起立性調節障害の方の体験談

起立性調節障害を患っていたH.Uさん(中学校3年生 男性)の体験談

この記事の監修者

匿名(医師)

内科・小児科

 

起立性調節障害を患っていたH.Uさん(中学校3年生 男性)の体験談

病気や事故などの予期せぬトラブルは、時に本人の意思とは関係なくその人の人生を大きく変えてしまうことがあります。特に、小児期の病気や事故で大きな被害が出た場合、残された長い人生に支障をきたす可能性があるのです。

今回の記事でご紹介するのは、起立性調節障害(OD)という病気によって人生を大きく狂わされてしまった中学3年生の話です。そもそもみなさんは起立性調節障害という病気がどのような病気なのかをご存知でしょうか?

起立性調節障害とは、小学生高学年から中学生にかけて発症しやすい身体疾患の1つであり、急激な肉体の成長によって心臓と脳の物理的な距離が生まれてしまうことで起立時に脳血流が低下しやすくなり様々な症状を発症する病気のことです。

特に午前中や起床時に症状が出現しやすく逆に午後になると症状が改善していくため、一見すると病気というよりもやる気の問題と捉えられやすく、家族や周囲の人が発見するのが遅れやすいという厄介な特徴を持っている病気です。

さらに厄介な点は、発症した子供によって症状の出方や改善方法などに大きな個人差がある点です。多くの子供は自然軽快するのが一般的ですが、中には重症化して進学や通学が難しくなってしまうような子もいるのです。

だからこそ、起立性調節障害に苦しむ多くの子供や家族の境遇を知ることは非常に有意義なことであり、他の人たちが実際に行っている様々な治療法や改善法を知ることも起立性調節障害に苦しむ皆さんにとって重要なことだと思います。

そこで本記事では、多くの起立性調節障害の子供に対して医師として診療してきた筆者が、実際に起立性調節障害の治療に取り組んだ患者様を例に実体験をご紹介いたします。今回の記事が皆様の治療の一助となれば幸いです。

起立性調節障害を患っていた「H.U」さんの特徴

私が診察させて頂いたH.Uさんは、当時中学3年生の男の子でした。小学生の時から頭が良いことで有名で、学校の授業では常に1番や2番になるような子供だったそうです。中学に入学後も同じように優秀な子供だったそうです。

親御さんから聞く本人像は、外で運動に励むタイプではないが勉強に取り組む姿勢や普段の生活から見ても非常に真面目な子供だそうです。かといって暗くもなく、学校生活を楽しく話してくれる明るい子だったそうです。

筆者が初めて対面したときの第一印象も親御さんから聞いた本人像と同様で、自分の病状や経過を親御さんに頼らず、自分の口で物怖じせずしっかりと伝えてくれる頭脳明晰な子供という印象でした。

出生後の発達や発育に関しては、出生時の体重が2500g程度でやや少なかったそうですが、その後の発育は良好で現在に至るまでこれと言って問題なく過ごしてきたそうです。指摘されているアレルギーや、内服中の常用薬などもありません。

また、受診時のH.Uさんは高校受験を控えた受験生で、東京の有名な高校への受験を目標に勉強漬けの日々を送っている時期でした。

起立性調節障害を患ったきっかけ・症状・対策・経過等

H.Uさんが最初に症状を自覚したのは中学3年生の10月頃でした。夏休みが終わっていよいよ本格的な受験モードに入り始めた頃、朝の通学中の電車内で急になんの理由もなく回転性のめまいが出現したそうです。立っているのが困難なほどだったそうです。

突然のことに驚きその場で横になってしまったそうですが、周囲の人の助けもあり駅の休憩室に運ばれて横になったところ、症状が比較的楽になったそうです。親御さんに連絡してその日は学校への通学は諦めたそうです。

親御さんはそのまま病院に連れていくか迷ったそうですが、午後になると症状が改善し立ち上がることもできたため、一時的な体調不良や受験の疲れだと考えて自宅で経過を見ることにしたそうです。

しかし、翌朝になって通学のために起き上がろうとすると再び同様のめまいやふらつきに襲われてしまい、立ち上がることが難しくなってしまったため親御さんの判断で近所のクリニックを受診することになりました。

近くのクリニックの専門は循環器内科でしたが、家から近いという理由から受診したそうです。そこで、症状を伝えたところ問診や身体診察、血液検査などを行ったそうです。その日の診察では特に病名などは言われずに、検査結果が出る3日後の再受診を指示されたそうです。

3日後に再受診するまで特に症状は改善せず、午前中に強いめまいやふらつきを認め午後になると改善してくるという経過を繰り返していました。家でも勉強はできるため、大事をとって学校はお休みしていました。

3日後の再受診でクリニックからは「検査結果の異常は特に認めず、身体診察でもあまり有意な所見がないため貧血などの病気は否定的であり、頭を動かすとめまいが出ているため良性発作生頭位めまい症の診断です。」と言われたそうです。

