起立性調節障害の方の体験談

起立性調節障害を患っていたS.Tさん(中学校1年生 男性)の体験談

この記事の監修者

匿名(医師)

内科・小児科

 

起立性調節障害を患っていたS.Tさん(中学校1年生 男性)の体験談

体調の悪い子供を見て不安にならない親御さんはいないと思います。特に、小学生や中学生の子供は新生児や乳児と異なり自分の不調や辛さを言葉で表現できてしまうため、親御さんにとっては心を痛めやすいかもしれません。

子供は大人と違ってガンや高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病には罹患しにくいですが、逆に風邪などの感染症や腹痛、下痢などの症状を訴えやすく、不調を訴える子供に対して親御さんには適切な対応が求められます。

なかにはこれといった理由なくふらつきやめまい、嘔気、腹痛などの症状が毎日のように持続してしまう起立性調節障害(OD)という病気もあり、身体が急速に成長する小学校高学年から中学生の時期に罹患しやすい病気です。

この年代の子供を持つ親御さんにとって、起立性調節障害はとても厄介な病気と言えます。腸炎であれば腹痛や嘔気が主な症状となりますが、起立性調節障害の場合子供によって主症状にばらつきがあり、また改善する治療や方法にも個体差があるからです。

逆に言えば、起立性調節障害の子供を持つ親御さんにとって、様々なケースや治療法を知る事が自分の子供の症状の改善のヒントにつながる可能性もあるのです。

そこで本記事では、多くの起立性調節障害の子供に対して医師として診療してきた筆者が、実際に起立性調節障害の治療に取り組んだ患者様を例に実体験をご紹介させていただきます。これによって少しでも起立性調節障害に苦しむ皆さんの一助となれば幸いです。

起立性調節障害を患っていた「S.T」さんの特徴

私が診察させていただいたS.Tさんは、当時中学1年生の男の子でした。小学校時代は勉強が好きではなく学業はそこまで得意ではないものの、ボーイスカウトや水泳を習っていて、とても活動的で友人も多い男の子だったそうです。

親御さんから聞く本人の性格は、とにかく元気で明るいまっすぐな性格だったそうです。筆者と初めて対面したときも、多少の人見知りはあれど自分のことを素直に話してくれる姿が印象的でした。

生まれてからというもの大きな病気にかかった経験はありませんが、小学校低学年の時に、他の子供と比較して若干落ち着きがなく、不注意や忘れ物も多く、注意欠如・多動性障害(Attention-Deficit Hyperactivity Disorder :ADHD)の可能性を指摘されたことがありました。

しかし、それ以外の成長や発達には問題なく、身体的に健康でした。

起立性調節障害を患ったきっかけ・症状・対策・経過等

<中学1年 春>

S.Tさんが最初に症状を自覚したのは中学校に入学して間もない頃です。中学校に進学してから1ヶ月経過した頃から原因不明の倦怠感やめまいを認めました。

通学経路が徒歩からバスになったり、水泳部に入部したばかりで環境の変化が目覚ましい時期でもあったそうです。そんななか、徐々に体調が悪くなっていく子供を見て親御さんも不安を抱いていたそうです。

当初は進学間もない子供が環境の変化に馴染めず、身体的にも精神的にも疲労が溜まっているのではないかと考え様子を見ていたそうですが、5月中旬には通学にも支障を来すようになってしまったそうです。

特に午前中に症状が強く、起立後には回転するようなめまい、嘔気を伴っていたそうで、朝の通学中にバスの中で立っていたら倒れ込んでしまったり、バスから降りた後に歩けなくなることもあったそうです。

そこで、S.Tさんは近隣の小児科を受診しました。しかし、軽い診察と問診のみで検査などは行われず、不安障害やパニック障害の疑いで抗不安薬を処方されるのみでした。つまり、小児科では精神的ストレスによる症状と考えられていました。

特にバス内での症状が強かったため、閉鎖空間で症状の出やすいパニック障害の可能性が高いと説明され治療が始まりました。しかし、1.2週間経過してもS.Tさんの症状は改善せず、むしろ症状が悪化していく姿を見た親御さんは不安だったそうです。

<中学1年 6月>

6月に入ると自身での通学が困難になり、午前中は通学しない、もしくは親御さんが車で送り迎えをしてどうにか通学させるような状況にまで悪化していました。そこで、セカンドオピニオンで筆者の元に受診する運びになりました。

