「漢方薬で起立性調節障害は治った?」「治る人と治らない人の違いは?」このような疑問を抱く方も少なくないでしょう。
起立性調節障害にはさまざまな治療のアプローチがあり、その一つが漢方薬です。漢方薬によって症状の改善が期待できる場合がある一方、十分な改善が得られないケースもあります。
そこでこの記事では、起立性調節障害に漢方薬を取り入れた方の体験談を紹介するとともに、漢方薬だけで改善しない場合に見直したいことを詳しく解説します。
起立性調節障害は漢方で治った?体験談からみる改善のヒント
起立性調節障害は自然軽快する人もいれば、中には重症化して何らかの治療を要するケースもあり、経過において個人差の大きい病気です。
漢方薬が治療に取り入れられることもありますが、漢方薬だけの効果によって改善したかどうかを判断することは困難です。
ここでは、漢方薬と生活上の対策を組み合わせた場合の経過を、年代別のケース例として紹介します。実際の症状や治療経過には個人差があるため、一例として参考にしてください。
- 小学生|朝起きられない日が続いたが登校できる日が増えたケース
- 中学生|不登校気味だったが午前中から登校できるようになったケース
- 高校生|めまいと頭痛が改善し部活動に復帰できたケース
- 体験談からわかった「改善した人」に共通する特徴
小学生|朝起きられない日が続いたが登校できる日が増えたケース
小学6年生のAくんはある時期から特に午前中に腹痛やめまいを訴える機会が増え、学校を休みがちになってしまいました。
当初、親御さんは「学校へ行きたくないだけでは?」と思い、Aくんに強い言葉を放ってしまったこともあったそうです。
しかし、Aくんの症状は日が経つにつれて悪化していったため、さすがにおかしいと感じて近隣の小児科を受診したそうです。
そこで、Aくんは起立性調節障害と診断され、半夏白朮天麻湯という漢方を処方されました。
医師からは、漢方だけに頼らず生活習慣を見直すことの重要性も指摘され、以降は意識的に水分や塩分を摂取し、早寝早起きを心掛けたそうです。
治療開始から数週間で徐々に効果が現れ、最初は保健室登校がやっとでしたが、最終的には教室へ戻れるようになりました。
Aくん一人の力だけではなく、両親の協力のもと、生活習慣の改善と漢方による治療を継続したことが功を奏したと実感したそうです。
中学生|不登校気味だったが午前中から登校できるようになったケース
中学1年生のBさんは入学当初から環境の変化にストレスを感じており、朝起きられず遅刻・欠席する機会が徐々に増えていったそうです。
また、学校に行く機会が減った結果、不登校である自分に対する漠然とした不安感や、進級への焦りに襲われる機会も増え、遅寝遅起きがさらに悪化したそうです。
負の連鎖を断ち切るため、両親に相談して近隣の小児科を受診したところ、起立性調節障害と診断されました。
朝の倦怠感や食欲不振、胃腸の不調などの症状を医師に伝えたところ、補中益気湯という漢方を用いた治療を行う運びとなりました。
また漢方治療と並行して、睡眠習慣の見直し、朝の日光浴、水分・塩分の摂取など、生活習慣の改善にも取り組んだそうです。
治療を始めてから数ヶ月後、徐々に症状が緩和し、朝も以前より起きられるようになったことから、登校日数が増えていきました。
登校できることが自信にもつながり、半年後には普通の学校生活を送れるようになるまで改善したそうです。
高校生|めまいと頭痛が改善し部活動に復帰できたケース
Cくんはサッカー部で活躍する健康的な男の子でしたが、高校2年生になった頃から受験と部活動の両立に悩むようになり、その時期を境に特に午前中に強いめまい・頭痛・立ちくらみを感じるようになったそうです。
午前中に症状が強く登校できない日もあったそうですが、午後になると症状が改善して元気になるため、周囲からは体調不良に対する理解を十分に得られませんでした。
家族からも当初は「サボりたいのでは?」と思われてしまい、そのストレスもあって徐々に症状は悪化したため、家族に相談して医療機関を受診したそうです。
そこで、医師からは起立性調節障害の診断を受け、苓桂朮甘湯による漢方の内服と生活習慣の改善による治療を指示されました。
生活習慣の面では、しっかりと水分補給を行った上で、身体に負担の少ない負荷の運動を継続的に行うよう指示されたそうです。
治療開始後は徐々に通学できる頻度が増え、休みがちだった部活動にも安定的に参加できるようになったそうです。
