「私の子供、もしかして起立性調節障害かも?」
中学生の1割に存在すると言われている起立性調節障害(OD)。
これは小学生から大人まで、誰もが疾患する可能性のある病気です。
しかし、見た目では分かりにくい病気のため、周囲から理解されず「ただのサボり癖では?」と思われることが多々あります。
まずは親御さん自身が起立性調節障害について理解し、目の前の現状をサボり癖や怠けと考えないことが大切です。
本記事では起立性調節障害の症状について紹介するので、少しでも心配があればお子さんの症状と照らし合わせながら読み進めてみてください。
起立性調節障害の主な症状や特徴
起立性調節障害とは、自律神経の調節がうまくいかなくなると引き起こる病気です。
自律神経には体を活動させるための「交感神経」と、体を休ませるための「副交感神経」の2種類があります。
これらのバランスが崩れることで血液循環に問題が生じ、さまざまな症状を引き起こします。
主な症状
・寝つきが悪い
・朝起きるのがつらい
・倦怠感がある
・食が細くなる
・立っていると気分が悪い
・立ちくらみがよく起こる
・イライラしやすい
・集中力が続かない
・動悸や息切れがする
・失神発作を起こす
・乗り物酔いをする
・風邪をひいていないのに発熱する
・顔色が優れない、青白い
・ストレスを感じると気分が悪くなる
このように、起立性調節障害にはさまざまな症状があります。
複数項に当てはまり、他の病気の疑いがない場合は起立性調節障害の可能性が高いでしょう。
主な特徴
起立性調節障害は小学生高学年から中学生にかけてとくに多くみられる病気であり、いわゆる「思春期」と重なります。
この時期は体の機能や心のあり方が子供から大人へと変化してき、その変化が自律神経にまで及ぶため、交感神経と副交感神経のバランスが取りづらくなるのです。
小学生で約5%、中学生では約10%の子供が起立性調節障害の症状がでると言われています。
やはり、身体・精神が急成長する中学1年から3年生にかけての時期に、最も起立性調節障害を発症しやすいと言えるでしょう。
発症してから1年後には約半数が、2〜3年後には約8割が回復すると言われていますが、重症の場合は大人になっても症状が残ることもあります。
小学生・中学生・高校生・大人別の症状
続いて、起立性調節障害の症状を小学生・中学生・高校生・大人と、成長別に見ていきましょう。
小学生の症状
小学生では寝つきが悪い、早朝起きられない、午前中の倦怠感が強いなど身体的な症状が多くみられます。
とりわけ小学生高学年から身体的・精神的変化が起こるため、十分な観察が必要です。
中学生の症状
中学生となると精神的な変化も強くなるため、小学生時の症状に加えて自己肯定感が低くなったり、イライラしやすくなる傾向があります。
「単なる反抗期だろう」と誤解されることも多く、親との気持ちのすれ違いが症状を悪化させる原因になることも。
高校生の症状
高校生の場合では不登校に至るケースは少ないものの、午前中の授業に集中できず学力が著しく低下することがあります。
午前中は保健室へ行くことが多いお子さんを持つ方は、起立性調節障害を疑ってみましょう。
大人の症状
起立性調節障害は大人でも発症する病気です。
仕事のことを考えると気分が重くなる、しばしば遅刻をする、午前中は仕事に集中できない、日々の体調が安定しないなどの症状を感じている方は起立性調節障害かもしれません。
起立性調節障害は症状に合わせて適切な治療を施すことが大切です。
具体的な治療方法については、以下の記事をご確認ください。
起立性調節障害 4つのタイプ
起立性調節障害には4つのタイプが確認されており、お子さんがどのタイプに分類されるかをしっかりと把握することが大切です。
起立直後性低血圧(きりつちょくごせいていけつあつ)
起立直後の低血圧から回復が遅れ、立ちくらみや失神を起こすタイプです。
横になっているときと比べて上の血圧が20mmHg以上、下の血圧が10mmHg以上下がる場合に診断されます。
体位性頻脈症候群(たいいせいひんみゃくしょうこうぐん)
立っていると心拍数が上がり、動悸や息切れ、めまい、ふらつき、頭痛などを起こすタイプです。
症状が悪化すると日常生活が困難になる人もいます。
