- 「十分寝たはずなのに1日中眠いのはどうして?」
- 「ただの寝不足ではなく、ナルコレプシーかも?」
このような疑問を抱えている方も少なくないでしょう。
十分寝たつもりでも日中に眠くなる場合、慢性的な睡眠不足だけでなく、睡眠の質の低下、体内時計の乱れ、服用している薬、睡眠時無呼吸症候群など、さまざまな原因が考えられます。そのなかの一つが、ナルコレプシーをはじめとする中枢性過眠症です。
日中の強い眠気を放置すると、学業や仕事に支障をきたすだけでなく、運転中の交通事故や作業中の転倒・転落につながるおそれがあります。強い眠気を繰り返す場合は運転や危険を伴う作業を控え、必要に応じて医療機関へ相談することが大切です。
そこで、この記事ではナルコレプシーと寝不足の違いや、ナルコレプシーの原因・対処法などについて詳しく解説します。日中の眠気に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
日中の強い眠気が続き、朝起きられない、立ちくらみ、倦怠感などもみられる場合は、起立性調節障害が関係していることもあります。
気になる方は、起立性調節障害のセルフチェックも参考にしてください。

ナルコレプシーと寝不足の違いとは?
日中に眠気を感じることは誰にでもありますが、それが睡眠不足によるものなのか、ナルコレプシーなどの病気によるものなのかによって、必要な対処は異なります。
ただし、眠気の強さや睡眠時間だけでナルコレプシーかどうかを判断することはできません。睡眠不足やほかの睡眠障害などを除外したうえで、症状や検査結果を総合して診断する必要があります。
ここでは、ナルコレプシーと寝不足を見分ける際の主なポイントについて詳しく解説します。
十分に睡眠を取っても強い眠気が続く
ナルコレプシーと寝不足を見分けるポイントの一つは、必要な睡眠時間を確保した状態でも、日中の強い眠気が続くかどうかです。
睡眠不足による眠気であれば、必要な睡眠時間を確保することで軽減することがあります。一方、ナルコレプシーでは、十分な睡眠時間を確保していても、日中に耐え難い眠気や繰り返す居眠りが現れます。
ただし、必要な睡眠時間には個人差があり、「7時間以上寝ているから十分」と一律に判断することはできません。年齢や生活状況によっても適切な睡眠時間は異なります。
また、平均睡眠時間が7時間未満だからといって、ナルコレプシーの可能性を否定できるわけでもありません。まずは一定期間、睡眠日誌などに就寝時刻や起床時刻、昼寝、日中の眠気を記録し、実際に十分な睡眠を取れているか確認することが大切です。
睡眠の質だけでは判断できない
ナルコレプシーと寝不足は、睡眠の質だけで区別することもできません。
寝室の温度や湿度が合っていない、睡眠中に光や音などの刺激がある、寝具が身体に合っていない、就寝前に多量のアルコールを摂取しているといった場合は、睡眠が妨げられ、日中の眠気につながることがあります。就寝直前の激しい運動や熱い入浴、暴飲暴食などにも注意が必要です。
一方、ナルコレプシーでは、日中の強い眠気だけでなく、夜間に何度も目が覚めるなど、睡眠が分断される症状がみられることもあります。
睡眠環境や生活習慣を見直し、十分な睡眠を取っても日中の強い眠気が続く場合は、ナルコレプシーを含む睡眠障害の可能性を考え、医療機関へ相談しましょう。
一日中眠いときには、睡眠不足だけでなく、睡眠障害や服用している薬、身体的・精神的な病気などが関係している場合もあります。日中の眠気の原因について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。
眠気以外の症状
ナルコレプシーでは、日中の強い眠気に加えて、特徴的な症状を伴うことがあります。代表的な症状として、情動脱力発作(カタプレキシー)、睡眠麻痺、入眠時幻覚などが挙げられます。
情動脱力発作とは、笑いや驚き、怒りなどの感情の変化をきっかけに、突然、身体の筋肉から力が抜ける発作です。膝が崩れる、顎や首の力が抜ける、ろれつが回りにくくなるなど、症状の程度は人によって異なります。
