- 朝起きた時から気分が悪い、頭痛がする
- 頭痛は特に午前中にひどく、午後には少し楽になる
このようなことはありませんか。頭痛という症状は誰もが一度は経験したことがあるよく見られる症状の一つです。
本記事では、頭痛が起こる原因や特に午前中に頭痛がひどい場合に考えられる病気について、治療法も含めて解説していきます。
「午前中に頭痛がする」ときの原因
頭痛が見られる病気は多岐にわたります。慢性頭痛で多いのは片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛の3つが良く知られています。
片頭痛で頭痛が見られるメカニズムは、収縮した脳血管が急激に拡張し血流が一気に流れることで痛みが出現すると言われています。
緊張型頭痛は後頚部の筋肉の凝りにより血流が悪くなるために頭痛が出現します。群発頭痛は目の奥の血管が拡張することで頭痛が起こるとされています。
頭痛が出現するメカニズムには血管や脳圧、神経伝達物質、筋肉などが深く関与しています。脳への血流は体を循環する血流量や体位によって変化します。また、脳の圧(脳圧)も体位によって変化します。
したがって頭痛を来す病気のうち、そのメカニズムが血管や血流、脳圧が関係しているものは起床後や午前中に見られやすいと考えられます。この点について、少し解説を追加します。
<体位変換時の脳血流と頭痛について>
眠っている時や座っている時は重力に従って血液は下肢に溜る傾向にあります。
臥位から座位、立位へ体位を変換する際、体の自動調整機能がなければ重力に従って下肢に溜った血液は脳へは行き届きにくくなり、脳血流が低下し頭痛などの症状につながります。
しかし、実際には私たちの体はこのようなことが起こらないように自律神経の働きで脳への血流を維持しています。自律神経の機能不全や脱水症など血液量の不足があると脳血流が低下してしましい、頭痛などの症状を来しやすくなってしまします。
特に自律神経は起床時頃に副交感神経から交感神経へのスイッチが行われるため、機能不全があると起床時や午前中の症状につながることになります。
<脳圧と頭痛について>
正常の脳圧は5~10mmHgです。私たち生活している地球上の大気圧760mmHgと比較すると非常に低いことがわかります。
したがって、立っている状態では圧は下に逃げやすいです。しかし、睡眠中は体を横にしていることと血流の関係で立っている時も圧が上がると言われています。
これは、睡眠中は呼吸が浅くなり、脳血管が拡がりやすくなるためであると考えられています。したがって、正常な状態でも睡眠中、朝方は脳圧が高くなる傾向にあります。
脳の中に腫瘤がある場合、本来ない構造物が脳内にあることにより、脳圧が上昇します。よって、起床時や朝方、午前中に頭痛が見られやすくなります。
「午前中に頭痛がする」ときに考えられる病気とは
午前中に頭痛がする場合に考えられる病気について、一つずつ解説していきます。
<片頭痛>
詳しいメカニズムは不明ですが、脳血管が拡がることで頭痛が引き起こされると言われています。
誘因はない場合も多いですが、よく知られているものとしては、飲酒や空腹、チョコレートやワイン、ナッツ類の摂取、睡眠不足や過眠、天候や気温の変化、ストレス中やストレスから解放された後などに頭痛が見られることが多いです。
やや女性に多く、生理周期や女性ホルモンとの関与も指摘されています。片頭痛ですが、片側だけにとどまらず両側のこめかみが心臓の拍動に従ってズキンズキンと痛みます。
光や音、臭いに敏感になることもあります。発作は数時間から長ければ数日継続することがあります。
<うつ病>
起床時に頭痛がある人では、うつ病や不安障害、不眠などが多いと欧州5か国の共同電話調査により判明したことが米国医師会により発表されました。
うつ病は気分が強く落ち込み、何事にも意欲が出なくなり、睡眠や食事などへも影響を与える病気です。
不眠や過眠により頭痛が出現したり、体の色々な不調が見られます。起床時や午前中が特に不調であることも良くある特徴の一つです。
<脳腫瘍>
脳腫瘍には良性のものから悪性のものまであります。年齢によりなりやすいものもあります。
小児では神経膠腫(しんけいこうしゅ)、胚細胞腫瘍(はいさいぼうしゅよう)、髄芽腫(ずいがしゅ)、頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)、上衣腫(じょういしゅ)の5つがよく見られます。なかでも神経膠腫の発生頻度が高いです。
