「身体は疲れているはずなのに夜になると目が冴えて眠れない」「疲れているのに眠れないのは何かの病気かも?」
このような不安や悩みをお持ちの方も少なくないでしょう。身体は疲れているのに眠れない場合、暴飲暴食や乱れた食生活などの生活習慣が原因の可能性があります。
また、場合によってはうつ病や睡眠時無呼吸症候群などの病気を発症している可能性もあるため、注意が必要です。これらの病気は放置すると、最悪命の危険性もあるため、早期発見・早期対策が非常に重要です。
そこで本記事では、疲れているのに眠れない原因や、原因として考えられる病気について解説します。その際に取るべき対処法についても紹介するため、不眠に悩む方はぜひご一読ください。
疲れてるのに眠れないのはなぜ?原因を解説
疲れているのに眠れないときはまずは自身の生活習慣や精神状態を見直してみましょう。睡眠は日常生活のちょっとしたことでも簡単に阻害されてしまうためです。
ここでは、特に頻度の多い4つの原因について解説します。
誤った食習慣
誤った食習慣は、疲れてるのに眠れない原因の1つです。就寝直前まで暴飲暴食を繰り返す場合、胃が張ってしまうため、仰向けになった時に息苦しさを自覚してなかなか寝付けなくなります。
また、ようやく眠れたとしても、消化によって体内で熱が産生されてしまうため、深部体温がなかなか下がりません。内山らの報告によれば、深部体温の低下によって体内の酵素反応が不活発化し、代謝が低下することで脳を含む全身の休息状態が作り出されるとしています。
つまり、就寝直前の暴飲暴食は深部体温の低下を抑制してしまうため、より良い睡眠状態を作り出すことが困難となり、睡眠の質自体を低下させてしまうのです。
さらに、就寝前の飲酒やカフェイン摂取も注意すべきです。高容量のアルコール摂取は一時的にREM睡眠を減少させ、深い眠りを増加させるため寝付きが良くなります。しかし、その後産生されるアルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドには神経の覚醒作用があります。
アセトアルデヒドの蓄積に伴って精神が興奮し、良質な睡眠が阻害されてしまうため、就寝前の飲酒は控えるべきでしょう。またカフェインも同様に、中枢神経系の覚醒作用を持つため、疲れてるのに眠れない原因となります。
夜の飲酒やコーヒーの摂取、暴飲暴食などの生活習慣は気付かぬうちにルーティンワークになってしまうこともあるため、これを機に改めて見直してみると良いでしょう。
過剰なストレス
疲れてるのに眠れない場合、心や身体に過剰なストレスがかかっている可能性もあります。ストレスと睡眠には密接な関わりがあるためです。
睡眠を得るためには、自律神経のうち副交感神経が活性化する必要がありますが、ストレスは交感神経を活性化させ、副交感神経の活性化を抑制してしまうため、思うように睡眠を得ることができません。
仕事面でのストレスや対人関係のストレスなど、精神的なストレスはもちろんですが、痒みや痛みなどの身体的ストレスも同様に睡眠を阻害するため、注意が必要です。
また、ストレスと睡眠は双方向性に関与しており、睡眠不足によってさらにストレスが蓄積するため、悪循環に陥る可能性もあります。ストレスが溜まっている自覚がある方は早期に対処すべきでしょう。
自律神経の乱れ
上記でも示しましたが、疲れてるのに眠れない場合は自律神経が乱れている可能性があります。自律神経とは交感神経と副交感神経の総称であり、相互に作用し合うことで血圧や脈拍・呼吸・睡眠・体温・消化管運動などの機能を司っています。
副交感神経が活性化すれば身体は睡眠モードに傾き、交感神経が活性化すれば身体は覚醒モードに切り替わるため、睡眠にとって自律神経は非常に重要です。
しかし、ストレスや生活習慣の乱れ、女性ホルモンの乱れなどによって自律神経のバランスが乱れると、身体の疲れに関わらず眠りに付きづらくなります。
自律神経の乱れは睡眠以外にも、消化が悪くなる・血圧の変化でめまいがするなどの症状も併発するため、このような症状がある方は自律神経の乱れを疑いましょう。
出不精
出不精は疲れてるのに眠れない原因です。特に、午前中や日中に屋外に出ない方は夜に眠れなくなる原因となるため、注意が必要です。
日中に太陽光を浴びることで、体内ではセロトニンと呼ばれるホルモンが分泌されます。このセロトニンは夜間、光刺激がなくなると睡眠ホルモン「メラトニン」の原料となり、このメラトニンによって自然な睡眠が誘われます。
そのため、日中の光刺激は睡眠にとって非常に重要であり、出不精だと思ったように入眠できなくなる可能性があるため、注意が必要です。
疲れてるのに眠れない時に考えられる病気とは?
