起立性調節障害とは

授業中にあくびが止まらないのはなぜ?原因と対処法を解説

この記事の監修者

医師 錦惠那

医師 錦 惠那

内科一般・腎臓内科・透析科・産業医
保有資格:日本内科学会内科専門医・日本医師会認定産業医
2018年から起立性調節障害患者の診療を行い、累計30人以上の起立性調節障害患者を担当。

一般社団法人 起立性調節障害改善協会

「授業中にあくびが止まらない」「眠くて集中できない」という悩みは、多くの中学生にみられる身近な困りごとです。夜更かしや朝食抜き、スマホの見過ぎなど生活習慣が影響することもあれば、成長期に伴う体内リズムの変化で日中に強い眠気が出やすくなることもあります。

さらに、朝起きづらい、立ちくらみがある、だるさが続くといった症状を伴う場合、起立性調節障害が背景に関係することもあります。

本人のやる気や態度の問題と誤解されがちですが、実際には体の調整がうまくいっていないサインのことも少なくありません。

こちらの記事では、「なぜ授業中に眠くなるのか」という仕組みを整理し、家庭や学校でできる工夫、受診の目安までを、できるだけわかりやすく解説していきます。

授業中にあくびが止まらない主な原因

授業中にあくびが止まらない主な原因を5つ解説します。

睡眠時間は足りていても「睡眠の質」が低い

「ちゃんと寝ているはずなのに眠い」という場合、睡眠時間と体の回復度が一致していないことがあります。成長期はホルモンの影響で眠りが浅くなりやすく、夜中に無意識の覚醒をくり返すことも少なくありません。就寝前のスマホ使用は脳を覚醒させ、眠りを浅くする原因になります。

また、平日は早起き、休日は昼まで寝るといった生活リズムの差が大きいと、体内時計が乱れて日中の眠気につながりやすくなります。「時間」だけでなく「質」に目を向け、寝る前の光刺激を減らす、就寝時刻をできる範囲で揃えるなどの工夫が、授業中のあくび対策につながります。

朝は血圧や血流が安定しにくいことがある

朝は体が完全に目覚めきっておらず、血圧や血流の調整がまだ不安定なことがあります。その状態で登校し、すぐに座って授業を受けると、体を動かす機会が少ないため血流が滞りやすく、脳に十分な血流が行き渡りにくくなります。すると、眠気やぼーっとした感じが出やすく、あくびが止まらなくなることがあります。

特に朝起きづらい、立ちくらみが出やすいタイプの子は、体の立ち上がりに時間がかかる傾向があります。こうした症状が続く場合、起立性調節障害が関係することもありますが、多くは朝の過ごし方の工夫で和らぐことも少なくありません。

成長期の体調変化で自律神経が乱れやすい

思春期は、身長や体重が急に変わるなど、体が大きく成長する時期です。この時期は自律神経の調整機能がまだ安定せず、体温や血流、眠気のコントロールがうまくいかないことがあります。学年が上がる、クラス替えがあるなど、環境の変化によるストレスも重なり、体のリズムが乱れやすくなります。

その結果、授業中に強い眠気を感じたり、集中力が続かなくなったりすることがあります。こうした変化は一時的なケースも多く、成長とともに落ち着いていくことも少なくありません。まずは「成長期ならではの揺らぎがある」と理解し、責めずに見守る姿勢が大切です。

教室の環境が眠気につながっている可能性

授業中の眠気は、本人の体調だけでなく、教室の環境の影響も受けます。教室の温度が高すぎたり、空気がこもっていたりすると、脳がぼんやりして眠気を感じやすくなります。

また、長時間同じ姿勢で座り続けることも血流の低下につながり、あくびの原因になります。昼食後は消化のために血液が胃腸に集まりやすく、眠気が出やすい時間帯です。

環境による眠気は誰にでも起こりうるため、「本人のやる気の問題」と決めつけないことが大切です。姿勢を時々変える、深呼吸するなど、できる範囲の工夫で和らぐこともあります。

疲労の蓄積が眠気につながりやすい

授業中の強い眠気は、本人が自覚していない疲れや緊張の蓄積が原因になっていることもあります。部活動や習い事、勉強の負担に加え、成績や友人関係へのプレッシャーなど、心の疲れが重なっているケースも少なくありません。中学生は「疲れている」と自分で気づきにくく、体のサインとして眠気が表れることがあります。

しっかり休んでいるつもりでも回復が追いついていない場合もあるため、生活の中で無理が続いていないかを振り返ることが大切です。眠気は怠けではなく、「少し休みが必要」という体からのメッセージとして受け止める視点も大切です。