大人では、神経膠腫、中枢神経系原発悪性リンパ腫、髄膜腫(ずいまくしゅ)、下垂体腺腫(かすいたいせんしゅ)、神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)、頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)、転移性脳腫瘍などがあります。
症状としては、脳内に腫瘍ができることで脳圧が上昇する頭蓋内圧亢進、また、腫瘍ができる部位により視力の障害、耳鳴り、性腺機能障害、麻痺など様々な症状が見られます。
頭痛は脳腫瘍の患者さんの30~60%程度に見られると言われております。また、早朝に見られる頭痛(morning headache)は30%前後と報告により頻度はまちまちです。
<低髄液性頭痛>
脳と脊髄は私たちの体で非常に重要な中枢神経が集まっており、これらを守るために脳と脊髄の周りを無色透明の髄液が取り囲んでいます。
交通事故による頭部打撲、むち打ち、あるいはスポーツ外傷、尻もちをついたなどという外的なショックにより、髄液が漏れ、髄液の量・圧ともに低下することで低髄液圧症候群が発症します。
原因がわからないこともあります。症状としては、頭痛、首の痛み、めまい、しびれ、排尿・排便障害などが見られます。
頭痛の特徴としては、横になっていると楽で、体を起こすと痛みが強く見られ、午後・夜にかけて軽くなる傾向にあります。
「午前中に頭痛がする」ときの治療法・対策
上記でご紹介した午前中に頭痛がする場合に考えられる病気についての治療法をそれぞれ解説していきます。
<片頭痛>
ロキソニンやアセトアミノフェンなどの鎮痛薬の使用は頻回使用を避ければ推奨されています。ロキソニンの頻回使用は薬物乱用頭痛と言って頭痛を悪化させてしまうため注意が必要です。
発作時には、血管の拡張を抑え、神経終末からの神経ペプチドの放出抑制・三叉神経核における痛みを伝える経路を遮断することで頭痛を抑えるトリプタン製剤の使用が効果的です。
発作時には光や音の刺激がない部屋で十分な休養をとる必要があります。また、日ごろより十分な睡眠時間を確保しストレスを溜めないように心がけましょう。
<うつ病>
抗うつ剤などの薬物療法に加え、心と体を休養させることが重要です。
<脳腫瘍>
良性か悪性か、また腫瘍ができた部位、病期にもよりますが、基本的には腫瘍を取り除くための外科手術が行われます。頭蓋内圧を下げるためにステロイドや高浸透圧利尿剤を使用することもあります。
<低髄液性頭痛>
髄液圧を上げると症状が改善することが考えられるため、水分摂取や水分摂取が難しければ点滴療法を行います。
低血圧の人に多いと言われており、生活習慣上で水分や塩分を多めに摂取したり、場合によっては血圧を上げる薬剤を使用することがあります。
外傷によって脳・脊髄・髄液を収めている袋の壁(硬膜)に損傷がある場合は外科手術を行います。外傷以外で手術が必要になることはあまりないと考えられます。
もしかしたら起立性調節障害かも
この記事のはじめにもご説明しました通り、自律神経は体位変換と脳血流に関連しており、自律神経の不調は頭痛などの不調を来す原因になります。
起立性調節障害とは、自律神経である交感神経と副交感神経の働きのバランスが崩れることでめまいやふらつき、たちくらみ、頭痛、腹痛など様々な症状を来す病気です。体が大きく成長し、ホルモンの変動が大きい思春期に多くみられます。
一般的に、私たちは朝起床頃より交感神経が優位になり、午後になると徐々に副交感神経の割合が増加していき、夜間には交感神経の働きは弱くなり、就寝が近くなる頃には副交感神経が優位に働き、睡眠中体を休めます。
起立性調節障害の子どもは交感神経と副交感神経の働きのバランスに不具合が生じ、適切に神経をスイッチすることができないため、色々な症状に悩まされます。
特に、朝は活性化されるべき交感神経がうまく活性化されないために体はなかなか覚醒状態にはなりません。朝起き上がることができず、起きたあともめまいやふらつき、頭痛、吐き気など体調不良が続きます。
時間とともに症状は和らぎ、午後からの活動は特に問題ないことが多いです。したがって、起床時や午前中にひどい頭痛が見られた場合には、起立性調節障害の可能性があります。
起立性調節障害の子どもは緊張状態が続くことでストレスにより自律神経に更なる乱れが起こりやすく、頭痛が持続する傾向にあります。
下記の記事では起立性調節障害の可能性があるのかをセルフチェックすることができます。ぜひ参考にしてみてください。
基本的には、頭痛が長く続いている場合には必ず受診してください。また、経験したことのない程の強い頭痛が見られた場合には早急に医療機関を受診しましょう。
【参考】
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)