- 子供が立ち上がるとクラクラしている
- 立ちくらみのような症状のせいで通学が困難
このような症状にお悩みの方も少なくないでしょう。
子供の中でも、特に思春期の子供は自律神経が乱れやすく、それによって立ちくらみやクラクラするような症状が生じやすいです。症状が遷延すれば通学が困難になり、学校生活に支障をきたす可能性があります。
また、何らかの病気が背景に隠れている可能性もあるため、早期発見・早期治療が重要です。
この記事では、子供が立ち上がるとクラクラする原因や対処法、考えられる病気について詳しく解説します。
子供が立ち上がるとクラクラする主な原因
そもそも立ち上がるとクラクラする主な原因は、脳に供給される酸素量が低下しているためです。脳は非常に酸素欠乏に弱い臓器であり、酸素供給の一時的な低下、もしくは欠乏によって機能が麻痺し、立ちくらみを引き起こします。
脳に酸素を運搬するのは血液の役割ですが、血液は重力の影響を受けるため、立ち上がると体内を流れる血液が下肢の方向に多く流れてしまい、高い位置にある脳への血流が低下しやすくなります。
脳血流が低下した場合、本来であれば自律神経が働いて脳血流は一定に維持されますが、下記のような場合は脳血流を維持できなくなる可能性があるため、注意が必要です。
それぞれ詳しく解説します。
自律神経の乱れ・姿勢変化による血流低下
特に思春期の子供は自律神経が乱れやすいため、姿勢変化による脳血流の低下が起こりやすく、注意が必要です。
通常は自律神経が機能し、脳血流が低下しそうな時には全身の血管を収縮させたり、心拍動を強めることで脳血流を自動で一定に維持するため、立ちくらみやクラクラは起こりません。
しかし、小児で自律神経が乱れていると、この反応が起こらないため、起立とともに脳血流が低下し、立ちくらみやクラクラ感が生じる原因となります。
特に、仰向けから立ち上がる場合は脳の高さが急激に高くなるため、脳血流が最も低下しやすく、注意が必要です。
水分不足・塩分不足
子供が立ち上がるとクラクラする主な原因として、水分不足・塩分不足が挙げられます。
脳に十分量の酸素を送り届けるためには、肺から吸収された酸素を含んだ動脈血が心臓からしっかり拍動される必要があるため、仮に心臓の機能が正常であっても、血液量そのものが少ないと十分量の酸素を運搬できません。
子供で血液量が少なくなる場合、出血などを認めない限りは水分不足もしくは、塩分不足が原因であることが多いため、特に水分不足や塩分不足に陥りやすい夏場は注意が必要です。
また、ヒトは睡眠中に多量に発汗しており、特に夏場にエアコンもつけずに就寝した場合、寝汗をかくことで起床時はかなりの脱水状態に陥っているため、寝起きの立ち上がりには注意が必要です。
朝食を抜く・偏食によるエネルギー不足
子供が立ち上がるとクラクラする主な原因として、朝食を抜く、もしくは偏食によるエネルギー不足が挙げられます。
脳が活動するために必要なエネルギーを生み出すためには、摂取した糖質を代謝する必要があり、この代謝の過程で酸素を使うため、脳が機能するためには酸素と糖質のどちらもが必要不可欠です。
しかし、特に思春期の子供は朝食を抜いてしまう子供も少なくありません。前日の夕食以降、何時間も糖質を摂取しないため、翌日の午前中は低血糖に陥りやすく、立ちくらみを起こしやすくなります。
また、偏食の子供の場合も、血糖値が乱高下しやすく、脳に安定して糖質を供給できなくなるため、立ちくらみを起こしやすいです。
睡眠不足や生活リズムの乱れ
子供が立ち上がるとクラクラする主な原因として、睡眠不足や生活リズムの乱れも挙げられます。先述したように、立ちくらみの原因となる脳血流の低下においては、自律神経の機能が大きく寄与します。
この自律神経は血圧や脳血流以外にも、睡眠や体温、排尿、排便、脈拍など、さまざまな生理機能をコントロールしているため、生活リズムの乱れやそれに伴う睡眠不足は自律神経の乱れを引き起こし、脳血流の調節能力にも支障をきたすのです。
特に近年ではスマホを持つ子供が増え、就寝直前までのスマホ操作による睡眠習慣の乱れが問題視されています。また定期的な運動習慣や規則正しい食生活は自律神経を整える意味でも大変重要であり、これらが乱れている子供も注意が必要です。
睡眠や日常生活の質が自律神経に与える影響は少なくないため、立ち上がるとクラクラする子供はこれを機に生活を見直してみると良いでしょう。
気圧・天候変動による影響
子供が立ち上がるとクラクラする主な原因として、気圧・天候変動による影響も挙げられます。天候と脳への血流がどう関係あるのか、疑問を抱く方も少なくないでしょう。
脳への血流を規定する要素は、血液量、心機能、血管抵抗の3つであり、本来であれば、このどれかが低下しても、他の2つの要素が代わりに機能することで血圧や脳血流を維持しようと働きます。
