起立性調節障害の方の体験談

起立性調節障害を患っていたK.Tさん(小学校6年生 男性)の体験談

この記事の監修者

匿名(医師)

内科・小児科

 

起立性調節障害を患っていたK.Tさん(小学校6年生 男性)の体験談

以前と比べてインターネットが普及した現代では、何か行動を行う前に多くの人がインターネットで検索して、事前に調べてから自身の行動を選択していると思います。

どこかレストランに行くときは口コミを見て、何か買うときもレビューを見ると思いますが、それは病気や体調不良の時も同じです。気になる症状をインターネットで検索して、治し方や病院に行く必要性を調べた経験は誰しもがあるのではないでしょうか?

特に、体調を壊しやすい小さなお子様をもつ親御さんにとって大切な子供の体調不良は不安も大きく、色々と調べてしまう親御さんも少なくありません。なかでも起立性調節障害(OD)は多くの人が検索する病気の1つです。

起立性調節障害には特効薬などがないため、日常生活における非薬物療法が非常に重要であり、有効な非薬物療法の効果を得るには親御さんとお子さん自身の起立性調節障害に対する適切な認識や対応が必要不可欠になって来ます。

また起立性調節障害の場合、なかなか症状が改善しなかったり、人によって症状や改善方法にバラツキがある為、いろいろな人の闘病体験を知ることは非常に有意義であり、治療を進める上でも有用な方法だと思います。

そこで本記事では、多くの起立性調節障害の子供に対して医師として診療してきた筆者が、実際に起立性調節障害の治療に取り組んだ患者様を例に実体験をご紹介させていただきます。これによって少しでも起立性調節障害に苦しむ皆さんの一助となれば幸いです。

起立性調節障害を患っていた「K.T」さんの特徴

私が診察させて頂いたK.Tさんは、当時小学6年生の男の子でした。小学校低学年の時は主に学業に積極的に取り組み、学習塾に通い学校でも成績が常に上位にくるような子供だったそうです。塾や学校にも多くの友人がいました。

親御さんから聞く本人の性格は、社交性が高く誰とでも物怖じせずに話すことができる子供だったようです。筆者が初めて会ったときの印象は、小学生とは思えないほど自分の困っていることを自身の口で話してくれました。

生まれてからというもの大きな病気にかかった経験はなく、アレルギーや常用薬などもありませんでした。出生後の発育や発達にも異常は認めず、医学的には健康そのもので成長していました。

起立性調節障害を患ったきっかけ・症状・対策・経過等

<小学6年 8月頃>

K.Tさんが最初に症状を自覚したのは小学6年生の夏休み中でした。夏休み中毎日のように進学塾に通っていましたが、夏休み中の模試で一度成績が落ちてしまい、その頃から塾に通うときの体調に異変が生じていました。

進学塾には電車で15分ほどかけて通っていましたが、特に午前中の通塾や、電車内での起立時にめまいや動悸、腹痛などを自覚するようになっていたのです。

当時、親御さんは受験前の模試の成績が悪くなってしまったことで精神的に弱っていると考え、夏休みが終われば気持ちも切り替わると考えていたそうですが、実際には夏休みが明けても症状は改善するどころか、むしろ悪化してしまいました。

徒歩での通学中にも同様の症状が出現してしまい、普段学校に通う時間に起きることも難しくなり学校を休む日々が増えてしまいました。9月中旬には親御さんもはっきりと異変に気付いたそうです。

そこで、K.Tさんは近隣の小児科を受診しました。小児科では問診の結果から、親御さんの考えと同様、受験や模試の結果から来るストレス障害、不安障害という診断を受け、抗不安薬の処方を受けました。

抗不安剤内服開始から1ヶ月ほどしても症状は改善せず、むしろ悪化傾向にあったため、現在の状況に不安を感じたK.Tさん親子は、セカンドオピニオンで筆者の元に受診する運びになりました。

