起立性調節障害とは

食欲がない原因とは?治し方・考えられる病気について解説

2023年4月23日

この記事の監修者

医師 錦惠那

医師 錦 惠那

内科一般・腎臓内科・透析科・産業医
保有資格:日本内科学会内科専門医・日本医師会認定産業医
2018年から起立性調節障害患者の診療を行い、累計30人以上の起立性調節障害患者を担当。

一般社団法人 起立性調節障害改善協会

 

  • 胃腸がムカムカして食欲が湧かない
  • なんとなくぐったりしていて食欲がない

誰しもが一度はこのような症状を経験したことがあるのではないでしょうか?

食欲の低下は栄養不足を招き、特に育ち盛りの子供の場合は身体や精神の成長を妨げてしまう可能性もあります。

また、大人でも仕事に力が入らず日常生活に支障をきたします。そのため、食欲の低下を認めた場合は早期に原因を発見し、適切な対策を施す必要があります。

特に、食欲の低下を招く病気の中には脳の病気や甲状腺機能の異常など、重篤な病気の可能性もあります。また起立性調節障害(OD)と呼ばれる身体疾患や摂食障害などの精神疾患などさまざまな病気で起こりうる症状です。

そこで、本記事では食欲低下について分かりやすく解説していきます。本記事を読むことで、食欲の低下を生じる原因や病態を理解し、適切な対処法を知っていただければ幸いです。

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

食欲がない原因

食欲が低下する原因は非常に多岐に渡ります。そもそも人間の食欲は脳の視床下部に存在する摂食中枢と満腹中枢によってコントロールされていて、摂食中枢が刺激されると空腹感を自覚し食欲が増進します。

その一方で、満腹中枢が刺激されると空腹感が減退し食欲も低下します。例えば美味しそうな物を見たり、美味しそうな匂いを嗅ぐと、摂食中枢が刺激されるため食欲が湧き、空腹感を自覚します。

しかし、摂食中枢や満腹中枢はさまざまな刺激に影響されます。特に、胃腸や食道はもちろん、肝臓や心臓、肺、脳など、ほとんどの内臓のコンディションによって両中枢は影響を受け、食欲が増進・減退します。

そのため、ちょっとした胃腸のトラブルや、感冒による発熱などでも摂食中枢が抑制され、食欲は低下してしまうのです。また、器質的な病気ではなくても、精神的なストレスによって摂食中枢が抑制されることもあります。

では、食欲の低下を引き起こした場合、具体的にどのような疾患を疑うべきなのでしょうか?

食欲がない場合に考えられる病気

食欲がない場合に考えられる病気について解説していきます。

急性胃腸炎

最も代表的な病気として、急性胃腸炎が挙げられます。急性胃腸炎とは、口から侵入した病原菌によって胃や腸に炎症が引き起こる病気です。特に、胃の炎症が強いと嘔気が出現しやすく、食欲は低下しやすくなります。

食欲低下の原因は、胃や腸の炎症が摂食中枢を抑制するためです。他にも、胃酸が胃から食道へ逆流してしまう逆流性食道炎と呼ばれる病気では、逆流した胃酸が食道に炎症を引き起こし、食欲低下を招く原因となります。

どちらも適切な治療を行えば早期に改善可能な疾患ですが、頻回な嘔吐を繰り返す場合は脱水に陥る可能性が高く、早期に医療機関に受診することをおすすめします。

甲状腺機能低下症

次に、甲状腺機能低下症と呼ばれる病気が挙げられます。そもそも甲状腺とは甲状腺ホルモンを分泌する内分泌系の器官であり、甲状腺ホルモンには代謝の活性化や心身の成長を促す作用があります。

しかし、体内の免疫細胞が自身の甲状腺の細胞を異物とみなし、甲状腺に対する自己抗体が生成され甲状腺の細胞が破壊され、甲状腺機能が低下する橋本病に罹患する可能性があります。

橋本病の場合、甲状腺ホルモンの分泌が減少し、食欲の低下や成長の遅れ、体重増加、疲労、便秘、硬い乾いた毛、乾燥した厚いざらざらの皮膚など多彩な症状が出現します。

脳腫瘍

次に、脳腫瘍などの脳神経系疾患が挙げられます。脳は硬い頭蓋骨に囲まれた臓器であり、内部に出血や腫瘍、炎症が生じると圧の逃げ場がなくなってしまい、脳そのものが圧迫されてしまいます。

その結果、摂食中枢や嘔吐中枢に影響を及ぼし、悪心嘔吐などの症状や食欲低下などを認めるようになります。また、これらの脳神経系疾患は緊急性が高く早期の治療が必要となるケースが多いため注意が必要です。

うつ病

次に、うつ病が挙げられます。うつ病は中高年のみならず、小学生や中学生でも発症しうる精神疾患です。「精神疾患=気持ちの問題」と考えてしまう人もいますが、そうではありません。

うつ病の場合、すでにその病態はある程度解明されており、脳内におけるセロトニンやノルアドレナリンなどの分泌低下が病態と考えられています。これによって、ストレスなどを処理しきれなくなり、食欲の低下などさまざまな精神症状をきたします。

また、ストレスを強く感じると自律神経が乱れてしまい、腸の蠕動運動に必要な副交感神経が抑制されてしまうため、胃腸にも負担がかかり摂食中枢が抑制されて食欲が低下することもあります。

