起立性調節障害とは

睡眠リズム障害の6つの治し方を解説!家族のサポート方法も紹介

2024年4月14日

 

この記事の監修者

医師(匿名)

医師歴:10年
勤務病院:某3次救急病院

一般社団法人 起立性調節障害改善協会

「子供がなかなか夜寝付けなくなった」「以前までは朝スッキリ起きていたのに、最近はなかなか起きてこないため、通学にも支障をきたしている」このようなお悩みを抱えている親御さんも少なくないでしょう。

子供がこのような症状を抱えている場合、「概日リズム睡眠覚醒障害(睡眠リズム障害)」を発症している可能性があります。これはなんらかの原因で体内時計にズレが生じ、覚醒と睡眠の周期が乱れてしまう病気です。

症状が進行すれば、朝の通学や午前中の学業などにも支障をきたし、将来的な進路に影響が出る可能性もあるため、早期から適切に介入してあげることが重要です。

そこでこの記事では、睡眠リズム障害の治し方について詳しく解説します。また子供に対して家族ができるサポート方法についても紹介するため、ぜひご一読ください。

睡眠リズム障害の治し方とは?

睡眠リズム障害の治し方には、薬や漢方などの薬物療法、水分や塩分の摂取・運動療法など、さまざまな治療法がありますが、これらはあくまで補助的な治療であり、一番重要な治療は日々の生活習慣を整えて睡眠リズムを整える事です。

また、睡眠リズム障害に対しては一般的な睡眠薬が効きにくいと言われており、なおのこと睡眠リズムを整えるなどの非薬物療法が重要です。そこで、睡眠リズムを整えるための具体的な方法を詳しく解説します。

睡眠日誌で睡眠時間を記録する

まずは、睡眠日誌を記載して自分の睡眠時間や、睡眠のタイミングを記録しましょう。睡眠日誌をつけることで、客観的に自分の睡眠時間を評価でき、自分の認識と実際の睡眠状態の乖離を把握することができます。

横になってから実際に寝るまでの時間や、うとうとしていた時間を割り出すことで、自分の睡眠の特徴や欠点を客観的に評価できます。

正確に自身の睡眠状態を把握するためには、朝起きた時に、その前夜の睡眠状態を記録しましょう。何日間分か溜め込んで記録すると正確性が損なわれるため、毎日の日課として記載すると良いでしょう。

体内時計のズレをリセットする

睡眠リズムを整えるためには、一度思い切って体内時計のズレをリセットすることも重要です。

完全に学校を休み、最低でも3日間、できれば14日間程度、全く無理をしないようにして、自分が眠れる時間に眠って、起きるべき時間にはきちんと起きる生活を送ります。自然に目が覚めるまで必ず寝るようにします。

この間、より自然な状態で睡眠状態を把握するために、夜の光刺激は控え、朝も自然に起きた後に手動で光を点灯させ30分-2時間程度目に光が当たるように浴びてください。

最初は「睡眠不足」が蓄積されているため、必要以上に長く眠る日が続きます。通常、7時間程度の睡眠で十分な場合でも、この期間では数日間、12時間以上眠ることがありますが、それでも問題ありません。

睡眠日誌を記載しておくことで、初めて自分の身体にとって本当に必要な睡眠時間と、現在の脳の時計の時刻が明確になります。「自然に起きた時刻」が現在の「朝の時刻」であり、睡眠時間が現在必要な量です。

もし1週間後でも睡眠が乱れている場合は、さらに1週間自由に睡眠や起床を調整する必要があります。この方法で現状を把握することが、睡眠リズムを整えるファーストステップと言えます。

朝日を浴びる

上記で自身の睡眠の状態を把握した後は、睡眠リズムを整えるために、朝日を浴びることも重要です。特に朝や午前中に太陽光を浴びると、乱れた体内時計のズレが修正されると言われています。