例えば、大量出血や脱水で血液量が減少すれば、自律神経が作用して心臓が強く早く鼓動し、全身の血管を収縮させることで血圧や脳血流を維持するわけです。
しかし、急激な気圧の低下は末梢血管を拡張させてしまうため、血管抵抗が低下してしまい、脳血流が低下しやすくなることで立ちくらみやクラクラが生じるため、注意が必要です。
子供が立ち上がるとクラクラする場合の対処法
子供が立ちくらみでクラクラしてしまうと、通学が困難になったり、授業中に倒れ込んでしまうなど、学校生活に大きな支障をきたします。
また、受験期の子供の場合、学業がままならず、その後の進路にも影響が出る可能性があるため、早期発見・早期治療が肝要です。
そこで、子供が立ち上がるとクラクラする場合の対処法を5つ紹介します。
症状が出たらまず安静にする
子供が立ち上がるとクラクラしている場合、まずは安全な場所に移動して座る、もしくは横になることが重要です。座ったり横になることで脳の位置を立位よりも低く保つことができ、脳血流を上昇させることができます。
また、脱水が疑われる場合は水分補給も積極的に行いましょう。水分補給することで血液量を増やすことができるため、脳血流はより保たれやすくなります。なお、ただの水を飲むよりも塩分などを含む飲料の方が脱水対策としては効果的です。
また、安静を保つことは二次被害を予防する上でも重要です。立ちくらみのある状態で動いてしまうと、そのまま転倒・転落する可能性があり、急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫などの頭部外傷を招く可能性があるため、必ず安静を保ちましょう。
ゆっくり立ち上がる習慣をつける
子供が立ち上がるとクラクラしている場合、ゆっくり立ち上がることを習慣づけることも重要です。急激に立ち上がると脳が一気に高い位置に移動するため、血流の低下が著しく、自律神経による脳血流維持作用が間に合わない可能性があります。
そこで、仰向けから半座位、座位、立位と段階を踏んでゆっくり体勢を変えることで、自律神経による脳血流維持作用が機能し、脳血流が維持されやすくなります。
ベッドから起き上がる際は、すぐに立ち上がるのではなく、片足ずつ地面につけて、時間をかけてゆっくり立ち上がることも立ちくらみを予防する観点では重要です。
バランスの良い食事・適度な運動を行う
子供が立ち上がるとクラクラしている場合、バランスの良い食事の摂取や適度な運動を日常的に行うことも重要です。バランスの取れた食事や適度な運動は自律神経を整える効果があり、立ちくらみを予防すことができます。
食事面においては特にタンパク質の摂取が重要で、神経細胞や筋細胞の発達のためには必要不可欠な成分です。また、運動習慣を身につけることで下肢の筋肉が発達し、脳血流が保たれやすくなります。
立ち上がった時には血液は下肢の方向に多く流れてしまいますが、下肢の筋肉が発達していれば筋肉が血管を締め上げ、血流を脳や上半身に多く移動させることができるためです。
食事や運動は立ちくらみ以外にも、健康的な発育や睡眠の質の向上にもつながるため、日常から意識して過ごしてみると良いでしょう。
睡眠と生活リズムを整えて自律神経を安定させる
子供が立ち上がるとクラクラしている場合、睡眠と生活リズムを整えて自律神経を安定させることも重要です。繰り返しになりますが、自律神経はさまざまな生理機能を調整しているため、睡眠や生活リズムが乱れてしまうと自律神経の機能も乱れ、立ちくらみを起こしやすくなります。
理想的な睡眠時間は個人差も大きく、必ずしも「〇〇時間以上が最適」という決まりはありませんが、自身の身体にあった睡眠時間を毎日しっかり取れるように、意識して行動すると良いでしょう。
また、睡眠の質も重要であり、特に子供の場合は就寝直前の運動や入浴によって睡眠の質が低下してしまう可能性があるため、必ず就寝の3-4時間以上前には運動は控え、入浴を済ませておくと良いでしょう。
症状が続く場合は小児科を受診する
子供が立ち上がるとクラクラしてしまい、その症状が遷延する場合は必ず小児科を受診すべきです。通常、立ちくらみは一過性の症状であり、一時的にはクラクラするものの、安静を保てば改善します。
しかし、何度も繰り返す場合は何らかの病気を発症している可能性が高く、原因となっている病気の治療を行わないと症状を改善できない可能性があります。子供で立ちくらみを起こしやすい病気としては、起立性調節障害、貧血、めまい症、脱水などが代表的です。
特に、症状が繰り返す、もしくは他の症状(倦怠感や腹痛・嘔気など)を認める場合は、何らかの病気が隠れている可能性があるため、小児科で精査する必要があります。
なお、小児科に通うのは中学3年生までで、高校生以上は一般内科を受診するのが一般的です。
立ち上がるとクラクラする症状で悩んでいた子供の体験談と改善事例
- 立ち上がるとクラクラする症状はどのように改善するの?