授業中にあくびが止まらない時の対処法

授業中にあくびが止まらない時の対処法を5つ解説します。

授業中につらさを感じたときにできること

授業中に強い眠気やあくびが出てつらいときは、「目立たず・無理なく」できる対処をいくつか持っておくと助けになります。

<授業中にできること>
・背筋を伸ばし、ゆっくり深呼吸を2~3回
・つま先に軽く力を入れて緩める動きを数回
・ノートに要点を一行メモして意識を戻す

<休み時間にできること>
・廊下を少し歩く、窓際で外の光を浴びる
・肩・首を回して血流を促す
・一口ずつ水分をとる

無理に眠気を我慢し続けるより、「短時間でリセット」をこまめに入れるほうが集中は戻りやすくなります。眠気が続く背景に体調の問題が隠れていることもあるため、頻繁に困る場合は生活リズムの見直しもセットで考えましょう。

体を目覚めさせる小さな動きを取り入れる

同じ姿勢で座り続けると、筋肉の動きが少なくなり血流が滞りやすく、脳への血流も低下して眠気が出やすくなります。激しい運動は必要なく、短時間の「小さな動き」で十分です。

<授業前・登校直後>
・かかと上げ下げを10回
・肩を前後にゆっくり回す

<休み時間>
・その場で軽く背伸び
・首を左右にゆっくり倒す

<授業中>
・手をグーパーする
・お腹をへこませて姿勢を正す

体調が不安定で朝がつらいお子さんの中には、起立性調節障害が関係するケースもありますが、こうした軽い動きで楽になることも少なくありません。

水分・塩分のとり方を意識する

朝から午前中は、寝ている間の発汗などで体が軽い脱水状態になりやすく、眠気やだるさにつながることがあります。水分だけでなく、体の循環を支える塩分・ミネラルも大切です。

<取り入れやすい工夫>
・起きたらコップ1杯の水を飲む
・休み時間に一口ずつ水分補給
・朝食でみそ汁・スープなどを取り入れる

「喉が渇いてから」では少し遅いこともあるため、こまめな補給を意識しましょう。甘い飲み物のとりすぎは、血糖の上下で逆に眠くなることもあるので、基本的には水やお茶がおすすめです。無理なく続けられる形を探すのがコツです。

朝の過ごし方を少しだけ整えてみる

朝が苦手な中学生は多く、完璧を目指すと続きません。「できる範囲で一つだけ」からでOKです。

〈朝の小さな工夫〉

  • 起きたらカーテンを開けて光を浴びる
  • 立ち上がる前に座って1分深呼吸
  • 朝食は一口でもOK(温かい飲み物+バナナなど)

朝の動き出しをゆっくりにすることで、血圧や血流が整いやすくなり、午前中の眠気が軽くなることがあります。朝食をしっかり食べられない日があっても責めず、「できた日を増やす」意識で続けるのがポイントです。

放課後から夜の過ごし方を見直す

日中の眠気対策は、実は夜の過ごし方が大きく影響します。放課後に強い眠気が出た場合の仮眠は、20~30分以内を目安にすると、夜の眠りに影響しにくくなります。入浴は体と気持ちを切り替えるスイッチになり、ぬるめのお湯でゆっくり温まると寝つきがよくなることがあります。

寝る直前のスマホやゲームは脳を刺激し、眠りを浅くする原因になるため、就寝30分前から画面を見ない時間を作れると理想的です。すべてを一度に変える必要はなく、できそうなことを一つずつ試してみましょう。

授業中のあくびが続くときの受診判断チェックリスト

授業中のあくびが続くときの受診チェック項目を5つ紹介します。

この状態がどれくらい続いているか

授業中のあくびや強い眠気が、どのくらいの期間続いているかは受診を考えるうえで大切なポイントです。数日程度であれば、睡眠不足や一時的な疲れの影響であることも多く、まずは様子を見てもよい場合があります。

一方で、数週間以上続いている、良い日と悪い日の波はあるものの「ほぼ毎日」困っている場合は注意が必要です。テスト前など特定の時期だけ強く出るのか、季節による変動があるのかも振り返ってみましょう。簡単なメモで「眠かった日」「特につらかった時間帯」を記録しておくと、受診時に状況を伝えやすく、判断材料として役立ちます。

時間帯によって症状に差があるか

眠気やあくびが、授業内容ではなく「時間帯」によって強く出ていないかも重要な視点です。たとえば、午前中に特に強く、午後や放課後は少し楽になる場合、朝の体の立ち上がりがうまくいっていない可能性があります。朝起きづらい、登校直後にぼんやりするなどの傾向があれば、体内リズムや血流調整の影響が考えられます。

こうしたパターンが続く場合、起立性調節障害と関係することもありますが、まずは時間帯の偏りがあるかを観察してみることが受診判断のヒントになります。

あくび以外の不調があるか

あくびや眠気だけでなく、ほかの不調が重なっていないかも確認してみましょう。たとえば、頭痛・立ちくらみ・強いだるさ・動悸・食欲低下・朝起きづらいなどが同時にみられる場合、体の調整機能が乱れているサインのことがあります。これらは一時的な体調不良でも起こりますが、複数が重なって続く場合は、生活習慣の見直しだけでは改善しにくいこともあります。