人の体内時計は、脳の視交叉上核という部位に中心があります。 我々が生活する時間軸では1日24時間周期ですが、体内時計は1日25時間周期と言われており、本来なら1日約1時間ずつ後ろにずれ込んで行くはずです。

しかし、実際には我々は日々同じような時間に起きて、同じような時間に寝ることができます。 これは、視交叉上核に光の刺激が入ることで規則的にズレがリセットされ、24時間の周期で体内時計が調整されるためです。

視交叉上核は、視神経と情報をやり取りし、外界の明暗に応じて体内時計を調整する重要な役割を担っています。

上記のような理由から、朝日や朝の通勤などのルーティンワークによって、乱れた体内時計のズレがリセットされます。そのため、睡眠リズムを整える上では、朝日を浴びることがとても重要です。

夕方以降は暗い環境で過ごす

睡眠リズムを整えるためには、極力夕方以降は暗い環境で過ごしましょう。本来夜になると眠くなるのは、自律神経が副交感神経優位になり、体内でメラトニンと呼ばれる睡眠ホルモンが分泌されるためです。

メラトニンはセロトニンと呼ばれるホルモンが原料であり、このセロトニンは日中に太陽光を浴びることでトリプトファンなどのアミノ酸から産生されます。

つまり、日中に太陽光を浴びると大量のセロトニンが体内で産生されます。 光刺激が減少する夜になると、セロトニンは脳の松果体と呼ばれる部位に取り込まれ、セロトニンを原料にメラトニンが産生され、その結果眠気が生じるわけです。

しかし、夕方以降に暗い環境で過ごさないと、メラトニンがうまく産生されないため、眠気が誘発されず、なかなか寝付けなくなります。そのため、少なくとも就寝の2時間前までにはスマホやPCの光は避けましょう。

就寝環境を暗いまま保つ

睡眠リズムを整えるためには、就寝環境を暗いまま保つことも重要です。就寝中の光刺激は網膜から脳に刺激を与え、睡眠の質を低下させることが知られています。

遮光カーテンを用いて夜間や明け方に光が差し込まないようにしましょう。また、遮光カーテンの準備が難しい場合は部屋に付いているカーテンやブラインドで部屋を暗めにするだけでも効果的です。

それでも光が気になる人はアイマスクの装着も検討すべきです。 また、早朝に光が差し込むと睡眠の質が下がり、いつまでも睡眠リズムが整わないため、カーテンで部屋は締め切ったまま、設定した時刻に点灯する光目覚ましを活用すると良いでしょう。

生活習慣に注意する

睡眠リズムを整えるためには生活習慣にも注意しましょう。普段の何気無い生活習慣が、実は睡眠にとって良くない作用を与えている可能性があるためです。

睡眠に良かれと思って運動する方もいますが、就寝直前に行うと深部体温が上昇してしまい、睡眠の質を低下させることが知られています。就寝後に、深部体温がいかに低下するかが睡眠の質にとって肝要です。

そのため、就寝直前の運動や入浴は、リラックス効果よりもむしろ、深部体温を上昇させてしまい睡眠の質の低下を招くため、控えましょう。せめて就寝の2-3時間前には運動や入浴は終わらせておくと良いでしょう。

睡眠リズム障害は薬物療法でも効果がある?

睡眠リズム障害に対しては、薬物療法も効果的です。不眠症に対して使われる睡眠薬にはさまざまな作用機序があり、ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系・メラトニン受容体作動薬など、多くの種類があります。

これらの薬剤は眠気を誘い、睡眠リズム障害の子供に対しても有効な治療法となり得ますが、一方で依存性や日中の眠気に伴う骨折・交通事故のリスクもあるため、その使用には注意が必要です。

特に、多剤併用や高用量使用,長期使用により上記のようなリスクはさらに増加するため、注意が必要です。

以上のことからも、睡眠リズム障害に対して基本的に十分な生活指導をはじめとする非薬物療法メインでの治療が効果的であり、上記で解説した睡眠リズム障害の治し方をまずは実践することを勧めます。

