起立性調節障害の方の体験談

起立性調節障害を患っていたT.Uさん(中学校3年生 女性)の体験談

2022年12月24日

この記事の監修者

匿名(医師)

内科・小児科

一般社団法人 起立性調節障害改善協会

起立性調節障害を患っていたT.Uさん(中学校3年生 女性)の体験談

小学生高学年や中学生の時期のお子さんをお持ちの親御さんは、思春期の子供が夜遅くまで友人と遊んで帰るのが遅い、深夜までスマホをいじる、朝も起きてこない、日中もYou Tubeばかり見てコミュニケーションが取れないなど、色々と悩む時期ではないでしょうか?

この時期の子供は身体的にも精神的にも変化が激しく、成長の時期であるとともに、非常に不安定な時期でもあります。

親に干渉されたくないと強く思う一方で、多くの子供にとっては、親は困ったときの一番の頼り先でもあるため、自立と依存の間で葛藤する時期なのです。

そのため、物理的・精神的距離感が小学生低学年までとは変わってきます。親御さんの中には、これまでの距離感との変化に気持ちが追いつかず、子供と口論になってしまう方もいるようです。

そんな中、起立性調節障害(OD)と呼ばれる病気はこの状況をさらにややこしくしてしまう病気です。ODは身体の急激な成長に伴い脳血流が低下してしまい、起立時のふらつき、めまい、嘔気、嘔吐、全身倦怠感、夜間不眠など多彩な症状をきたします。

起床困難や就寝時間の遅れなど、一見すると子供がサボっているようにも見えてしまい、病気であるにも関わらず叱ってしまう親御さんも少なくありません。学校に行きたくても行けない状況で怒られるため、トラウマになってしまう子供もいます。

このように、起立性調節障害は子供本人はもちろん、親御さんにとっても辛い経験になりかねない病気です。また起立性調節障害は子供によって症状、経過、有効な治療法が異なる点でも厄介です。

そのため、起立性調節障害に対して適切な対応を理解しておくことが病気と付き合っていく上で重要です。また、個人個人の身体に合った非薬物療法を模索して実践していく必要があります。そのため、他の起立性調節障害の子供の体験談は非常に参考になると思います。

そこで本記事では、多くの起立性調節障害の子供に対して医師として診療してきた筆者が、実際に起立性調節障害の治療に取り組んだ患者様を例に実体験をご紹介いたします。これによって少しでも起立性調節障害に苦しむ皆さんの一助となれば幸いです。

起立性調節障害を患っていた「T.U」さんの特徴

私が診察させて頂いたT.Uさんは、当時中学3年生の女の子でした。小学生の時はスポーツも学業も優秀で文武両道、明るく元気でクラスの中心にいるような女の子だったそうです。中学生になってからは友達と遊ぶことが多く、学業は疎かになっていたようです。

親御さんから聞く本人の印象は明るく、友達も多く、日々の出来事や自分のことを話してくれる子でした。筆者と初めて対面したときも、自分の症状をハキハキと伝えてくれて、親御さんから聞いた印象と相違ありませんでした。

出生後の発育や発達にも異常は認めず、生まれてからというもの大きな病気にかかった経験はありません。アレルギーや乗用薬なども認めず、健康そのものという印象でした。

起立性調節障害を患ったきっかけ・症状・対策・経過等

T.Uさんが最初に症状を自覚したのは中学3年生の6月でした。高校受験前の重要な時期でしたがなかなか学業に身が入らず、塾に行かずに友人と遊んで帰宅が遅くなることも多かったそうで、親御さんと口論になることもあったそうです。

ある日の通学中、電車内で立っていると突然のめまいとふらつきに襲われて立てなくなってしまいました。周囲の人が席を譲ってくれたため、椅子に座ってどうにかその場をやり過ごしたそうです。

その日は風邪でも引いたのかと考え、学校を休んで家に帰宅しました。しかし、午後になると症状がすっかり消失したため友人に会うために塾に行き、夜の帰りも遅くなったそうです。そのせいで親御さんと口論になってしまったそうです。

翌日の朝にはさらに倦怠感やめまいを自覚し、学校を2日連続で休むことにしました。前日口論になったこともあり、その日は家で大人しく過ごしましたが、午後には症状が消失してしまったそうです。

その様子を見ていた親御さんは、当時T.Uさんが勉強したくないことを理由に仮病を使っていると考えてしまい、すぐに怒ってしまっていたそうです。T.Uさん自身は連日の午前中の体調不良に恐怖感を感じていました。

そこで、発症から3日目に近隣のクリニックを受診しました。問診、身体診察、血液検査、心電図検査など実施されましたが、明らかな異常を認めず、親御さんも納得して帰宅することになりました。

その後も自宅で経過を見ていましたが、症状は治るどころか徐々に悪化していき、発症から1週間経過した頃には昼過ぎになっても起き上がれないようになっていました。親御さんも流石に違和感を感じ、子供の仮病ではないと感じ始めていました。