発作中も通常は意識が保たれ、持続時間は数秒から数分程度で、2分以内に治まることが多いとされています。ただし、情動脱力発作はすべてのナルコレプシー患者にみられるわけではありません。
睡眠麻痺とは、いわゆる金縛りのことです。眠りに入るときや目覚めるときに、数秒から数分程度、身体を動かせなくなることがあります。
入眠時幻覚とは、眠りに入る際に、人影が見える、声や音が聞こえる、身体に何かが触れたように感じるなど、鮮明な夢のような体験をすることです。目覚める際に起こる場合もあります。
このうち情動脱力発作はナルコレプシータイプ1に特徴的な症状です。一方、睡眠麻痺や入眠時幻覚は、睡眠不足などでもみられることがあるため、これらの症状だけでナルコレプシーとは判断できません。
ナルコレプシーの原因
睡眠時間を確保していても、日中に我慢できないほどの眠気に襲われることがあるナルコレプシー。なぜ、そのような症状が現れるのでしょうか。
ナルコレプシーにはタイプ1とタイプ2があり、特にタイプ1では、覚醒を安定して維持する働きを持つオレキシン神経系の異常が深く関係していると考えられています。
ただし、なぜオレキシンを作る神経細胞が減少するのかなど、発症に至る仕組みは完全には解明されていません。遺伝的要因や免疫系の働き、環境的要因などが複合的に関与する可能性が指摘されています。
ここでは、現時点で考えられているナルコレプシーの発症要因について詳しく解説します。
オレキシン神経系の異常
ナルコレプシータイプ1の病態には、オレキシンを作る神経細胞の減少が深く関係していると考えられています。
オレキシンとは、脳の視床下部にある神経細胞から作られ、覚醒状態を安定して維持する働きを持つ神経伝達物質です。
これまでの研究では、情動脱力発作を伴うナルコレプシータイプ1の患者で、髄液中のオレキシン濃度が低下していることや、オレキシンを作る神経細胞が減少していることが報告されています。
なぜ、このような神経細胞の減少が起こるのかは完全には解明されていませんが、免疫系が誤って自身の神経細胞を攻撃する自己免疫反応が関係している可能性が考えられています。
一方、情動脱力発作を伴わないナルコレプシータイプ2では、髄液中のオレキシン濃度が正常である場合もあります。そのため、オレキシン濃度が低くないからといって、ナルコレプシーを完全に否定できるわけではありません。

遺伝要因
ナルコレプシーの発症には遺伝的要因の関与が挙げられます。一般的にナルコレプシーではヒト白血球抗原(HLA)のサブタイプであるDQB1*0602やDRB1*1501の陽性者が多く、遺伝的要因が認められます。
一方で、ほとんどの場合は孤発性であることが多く、遺伝性は約5%程度に過ぎないと言われており稀です。
実際に、過去の研究では家族歴のあるナルコレプシー患者77例で異常遺伝子を認めたのは1例のみであり、また一卵性双生児での一致率が約20%と低いことから、多くの場合は遺伝要因以外での発症の可能性が示唆されています。
環境要因
ナルコレプシーの発症には、遺伝的要因だけでなく、何らかの環境的要因が関係する可能性も指摘されています。
特にナルコレプシータイプ1では、遺伝的に発症しやすい人に、感染症などをきっかけとした免疫反応が加わり、オレキシンを作る神経細胞が減少するという考え方があります。
ただし、特定の感染症や生活環境が直接ナルコレプシーを引き起こすことが明らかになっているわけではありません。また、精神的ストレスがナルコレプシーそのものの原因になるとも断定できません。
発症に関わる詳しい仕組みについては、現在も研究が続けられています。
ナルコレプシーの対処法
ナルコレプシーは比較的若年期に発症する慢性疾患であるため、治療に使う薬剤は最小限に抑えつつ効果を得て、その上で副作用や薬物の依存形成を抑制することが重要です。
また、治療したとしても眠気を正常範囲に抑えることは困難であり、眠気による社会生活への不利益(仕事、学業の能率低下、運転等の危険性など)を最低限にとどめる水準を目指すことが目標となります。
ここでは、具体的な対処法について解説します。
生活習慣の見直し
ナルコレプシーは生活習慣の乱れだけで発症する病気ではありませんが、規則的な睡眠習慣を保つことは、日中の眠気を軽減するために重要です。
