子供の貧血は、血液中の赤血球やヘモグロビンが不足し、体全体に酸素を十分に運べなくなる状態を指します。成長期の子供は体が急速に大きくなるため、鉄分や栄養素の需要が高まり、特に鉄欠乏性貧血が多く見られます。
主な原因には、食事からの鉄分不足、吸収不良、慢性的な出血などがあります。症状としては、顔色が悪い、疲れやすい、息切れ、集中力の低下などがあり、軽度では気づきにくいことも少なくありません。放置すると学習や運動能力に影響する可能性もあるため、早めの対応が大切です。
治療には原因の特定と改善が必要で、食事内容の見直しや鉄分を多く含む食品(赤身肉、魚、ほうれん草など)の摂取が基本となります。必要に応じて医師の指示で鉄剤を服用することもあります。正しい知識と生活習慣の工夫で、多くの場合は改善が可能です。
こちらの記事では子どもの貧血の治し方について、おすすめの食べ物、やってはいないことを中心にお話していきます。
子どもの貧血の治し方とは?
「子どもの貧血の治し方」を、わかりやすく 5つの方法 に分けて解説します。
原因をしっかり特定する
どの症状、疾患に対しても言えることですが、まず「なぜ貧血になったのか」を突き止めることから始まります。
子どもの場合、最も多いのは鉄欠乏性貧血ですが、吸収不良や慢性の出血、まれに遺伝性疾患が原因の場合もあります。原因によって治療方法が異なるため、自己判断で鉄剤を飲ませるのではなく、小児科を受診して正確な診断を受けることが重要です。
特に成長期は体の需要が高く、軽度の貧血でも進行しやすいので、早期発見と原因特定が改善の第一歩です。
鉄分を多く含む食事に切り替える
鉄欠乏性貧血では、食事改善が基本になります。鉄には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」があり、吸収率が高いのはヘム鉄です。赤身の肉やレバー、マグロ・カツオなどの魚に多く含まれています。
非ヘム鉄はほうれん草、小松菜、大豆製品などに含まれ、ビタミンCと一緒に摂ると吸収が良くなります。貧血改善に効果的な食べ物については、第2項で詳しくお話しますのでそちらをご確認ください。
鉄剤やサプリメントの適切な活用
食事だけでは不足分を補えない場合、医師の指示で鉄剤や鉄分サプリを使用することがあります。鉄剤は通常2〜3か月の服用が必要で、血液検査で改善を確認しながら続けます。
途中でやめると再び貧血になることもあるため、指示された期間を守ることが大切です。服用中は便が黒くなる、軽い胃腸症状が出る場合がありますが、多くは一時的です。自己判断で量を増減させず、医師の指示に従って、用法用量を正しく守りましょう。
栄養バランス全体の見直し
鉄だけでなく、貧血改善には赤血球の材料となる栄養素が総合的に必要です。たとえば、ビタミンB12や葉酸は赤血球の生成を助け、タンパク質はヘモグロビンの材料になります。卵、魚、乳製品、緑黄色野菜、豆類などをバランスよく組み合わせることが重要です。
また、過度な偏食や食事量不足は鉄だけでなく他の栄養素の不足にもつながり、回復を遅らせます。成長期は1日のエネルギー消費量が多いため、3食きちんと食べ、間食も栄養補助として上手に活用すると良いでしょう。
生活習慣の改善と再発予防
十分な睡眠と適度な運動は、体の回復力を高めます。睡眠不足や過度な疲労は貧血を悪化させることがあるため、年齢に応じた睡眠時間を確保しましょう。
また、屋外での軽い運動は血流を促し、食欲の増進にもつながります。定期的な健康診断や学校の検診で貧血の有無を確認し、早期に対応することが予防になります。特に思春期の女の子は月経による鉄損失が増えるため、日常的に鉄分を意識した食事を心がけることが大切です。
子どもの貧血を治すためにおすすめの食べ物
貧血を改善させるために効果的な食べ物を3つご紹介します。
赤身の肉(牛肉・豚肉)
赤身の肉は、吸収率の高い「ヘム鉄」を豊富に含む代表的な食品です。鉄は赤血球の材料となり、酸素を全身に運ぶ役割を担います。特に牛もも肉や豚ヒレ肉などの赤身部分は脂肪が少なく、鉄分とタンパク質を効率的に摂取できます。
鉄はビタミンCと一緒に摂ると吸収がさらに高まるため、付け合わせにブロッコリーやパプリカ、キャベツなどの野菜を組み合わせるのがおすすめです。ハンバーグや肉じゃが、しょうが焼きなど、子どもが食べやすいメニューに工夫すると続けやすくなります。赤身の肉は成長期の筋肉や骨の発達にも必要な栄養を含むため、貧血予防と体力づくりの両方に役立ちます。
レバー(鶏・豚・牛)