良性発作生頭位めまい症とは頭を動かすことでめまいが生じる耳鼻科疾患です。これといった治療法がないため、経過観察するように指示されて漢方薬だけが処方されました。しかし、その後2週間毎日内服しても症状は全く良くなりませんでした。

症状が良くならないどころか、午後になってもなかなか症状が改善しなくなり一日中ベッドで横なっている日もあったそうです。自宅での勉強もいよいよ進まなくなってしまい親子ともに焦りが生まれたそうです。

不安になった親御さんは、その2週間後にセカンドオピニオンとして筆者の元を訪れました。

今までの経過を聞いた上で、良性発作性頭位めまい症よりもむしろ起立性調節障害を疑い、H.Uさんに対して新起立試験などを実施した結果、起立時の血圧低下と脈拍の変化を認め、新たに起立性調節障害の診断を下しました。

良性発作性頭位めまい症と起立性調節障害は比較的症状の出方が似ているため、誤診されて長期間誤った治療が行われることも少なくありません。今回は比較的早期に改めて起立性調節障害と診断できたため、早期から治療介入できました。

起立性調節障害に対する実際の治療方法としては、まず疾患に対する理解を深めること、その上で日常生活でどれだけ脳血流の低下を意識して行動できるかが非常に重要です。H.Uさんからは非常に良好な理解を得られました。

そこで、具体的に指示した非薬物療法としては、起き上がる前にしっかり水分摂取を取り、通学せずとも決まった時間に起床して、ゆっくりと立ち上がることを指示しました。立ち上がる前には一度座位で症状が出ないか確かめるように伝えました。

また、自宅内で勉強するのであれば椅子に座るのではなく、クッションを引いて床で勉強するように伝えました。これは頭が高いところにあると脳血流が低下しやすくなってしまうためです。また処方されていた漢方は中止しました。

他にも、可能であれば午後の症状が緩和した時間帯に少しストレッチや運動を試みるように伝えました。筋力は脳血流維持のためにも非常に重要だからです。これらの非薬物療法に対して、H.Uさんは非常に積極的に参加してくれました。

しかし、結論から言えば1ヶ月、2ヶ月経っても通学できるほどの症状改善には至りませんでした。季節は冬になり受験までわずか数ヶ月という段階で、午後しかまともに勉強できない状況に非常にストレスを抱えている印象でした。

起立性調節障害はあくまで身体疾患ですが、精神的ストレスは症状の悪化の原因になってしまうため、受験を控えたH.Uさんにとっては受験が近づけば近づくほど治療の妨げになっている印象でした。

そこで、親御さんと本人と話し合いをすることになりました。主な内容としては、治療の妨げになっている受験と進学をどうするかです。もし仮に受験に成功しても、このまま症状が継続すれば通学すらできないためせっかく受験した意味がなくなってしまうのです。

その一方で、起立性調節障害は肉体の成長がある程度止まれば症状が改善する可能性も高いので、高校生になる前に自然に改善する可能性もあるため判断に迷うところでした。しかし現状は進学を想像できないほど症状が重かったのです。

起立性調節障害と進学は切っても切り離せない問題ですが、高校選びで最も重視すべき点は「継続できそうかどうか」です。その点、仮に東京の進学校に進学した場合通学は非常に難しいことが容易に予想できました。

それよりも、しっかりと卒業までカリキュラムをこなせる高校を選択して、大学受験で再チャレンジする選択肢の方が人生を豊かにする可能性だってあるわけです。

最終的な判断はH.Uさん親子が決めてくれました。進学校への進学は諦め、よりフレキシブルな通学スタイルが許される通信制高校への進学を決めたのです。これはH.Uさんの人生にとって大きな選択だったと思います。

その後も非薬物療法を継続してくれましたが、結局大きな効果は得られず最終的に症状が改善したのは高校1年生の秋ころでした。もし進学校に通っていたら、確実に留年していたことになります。

この結果がH.Uさんの人生にとって良かったのか悪かったのかは誰にも分かりませんが、治療が終わる頃のH.Uさん親子は自分たちの決断に納得しているようでした。

まとめ

今回は、筆者が診療させていただいた起立性調節障害のH.Uさんについてご紹介しました。

H.Uさんの場合、非薬物療法の治療効果は非常に薄く、結局は自然軽快を待つ形となってしまいました。それによって、進学先を急遽変えることになってしまい、本人の人生設計にも影響が出る形となってしまいました。

このように、起立性調節障害は子供の人生を大きく左右しかねない病気であり、実際に多くの患者さんが同じような悩みを抱えて過ごしているのです。同じように悩んでいる方にとって今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

起立性調節障害は症状や経過が人によって異なるため、多くの体験談を知ることがみなさんの治療の糸口になるやもしれません。下記記事では他の体験談についてよくまとめられています。是非参考にして見てください。

 

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