睡眠リズム障害に対する家族のサポート方法

ここまで、睡眠リズム障害の子供自身が実践すべき行動について解説してきましたが、より良い改善のためには子供本人だけでなく、家族のサポートが必要不可欠です。

ここでは、睡眠リズム障害に対する家族のサポート方法について詳しく解説します。

否定せず許容する

子供の睡眠リズム障害を治すために、家族は子供を否定することなく、子供の意見や考えを許容してあげましょう。

特に発症初期には、つい親御さんは朝起きれない、もしくは夜眠れない子供に対して、サボっていると勘違いしてしまい、叱責してしまうケースも見られがちです。

しかし、不用意に叱責してしまうと精神的ストレスを与えてしまい、自律神経の乱れを助長して睡眠リズムがさらに障害される可能性があります。 そのため、睡眠リズムの子供のことは否定せず、その状況を許容してあげることから始めましょう。

学校と連携を取る

学校と連携を取ることも家族のサポートとして重要です。子供の状況を理解してもらい、定時では通学できないことや、一定期間休学することを学校に理解してもらう必要があります。

また、通学できたとしても睡眠リズム障害によって日中に眠気が出て授業中に寝てしまう可能性もあり、他の子供よりも学業が遅れてしまう可能性もあります。

そのため、学校と連携をとって授業の資料を家に送ってもらったり、進級や進学について相談すると良いでしょう。

自宅で学業を支える

睡眠リズムが乱れて通学が難しい子供に対しては、自宅で学業を補ってあげるといいでしょう。睡眠リズム障害によって学業が遅れれば精神的ストレスとなり、症状がさらに悪化する可能性もあるためです。

学校からの資料をもとに一緒に勉強を手伝ったり、自習できるように学習帳などを揃えるのも効果的です。また長期化するようなら家庭教師の導入を検討するのも一つの選択肢です。

学業が遅れて子供が精神的ストレスを抱えないように、親御さんがしっかり家庭での学習もサポートしてあげると良いでしょう。

【まとめ】睡眠リズム障害の治し方

この記事では、睡眠リズム障害について詳しく解説しました。睡眠リズム障害はなんらかの原因で体内時計にずれが生じ、覚醒と睡眠の周期が乱れてしまう病気です。

子供で発症した場合、通学や学業に支障をきたす可能性があるため早期に介入して治療すべき病気であり、主な治療法は薬物療法などではなく、生活習慣の是正などを中心とした非薬物療法です。

体内時計のズレをリセットするためには、まずはじめに1週間ほど自由に睡眠できる時間を確保し、そこで自分の身体に真に必要な睡眠時間を把握することが重要です。

その他、朝日を浴びたり、夜に就寝環境を暗く保つことで改善が期待できるため、親御さんのサポートのもと、是非本書を参考に治療を始めてみると良いでしょう。

もしかしたら起立性調節障害かも

起立性調節障害とは、特に小学生高学年から中学生にかけて身体が急激に成長する際、自律神経の成長が身体の成長についていけず、さまざまな症状をきたす身体疾患です。

自律神経は血圧・脈拍・睡眠・体温・消化管運動・排尿など多くの機能を調整しているため、自律神経のバランスが乱れることで各機能に支障をきたします。

起立時のめまいやふらつき、起床困難、腹痛などさまざまな症状が出現しますが、これらの症状が特に起床時や午前中に生じやすいため、起立性調節障害に罹患すると通学や学業に支障をきたします。

多くの場合は身体の成長が鈍化するとともに自然軽快しますが、中には重症化してしまう子供もいるため、早期に診断し、適切に治療することが重要です。

下記の記事では、子どもにおける起立性調節障害のセルフチェック方法が詳しく解説されているため、下記の記事を参考にまずはセルフチェックしてみましょう。

関連記事:起立性調節障害のセルフチェックリスト(子ども)|すぐにできる診断テスト

【参考文献】 ・日本小児心身医学会

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

起立性オンラインセミナー

トトノエライトプレーン

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