起立性調節障害の医師・専門家がお役立ち情報をお届けします

起立性調節障害とは

起立性調節障害とは

起立性調節障害(OD)は中学生の1割に存在すると言われおり、小学生から大人まで誰もが疾患する可能性のある病気です。

しかし、見た目では分かりにくい病気のため、周囲から理解されず「ただのサボり癖では?」と思われることが多々あります。

まずは親御さん自身が起立性調節障害について理解し、目の前の現状をサボり癖や怠けと考えないことが大切です

関連記事:起立性調節障害とは?治し方や原因、症状、セルフチェックについて解説

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

起立性調節障害の原因

起立性調節障害は、自律神経系の異常に関連した異常であり、原因は明確に解明されていません。

しかし、自律神経のバランスを崩す原因としては、ストレスが大きく関与しており、また思春期においては身体の成長やホルモンバランスの変動などが関与することもあります。また、遺伝的な要因も考えられます。

小学生の起立性調節障害の原因

小学生の起立性調節障害の原因

クラス替えや学校での人間関係に馴染めない(友達や先生との関係性が作れない)など環境の変化に伴って、孤立してしまうなどの学校でのストレスは原因の一つとして考えられます。

また、成長が早い子供では、小学生の高学年から二次性徴が始まり、ホルモンバランスの大きな変化、身体の急激な成長が起立性調節障害の原因となる可能性があります。

中学生の起立性調節障害の原因

中学生の起立性調節障害の原因

二次性徴の真っ最中にあるため、この成長の過程で起立性調節障害を患う子供もいます。学校生活では、部活動に参加する子どもも増え、部活動での先輩後輩の人間関係に悩むことも一因になります。

また、学校生活以外にも受験勉強に向け塾に通う子供も多くなり、塾での人間関係や受験勉強へのプレッシャーなどが原因になる場合もあります。

高校生の起立性調節障害の原因

高校生の起立性調節障害の原因

二次性徴が終わる頃ではありますが、高校生低学年では依然ホルモンバランスや身体の成長が継続しており一因になります。

高校生になると、部活動や予備校での人間関係、受験・今後の人生を左右する選択へのプレッシャーなどが強くなる時期でもあります。徹夜で勉強をすることで睡眠時間が短くなってしまう場合もあり、複合的な要因で起立性調節障害を発症するリスクを秘めています。

大学生の起立性調節障害の原因

大学生の起立性調節障害の原因

大学生になると、様々な地域から集まった学生との人間関係が大きなポイントになります。

初めての一人暮らしを経験することもあるかもしれません。自分で自分の衣食住をコントロールする必要があり、慣れないことも多いかもしれません。外食が多くなったり、友人との飲み会などで食生活、睡眠の乱れが生じやすくなります。

また、バイトをする学生も多いですが、初めての労働、バイトでの人間関係や労働環境などにも注意が必要です。

大人の起立性調節障害の原因

大人の起立性調節障害の原因

子どもの頃に起立性調節障害に罹患したことがある場合や大人になり初めて起立性調節障害に罹患する場合など様々です。

大人で起立性調節障害を発症した場合、生活環境の変化、職場でのストレス、背景に別の疾患があるなどの原因を考えておく必要があります。仕事が忙しく、休息時間がない、睡眠時間の不足、食生活の乱れ、ストレスなどが複雑に関連し自律神経の調整のバランスが崩れやすい状態になってしまうリスクがあります。

また、別の疾患が隠れており、その関係で自律神経障害が見られる場合もあり注意が必要です。

関連記事:起立性調節障害の原因は?発症期間や発症しやすい人の特徴

起立性調節障害はいつ頃発症しやすいのか

起立性調節障害はいつ頃から発症しやすいのか

起立性調節障害は小学生高学年から中学生にかけてとくに多くみられる病気であり、いわゆる「思春期」と重なります。

この時期は体の機能や心のあり方が子供から大人へと変化してき、その変化が自律神経にまで及ぶため、交感神経と副交感神経のバランスが取りづらくなるのです。

小学生で約5%、中学生では約10%の子供が起立性調節障害の症状がでると言われています。やはり、身体・精神が急成長する中学1年から3年生にかけての時期に、最も起立性調節障害を発症しやすいと言えるでしょう。