妊娠

次に、女性の吐き気の原因として妊娠が挙げられます。妊娠に伴う女性ホルモンのバランス変動によって食欲低下が誘発されます。

特に、妊娠中に多く分泌されるプロゲステロンと呼ばれる女性ホルモンが消化管の運動を抑制し、消化不良を引き起こすことが原因と考えられます。

また、妊娠が進むと大きくなった子宮が直接胃を圧迫することで食欲が低下することもあります。

摂食障害

最後に、摂食障害が挙げられます。特に若い方は発症しやすい病気で、自分の体重や体型の感じ方が障害され、明らかに痩せていても、それを異常と感じることができなくなります。

いくつかの病型があり、中には食事制限の反動として過食する方もいます。その場合、嘔吐や下剤の大量使用などにより体重が増えるのを防ぎます。つまり、必ずしも食欲が低下するわけではありません。

しかし、症状が進行して栄養不足が進むと、精神面にも変化を及ぼし、食欲低下を引き起こすケースが多いです。

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

食欲がない場合の治し方

では、それぞれの食欲低下の治し方もご紹介します。

急性胃腸炎

まず、急性胃腸炎の場合、基本的には積極的な治療は行わず経過を見ます。あくまで一時的な炎症に伴う食欲低下が原因であるため、積極的に治療介入する必要はありません。

しかし、胃炎の症状が強く頻回に嘔吐してしまう場合、水分摂取ができなくなり脱水に陥るため、医療機関での点滴治療が必要となります。

逆流性食道炎の場合も、原因によっては内服治療や手術が必要となることがあるため、医療機関への受診をおすすめします。

甲状腺機能低下症

次に、橋本病などの甲状腺機能低下症の場合、体外からの甲状腺ホルモン補充を行う必要があるため、医療機関への受診が必須となります。

もし治療が遅れると、小児の場合は身体の成長や性線機能の発育にも支障をきたし、大人の場合は意識障害などをきたすため、早期の医療介入が必要となる病気です。

脳神経系疾患

次に、脳腫瘍などの脳神経系疾患の場合は、手術や放射線治療で原因となる腫瘍を除去する必要があります。場合によっては一刻を争う治療が必要となり、緊急手術が必要となることもあります。

うつ病

うつ病の場合、精神科へ受診し必要に応じてカウンセリングや内服療法を開始する必要があります。特にうつ病に対する内服薬でセロトニンやノルアドレナリンの作用が戻れば食欲の改善も期待できます。

また、カウンセリングによってストレスを軽減できれば、自律神経のバランスも整い、正常な蠕動運動が得られることで食欲も改善する可能性があります。

妊娠

次に、妊娠が原因の場合は病気ではないため、妊娠中のある程度の期間は食欲の低下と付き合っていく必要があります。妊娠中期にはホルモンバランスが安定し、食欲も改善します。

摂食障害

最後に摂食障害の場合、自身の身体に対する認識が周囲の認識と一致していないことを理解してもらうために心理教育を行うほか、栄養療法や薬物療法を行う必要があり、やはり医療機関への受診が必要となります。

特に食欲改善のためには心理教育が重要であり、摂食障害に対する正しい知識を身につけ、健康的な食生活に改善するための助言などを行います。摂食障害に対する特効薬はないため、認識をもとに戻す必要があります。

すぐにできる対処法

食欲がない場合、多くは生活習慣の乱れやストレスが蓄積している状態であることが原因となります。

その一方で、食欲減退を症状とする疾患も多いため、病気によるものなのか生活習慣によるものなのか慎重に見極める必要があります。

例えば、急性胃腸炎・甲状腺機能低下症・脳腫瘍・うつ病・摂食障害などが食欲減退を引き起こす病気です。

これらの病気は食欲低下以外にも腹痛やむくみ、頭痛や嘔吐などさまざまな症状をきたすため、食欲低下以外の症状がある場合は要注意です。

すぐにできる対処法としては、規則正しい生活習慣を送ることです。例えば、毎日同じような時間に起床・就寝し、総睡眠時間を少なくとも6時間以上は確保することが重要です。

日中はできる限り体を動かし、体がエネルギーを欲する状態を作り出すことも食欲増進にとって重要です。あまりに激しい運動は体の疲労につながり、逆に食欲が減退してしまうため注意が必要です。

また、食欲がないからといって食事を摂取しないことは避け、少量でも1日3回食事を摂取するようにしましょう。

食事内容は油分や糖分・塩分があまりに多いものは控えましょう。コショウなどの香辛料や生姜・大葉などの薬味は胃液分泌が促されるためオススメです。

アルコール摂取は一時的な食欲増進効果を持ちますが、肝臓に負担がかかりその後は食欲を減退させる可能性があるため、食欲を戻すためにアルコール摂取することは控えましょう。

もしかしたら起立性調節障害かも

食欲がなくなる疾患として、起立性調節障害(OD)の可能性もあります。

ODは急激な肉体の成長に対して自律神経の発達が追いつかず、様々な症状をきたす病気であり、小学生高学年から中学生にかけて発症しやすいですが、大人も発症する可能性があります。主な症状は午前中に強いめまい、ふらつき、嘔気嘔吐、腹痛、食欲の低下です。

これらの症状は自律神経の乱れによるものであり、特に特効薬などもないため、症状改善のためには規則正しい生活習慣などを送る必要があります。

早期から医療機関でしっかりと治療することで改善が早まれば、通学や通塾、進学、通勤にも支障をきたさないように治療できる可能性があります。食欲低下に悩んでいる場合は、一度医療機関に受診することをおすすめします。

また、ODには他にもさまざまな特徴や症状があり、医療機関に受診する前に自宅でも簡単にセルフチェックすることができます。

下記記事では起立性調節障害を疑われる方が自宅できるセルフチェック法について解説されていますので、ぜひ参考にしてください。

 

【参考】
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)
摂食障害情報ポータルサイト
KMクリニック

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

起立性オンラインセミナー

トトノエライトプレーン

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