起立性調節障害とは

疲れやすい原因とは?治し方・考えられる病気について解説

2023年4月30日

この記事の監修者

医師 錦惠那

医師 錦 惠那

内科一般・腎臓内科・透析科・産業医
保有資格:日本内科学会内科専門医・日本医師会認定産業医
2018年から起立性調節障害患者の診療を行い、累計30人以上の起立性調節障害患者を担当。

一般社団法人 起立性調節障害改善協会

 

学業や部活動、家事や仕事などで忙しい日々を過ごしている方は多く、「最近なんだか疲れやすい」と思ったことがある方も多いのではないでしょうか。

疲れやすい原因や改善方法について知りたいと思っている方々にこの記事を読んで頂けたらと思います。

こちらの記事では、疲れやすい原因。改善方法、病気の可能性などについて解説していきます。

状況によっては起立性調節障害という病気の可能性もあるかもしれません。ぜひ最後までお読みください。

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

疲れやすい原因

疲れやすい原因

日常生活での睡眠、食事/栄養、運動のサイクルが乱れると疲れが溜まりやすく、疲れやすい原因になると考えられます。

睡眠

私たちは睡眠中に体を休め、疲労からの回復を図り、脳も記憶の整理などを行います。

したがって、睡眠は非常に重要な身体の休養の時間です。睡眠時間が短い、睡眠の質が悪い状態が続くと疲れやすい状態になってしまします。

具体的には以下の項目を確認してみてください。

<睡眠時間>

年齢によっても異なりますが、平均7時間程度の睡眠時間が必要とされています。

 

<睡眠の質>

  • 寝具や寝室の温度・湿度・あかりなどの環境が適切か
  • 睡眠直前の食事や間食の摂取、アルコールやカフェインの摂取はないか
  • 睡眠前にスマホ操作をしていないか

食事・栄養

適切な栄養を摂取することも非常に重要です。三大栄養素である糖質、タンパク質、脂質を中心とし、ビタミンやミネラル、食物繊維にも注意して毎日の食事構成を考える必要があります。

加えて、適切な塩分や水分の摂取も重要です。塩分が過剰では高血圧を誘発してしまいますし、塩分が極端に少ない場合、血圧が低くなり身体の疲れやすさにつながってしまいます。

適切な塩分摂取量6-7g/日を目安にしてみてください。また、食事のタイミングにも気をつけてみるといいでしょう。

可能であれば規則正しく毎日定時に食事を摂取しましょう。日々忙しいとは思いますが、1日の始まりである朝食は特に重要ですので、バランスのとれた朝食を摂取するようにしましょう。

運動

身体を動かすことも体調維持に重要です。激しい運動をする必要はありませんが、水泳やウォーキングなど全身を使った有酸素運動は非常に有効です。

体を動かすことで筋肉量が増え、血液循環の改善が期待できます。また、適度な運動はストレス発散効果もあり、ストレスを減らすことが自律神経のバランスが乱れることを防いでくれます。

炎天下での運動は避け、運動中や運動後に適切な水分摂取を忘れないようにしましょう。

疲れやすい場合に考えられる病気

疲れやすい場合に考えられる病気

睡眠、栄養、運動を適切に行っても疲れやすい場合、病気が隠れている可能性も考えられます。

以下、疲れやすい場合に考えられる病気についてそれぞれ解説していきます。

低血圧

血圧が低いことで、全身の血のめぐりが悪くなり、脳への血流が低下することでふらつきやめまい、頭痛や体のだるさなどが見られます。

生まれつき血圧が低い、睡眠不足、筋肉量の不足などが原因として考えられます。

糖尿病・低血糖

膵臓にあるβ細胞から血糖値を下げるホルモンであるインスリンが分泌されますが、このインスリンの分泌が低下したり、インスリンが分泌されていても作用不足が起こることで高血糖状態が続いてしまうのが糖尿病です。

高血糖状態が続くことで疲れやすく、体重減少やのどの渇きなどが出現し、長期にわたる糖尿病は動脈硬化を引き起こすことが非常に問題になります。

反対に、低血糖は体の(特に脳の)エネルギー源となるブドウ糖が低下することで、冷や汗、ふらつき、身体の疲れやすさなどが見られます。

忙しい現代人は朝食をしっかり食べる習慣に乏しく、大きな原因の一つと考えられています。もともと糖尿病がある方の場合、血糖を下げるためのお薬(経口血糖降下薬)やインスリンが効きすぎていることも考えられます。

貧血

血液中で全身に酸素を運搬する働きがあるヘモグロビンの濃度が低下することで、全身で酸素が不足している状態。貧血の原因は様々であり、年齢や性別によっても異なります。

女性の場合は月経、30-40代の働き盛りの世代では胃潰瘍や十二指腸潰瘍、加齢に伴い悪性腫瘍や血液疾患の可能性も考えられます。

月経の場合は、過多月経や血の塊が多くみられ、胃潰瘍の場合は、食事中のみぞおち辺りの痛み、胃もたれ、むかつき、十二指腸潰瘍の場合は空腹時の痛み、その他にも体重減少や皮下出血などが見られる場合は注意が必要です。

甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモンは甲状腺で産生・分泌されるホルモンで、全身の代謝を活発にするホルモンです。

