起立性調節障害とは

起立性調節障害でパニック障害を併発する可能性|治し方や主な症状を解説

2023年6月2日

この記事の監修者

医師(匿名)

医師歴:10年
勤務病院:某3次救急病院

一般社団法人 起立性調節障害改善協会

起立性調節障害(OD)は身体疾患ですが、朝の起床困難などの症状から、怠けや精神的な問題と誤解されることがあります。そのため、つい子供の生活態度を注意してしまう親御さんも少なくありません。

しかし、朝起きられないことはODの症状の1つであり、本人の意思だけで改善できるものではありません。症状を理解せずに叱ってしまうと、子供の心理的な負担を強める可能性があります。

一方、ODには機能性消化管障害、慢性疲労症候群、頭痛、睡眠障害などが併存することがあります。また、不安や抑うつなどの精神症状がみられることもあり、身体面と心理面の両方を確認することが大切です。

不安症の1つであるパニック症(パニック障害)を併存する可能性もあります。動悸、息苦しさ、めまい、ふらつきなど、ODと共通する症状が現れるため、症状だけでは見分けにくい場合があります。

そこで本記事では、ODとパニック障害の関係について分かりやすく解説します。両者を併存した場合の症状や治療について理解し、適切な対処につなげるための参考にしてください。

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

起立性調節障害でパニック障害を併発する可能性

結論からいえば、起立性調節障害の子供がパニック障害を併発する可能性はあります。ただし、両者の直接的な関係は十分に明らかになっていません。

両者の関係を考えるためには、それぞれの疾患の特徴を理解しておく必要があります。

起立性調節障害の特徴

ODとは、小学校高学年から中学生頃に発症しやすい身体疾患です。ただし、心理的・社会的なストレスが症状に影響することもあるため、精神的要因がまったく関係しないとは限りません。

ODでは、立ち上がったときの血圧や心拍数などを調節する自律神経の働きがうまく機能せず、脳への血流が一時的に低下しやすくなると考えられています。

自律神経とは、交感神経と副交感神経の総称であり、血圧、脈拍、睡眠、体温、排尿、排便など、さまざまな生理機能を調節しています。

健康な状態では、立ち上がったときに血液が下半身へ移動すると、交感神経が血管を収縮させ、心拍数などを調節することで血圧と脳への血流を保ちます。

一方、ODではこうした循環調節がうまく働かず、起床時や午前中を中心に、立ちくらみ、めまい、頭痛、倦怠感などの症状が現れます。

パニック障害の特徴

パニック症(パニック障害)とは、不安症に分類される精神疾患です。動悸、息苦しさ、発汗、ふるえ、めまいなどを伴うパニック発作を繰り返し、「また発作が起こるのではないか」という予期不安や、発作を避けるための行動によって日常生活に支障が生じます。

パニック障害の発症には、本人の体質や心理的要因、生活環境など、複数の要因が関係すると考えられています。単に精神的な弱さが原因となる病気ではありません。

また、パニック発作と似た症状は、不整脈、甲状腺機能亢進症、貧血などの身体疾患や、薬、カフェインなどの影響でも現れることがあります。そのため、動悸や呼吸困難などがみられる場合は、身体疾患がないか確認することも大切です。

パニック障害には、うつ病やほかの不安障害などが併存することもあります。ただし、すべての子供に併存するわけではなく、症状や経過には個人差があります。

起立性調節障害とパニック障害の関係

ODとパニック障害の直接的な関係は、十分に明らかになっていません。ただし、ODによる動悸や息苦しさ、めまいなどをきっかけに強い不安を感じたり、症状が再び起こることを恐れたりする場合があります。

また、ODによって学校生活や外出が難しくなると、心理的な負担が重なり、不安が強くなる可能性もあります。反対に、強い不安や睡眠不足などがODの症状に影響することも考えられます。

