達障害そのものが直接的にODの原因となる訳ではありません。しかし、実際に発達障害の子供がODに罹患しやすいという報告があるのも事実です。

この理由は、発達障害の子供が普通の子供よりもストレスを感じやすいことに起因していると考えられています。

そもそも、発達障害とは「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されています。

多くの発達障害でその病態が解明されているわけではありませんが、例えばADHDでは脳の前頭前野におけるドーパミン・ノルアドレナリン・セロトニン・GABAなどの機能不全であることが分かっています。

発達障害の主な症状として、コミュニケーション障害・対人関係や社会性の障害・強いこだわりやパターン化した動き・学習障害・言語の遅延・不注意・多動多弁などが挙げられます。

また、これらに付随して頭痛、腹痛、下痢、めまい、頻尿、夜間不眠などの身体症状も出現します。こういった症状の結果、発達障害を罹患した子供は日常生活の中で大きなストレスに晒されやすくなります。

例えば、周囲の子供ができていることが自分にはできない、周囲に足並みが揃えられないなど、日常生活に苦しさや生きずらさを感じてストレスを抱えてしまう子供も多く、そのストレスによってODの症状が悪化している可能性があります。

また、発達障害の子供は自身の睡眠リズムをコントロールする能力が未熟であり、約半数の子供で睡眠障害を併発すると言われています。

特に、体内時計が乱れることで不規則な睡眠や不揃いな覚醒を繰り返すことが知られており、身体的疲労の回復も損なわれます。これらの精神的ストレス・身体的ストレスの蓄積は自律神経の乱れを生み、ODの症状を悪化させる可能性があります。

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

起立性調節障害の原因

起立性調節障害とは、主に小学生高学年から中学生にかけて身体が急速に発達する際、自律神経の発達が身体の成長に追いつかず、脳血流が低下しやすい状態になることでさまざまな症状を来す疾患です。

脳は非常に虚血に弱い臓器であるため、本来であれば脳血流が低下した際は脳血流を維持するために交感神経が活性化し、全身の血管を収縮させたり、心臓の拍動を活性化させてより強くより早く鼓動させることで脳への血流を維持させようとします。

しかし、身体の急速な発達に伴い心臓と脳の距離が急速に離れるため、特に起立時は血液が重力に伴って下肢に多く取られ、脳血流が低下しやすくなります。ODでは、交感神経がうまく活性化してこないため、そのまま脳血流が低下することでさまざまな症状をきたします。

そのため、自律神経の乱れを誘発するような要因は避けるべきであり、乱れた食生活・不規則な睡眠など生活習慣の乱れ、精神的ストレス、女性ホルモンの変動などはODの発症の直接的な原因ではありませんが、症状を増悪させる一つの要因にはなります。

また、起立性調節障害の原因については下記記事で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。

起立性調節障害と発達障害が併発する可能性

発達障害の子供が起立性調節障害を併発する可能性は、正常な児童と比較して高いです。これまでの説明でもあったように、ODの発症にはストレスが関与しており、発達障害の子供はストレスをより感じやすいからです。

発達障害の子供がストレスを感じやすい理由は複数あり、その1つが「芸術系に興味が強い」点です。感受性が豊かなことが多く、日常でも他人の感情の変化から強くストレスを受ける傾向にあります。

また、周囲の人から注意を受けやすい点でもストレスが溜まりやすいです。何度も同じことで注意を受けたり、1つのことに集中できない、時間を守ることができない子供が多いため、つい親御さんや学校側から注意・叱責を受けることも少なくありません。

さらに、脳の機能障害によって物事の同時処理機能も低下しているため、複数の作業を同時に処理することも苦手です。例えば授業で先生の話を聞きながら、その内容をノートにメモすることも苦手で、それだけでストレスになってしまいます。

中学生ともなれば認知機能も成長しているため、周囲との能力の差を如実に実感してしまい、強く劣等感を感じてしまいます。その結果、人の倍努力しなくてはいけないと考え、神経疲労を起こします。

また、周囲とのコミュニケーション能力が低下しているため、仲間はずれや対人トラブルが発生しやすく、いじめなどの影響でストレスを感じることも少なくありません。

これらの理由から発達障害の子供はストレスが蓄積しやすく、その結果自律神経の乱れを引き起こしてしまい、ODが併発する可能性が高まります。

起立性調節障害と発達障害の関係

起立性調節障害と発達障害がよく誤診されやすい原因は、互いに出現する症状が比較的似ているからです。特に、朝の起床困難や身体症状、学業の遅れや不登校などがあげられます。

しかも、ストレスによって互いに症状が増悪する点でも共通しています。逆に、相違点としてはODは家の外では周囲に無理やり合わせるように過剰に適応しようとしますが、発達障害では逆に周囲に合わせることができないことで悩みます。

どちらの疾患であれ、子供の出来ない事や至らない点を無配慮に指摘してしまうと、ストレスをかけてしまい両方とも症状が悪化する可能性が高まるため、注意が必要です。

また、どちらの疾患も早期発見、早期治療が非常に重要となるため、親御さんは普段から子供の生活や行動をしっかりと観察しておく必要があります。

ODを治療する上では早期発見、早期治療が非常に重要です。特に、ODには特効薬などが存在しないため、時間をかけて非薬物療法を行う必要があります。

下記記事では、起立性調節障害の治し方についてさらに詳しく解説されているため、ぜひ参考にしてください。

【参考】
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

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