レバーは鉄分含有量が非常に高く、貧血改善効果が期待できる食品です。特に鶏レバーはくせが少なく、煮物や炒め物、ペースト状にしてパンに塗るなどアレンジがしやすいのが特徴です。
また、鉄だけでなくビタミンB12や葉酸、ビタミンAも豊富に含まれ、赤血球の生成を助ける栄養の宝庫です。ただし、独特の風味や食感を苦手とする子どもも多いため、牛乳や生姜、にんにくなどで下処理して臭みを和らげるのがポイントです。
過剰摂取はビタミンA過剰症のリスクがあるため、週1〜2回程度を目安に取り入れると良いでしょう。レバーは少量でも効率よく鉄を補える、貧血対策の強い味方です。
小松菜
小松菜は、野菜の中でも鉄分が多く含まれるうえ、カルシウムやビタミンCも豊富です。ビタミンCは非ヘム鉄の吸収を高めるため、小松菜自体が鉄の吸収を助ける成分を持っている点が魅力です。
ほうれん草よりアクが少なく、下茹でなしで味噌汁や炒め物、スムージーにも使えるので、日常的に取り入れやすい野菜です。卵と炒めたり、ツナや油揚げと一緒に煮びたしにすることで、タンパク質や油分が加わり栄養の吸収率がアップします。
冷凍保存も可能で、一年を通して手に入れやすいため、忙しい家庭でも活用しやすい食材です。毎日の食卓に少しずつ取り入れることで、継続的な鉄補給が可能になります。
この3つを組み合わせると、鉄の種類や吸収効率の面でバランスが取れ、より効果的に子どもの貧血改善につながると考えます。
子どもの貧血を治す上でやってはいけないNG行動
こちらでは、子どもの貧血を治す上でやってはいけないNG行動を3つ解説します。
自己判断で鉄剤やサプリを与える
子どもの貧血の多くは鉄欠乏性ですが、中には吸収不良や慢性疾患、遺伝性の病気が原因の場合もあります。自己判断で鉄剤やサプリメントを与えると、必要のない鉄を過剰摂取してしまい、便秘や胃腸障害、まれに鉄中毒などの健康被害を招く恐れがあります。
また、鉄剤は一定期間継続しないと効果が出ませんが、服用中断や過量摂取は症状悪化につながります。必ず小児科で血液検査を受け、原因に合った治療方針を医師と相談することが大切です。市販の鉄サプリは大人用が多く、子どもには適さない成分や含有量の場合もあるため、独断で与えることは避けましょう。
偏った食事や極端な食事制限
「鉄を多く含む食品だけ食べればよい」と考えて、極端にメニューを偏らせるのは危険です。鉄だけでなく、ビタミンB12、葉酸、タンパク質など複数の栄養が赤血球の生成に関わっており、これらが不足すると改善が遅れます。特に子どもは成長期のため、栄養バランスが崩れると身長や体重の発育にも影響が出ます。
また、無理なダイエットや糖質制限もエネルギー不足を招き、体力低下や免疫力低下につながります。貧血改善には「鉄+吸収を助ける栄養+全体のバランス」が重要です。毎食で肉・魚・卵・豆・野菜・主食を組み合わせるよう心がけましょう。
症状が軽いからと放置する
貧血の初期症状は「顔色が悪い」「疲れやすい」など軽く見えるため、放置されやすい傾向があります。しかし、酸素不足の状態が続くと脳や筋肉の発達、集中力、持久力に悪影響を及ぼします。
特に学童期は学習面、思春期は運動や月経などで鉄の需要が増え、知らないうちに症状が進行することがあります。見た目だけで判断せず、学校健診や定期的な血液検査で早期発見を心がけましょう。また、一度改善しても再発することがあるため、治療終了後も鉄分を意識した食事や生活習慣を続けることが重要です。
もしかしたら起立性調節障害かも
子どもの貧血だと思っていたら、実は「起立性調節障害」だったというケースも少なくありません。
貧血の症状としてよく見られるものに、顔色が悪い、疲れやすい、息切れ、集中力の低下などがあますが、これらの症状は起立性調節障害でも見られる症状なので、見分けが難しいことがあります。
起立性調節障害は自律神経である交感神経と副交感神経の働きがうまく調整できず、立ち上がったときに血圧や心拍が適切に保てないことで、めまい、立ちくらみ、動悸、頭痛、倦怠感などが起こる病気です。特に朝起きられない、午前中に調子が悪く、午後には症状が改善するといった特徴があります。
鉄分を摂っても改善しない、血液検査で異常がない場合は、起立性調節障害の可能性を考えることが大切です。原因が異なるため、治療や生活改善の方法も貧血とは変わってきます。お子さんの体調不良が続いている場合、まずは医療機関で相談するとともに、日常の症状を振り返ることが早期発見につながります。
以下の記事では、起立性調節障害のセルフチェックに関して詳しく解説していますので是非参考にしてみてください。