毎日の就寝時刻と起床時刻をできるだけ一定にし、夜間に必要な睡眠時間を確保しましょう。休日に起床時刻が大きくずれると、生活リズムが乱れ、眠気が強くなる場合があります。
午後の眠気を軽減するためには、昼休みなどに短時間の昼寝を取ることも有効です。症状や生活状況によっては、学校や職場の理解を得て、計画的に昼寝の時間を設けることも検討します。
カフェインによって一時的に眠気が軽くなる場合もありますが、摂取する時間帯や量によっては夜間の睡眠を妨げます。カフェインだけに頼らず、主治医と相談しながら取り入れましょう。
強い眠気を感じるときは、自動車や自転車の運転、高所での作業、機械を扱う作業などを控えることも大切です。
専門の医療機関を受診する
十分な睡眠時間を確保しても日中の強い眠気が続き、学校や仕事、日常生活に支障が出ている場合は、睡眠障害を専門とする医療機関へ相談しましょう。
日中の眠気は、ナルコレプシーだけでなく、慢性的な睡眠不足、概日リズム睡眠・覚醒障害、睡眠時無呼吸症候群、睡眠関連運動障害、薬の影響などでも起こります。まずは問診や睡眠日誌などによって睡眠状況を確認し、ほかの原因との鑑別を行う必要があります。
ナルコレプシーが疑われる場合は、反復睡眠潜時検査(multiple sleep latency test:MSLT)が行われます。MSLTは、日中にどの程度早く眠るか、入眠直後にレム睡眠が現れるかなどを調べる検査で、日本では2008年から保険適用となっています。
通常はMSLTの前夜に、終夜睡眠ポリグラフ検査(polysomnography:PSG)を行います。PSGでは、睡眠段階、呼吸状態、心拍、身体の動きなどを記録し、睡眠時無呼吸症候群をはじめとするほかの睡眠障害がないか確認します。
これらの検査を実施できる医療機関は限られています。受診先を探す際は、日本睡眠学会の認定医療機関一覧などを参考にするとよいでしょう。
薬物療法
診断がついた後は、眠気に対しての薬物療法が有効です。日中の過眠症状に対してはモダフィニル・ぺモリン・メチルフェニデートなどの薬剤が有効であり、特にモダフィニルは第一選択です。
またカタプレキシーに対しては、レム睡眠を抑制する効果のあるクロミプラミンが保険適用として認められています。夜間の睡眠分断の対応としては、ベンゾジアゼピン系薬剤や非ベンゾジアゼピン系薬剤を就寝前投与する場合があります。
一方で、上記の薬剤はあくまで根治的な治療ではなく対症療法であり、中断すると元の眠気水準に戻ってしまうことには留意すべきです。
もしかしたら起立性調節障害かも
日中の眠気や朝起きられない症状がある場合、起立性調節障害が関係している可能性もあります。
起立性調節障害とは、立ち上がったときの血圧や心拍数など、循環器系を調節する働きがうまく機能しないことで、さまざまな症状が現れる身体疾患です。思春期の子どもに多くみられますが、大人でも症状が続いたり、新たに発症したりすることがあります。
主な症状には、朝起きられない、午前中に調子が悪い、立ちくらみ、めまい、倦怠感、頭痛、動悸、吐き気などがあります。午前中に症状が強く、午後から少しずつ調子がよくなることがある点も特徴です。
起立性調節障害では、生活リズムの乱れや睡眠の問題を伴い、日中の眠気が現れる場合もあります。ただし、日中の強い眠気は起立性調節障害だけにみられる症状ではなく、ナルコレプシーなどの中枢性過眠症や睡眠不足、ほかの睡眠障害との区別が必要です。
子どもの起立性調節障害は、成長に伴って症状が軽減する場合もありますが、症状の程度や経過には個人差があります。重症の場合は、通学や学業、進学などに影響が出ることもあるため、症状が続いている場合は、セルフチェックだけで判断せず、必要に応じて医療機関へ相談しましょう。
大人の場合も、症状によって仕事や日常生活に支障が出ることがあります。朝起きられない症状に加えて、立ちくらみや倦怠感などが続く場合は、起立性調節障害の可能性も含めて医療機関へ相談することが大切です。
通常は子供に多い病気ですが、起立性調節障害は大人でも発症しうる病気です。 下記の記事で大人の方もセルフチェックしてみましょう。