初めて受診された時は、K.Tさんが小学6年生の10月頃で、すでに中学受験が数ヶ月後に迫っており、めまいや動悸などの症状によって勉学が進まないことに困り切っている様子でした。

前医で処方された抗不安薬の効果は乏しく、むしろ症状を悪化させていたことからも精神疾患より起立性調節障害を強く疑い、新起立試験などを実施した結果、起立時の血圧低下と脈拍の変化を認め、新たにODの診断を下しました。

そこでまずは抗不安薬を中止し、親御さんや本人に精神疾患ではなく起立性調節障害という身体病気であることをお伝えしました。起立性調節障害がどんな病気か、どう治療していくのかなどをしっかり説明し、極力不安を軽減してもらえるように努めました。

疾患に対する良好な理解が得られ明確な検査結果も提示できたため、K.Tさん親子もひとまず安心されている様子でした。そこで次に、起立性調節障害への治療において最も重要な非薬物療法についても指導しました。

<治療(非薬物療法)>

具体的には、起床時の起き上がり方や通塾の際の立ち方、そして最も長時間に及ぶ勉学中の座位の姿勢などについて指導しました。

まず、起床時にすぐ立ち上がると脳血流の低下を誘発するため、極力いきなり立ち上がらずに、30秒ほどかけてゆっくり起き上がるように指導しました。起き上がる前に一度座位を取って症状が出現しないか確認することも重要です。

また、可能であれば起床後の立ち上がる前に、水分をコップ一杯分でも摂取してから立ち上がるように伝えました。子供は夜間の寝汗も多く、起床時は脱水傾向にあるため、飲水することで脱水を予防し脳血流低下を防ぐ効果が期待できます。

次に、通塾の起立時には脳血流が低下しやすいため、極力座れるなら座るように指示しました。座れない場合は首を前屈して極力脳が低い位置に来るようにし、足をクロスさせて下肢への血流を減らすように伝えました。

最後に勉学中の座位の姿勢についてですが、長時間の座位は下肢に血液が溜まっていってしまうため、脳血流が低下しやすくなってしまいます。そこで、足の踏み台を設置して極力足の位置が高くなるように指導しました。

また本を読むだけであれば机ではなく床に座って読むように指導しました。クッションなどを使って楽な姿勢を見つければ、脳の血流低下を防ぎながら読書ができます。

以上の非薬物療法を実施してもらい、治療から1ヶ月経った頃には症状が緩和され、少なくとも自宅での勉学には支障を来さなくなりました。治療開始から2ヶ月頃には通学も問題なく、冬休み中の朝からの通塾も問題ありませんでした。

勉学に関しては、治療期間中に遅れもありましたが、症状改善とともに徐々に成績を上げ、無事に志望校に合格することができました。

効果があった対策

K.Tさんの場合、受験前にも関わらず症状による学業の遅れがあり、治療に対して本人が非常に積極的であった点がよかったと感じています。また非薬物療法のなかでは、座位の姿勢の変化も非常に有効でした。

K.Tさんは受験生であり、長時間座位で勉強することも多く下肢に血流が取られやすい状態が続いていたと思われます。座位の姿勢を変えたことで症状が出にくくなり勉強が捗ったことでストレスも緩和されたようです。

まとめ

今回は、筆者が診療させていただいた起立性調節障害のK.Tさんについてご紹介しました。

起立性調節障害はストレスによって自律神経のバランスが乱れると症状が悪化することもあり、時にうつ病や適応障害、不安障害などの精神疾患と誤診されやすく、処方薬によってはさらに症状が増悪しやすいため注意が必要です。

K.Tさんの場合、塾での成績不振がストレスになっていたのは間違いありませんが、結果としては精神疾患ではなく、起立性調節障害と診断されたことで不安が軽減され、治療にも前向きであったことから良好な経過を辿ることができました。

起立性調節障害は症状や経過が人によって異なるため、多くの体験談を知ることがみなさんの治療の糸口になるやもしれません。下記記事では他の体験談についてよくまとめられています。ぜひ参考にしてみてください。

 

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