起立性調節障害(OD)は、起立時に脳血流が低下することで朝起きられなくなる疾患です。あくまで身体的な疾患であり、朝起きてこないのがサボりややる気の問題ではないのです。
子供がなかなか起きてこなかったり起床後もだるそうで学校に行かない場合、起立性調節障害の可能性があります。
起立性調節障害は症状が自然に改善することも少なくありませんが、その症状は個人差があります。病状が進行して自分の大切な子供が不登校になってしまえば親御さんにとっても不安が膨らんでしまいます。
そんな時に親御さんが動揺して適切な行動を取れなければ子供はもっと不安になりますし、不安そのものが起立性調節障害の症状を悪化させる可能性もあります。
そこで本記事では起立性調節障害と不登校の関係性や、実際に不登校になった場合の対応方法、体験談などを詳しく解説していきます。本記事によって起立性調節障害に対する理解が深まり、適切な対応ができるようになれば幸いです。
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起立性調節障害から不登校になることはあるの?
実際に自分の子供が起立性調節障害が原因で不登校になったら、親御さんにとって非常に辛い経験になるかもしれません。いじめに遭っているんじゃないか、何か嫌なことがあったのかと心配事がたくさん湧いて出てきます。
不登校になるにはもちろんそれなりの理由があるはずです。いじめや人間関係の悪化などは連想しやすいですが、それ以外に病気の可能性もあります。なかには「学校に行きたくない」不登校ではなく、「学校に行きたいのに行けない」不登校もあるということを親御さんは認識しておかなくてはなりません。
具体的には、うつ病や貧血、甲状腺機能低下症などの疾患は意欲や活力が低下してしまい、実際にふらつき症状が出る可能性もあるため、登校したくても登校できなくなる可能性がある病気です。
また、それ以外に不登校の原因が不明の場合は、起立性調節障害が潜んでいる可能性もあります。起立性調節障害の症状が進行すれば、まさに「学校に行きたいのに行けない」不登校になってしまいます。
起立性調節障害から不登校になる割合
文部科学省のデータを見ると、小・中学校における不登校児童生徒数は196,127人(前年度181,272人)であり、前年度から14,855人(8.2%)増加しています。毎年のように増加傾向にあります。
在籍児童生徒に占める不登校児童生徒の割合は2.0%(前年度1.9%)となっています。これも毎年増加傾向にあります。
過去5年間の傾向として、小学校・中学校ともに不登校児童生徒数及びその割合は増加しています。(平成26年:小学校0.4%、中学校2.8%➡令和2年:小学校1.0%、中学校4.1%)
不登校児のなかで起立性調節障害が並存している割合は約30-40%程度と言われています。つまり、統計学的には約0.8%の児童が起立性調節障害を並存して不登校になる可能性があることになります。
しかも、年々その比率は上昇傾向にあるため、いずれは100人に1人が起立性調節障害で不登校になると考えていいでしょう。これはどのご家庭で起こってもおかしくないことだと認識しておくことが重要です。
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起立性調節障害から不登校になった場合、将来どうなる?
不登校になると他の子供と比べて学業の遅れが生じやすくなります。環境を変えて塾に通ったり、家庭教師を自宅に招くことで少しでも学業の遅れを取り戻すことも1つの手段ではあります。
中学校卒業までの義務教育はどうにか終えたとしても、将来のことを考えればどんな形であれ高校卒業の経歴は残しておきたいところです。
しかし、起立性調節障害の症状の影響で、全日制の高校に進学した4-5人のうち1人は途中で通信制に切り替えているという報告もあるため、無理に継続不可能な進学をさせる必要はありません。
もちろん子供の意思が最優先ですが、体調を鑑みて現実的に無理のないプランを設定し、精神的に負担の無いように将来に向けて焦らず準備しておく必要があります。
将来的には症状が改善していくケースがほとんどですので、「学業の遅れ=人生の失敗」と強く考えすぎないことが大切です。
起立性調節障害から不登校になった場合、進学への影響や対応している学校はある?
不登校になった場合、特に全日制の高校であれば規定の出席日数や取得単位数が足りていなければ進級することはできません。進級できず、卒業できなければ将来の自分のキャリア形成にも影響が出ます。
前述した通り、途中で全日制から定時制や通信制の学校に切り替える人も少なくありません。定時制の学校であれば、昼間から夜間にかけての通学が可能であったり、進級システムが単位制であったりと、カリキュラムに幅があり選択肢も多いです。
通信制高校であれば自宅やサポート学校での学習が中心になります。週数回の通学がある通信制高校もあり、全日制と比較して選択肢が多いです。
選択肢が多いなかで学校を選ぶ方が、各個人の起立性調節障害の症状を鑑みて適切な負荷のかかる選択ができるため、子供にとっても親御さんにとってもいい選択肢になると思います。
起立性調節障害から不登校になった場合、カウンセリングを受けたほうがよいのか
起立性調節障害の患者が必ずカウンセリングを受けなくてはいけない訳ではないですが、本人の希望や同意があればカウンセリングは非常にオススメの治療法と言えます。
カウンセリングでは専門的な訓練を受けたカウンセラーによる同意や傾聴が行われ、相談しながら次に進むべき道を模索していきます。
起立性調節障害はあくまで身体的な疾患ですが、精神的なストレスが病状を増悪させる特徴もあるためカウンセリングで心のストレスを軽減したりケアすることも効果的です。
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起立性調節障害から不登校になった方の体験談
実際に起立性調節障害により不登校になってしまった事例をいくつかご紹介します。
<中高一貫で高校に進学した直後にODを発症してしまったA子さん>
本人にも理由がわからない中で、どうしても朝起きることができずに徐々に遅刻が増え、結果的に二学期には不登校になってしまったそうです。
単位がギリギリで留年しそうな中、本人は現在の学校での進級を希望していました。しかし親御さんは症状や学力的にも厳しいと考え、通信制の学校への転校も視野に入れていました。
結果的には本人の希望を優先して留年覚悟で現在の学校に在学しているようです。子供の強い希望を優先したことは良い選択だと思いますが、症状次第ではやはり転校を視野に入れる必要がありそうです。
<半年前から徐々に朝起きれなくなった中学2年生のBくん>
症状の進行とともに完全に不登校になってしまったそうです。特に親御さんは思い詰めてしまい余裕がなく、子供に対するフォローもできないような状況だったそうです。
思いつめた親御さんは、同じような状況の親御さんの集う会に参加して、ODの子供と戦う親御さんと交流したことで精神的にかなり楽になったそうです。
これは非常に良い選択だっと思います。親御さんも人間ですから思いつめてしまうのは無理もないですが、起立性調節障害の子供にとっては悪影響です。
少しでも親御さんの負担が減れば状況が好転する可能性も高くなります。
急に自分の子供が起立性調節障害になり、家庭全体の問題にある可能性は誰にでも有り得ます。だからこそ理解を深め、適切な判断や対応が必要になるのです。
下記記事では「起立性調節障害の治し方・子供に対して親御さんができること」をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
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【参考】
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)
令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要 文部科学省