再度近隣のクリニックを受診したところ、起立性調節障害の可能性を初めて指摘されたそうです。そこで、セカンドオピニオンとして筆者の元に受診する運びとなりました。そこで、確定診断のために血液検査、心電図検査、新起立試験などを行いました。

血液検査や心電図検査でこれといった異常は認めませんでしたが、新起立試験で起立時の血圧低下と脈拍の変化を認め、起立性調節障害と確定診断を下しました。

この時、T.Uさんは親御さんだけでなく、学校の友人や塾の友達からも冗談で「ズル休み」と言われることがあり、周囲からの理解が得られないことに非常にストレスを感じていました。初めて明確な診断がついたことで恐怖感が緩和したそうです。

逆に、親御さんは今まで病気の娘に色々と怒鳴ってしまったことに後悔し、非常にショックを受けていました。起立性調節障害ではこういったケースも少なくないため、今後は治療のためにしっかり協力してもらうように説明しました。

まず起立性調節障害の治療に際しては、起立性調節障害が自律神経の乱れによって起立時に脳血流が低下してしまう身体疾患であり、決してやる気の問題ではないということを本人や親御さんにしっかりと理解していただく必要があります。

また、起立性調節障害の治療には特効薬や特別な治療法があるわけではなく、病態を理解した上で日常生活から非薬物療法を実践していくしかありません。そして、本人の努力のみならず、親御さんの協力も必要不可欠なため、それぞれにどう過ごすべきかを説明しました。

実際に筆者がT.Uさんに勧めた非薬物療法としては、暑い場所は避けること、症状が落ち着くまでは規則正しい生活リズムを崩さないこと、立ち上がり方に注意することです。

起立性調節障害では脳血流の減少が原因であるため、夏で発汗量が増えると脱水に陥りやすく、血管も拡張してしまうため症状が出現しやすくなってしまいます。そこで、極力暑い場所や蒸す場所は避けるように指示しました。

また、T.Uさんはもともと就寝時間が遅い傾向にあったため、今後は規則正しい生活習慣を維持するように指示しました。学校には行けないとしても、自宅内で規則正しい生活を送ることで自律神経がこれ以上乱れないようにするためです。

さらに、起床時の立ち上がり方は症状を抑える上で非常に重要です。初回の症状も長時間の立位で生じていましたが、急いで立ち上がったり、長時間立ったままでいると脳血流が低下しやすくなり、症状が出現しやすくなってしまうからです。

そこで、起床時には時間をかけて立ち上がること、自宅内では長時間座位や立位でいないこと、立位の際には少し前傾姿勢を保ち脳血流を維持することなどを指示しました。

次に、親御さんに対しては、これまでの親子間の距離感や接し方を見直すように指示しました。起立性調節障害が身体疾患であることを理解して、適切な距離感で治療をサポートする必要があります。

起立性調節障害の治療中に最も大切なことは「子供が健康なら他はなんでもいい」と割り切ることです。進学や受験など色々と気になる事は多いと思いますが、子供が病気である以上考えても仕方ありません。

子供の心と体が健康であるように、自宅での運動や食事、睡眠などをサポートしてあげる必要があります。ここで大切なのは、子供の意思を尊重する事です。

思春期かつ起立性調節障害の子供にとって親の過干渉はストレスになり、かえって逆効果になるため、親のエゴを押し付けず、意思を尊重できるようにサポートしていきましょう。

以上の非薬物療法を実施しましたが、治療当初はなかなかいい結果が得られませんでした。しかし、治療から2ヶ月が経過した頃には徐々に朝起きれるようになり、生活習慣も規則正しく過ごせるようになってきました。

親御さんの献身的なサポートもあり、治療から3ヶ月が経過した頃には起床時の症状がほとんど出現しなくなり、半年後には完全に治療が終了となりました。

効果があった対策

T.Uさんの場合、本人はもちろんのこと親御さんの努力が非常に有効であったと感じています。これまでの親子の距離感をしっかり見直して、焦らず、粘り強く子供に愛情を注ぎ続けてくれました。

時にはサポートの方法に悩むこともあり、子供との接し方を相談するためだけに親御さんが受診する機会もありましたが、これも非常に良い事だったと思います。

T.Uさん自身も、これまでの乱れた生活習慣を迅速に改善してくれたことで、自律神経が早期に安定してくれたように感じています。

まとめ

今回は、筆者が診療させていただいた起立性調節障害のT.Uさんについてご紹介しました。

T.Uさんは発症当時まさに思春期であり、親御さんとの微妙な距離感のなかで起立性調節障害を発症したため、当時は親御さんの存在が症状の悪化に繋がっていた可能性もあります。

しかし、診断がついてからは親御さんのサポートや立ち位置が素晴らしく、T.Uさんの治療を大きく前進させる要因になっていた事は間違いありません。

起立性調節障害は子供のみならず、親御さんの協力が治療の上で非常に重要であることを再認識させられた一例でした。

起立性調節障害は症状や経過が人によって異なるため、多くの体験談を知ることがみなさんの治療の糸口になるやもしれません。下記記事では他の体験談についてよくまとめられています。ぜひ参考にしてみてください。

 

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