日中の眠気がくる一般的な原因を解説します。
◆睡眠不足
厚生労働省は健康づくりのための睡眠指針を発表しており、睡眠と健康状態の関連性が明記されています。また、日中の眠気は睡眠不足のサインであるとも明記されており、十分な睡眠時間を確保することは非常に重要です。
成人男性は7時間程度の睡眠時間が必要といわれていますが、必要な睡眠時間は、年齢とともに変化し、個人によっても大きく異なります。したがって、日中の活動状態を指標にして睡眠時間を決定することがすすめられます。
◆睡眠の質の低下
睡眠時間を十分に確保していても質が悪ければ体を十分に休めることはできません。睡眠の質の低下は睡眠時間の不足と共に生活習慣病のリスクにつながることも分かってきています。
睡眠の質が低下してしまうような習慣を無意識にしてしまっていませんか?
寝室の照明が明るい、寝室の温度が不適切、睡眠前の喫煙・飲酒やカフェインの摂取などは睡眠の質を低下させてしまうため、改善することが望ましいです。
◆自律神経の乱れ
私たちの体内には地球の自転周期である24時間に合わせて、体内の様々な機能を自然に調節する仕組みが備わっており、このことを体内時計と言います。特に睡眠に関しては、自律神経も大きく関連しています。
自律神経には交感神経と副交感神経があり、これら2つバランスにより体の様々な調整が行われています。これら2つの神経は常に同じ程度活性化しているわけではなく、日内変動があります。
朝起床頃より交感神経が優位になり、午後になると徐々に副交感神経の割合が増加していき、夜間には交感神経の働きは弱くなり、就寝が近くなる頃には副交感神経が優位に働き、睡眠中体を休めます。
したがって、自律神経のバランが崩れることで睡眠の周期が乱れてしまうことは十分にあります。上記以外にも、運動不足や日中に長時間眠ってしまう、睡眠前のスマホ操作など様々な原因が睡眠に影響を与えます。
次に、起立性調節障害の子どもが日中に眠気を訴える原因について解説します。上記でご説明した交感神経と副交感神経のバランスが乱れることが大きな原因です。
朝は交感神経がうまく活性化されないために体はなかなか覚醒状態にはなりません。朝起き上がることができず、起きたあともめまいやふらつき、吐き気など体調不良が続きます。
時間とともに交感神経の活性化も追いつき、症状は和らぎ、午後からの活動は特に問題ないことが多いです。しかし、遅れた交感神経の活性化は夜間へ続き、副交感神経の活性へのスイッチが遅れ、なかなか眠気が来ないのです。
したがって、夜はなかなか眠くならずにスマホやゲームなどで目がさえてしまい、朝なかなか起きあがることができず、睡眠の質も低下してしまうのです。
日中の眠気を解消する方法
対症療法としては、以下のものがあります。
・冷水で顔を洗ったり、首元を冷やす
・冷水やコーヒーを飲む
・ストレッチするなど体を動かす
・日光を浴びる
上記の方法でその時の眠気を一時的に解消することはできるかもしれませんが、何よりもまず、十分な睡眠時間、良質な睡眠をとることが最も重要です。特に下記のことには注意しましょう。
・睡眠時間は7時間以上。自分の日中の活動状況に合わせ適宜調整してみる
・睡眠前の喫煙・飲酒・カフェイン摂取を控える
・睡眠前のスマホ操作は制限する
・部屋を暗くし、寝室の温度を適温に調整する、寝具の見直しなど、睡眠環境を整える
・起床後は窓を開けて、日光を浴びる
・生活習慣を整える
特に、起立性調節障害の子どもの場合、起床時が一番の難関であるため、なかなか難しいのですが、定時に起床し、定時に就寝できるように少しずつ調整してみてください。
起き上がる際に症状が見られやすいため、この体調不良が精神的にも起きることへの不安につながりやすいです。したがって、別の記事でご紹介していますが、症状をなるべく抑えることができる起床の仕方や起こし方を心がける必要があります。
起床時の環境や体勢に気をつけ、必要時は薬物療法を導入することで起床時の苦痛を可能な限り軽減することが望ましいです。副交感神経の活性が遅れる夜間はなかなか眠くならず、ついついゲームやスマホを触ってしまいます。
しかし、スマホ画面から放たれるブルーライトは睡眠へ誘導するメラトニンの分泌を抑えてしまい、さらに睡眠を遠ざけてしまいます。
ストレスを避け、自律神経のバランスが乱れる原因を取り除くことも1日のリズム、睡眠サイクルに良い影響を与えます。規則正しい生活で良質な睡眠をとることが、日中の眠気対策への最も有効な手段です。
日中の眠気により授業を受けることができない、仕事ができない場合
起立性調節障害の好発年齢は小学生高学年~高校生であり、日中の眠気のために授業を受けることができないこともあると思います。また、大人でも起立性調節障害に罹患することはあり、大事な会議中に眠ってしまうなど、仕事ができない場合もあるかと思います。
冷水で顔を洗ったりすることで一時的に眠気が解消されればいいのですが、難しい場合は20分程度の仮眠をとることがすすめられます。厚生労働省により発表されました、健康づくりのための睡眠指針には、仮眠をとることによりその後の作業効率が上がることが記されています。
日中の強い眠気は起立性調節障害以外にも、睡眠時無呼吸症候群やうつ病、月経前症候群などの病気が隠れている可能性もあります。眠っている時の強いいびきや一時的な呼吸の停止、肥満である、食欲などの意欲の減退などがある場合は医療機関を受診することをおすすめします。
睡眠への悪影響が大きい場合、日中の眠気も強く、日常生活に支障を来すことも多いため、起立性調節障害の中でも重症に該当する可能性があります。
下記記事では「起立性調節障害の子供に対して親御さんができること」をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
【参考】
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)