甲状腺機能低下症では、この甲状腺ホルモンが低下することで、疲れやすさや食欲の低下、便秘など多様な症状が見られます。

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

睡眠時無呼吸症候群

睡眠中に呼吸が停止する(無呼吸)、もしくは呼吸が弱くなることで、睡眠の質が低下し、朝すっきりしなかったり、日中も強い眠気に襲われる病気です。

この状態を放置すると、全身様々な臓器に負担がかかります。特に心臓への負担が非常に問題であり、心筋梗塞や脳梗塞、最悪の場合は突然死のリスクにもなります。

副腎機能不全

感染や炎症、腫瘍など様々な原因により副腎の機能が低下することで、副腎から分泌されるホルモンが十分に分泌されず、様々な症状を来す病気です。

副腎は両側の腎臓の上に乗っかるようにして存在しており、アドレナリンやステロイドホルモン、性ホルモンを分泌しています。特にステロイドホルモンが欠乏することで低血圧や低血糖、身体の疲れやすさなどが出現します。

うつ病

はっきりとした原因はわかっていませんが、精神的・身体的ストレスなどを背景に、脳の働きに何らかの不調が起きることで発症するとされています。

気分が落ち込み、何事にも興味が持てなくなり、食欲低下や睡眠障害を来し、疲れやすく、日常生活に支障をきたす場合も多い病気です。

疲れやすい場合の治し方

上記でご説明した病気の治療方法について解説していきます。

低血圧

体内の塩分と水分は血圧の維持に密接に関連しており、適量の塩分と水分の摂取を心がけましょう。

特に持病がない場合の塩分摂取量の目安は、1日あたり成人男性で7.5g未満、成人女性で6.5g未満とされています。

心臓や腎臓の病気がある場合は水分の摂取量を主治医と相談してください。

低血糖

食事療法や運動療法で血糖のコントロールが改善しない場合、血糖を下げる飲み薬やインスリンによって糖尿病の治療を行います。

糖尿病治療中に低血糖になった際には経口血糖降下薬やインスリンの減量が必要かもしれませんので、主治医に相談しましょう。

基本的には、間食や甘いものを控え、バランスのとれた3食をしっかり摂取しましょう。

貧血

貧血の原因を突き止めることが重要です。女性で月経過多がある場合は、子宮筋腫などの病気が隠れている可能性もあるため、婦人科を受診することをおすすめします。

みぞおち辺りの痛みや、胃のむかつきなどがあり、胃潰瘍や十二指腸潰瘍が疑われる場合は、胃カメラにより診断することができます。

原因を突き止めた上で、病気が見つかった場合は、治療を行い、そのうえで、鉄分が多く含まれた食材の摂取を心がけましょう。

鉄分が多く含まれている食材としては、レバーやひじき、のり、バジル、プルーンなどがあります。

甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモンが低下した状態ですので、不足した甲状腺ホルモンを補充する内服薬があります。

睡眠時無呼吸症候群

肥満があれば減量を行います。検査結果により適応がある場合、CPAPという呼吸器を使用することがあります。

副腎機能不全

最も重要な治療は不足したホルモンを補充するホルモン補充療法であり、ステロイドの服用です。症状をもとにして、主治医によりステロイド薬の減量の計画がなされます。

決して自分の判断で減量しないでください。また、体調を崩した場合には増量が必要になることがありますので、主治医と相談してください。

うつ病

抗うつ剤などの薬物療法に加え、心と体を休養させることが重要です。

すぐにできる対処法

疲れやすい場合にすぐにできる対処法

何よりもまず生活習慣の見直しが重要です。

バランスの良い食事を規則的に取れているか、睡眠時間や睡眠の環境は適切か、運動習慣やストレスを溜め込んでいないかなど再確認してみてください。

介入できるところから少しずつ改善することで、疲れにくい身体づくりをしていきましょう。

それでも症状が改善しない場合や身体の疲れにくさ以外にも気になる症状がある場合は医療機関で相談することも検討してみてください。

もしかしたら起立性調節障害かも

疲れやすく、疲れがなかなかとれない状態が特に午前中がひどく、午後にはましになる傾向があるなど、1日の中で症状の変動がある場合、もしかしたら起立性調節障害という病気かもしれません。

起立性調節障害は何らかの原因で自律神経系である交感神経と副交感神経のバランスが崩れることで、多様な症状を来す病気です。

自律神経のバランスには日内変動のパターンがあり、交感神経が優位に働くことで日中は活動するためのスイッチが押され、夕方にかけて副交感神経にスイッチしていき、睡眠中は副交感神経が優位に働くことで体を休息させます。

起立性調節障害の方は朝方起床時に副交感神経から交感神経へのスイッチがうまくいかず、活動するためのスイッチがなかなか押されない状態になってしまいます。

そのため、朝なかなか起き上がれず、朝食も食べることができず、午前中は体調が悪いことが多く、疲れやすい状態になってしまうのです。

セルフチェックにより起立性調節障害が疑わしい場合は医療機関を受診しましょう。

下記記事では起立性調節障害のセルフチェックについて詳しく解説していますのでぜひ参考にしてみてください。

 

【参考】
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

起立性オンラインセミナー

トトノエライトプレーン

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