発症してから1年後には約半数が、2〜3年後には約8割が回復すると言われていますが、重症の場合は大人になっても症状が残ることもあります。

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

起立性調節障害を発症しやすい人の特徴

起立性調節障害は自律神経系である交感神経と副交感神経のバランスが乱れることで様々な症状がみられる病気です。

自律神経の乱れを引き起こす原因である、ストレス、生活習慣の乱れの要素を多くもっている方に発症のリスクがあります。また、遺伝的な要素や体質も影響しています。

遺伝的要素や体質

起立性調節障害の方の約半数に遺伝の可能性が指摘されています。

また、自律神経の働きにも個人差があり、人により朝起き辛く、立ちくらみが起こりやすいということもあります。

水分・塩分摂取不足

水分と塩分は血圧の調整に大きくかかわっており、不足することで血管内を循環する血流が不足しやすく、立ちくらみなどの症状が起こりやすくなります。

心臓病や腎臓病など基礎疾患がある方は水分や塩分摂取を制限しましょう。

筋力(特に下肢)低下

下肢の筋力は立位になる際に、重力の影響で下肢に溜った血液を心臓に押し戻すための重要なポンプ機能をはたしています。

下肢の筋力が不足すると、下肢に溜った血液を心臓に押し戻すことができず、症状を来しやすくなります。

精神的なストレス

真面目な人、精神的なストレスを受けやすい/溜め込みやすい人は、自律神経の乱れが起こりやすくなります。

生活習慣の乱れ

栄養バランスの乱れ、過剰な間食、食事の時間が不規則、運動習慣がないなどの生活習慣の乱れは自律神経の乱れを招きます。バランスのとれた食事、適切な運動習慣を取り入れましょう。

また、睡眠の乱れも自律神経の乱れを引き起こします。十分な休養を取りましょう。

起立性調節障害の症状

起立性調節障害の主な症状

起立性調節障害とは、自律神経の調節がうまくいかなくなると引き起こる病気です。

自律神経には体を活動させるための「交感神経」と、体を休ませるための「副交感神経」の2種類があります。これらのバランスが崩れることで血液循環に問題が生じ、さまざまな症状を引き起こします。

起立性調節障害の主な症状は下記のとおりです。

  • 寝つきが悪い
  • 朝起きるのがつらい
  • 倦怠感がある
  • 食が細くなる
  • 立っていると気分が悪い
  • 立ちくらみがよく起こる
  • イライラしやすい
  • 集中力が続かない
  • 動悸や息切れがする
  • 失神発作を起こす
  • 乗り物酔いをする
  • 風邪をひいていないのに発熱する
  • 顔色が優れない、青白い
  • ストレスを感じると気分が悪くなる

このように、起立性調節障害にはさまざまな症状があります。複数項に当てはまり、他の病気の疑いがない場合は起立性調節障害の可能性が高いでしょう。

初期症状

起立性調節障害の初期症状

前述のように、起立性調節障害は小学生高学年から中学生にかけてよくみられます。前兆としては次のような症状・行動が挙げられます。

  • 以前と比べて朝起きるのがつらそう
  • 学校へ登校することに対して消極的になった
  • 午前中は倦怠感が強く、午後になると元気になる

起立性調節障害の初期症状はささいなものなので、見落としや誤解が起こりがちです。また、「健康な子供でも発症する可能性がある」ことを念頭に置かなければいけません。

小学生高学年から中学生にかけてのお子さんがいらっしゃる家庭では、症状・行動をつまびらかに観察し、起立性調節障害かどうかを早期段階で判明させることが重要です。

実は「親からのストレス」が起立性調節障害発症の原因になることも。知らずのうちにお子さんの起立性調節障害を発症・悪化させている可能性もあります。

 