今でも完全に症状がなくなったわけではないそうですが、生活習慣に注意することで病状とうまく付き合いながら日常生活を取り戻すことができました。
体験談からわかった「改善した人」に共通する特徴
上記3つの体験談は、比較的症状が重い起立性調節障害を発症していますが、適切な治療によって改善を認めています。
それぞれ年代も性別も異なる3つのケースですが、彼らに共通して言える点は漢方だけで治療したのではなく、同時に生活習慣の改善に真摯に取り組んでいる点です。
具体的には睡眠リズムの改善、水分・塩分の適度な摂取、適度な運動などが共通して挙げられ、漢方による治療と生活習慣の改善を数日〜数週間ではなく、数ヶ月単位で継続的に行なっていた点も共通点です。
一方で、3名はそれぞれ異なる種類の漢方が処方されており、それぞれの症状や体質に合わせて適切な漢方を選ぶことも重要です。
また、起立性調節障害は主に小学生や中学生で発症する病気であるため、自身だけで治療を継続することは困難であり、実際に今回の3ケースも保護者や学校の理解・サポートを受けながら治療していました。
以上のことからも、起立性調節障害の改善には漢方単独での治療というよりは、漢方や生活習慣の改善を含む総合的な治療が大切であることがわかります。
起立性調節障害は漢方で治る?
近年、SNSの普及によって起立性調節障害に対する治療のさまざまな体験談を見れるようになりました。中には「漢方で治った」という口コミもあり、子どもの起立性調節障害に悩む保護者の方で気になっている方も少なくないでしょう。
結論から言えば、起立性調節障害が漢方薬だけで治るとは一律にいえません。漢方はあくまで対症療法であり、起立性調節障害を根本から解決してくれる治療ではないです。
ここでは、起立性調節障害における漢方治療の位置付けや、「漢方で治った」と言われる理由について詳しく解説します。
漢方だけで治るというより症状改善を目指す治療
起立性調節障害は、起立したときの循環調節が十分に働かないことにより、めまいや立ちくらみ、頭痛、倦怠感などの症状が現れる病気です。その背景には、循環血液量や心拍出量、末梢血管、自律神経など、複数の要因が関係すると考えられています。
漢方薬は、めまいや腹痛、倦怠感、食欲不振などの症状や、もともとの体質を踏まえて処方されることがあります。ただし、起立性調節障害の原因に直接作用し、病気を根本から治すことが確認されているわけではありません。
そのため、漢方薬による症状の改善を目指しながら、水分・塩分摂取や生活習慣の調整などを並行して行うことが大切です。漢方薬は無意味な治療ではありませんが、非薬物療法などと組み合わせて回復を支える治療の一つと考えましょう。
「漢方で治った」と言われる理由
ではなぜSNSや口コミで「起立性調節障害が漢方で治った」という声が多く見受けられるのでしょうか。この主な要因は起立性調節障害が自然に軽快する病気であることが大きく影響していると予想されます。
起立性調節障害は身体の急激な成長に対して自律神経の成長が追いつかず、自律神経のバランスが乱れることでさまざまな症状をきたす疾患です。
身体の急激な成長がある程度落ち着けば症状も改善するため、発症して何も治療しなくても自然に軽快する子どもも少なくありません。
何らかの治療中に症状が改善した場合でも、治療の効果なのか、生活習慣の改善や自然な経過によるものなのかを明確に判断することは困難です。漢方治療や生活習慣の改善、成長に伴う体調の変化など、複数の要因が重なって改善する可能性があります。
漢方治療は症状や体質に合わせて行われる
起立性調節障害の漢方治療では、すべての方に同じ漢方薬を使用するわけではありません。現れている症状や体質などに合わせて、使用する漢方薬を選びます。
例えば、半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)などが、症状や体質に応じて用いられることがあります。ただし、自己判断で選ばず、医師や薬剤師に相談することが大切です。
起立性調節障害に用いられる漢方薬の種類や、それぞれの特徴について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。
漢方だけで改善しない場合に見直したいこと
起立性調節障害に対して漢方は特効薬などではないため、漢方を飲んでいてもすぐに症状が改善しないケースは少なくありません。