受診時の主な症状は、午前中に強い倦怠感とめまい、活力の低下、それに伴う食欲の低下などが挙げられます。またバスを使わなくても症状があり、パニック障害の可能性は低いと考えました。

そこで、パニック障害や不安障害よりはむしろ起立性調節障害を強く疑い、新起立試験などを実施した結果、起立時の血圧低下と脈拍の変化を認め、新たに起立性調節障害の診断を下しました。

そこでまず最初に、起立性調節障害という疾患は精神疾患ではなく急激な肉体の成長に自律神経の発達が追いつかないことで発症する身体疾患であることを十分に理解してもらい、その上で治療として非薬物療法の重要性をお伝えしました。

良好な理解が得られ、特に親御さんは子供が精神疾患ではないことを知り安心していたように思います。非薬物療法としては、朝の起き方や通学時の姿勢、適切な食事療法を勧め実践してもらいました。

朝の起き方については、横着せずゆっくりと起き上がることを徹底するように指導しました。最初は頭だけをゆっくりと上げ、問題なければベッドの上で座位になって様子を見ます。

それでも問題なければベッドから足を下ろして前屈みになって腰を上げます。立ち上がった後も前屈みでそろりと歩き出すように指導しました。また枕元に水を用意し、飲水してから立ち上がるように伝えました。

次に通学についてですが、バスでの通学が可能ならバス内では極力座るように伝え、立位が持続するときには特に脳血流が低下しやすいため、頭を下げたり、足をクロスさせたり、靴の中で足の指をこすり合わせるように伝えました。

足をクロスさせることで下肢への血流が低下し、逆に脳への血流が増加することで症状の緩和が期待できます。また、足の指をこすり合わせることで下肢の筋肉が収縮し、これも脳への血流を増加させます。

次に、食事療法についてですが、受診当初は症状の悪化に伴い食欲が著しく低下した状態でした。また、食事の好みに偏りがあり、野菜や高タンパクな食事の摂取量が少ないことも問題でした。

適切な食事療法は、この年代の子供の体の機能を整え、骨格を育む作用があるため非常に有効な治療法です。親御さんに指導し、偏食にならないようバランスの良い緑黄色野菜や高タンパク食、鉄分、ビタミンの摂取を勧めました。

以上の非薬物療法を実施してもらい、治療から2ヶ月経った頃にはバス通学が可能なまでに症状が改善しました。治療開始から4ヶ月頃にはほとんど遅刻することなく通学できるようになりました。

治療開始から6ヶ月後には部活動への参加も再開できるようになり、非薬物療法が奏功した1例でした。

効果があった対策

S.Tさんの場合、当初は通学が困難であったため、まずは自宅内での起き方を変えてもらいましたが、これが非常に有効でした。普段は起床とともにすぐに起き上がっていましたが、起き方を変えたことでかなり症状が緩和されたのです。

その効果もあって朝起きるのが徐々に早くなり、バスでの通学も可能になりました。そこからバスでの過ごし方を意識してもらうようにしましたが、長時間座れない時は症状が出てしまうこともあったそうです。

それでも、足をクロスさせて立っていると症状が出るまでの時間が長くなり、ある程度長時間の立位も耐えられるようになりました。これらが奏功して通学も可能になった印象です。

治療開始時から行なっていた食事療法に関しては、その効果がどこまで影響したのか判断しかねますが、起立性調節障害をきっかけに正しい食生活を意識するようになったと親御さんは喜んでいました。

まとめ

今回は、筆者が診療させていただいた起立性調節障害のS.Tさんについてご紹介しました。

起立性調節障害は肉体の成長がある程度落ち着くと、自律神経のバランスも安定し自然に軽快することが多いです。S.Tさんに関しても、非薬物療法が非常に奏功したのか、自然に治っていったのか判断は難しいところです。

しかし、結果としては短期間で症状が改善したため、子供にとっても親御さんにとっても満足度の高い治療が行えたと感じています。

起立性調節障害は症状や経過が人によって異なるため、多くの体験談を知ることがみなさんの治療の糸口になるかもしれません。下記記事では他の体験談についてよくまとめられています。ぜひ参考にして見てください。

 

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