うつ病や適応障害、発達障害と診断される子供は30年前と比較すると大幅な増加傾向にあります。うつ病などの精神疾患は特別なものではなく、誰でも発症し得る身近な病気となっています。
そのため、小学生や中学生を子供に持つ親御さんも、うつ病などの精神疾患は子供でも発症し得る病気であることをしっかりと認識しておきましょう。また、うつ病に対する知識を身に付けておくことも重要です。
そこで本記事では、子供におけるうつ病の症状や原因、さらには起立性調節障害(OD)との関係性などについてわかりやすく解説していきます。
うつ病とは
もはや、うつ病という言葉は日常会話でもよく聞くようになりましたが、そもそもうつ病とはどういった病気なのでしょうか?
普通の人でも何かショックなことがあれば気分が落ち込んだりやる気がなくなることは普通の反応です。しかし、うつ病の場合はこれといった理由がなくても気分が落ち込んでしまい日常生活に支障をきたしてしまいます。
うつ病に多い症状としては抑うつ気分、興味や喜びの減退、食欲や体重の減少もしくは増加、不眠や睡眠過多、易疲労感や気力の減退、思考力や集中力の低下、自殺企図や死に関する反復思考などです。
わかりやすく言えば、一日中楽しめずに気分が落ち込んでいる精神状態に加えて、食欲や睡眠が乱れて疲れやすいような状態です。日本では、100人中約6人が生涯のうちにうつ病を経験すると言われています。
症状が重症化していくと自分を責めたりイライラしたりして全てが悪循環になり、場合によっては死んでしまいたいと思うこともあります。
以前まではうつ病の解明は進んでいませんでしたが、精神医学の発達とともに徐々にその病態も解明されつつあります。うつ病は、ストレスや元々の性格が影響して発症するれっきとした病気であるということを認識しましょう。
では、具体的にどんな人がうつ病になりやすいのでしょうか?
うつ病になりやすい人の特徴
うつ病になるきっかけは、なんらかの外的ストレスや生活習慣の乱れの他に、元々の性格や考え方、さらには生まれ持った遺伝的要素が影響していると考えられています。
生活習慣の面で言えば、十分な休養、規則正しい食生活、定期的な運動、過度な飲酒を控える、楽しみやリラックスできる時間を作ることなどが予防の面で重要であり、逆に言えばこれらが乱れてしまうと発症するリスクが増加します。
食事を抜いたり運動を嫌ったり、スマホをいじって夜更かしする若年が増えている現代社会においては、若いからと言って発症しないとは言い切れないことがよく分かります。
次に、うつ病にかかりやすい典型的な性格パターンとして「メランコリー親和型」と呼ばれる性格があります。
具体的には、真面目で責任感が強い、几帳面で秩序を重んじる、周囲にやたら気を使うなどの性格のことで、責任感が強い分一人で抱え込んでしまうためうつ病のリスクが高いと言われています。
また、メランコリー親和型以外にも、自己中心的、依存的、他責的、繊細で傷つきやすいと言った特徴の人も最近ではうつ病の発症が散見され、若年層に多いことから新型うつ病と言われています。
抑うつ気分になると自分や周囲、未来のことに対してマイナス思考になってしまい、行動がどんどん活動的でなくなってしまい、それがさらに思考にマイナスな影響を与えるという悪循環に陥るため注意が必要です。
うつ病になる原因
病態や原因は未だ完全には解明に至っていません。しかし、現在の主流の考え方としては、発症の原因は元々の遺伝的要因や後天的に心的もしくは身体的なストレスに暴露されることが挙げられます。
その結果、体内に存在する神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンなどのモノアミンが機能不全に陥ることでうつ症状が出現すると考えられています。
また、こうなるきっかけとして精神的ストレスや身体的ストレスなどが指摘されることが多いですが、辛い出来事以外にも結婚や進学、就職、引越しなどといった良い出来事の後にも発症することがあります。
小児でも、学校でのいじめや進学、受験、クラス替え、部活動などの環境の変化でストレスがかかってしまい発症する可能性は少なくありません。
うつ病の治療法
うつ病の治療法で最も重要なことは、まずしっかりと休養をとることです。ストレスの原因となる場所から距離を置くことで症状が改善する可能性があります。
また、医学的な治療としては薬物療法と精神療法が挙げられます。前述したように、うつ病ではセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の機能不全が原因と考えられています。
そこで、セロトニンやノルアドレナリンの濃度を上昇させる薬が治療に用いられます。また、精神療法は専門家と対話していくことで治療を行っていく治療法です。
もしかしたら起立性調節障害かも
もし、お子さんがうつ病のような症状を訴えている場合、同じような症状を訴える病気が他にもあります。起立性調節障害がその1つです。
起立性調節障害の場合、自律神経のバランスが乱れることで起立時に脳血流が低下してしまい、倦怠感やめまい、易疲労感などうつ病と類似した症状が出現します。
もしも実際には起立性調節障害に罹患している子供に対してうつ病と誤診して薬物療法を開始してしまうと、その症状が悪化してしまう可能性もあるため慎重に評価する必要があります。
では具体的に2つの病気にはどう言った違いがあるのでしょうか?
起立性調節障害とうつ病の違い
うつ病が精神疾患であることに対して、起立性調節障害は間違いなく身体疾患です。前述したように病気の原因は起立時の脳血流低下だからです。
易疲労感、倦怠感、食欲低下、フラつきなどの症状は類似していますが、うつ病の場合は理由もなく一日中こう言った症状が出現するのに対して、起立性調節障害には症状に日内変動がある点で違いがあります。
起立性調節障害の場合、起立時にうまく交感神経が活性化しないために脳血流が低下して症状が出現するため、これらの症状は起床後や午前中に出現し、午後になると症状が改善して活動的になるという変化があります。
また、治療法も全く異なるため、2つの病気を慎重に評価するためにも不安であれば必ず医療機関を受診することをお勧めします。
さらに、医療機関受診前に、ご自宅で起立性調節障害かどうかをセルフチェックすることも可能です。下記の記事では起立性調節障害におけるセルフチェックの方法などについて詳しく解説されていますのでぜひご参照ください。
下記記事では「起立性調節障害の子供に対して親御さんができること」をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
【参考】
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)