- ずっとこのままだったらどうしよう
このような不安や疑問を抱かれる親御さんも少なくないでしょう。
多くの場合、立ちくらみやクラクラする症状は一過性であり、成長とともに改善しますが、中には症状が遷延し、学業や進級に支障をきたしてしまう子供もいます。
他の改善事例は自分の子供の改善にも活かせるため、ここでは実際の体験談と改善事例を3つ紹介します。
11歳女子:生活習慣の改善で改善した事例
Aさんは11歳の女子で、これまで毎日規則正しく健康的な生活を送っていました。しかし、高学年になって塾に通うようになったため、親御さんがスマホを渡したことをきっかけに生活習慣が乱れてしまいます。
今までは遅くても23時までには寝ていたものの、スマホを触る時間が増え、24時を超えても寝ないようになってしまいました。同時に、朝なかなか起床せず、徐々に起床時間も遅くなっていったそうです。
ある日、Aさんを呼んでも起きてこないため、親御さんが寝室に起こしに行ったところ、起き上がった約10秒後に立ちくらみと眩暈に襲われ、その場に座り込んでしまいました。
数分休んでから再度起き上がると、やはり立ちくらみを認めたため、通学を諦めて近隣の小児科を受診しました。問診や検査の結果、検査では明らかな異常を認めず、生活習慣が崩れて自律神経が乱れている可能性を指摘されたそうです。
そこで、規則正しい睡眠を確保するため、22時にはベッドに入るようにしたそうですが、スマホを触っていると結局眠れず、あまり効果を得られませんでした。そこで、スマホを触るのは20時までとルールを決めたところ、これが功を奏したそうです。
布団に入ってスッと眠れるようになり、起床時の熟睡感を得られるようになりました。立ちくらみの再発予防のため、今でも就寝前のスマホいじりは控えているそうです。
13歳男子:寝る前の水分摂取で改善した事例
13歳のB君は元気な男の子で、中学に入ってからはサッカー部に所属し、毎日部活動に励んでいました。朝からたくさんご飯を食べ、毎晩同じような時間に寝ており、生活は規則正しかったそうです。
しかし、8月に入ってから徐々に起床時の目覚めが悪くなり、ある日起き上がった後にクラクラと立ちくらんでしまい、起き上がれなくなったそうです。その時は夏バテと考えましたが、その症状はそこから連日のように続いてしまいました。
寝れば治ると考えてたくさん睡眠を取っても症状は改善せず、仕方なく小児科を受診したところ、脱水気味であることが指摘されました。B君は代謝も良く、汗をかきやすい体質であり、真夏の寝室でエアコンをつけずに寝ていたため、睡眠中に脱水に陥っていたそうです。
そこで、エアコンをつけ、寝る前にしっかり水分摂取して寝るように対策したところ、朝の倦怠感や立ちくらみは改善し、すっきりと起きられるうようになったそうです。それ以降、こまめに水分摂取するように意識が変わったそうです。
13歳女子:小児科受診で改善した事例
13歳のCさんは食事や睡眠など、毎日規則正しい日々を送っていました。しかし、ある日通学中のバスの中で立っていると、急に立ちくらみと眩暈に襲われてその場で座り込んでしまったそうです。
近くに座っていた人がシートを譲ってくれたため、シートに座って少しすると症状は改善したそうです。その日は親御さんに迎えにきてもらい学校をお休みしましたが、翌日以降は朝ベッドから起きても同じ症状を認めました。
親御さんがネットで調べたところ、脱水の可能性があると考え、水分摂取をするよう促しましたが、症状は改善されなかったため、小児科に受診しました。
診察の結果、Cさんは生理に伴う高度な貧血を認めていることが明らかとなり、それによって立ちくらみが起きていると診断されました。鉄剤を処方されて内服を始めたところ、倦怠感は徐々に薄れ、立ちくらみも改善したそうです。それ以降、生理の際には鉄剤を飲むように工夫して立ちくらみに対策しているそうです。
子供が立ち上がるとクラクラするときに考えられる病気
上記で紹介したような、生活習慣の改善やセルフケアでも立ちくらみが改善しない場合、何らかの病気を発症している可能性があります。