神経調節性失神(しんけいちょうせつせいしっしん)
脳への血流をコントロールする神経がうまく働かず、起立後に血圧が急低下し失神を起こすタイプです。
人によっては食後や排尿時など、特定の行動下で起きることもあります。
遷延性起立性低血圧(せんえんせいきりつせいていけつあつ)
起立直後の血圧反応は正常でも、数分後以降に血圧が徐々に低下するタイプです。
失神に至るケースもあり、収縮期の血圧が15%以上低下する場合に診断されます。
起立性調節障害 重症・中等症・軽症別の症状
重症
起立性調節障害が重症化すると学校を不登校になったり、日常生活を送るのが難しいほど体調を崩したりもします。
したがって、重症の場合はうつ病との鑑別が難しく、子供だからといって起立性調節障害と決めつけるのは早計です。
うつ病は脳内で情報をやり取りする際に必要な「神経伝達物質(ホルモン)」のバランスが崩れ、脳の働きに障害が問題が生じている状態です。
起立性調節障害とは違ったアプローチでの診療が必要になるため、適切な診断が欠かせません。
中等症
中等症の場合では強い倦怠感、立ちくらみなどがよく見られます。
早朝起きられず学校に遅刻するケースが多く、サボり癖や学校嫌いで済ませられてしまうことが大半なので注意しましょう。
軽症
軽症の場合、「早起きるのはつらいが何とか準備をして登校する」というお子さんが多くいます。
また、登校に対して積極的ではあっても、立ちくらみやめまいを起こす際は起立性調節障害を発症している可能性を考えましょう。
起立性調節障害 初期症状
前述のように、起立性調節障害は小学生高学年から中学生にかけてよくみられます。
前兆としては次のような症状・行動が挙げられます。
・以前と比べて朝起きるのがつらそう
・学校へ登校することに対して消極的になった
・午前中は倦怠感が強く、午後になると元気になる
起立性調節障害の初期症状はささいなものなので、見落としや誤解が起こりがちです。
また、「健康な子供でも発症する可能性がある」ことを念頭に置かなければいけません。
小学生高学年から中学生にかけてのお子さんがいらっしゃる家庭では、症状・行動をつまびらかに観察し、起立性調節障害かどうかを早期段階で判明させることが重要です。
実は「親からのストレス」が起立性調節障害発症の原因になることも。
知らずのうちにお子さんの起立性調節障害を発症・悪化させている可能性もあります。
以下の記事では起立性調節障害の原因について詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
起立性調節障害の合併症
起立性調節障害の合併症として挙げられるのが不登校、集中力の著しい低下、睡眠障害、発達障害などです。
これに伴い学校での成績が低下したり、学校以外の部分でも行動が消極的になることがあります。
また、小学生高学年から高校生にかけての成長期では、起立性調節障害が長く続くことでうつ病を併発する恐れがあります。
うつ病の発症率は患者全体の約1割なので、10人に1人はうつ病を併発するということに。
思春期以後の女子は生理不順やPMS(月経前症候群)を併発するケースもあり、心身ともに辛い時期を過ごすことになります。
起立性調節障害の診断方法・セルフチェック方法
「自分の子供が起立性調節障害かどうか把握したい」という方は、まずセルフチェックでの診断をおすすめします。
心療内科等を診察した場合も、まずは起立性調節障害に該当する症状・行動があるかどうかを確認されるため、セルフチェックで大方の判断は下せるのです。
下記の基礎疾患がある場合、症状の原因が起立性調節障害ではない可能性も考えられるため、除外できるものは除外しておきましょう。
・鉄欠乏性貧血・心疾患・てんかんなどの神経疾患
・副腎・甲状腺など内分泌疾患
起立性調節障害のセルフチェックに関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
「子供が起立性調節障害がどうか分からない、知りたい」という方はぜひご一読ください。
【参考】
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)