漢方薬を服用しても症状が続く場合は、生活習慣や水分・塩分摂取の状況、漢方薬が症状や体質に合っているかなどを、あらためて確認することが大切です。
また、起立性調節障害以外の病気が関係している可能性もあります。 漢方薬だけで症状が改善しない場合は、以下の点を見直してみましょう。
睡眠リズムや生活習慣が乱れていないか
漢方だけで改善しない場合、まずは睡眠リズムや生活習慣が乱れていないかを確認しましょう。
特に小学生高学年から中学生にかけて、夜更かしやスマホの長時間使用の頻度が増えるため、睡眠の質が低下しやすくなります。
その結果、自律神経が乱れてしまい、起立性調節障害の症状が悪化することにつながります。そのため、起立性調節障害の改善のためには規則正しい睡眠習慣を保つことが重要です。
具体的には、起床時間・就寝時間を一定に保つ、朝日を浴びる、軽い運動を行うなど、生活リズムを整えることで自律神経が整いやすくなります。
繰り返しになりますが、起立性調節障害の改善のためには漢方だけでなく生活習慣の改善も並行して行う必要があるため、症状の改善が乏しい場合は必ず生活習慣を見直すように心がけましょう。
水分・塩分摂取が不足していないか
漢方だけで改善しない場合、水分・塩分摂取が不足していないかも確認しましょう。
起立性調節障害でめまいや立ちくらみなどの症状が出る原因は、血流や血圧の調整がうまくいかないことで脳血流が低下するためです。
そこで脳血流低下を予防するためには適量の水分・塩分摂取が効果的であり、実際に医師から水分・塩分摂取を勧められるケースも少なくありません。
特に夏場の起床時や運動時は脱水に陥りやすいため、十分な水分補給ができているかこまめに見直すことが重要です。
ベッドから立ち上がる前に、コップ一杯分でも水分を補給することでその後のめまい・立ちくらみを予防する効果が期待できるため、漢方治療とあわせて継続的に意識してみると良いでしょう。
起立性調節障害以外の病気が隠れていないか
漢方だけで改善しない場合、別の病気が関係している可能性があるため、起立性調節障害以外の病気が隠れていないかを確認しましょう。
めまいや立ちくらみ、動悸などの症状が出る疾患として、起立性調節障害以外にも貧血や甲状腺疾患、不整脈疾患などが挙げられます。
また、腹痛や頭痛などの症状が強い場合は消化器疾患や中枢神経系疾患など、他の病気との鑑別も必要です。
自己判断で漢方薬の服用だけを続けず、症状が長引く場合や悪化している場合は医療機関へ相談しましょう。必要に応じて、起立性調節障害を専門的に診療する医療機関への受診も検討してください。
起立性調節障害では非薬物療法が治療の基本
起立性調節障害の治療では、まず生活上の工夫などを行う非薬物療法が基本となります。症状や重症度に応じて、漢方薬を含む薬物療法を組み合わせることもあります。
具体的には、立ち上がるときに頭を少し下げながら立ち上がる、起立時に両足をクロスさせる、一日1.5〜2L程度の飲水を心がける、普段の食事+3g程度の塩分を摂取する、早寝早起きを心がけるなどが挙げられます。
また、症状がある程度軽い場合は筋力低下の予防のために毎日30分程度の歩行を行うことも重要です。筋力を維持できれば下肢に血液が溜まりにくくなり、脳血流の低下を予防できます。
こういった非薬物療法を継続することで徐々に脳血流を維持しやすい身体作りが形成され、症状の改善が見込めます。
漢方自体が効果がない治療というわけではなく、非薬物療法と併用することでより効果が高まるため、非薬物療法を主軸にして漢方治療にも併用すると良いでしょう。
起立性調節障害が「漢方で治った」と言われる人の共通点
起立性調節障害が「漢方で治った」と言われる人には下記のような共通点が挙げられます。
漢方を飲むだけで起立性調節障害が改善するわけではなく、改善が見られる方の多くは上記のように十分な期間を、自分の身体に合った非薬物療法との併用で治療していることがわかります。
また、両親や学校側の病気への理解がなければ子どもは治療に専念することができないため、治療する上では周囲の環境を整えることも肝要です。
漢方治療の主な目的は生じている症状の緩和であるため、必ず自身の症状にあった漢方を内服するよう、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。
起立性調節障害の治し方や家庭でできる対策について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。