放置すればさらに症状が進行してしまう可能性もあるため、早期に医療機関を受診し、適切な治療を受けることが重要です。
子供が立ち上がるとクラクラするときに考えられる病気は主に下記の4つです。
起立性低血圧
子供が立ち上がるとクラクラするときに考えられる病気として、起立性低血圧が挙げられます。起立性低血圧とは、その名の通り、起立時に血圧が低下し、めまいやふらつき、立ちくらみ、失神などの症状をきたす疾患です。
主な原因は血圧を維持する自律神経の乱れであり、自律神経が乱れる原因はバランスの悪い食事摂取、睡眠時間や睡眠の質の低下、運動不足、ストレスなどさまざまです。
特に午前中に症状が強く出やすく、午後になると改善するという特徴があります。子供の場合、成長の過程で自律神経が不安定になりやすいため、起立性低血圧を発症しやすく注意が必要です。
成長とともに自然軽快することも少なくありませんが、中には重症化してしまう子供もいるため、遷延する場合は必ず医療機関に受診しましょう。
鉄欠乏性貧血
子供が立ち上がるとクラクラするときに考えられる病気として、鉄欠乏性貧血が挙げられます。鉄欠乏性貧血とは、赤血球を作る上で必要不可欠な鉄分が体内で不足し、十分量の赤血球を作ることができず、さまざまな症状をきたす病気です。
赤血球の重要な役割として全身の臓器や筋肉への酸素の運搬が挙げられますが、鉄欠乏性貧血の場合は十分な酸素を運搬できなくなってしまうため、めまいや立ちくらみ、息切れ、動悸、倦怠感などの症状をきたします。
主な原因は鉄分の摂取不足ですが、女性の場合は生理に伴う出血でも発症する可能性があります。鉄分の豊富な食事(レバー・魚介類・小松菜・ほうれん草など)を積極的に摂取するか、鉄剤の内服が主な治療です。
脱水症
子供が立ち上がるとクラクラするときに考えられる病気として、脱水症の可能性も挙げられます。脱水に陥ると血液量そのものが減少し、脳への血流が低下しやすくなってしまいます。
特に子供は大人と比較して、皮膚や呼吸、粘膜から無意識に失われる水分である不感蒸泄(ふかんじょうせつ)の量が多く、無意識に脱水状態になりやすいです。
また、睡眠中は水分摂取できないにも関わらず、多量に発汗することが知られており、起床時は脱水状態に陥りやすいため、注意が必要です。
塩分を含む飲料をこまめに摂取することで予防できるため、特に夏場のように発汗しやすい条件下では、こまめな水分摂取を心がけると良いでしょう。
まれに心血管系の疾患
子供が立ち上がるとクラクラするときに考えられる病気として、まれに心血管系の疾患の可能性もあるため、注意が必要です。
先述したように、脳への血流を規定する要素は、血液量、心機能、血管抵抗の3つであり、中でも血管抵抗、もしくは血液量が低下することで立ちくらみが生じることがほとんどです。
しかし、ごく稀に何らかの心血管系疾患を発症してしまうと、十分な血液を脳に送り届けることができなくなるため、血液量や血管抵抗が十分であっても脳血流が低下する原因となります。
具体的には、心室中隔欠損症、ファロー四徴症、川崎病、心筋炎などの疾患が挙げられ、進行すれば死に至る可能性も高い病気であるため、注意が必要です。
もしかしたら起立性調節障害かも
子供が立ち上がるとクラクラする場合、もしかしたら起立性調節障害の可能性もあります。起立性調節障害は小児における起立性低血圧のことであり、自律神経の乱れによって脳血流が低下してしまう病気です。
起立性調節障害に陥ると、本来朝に活性化すべき交感神経が活性化しないことで起床困難となり、立ちくらみやめまい、さらには腹痛・嘔気など、さまざまな症状をきたします。
多くの場合は、成長とともに自律神経の乱れも改善し、自然に軽快する病気ですが、中には重症化してしまい、通学が困難になってしまう子供もいます。
そのため、立ち上がるとクラクラする症状が遷延する場合は、起立性調節障害の可能性も考慮し、早期に医療機関で診断・治療を行うことが重要です。
下記の記事では、子どもにおける起立性調節障害のセルフチェック方法を詳しく紹介しているため、気になる方はぜひ一度チェックしてみましょう。