パニック障害は思春期以降にもみられ、ODが発症しやすい年代と重なる場合があります。ただし、ODの子供が必ずパニック障害を併発するわけではありません。

両者には共通する症状があるため、動悸やめまいがODによるものと決めつけず、発作が突然生じるか、予期不安や回避行動があるかなどを含めて評価することが大切です。

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

起立性調節障害でパニック障害を併発した場合の症状

前述したように、起立性調節障害では、起床時や午前中を中心に、めまい、ふらつき、吐き気・嘔吐、動悸、息切れ、起床困難、顔色不良、食欲不振、頭痛、臍疝痛などの症状が現れます。臍疝痛とは、主にへその周辺に生じる腹痛です。

一方、パニック障害を併存した場合は、動悸、息苦しさ、発汗、ふるえ、胸の痛み、吐き気、めまいなどを伴うパニック発作を繰り返すことがあります。

動悸は起立性調節障害とパニック障害のどちらでもみられることがあり、症状だけでは原因を判断できない場合があります。起立性調節障害で動悸が起こる原因については、下記の記事も参考にしてください。

パニック発作自体は、パニック障害だけにみられる症状ではありません。パニック障害では、「また発作が起こるのではないか」という予期不安が続いたり、発作を避けるために外出や特定の場所を避けたりすることがあります。

パニック発作による身体症状にはODと共通するものが多いため、パニック障害の併存に気づきにくい場合があります。

身体症状だけでなく、発作への強い不安や、外出・登校などを避ける行動がみられないか確認することも大切です。ただし、家庭で判断することは難しいため、気になる変化がある場合は医療機関へ相談しましょう。

起立性調節障害でパニック障害を併発した場合の治し方

起立性調節障害とパニック障害では治療方法が異なるため、それぞれの症状に応じた治療を行う必要があります。

起立性調節障害の治し方

起立性調節障害(OD)の治療では、本人と家族が病気について理解する疾病教育と、生活習慣の見直しなどの非薬物療法が基本となります。また、家庭だけでなく、学校と症状を共有し、必要な配慮を受けることも治療の一部です。

非薬物療法では、次のような対策を行います。

  • 医師の指示に従って水分や塩分を摂取する
  • 起き上がるときは、急に立たずゆっくり動く
  • 無理のない範囲で身体を動かし、長時間寝たままになることを避ける
  • 睡眠と起床のリズムを大きく乱さない

こうした対策によって、日々の症状を軽減できる場合があります。症状が改善するまでの期間には個人差があり、思春期を過ぎても症状が続くケースもあります。

一つの目安として、約90%は重症化せず、約10%が重症化すると説明されることもあります。ただし、重症化の割合は対象や基準によって異なるため、すべての子供に当てはまる数字ではありません。

非薬物療法を行っても症状が続く中等症以上のケースでは、病型や症状に応じて薬物療法を検討します。

また、不登校や強い不安などがみられる場合は、学校との連携や心理的な支援を組み合わせることもあります。

起立性調節障害の治療や家庭でできる対策については、下記の記事で詳しく解説しています。子供との接し方に悩んでいる親御さんも参考にしてください。

パニック障害の治し方

一方、パニック障害についても、本人と家族が病気の仕組みや発作について理解することが大切です。パニック発作の特徴を知ることで、発作に対する不安が和らぐ場合があります。

カフェインの取り過ぎによって、不安や動悸、睡眠の問題が強くなることがあります。コーヒーだけでなく、エナジードリンクや一部の清涼飲料にもカフェインが含まれているため、摂取量に注意しましょう。

規則正しい食事や睡眠、無理のない範囲での運動は、心身の状態を整える上で役立ちます。ただし、生活習慣の見直しだけでパニック障害が改善するとは限りません。

パニック発作や予期不安によって登校や外出が難しくなっている場合は、小児科や児童精神科、小児心身症を扱う医療機関などへ相談しましょう。胸の痛みや呼吸困難、失神などが初めて現れた場合は、パニック発作と決めつけず、身体疾患の確認も必要です。

パニック障害の治療では、症状に応じて薬物療法や認知行動療法などが行われます。抗うつ薬が使われることもありますが、薬の種類によっては立ちくらみや動悸などに影響する可能性があるため、ODを治療中であることを医師へ伝えましょう。

認知行動療法では、不安の捉え方や、発作を避ける行動などを見直していきます。治療方法は、年齢や症状、併存疾患などを踏まえて個別に検討されます。

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