小学生・中学生・高校生・大人別の症状

続いて、起立性調節障害の症状を小学生・中学生・高校生・大人と、成長別に見ていきましょう。

起立性調節障害の小学生・中学生・高校生・大人別の症状

小学生の症状

小学生では寝つきが悪い、早朝起きられない、午前中の倦怠感が強いなど身体的な症状が多くみられます。

とりわけ小学生高学年から身体的・精神的変化が起こるため、十分な観察が必要です。

中学生の症状

中学生となると精神的な変化も強くなるため、小学生時の症状に加えて自己肯定感が低くなったり、イライラしやすくなる傾向があります。

「単なる反抗期だろう」と誤解されることも多く、親との気持ちのすれ違いが症状を悪化させる原因になることも。

高校生の症状

高校生の場合では不登校に至るケースは少ないものの、午前中の授業に集中できず学力が著しく低下することがあります。

午前中は保健室へ行くことが多いお子さんを持つ方は、起立性調節障害を疑ってみましょう。

大人の症状

起立性調節障害は大人でも発症する病気です。

仕事のことを考えると気分が重くなる、しばしば遅刻をする、午前中は仕事に集中できない、日々の体調が安定しないなどの症状を感じている方は起立性調節障害かもしれません。

大人の起立性調節障害に関する記事はこちら

関連記事:起立性調節障害の症状を小中高生別に解説|重症・中等症・軽症の事例

起立性調節障害の重症・中等症・軽症の例

起立性調節障害の重症・中等症・軽症

重症

起立性調節障害が重症化すると学校を不登校になったり、日常生活を送るのが難しいほど体調を崩したりもします。

したがって、重症の場合はうつ病との鑑別が難しく、子供だからといって起立性調節障害と決めつけるのは早計です。

うつ病は脳内で情報をやり取りする際に必要な「神経伝達物質(ホルモン)」のバランスが崩れ、脳の働きに障害が問題が生じている状態です。

起立性調節障害とは違ったアプローチでの診療が必要になるため、適切な診断が欠かせません。

中等症

中等症の場合では強い倦怠感、立ちくらみなどがよく見られます。

早朝起きられず学校に遅刻するケースが多く、サボり癖や学校嫌いで済ませられてしまうことが大半なので注意しましょう。

軽症

軽症の場合、「早起きるのはつらいが何とか準備をして登校する」というお子さんが多くいます。

また、登校に対して積極的ではあっても、立ちくらみやめまいを起こす際は起立性調節障害を発症している可能性を考えましょう。

起立性調節障害の4つのタイプ

起立性調節障害には4つのタイプが確認されており、お子さんがどのタイプに分類されるかをしっかりと把握することが大切です。

起立性調節障害 軽症・中等症・重症別の4つのタイプ

起立直後性低血圧(きりつちょくごせいていけつあつ)

起立直後の低血圧から回復が遅れ、立ちくらみや失神を起こすタイプです。

横になっているときと比べて上の血圧が20mmHg以上、下の血圧が10mmHg以上下がる場合に診断されます。

体位性頻脈症候群(たいいせいひんみゃくしょうこうぐん)

立っていると心拍数が上がり、動悸や息切れ、めまい、ふらつき、頭痛などを起こすタイプです。

症状が悪化すると日常生活が困難になる人もいます。

神経調節性失神(しんけいちょうせつせいしっしん)

脳への血流をコントロールする神経がうまく働かず、起立後に血圧が急低下し失神を起こすタイプです。

人によっては食後や排尿時など、特定の行動下で起きることもあります。

遷延性起立性低血圧(せんえんせいきりつせいていけつあつ)