「眠いだけ」と思っていたら実は体調全体の不調だった、というケースもあるため、あくび以外の症状の有無を整理してみることが、受診を考える目安になります。

学校以外の場面ではどうか

眠気が学校の授業中だけに強く出るのか、家や塾、習い事、休日にも同じように出るのかを切り分けて考えてみましょう。家では元気なのに授業中だけ眠い場合は、教室の環境や姿勢、授業の時間帯などの影響も考えられます。一方、休日も含めて一日中眠気が強い場合は、睡眠の質や体調全体の問題が背景にある可能性もあります。

場面ごとの違いを整理することで、「環境要因か、体調の問題か」を見極めやすくなります。これもメモしておくと、医師に相談する際の参考になります。

生活や評価に影響が出始めているか

眠気が続くことで、学校生活や本人の気持ちに影響が出ていないかも大切なチェックポイントです。授業中の注意や指摘が増えた、成績や集中力が落ちてきた、本人が「自分はだめだ」と自信を失っている様子がみられる場合は要注意です。体調の問題が、本人の評価や自己肯定感に影響し始める前に、早めに相談することが大切です。

「学校に行くのがつらい」と感じ始めている場合は、無理をさせず、体調面のサポートを考えるタイミングと考えても良いかもしれません。

授業中にあくびが止まらなかった体験談と改善事例

授業中にあくびが止まらなかった体験談と改善事例を3つ紹介します。

10歳女子:生活リズムの見直しで落ち着いた事例

午前中の授業になると、あくびが次々に出て止まらず、本人も「眠くて集中できない」と感じていました。夜更かしの自覚はなく、家では元気に過ごしていたため、最初は体質や成長期の影響だろうと考えていました。ただ振り返ると、就寝時間が日によって30分〜1時間ほどずれており、休日はさらに遅くなっていました。

そこで、寝る時間をできるだけ一定にし、朝はカーテンを開けて光を浴び、軽く朝食をとる習慣を意識しました。授業の合間には外の空気を吸ったり、少し歩いて体を動かす工夫も取り入れました。すると数週間で午前中の強い眠気が和らぎ、あくびの回数も減少。「生活リズムを整えるだけでも、体は応えてくれる」と実感した体験でした。

13歳男子:体調の整え方を工夫して改善した事例

授業中に強い眠気が出て、あくびが止まらず注意されることが増えていました。家では元気なため、「なぜ学校だけつらいのか」と本人も戸惑い、「怠けていると思われるのが一番つらい」と感じていました。心配した家族と相談し、小児科を受診。問診や簡単な検査の結果、病気の可能性は低いと説明され、生活面での整え方を具体的にアドバイスされました。

水分をこまめにとる、休み時間に換気や軽い動きを入れる、授業中も姿勢を時々変えるなど、すぐ実践できる工夫を続けました。眠気が完全にゼロになるわけではありませんが、「困らない程度」に落ち着き、気持ちも軽くなったそうです。「対処の仕方を知るだけでも楽になる」と実感できたケースでした。

14歳女子:医療機関に相談し、起立性調節障害とわかった事例

最初は「よくある眠気」と思っていましたが、授業中の強い眠気とあくびが毎日のように続き、特に午前中がつらく、午後になると少し楽になる傾向がありました。就寝時間の調整や朝食の工夫など生活改善を試しても大きな変化がなく、不安になって受診。診察と経過から起立性調節障害の可能性が説明され、「理由がわかった」ことで本人の納得感が生まれました。

診断がついたことで、学校での配慮や家庭での対応(朝の起き方、水分・塩分、休み時間の過ごし方など)を調整しやすくなり、「無理に頑張りすぎなくていい」と気持ちも軽くなりました。原因がわかることで、対処の方向性が見え、前向きに向き合えるようになった事例です。

もしかしたら起立性調節障害かも

授業中にあくびが止まらない、午前中だけ強い眠気が続く、立ち上がるとふらつく―そんな状態が続くと、「気合いが足りないのかな」「夜更かしのせいかも」と自分を責めてしまいがちです。しかし、生活を整えても改善しにくい眠気やだるさがある場合、起立性調節障害が関係していることがあります。

起立性調節障害は、体の様々な調整を担っている自律神経のバランスが乱れることで、朝起きられない、めまい、ふらつきなど様々な症状を引き起こす病気です。成長期に多く、特に朝、午前中の体調不良が特徴的です。日常生活で色々を気をつけているのにも関わらず、体調不良が継続する場合は、受診をおすすめします。

原因がわかれば、水分・塩分のとり方、朝の過ごし方、休み時間の工夫など、対処の方向性が見えてきます。診断がつかなくても、相談することで不安が軽くなり、学校や家庭での配慮につなげやすくなります。無理に我慢せず、「もしかして?」と思った時点で相談してみてください。

下記の記事では、起立性調節障害のセルフチェックについて解説しています。気になる症状がある場合は、一度セルフチェックを試してみてください。

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