上記のように生活習慣を整えても、眠れない時は何らかの病気に罹患している可能性があります。
具体的には下記のような病気が挙げられます。中には、放置すると命に関わるような病気もあるため、早期にセルフチェックして、適切な対処を心がけましょう。
うつ病
うつ病を発症すると、身体の疲れに関わらず眠れなくなる可能性があります。うつ病は脳内のセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質がうまく機能しなくなることでさまざまな症状をきたす精神疾患です。
主な症状としては気分の落ち込み・意欲の低下・不安感・焦燥感・興味や喜びの減退・思考力や集中力の低下・易疲労感・希死念慮などが挙げられます。
それとともに不眠や過眠などの睡眠障害が出現するため、身体の疲労感とは無関係に睡眠が障害されます。特に注意すべきは希死念慮であり、放置すれば自殺企図の可能性もあるため、早期から適切に対策すべきです。
上記のような症状がある方は、早急に精神科や心療内科への受診を検討しましょう。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群も、疲労感に関係なく夜間の睡眠が障害される原因です。睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に気道が狭くなることで取り込める空気の量が少なくなる、もしくは一時的に完全に停止する病気です。
主な原因は肥満・小顎・巨舌・アデノイドなどの解剖学的要因であり、睡眠中に舌根が沈下し、咽頭部の筋肉が弛緩することでより気道が狭くなるため、睡眠時無呼吸症候群を発症します。
睡眠中に取り込める酸素の量が低下するため、寝苦しくなかなか寝付けないだけでなく、睡眠中の中途覚醒も増加します。さらに、睡眠時無呼吸症候群による持続的な低酸素状態は、身体や脳に多大なストレスを与える原因です。
ストレスによって体内では交感神経が優位な状態となるため、やはり睡眠は阻害されやすくなります。家族やパートナーから睡眠時のいびき・無呼吸を指摘されている方は一度医療機関を受診したほうが良いでしょう。
睡眠相後退症候群
睡眠相後退症候群も、身体の疲労に関わらず眠れない状態になる病気の1つです。睡眠相後退症候群はその名の通り、入眠と起床の時間がそのまま後ろの時間にずれ込んでしまう病気です。
主な原因は深夜のスマホいじりなどであり、夜間の光刺激によってメラトニンの分泌が阻害されるため、眠気が減退して眠れなくなります。また、朝起きるのが遅れることで太陽光を浴びる時間も減少し、日中のセロトニン分泌も低下します。
これらの要因によって、体内時計が乱れることで睡眠時間が不定期になってしまうわけです。特に最近は小学生や中学生・20代や30代でもスマホいじりで発症しやすい環境であり、通学や通勤に支障をきたすため早期に対策が必要です。
更年期障害
疲労感があるにも関わらず眠れない場合は、更年期障害も疑いましょう。更年期障害とは、加齢に伴う女性ホルモンの分泌の変化によって自律神経も乱れ、さまざまな症状をきたす疾患です。
特に40代後半の中年女性で発症しやすい病気ですが、男性でも男性ホルモンの分泌量の変化によって発症しうるため、注意が必要です。主な症状は、不安感・焦燥感・のぼせ感・ほてり・発汗とともに不眠症状も出現します。
更年期障害は女性ホルモンを体外から補填することで症状を緩和できるため、上記症状が当てはまる方は早期に医療機関を受診しましょう。
疲れてるのに眠れない時の対処法
疲れているのに眠れない日が続く場合は、以下3つのステップで対処しましょう。それぞれ解説します。
生活習慣を整える
疲れてるのに眠れないときは、まず生活習慣を整えましょう。先述したように、生活習慣が睡眠に与える影響は大きく、特に食事や運動はその内容やタイミングでも睡眠の質を上下させます。
また、食事や運動以外にも、入浴時間にも注意しましょう。入浴自体は深部体温を上昇させ、その後の就寝時の深部体温低下の幅を広げるため、睡眠の質を向上させてくれます。
しかし、就寝直前の入浴は深部体温が上がってから下がるまでに時間がかかるため、むしろ睡眠の質を低下させる作用があります。そのため、適切な入浴時間は最低でも就寝の2時間前までです。
そのほか、枕の高さが合っていない・過剰な湿度や温度、乾燥や寒冷・騒音や光刺激など、不適切な就寝環境も眠れない原因となるため、改めて見直してみると良いでしょう。
自分に合ったストレス発散方法を見つける
生活習慣を見直しても改善しない場合は、自分に合ったストレス発散方法を見つけましょう。ストレスは睡眠にとって大敵であり、放置すればうつ病などの精神疾患の発症の可能性もあるため、注意が必要です。
逆にうまくストレスを発散できれば、自律神経が安定してよく眠れるようになるでしょう。軽いストレッチやヨガ・気分転換の外出や読書など、ストレスの発散方法は人それぞれです。
自分にあったストレス発散方法を見つけておくと良いでしょう。
医療機関を受診する
生活習慣を整え、ストレスを発散しても眠れない場合、医療機関への受診を検討しましょう。上記で解説したような、眠れなくなる病気を発症している可能性があるためです。
中でも、睡眠時無呼吸症候群やうつ病は放置すると命に関わる危険性もあるため、なるべく早期に治療介入することが好ましいです。うつ病の場合、先述したように放置すれば自殺などのリスクがあります。
睡眠時無呼吸症候群の場合、持続的な低酸素状態に陥ることで身体にストレスがかかり、不用意に交感神経が活性化されるため、高血圧や糖尿病・心房細動などの不整脈・心筋梗塞や脳卒中の発症率を上昇させることが知られています。
これらの疾患は早期に診断し、適切に対策すれば十分改善が見込めるため、早期発見・早期診断を心掛けましょう。
もしかしたら起立性調節障害かも
疲れているの眠れない場合、もしかしたら起立性調節障害の可能性もあります。
起立生調節障害は身体の急激な発達に自律神経の成長が追いつかず、自律神経が乱れることでさまざまな症状をきたす身体疾患です。小学生高学年から中学生で発症しやすい病気ですが、成人や大人になってからも発症しうる病気です。
具体的な症状としては特に午前中や起床時に強いめまい・ふらつき・腹痛・倦怠感などが挙げられますが、午後や夕方になると症状が改善することが知られており、夜間は活発になるため眠れなくなります。
当然、放置すれば通学や通勤に支障をきたし、社会生活にも大きく影響するため、早期発見・早期診断が重要です。下記の記事では、起立性調節障害のセルフチェックについて詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてセルフテェックを実践しましょう。
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<参考文献>
・ヒトの体温調節と睡眠
・うつ病 - 10. 心の健康問題
・男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群)