起立直後の血圧反応は正常でも、数分後以降に血圧が徐々に低下するタイプです。

失神に至るケースもあり、収縮期の血圧が15%以上低下する場合に診断されます。

起立性調節障害の診断方法・セルフチェック方法

「自分の子供が起立性調節障害かどうか把握したい」という方は、まずセルフチェックでの診断をおすすめします。

「子供が起立性調節障害がどうか分からない、知りたい」という方はぜひご一読ください。

関連記事:起立性調節障害のセルフチェックリスト(子ども)|すぐにできる診断テスト

 

関連記事:大人の起立性調節障害セルフチェック項目|診断テスト

 

起立性調節障害の治療法

起立性調節障害の治療法には、大きく分けて「薬物療法」と「非薬物療法」があります。

起立性調節障害の薬物療法

基本的には、「非薬物療法」で治療法してくことがメインとなります。

 

起立性調節障害の非薬物療法

非薬物療法には、下記の治療法が挙げられます。

  • 光療法
  • 飲水療法
  • 栄養療法
  • 運動療法

それぞれの治療法の詳細や、起立性調節障害の子供に親ができることは下記で紹介していますので、ぜひご覧ください。

 

また近年、起立性調節障害のサポートに「乳酸菌」が注目されています。乳酸菌を継続して摂取することにより、腸内環境や免疫システムの調整により体調が整う可能性があります。

現在、腸内環境と睡眠に関する研究が活発にされています。腸内環境と脳は相互に影響し合っており、睡眠調整に重要なセロトニンやメラトニンの生成にも関与しています。

乳酸菌により腸内環境を整えることで良質な睡眠を得ることができ、起立性調節障害の症状改善の一助になる可能性があります。

関連記事:【医師解説】起立性調節障害のサポートとして近年注目を浴びている乳酸菌-効率良く摂取する方法を解説

 

起立性調節障害の合併症

起立性調節障害の合併症

起立性調節障害の合併症として挙げられるのが不登校、集中力の著しい低下、睡眠障害、発達障害などです。

これに伴い学校での成績が低下したり、学校以外の部分でも行動が消極的になることがあります。

また、小学生高学年から高校生にかけての成長期では、起立性調節障害が長く続くことでうつ病を併発する恐れがあります。

うつ病の発症率は患者全体の約1割なので、10人に1人はうつ病を併発するということに。

思春期以後の女子は生理不順やPMS(月経前症候群)を併発するケースもあり、心身ともに辛い時期を過ごすことになります。

起立性調節障害が治った人の声

起立性調節障害が治った人の声をご紹介しています。治療方法は十人十色なので、色んな方の体験談をぜひご参考にされてください。

起立性調節障害が治った人の声

起立性調節障害の体験談

起立性調節障害は症状や経過が人によって異なるため、多くの体験談を知ることがみなさんの治療の糸口になるやもしれません。

下記記事では他の体験談についてよくまとめられています。ぜひ参考にしてみてください。

→起立性調節障害の体験談(全体)はこちら

起立性調節障害を光療法で克服した方の体験談

起立性調節障害の体験談(小学生)

起立性調節障害の体験談(中学生)

起立性調節障害の体験談(高校生)

起立性調節障害に関する調査結果

弊協会では、起立性調節障害で悩む方を対象に独自調査を行っております。

直近では2023年3月12日〜2023年3月24日に273名の方を対象としてアンケート形式による調査を行いました。

<調査項目>

  • 起立性調節障害に効果があった対策
  • 起立性調節障害を患っている方の登校頻度
  • 起立性調節障害を発症した時の年齢 等

調査結果は下記の「起立性調節障害の方へのアンケート結果」でご紹介していますので、ぜひご覧ください。

 

下記ページでは起立性調節障害に関する記事を数多く掲載していますので、ぜひご覧ください。

起立性調節障害に関する他の記事

 

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック
大人の起立性調節障害に関する記事はこちら

 

【参考文献】
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)
小児心身医学会ガイドライン集
起立性調節障害 対応ガイドライン(岡山県庁)
起立性調節障害ガイドライン(大分県版)