起立性調節障害の方の体験談

起立性調節障害を光療法で克服したE.Tさん(高校1年生 女性)の体験談

2023年3月19日

この記事の監修者

匿名(医師)

内科・小児科

一般社団法人 起立性調節障害改善協会

 

子供は精神的にも身体的にも成人と比較すると未熟で、ちょっとした環境の変化や対人関係でのストレスによって病気を発症しやすいです。今回は、子供が発症しやすい病気として起立性調節障害(OD)についてご紹介します。

ODは小学生高学年や中学生で発症しやすく、中には高校生でも発症することのある身体疾患です。子供の約10%が発症すると言われ、起立に伴うめまい、ふらつきなど様々な症状をきたす疾患です。

なかには、午前中の症状によって起きることができず、一方で夜は眠ることができず、結果的に睡眠障害をきたす子供もいます。ODに効果のある治療は個人差が大きく、他のODの子供の体験談は非常に参考になると思います。

そこで本記事では、多くのODの子供に対して医師として診療してきた筆者が、実際にODの治療に取り組んだ患者様を例に実体験をご紹介いたします。これによって少しでもODに苦しむ皆さんの一助となれば幸いです。

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

起立性調節障害を患っていた「E.T」さんの特徴

私が診察させて頂いたE.Tさんは、当時高校1年生の女の子でした。中学生時代は地元の中学に通い、高校受験を経て晴れて遠方の進学校に通い始めたばかりでした。中学生時代からスポーツにも力を入れ、バレー部で活躍していたそうです。

親御さんから聞く本人の印象は活発で明るく元気、嘘をつけないまっすぐな性格だったそうです。筆者と初めて対面したときも、特に臆することなく、自分の症状をしっかり自分の言葉で伝えてくれたのが印象的でした。

出生後の発育や発達にも異常は認めず、これまでこれといった病気なども認めておりませんでした。アレルギーや乗用薬なども認めず、健康そのものという印象でした。

起立性調節障害になったきっかけ・症状

E.Tさんが最初に症状を自覚したのは高校1年生の4月上旬でした。高校進学してまもなくであり、不慣れな電車による通学、新しい人間関係の構築、部活動への勧誘など目まぐるしく毎日が経過していた時期だったそうです。

ある日、普段通り朝の通学のために電車に乗っていると、突然立っていられないほどのめまいと嘔気を自覚したそうです。その場で立っていることが難しく、周りの人がイスを譲ってくれたそうで、少し横になったところ症状が改善したそうです。

学校の最寄駅に着き、再び立ち上がると症状が再燃したため、駅員に声をかけて駅の休憩室で休ませてもらったそうです。この時、駅員は親御さんを呼んで病院への受診を勧めました。

1時間後に親御さんが駅に到着したときにはすでに症状が改善傾向にあり、起立時にも症状が再燃しなかったそうで、親御さんと相談して病院への受診はせず自宅で経過をみることにしたそうです。

実際に、その日の夜にはほとんど症状が消失したため、一時的な体調不良と考えていたそうです。

しかし、翌朝起床すると前日には認めなかった倦怠感を自覚し、今度は家を出る前に再びめまいや嘔気が出現したそうです。2日連続での症状であったため、親御さんと相談して学校を休んで病院へ受診することにしたそうです。

症状の強い午前中は受診を控え、ある程度落ちついた午後に親御さんとともに近隣の内科クリニックに受診しました。クリニックでは問診、身体診察、血液検査、心電図検査など実施されましたが、明らかな異常を認めませんでした。

クリニックでは、不慣れな環境や目まぐるしい環境の変化に伴うストレスが原因の「適応障害」の可能性があると診断を受けたそうです。このとき、E.Tさん自身も新しく始まった高校生活に馴染めていないことに悩んでいたため、診断に疑問を感じなかったそうです。

診断を受け、学校に報告した上で数日間は休養することに決めたそうです。クリニックからは抗不安薬が処方され、自宅で治療を行うようにしました。しかし、数日経っても症状は改善せず、むしろ徐々に悪化していったそうです。

特に、午前中や起床時のめまいと倦怠感が強く、なかなか起きることが難しくなっていったそうです。一方で夕方になると体が元気になり、起立時の症状も認めず、徐々に夜型の生活に切り替わっていってしまったそうです。

症状が改善しないため、クリニックへ再受診したところ、適応障害よりもODを強く疑う所見であったため、確定診断のために血液検査、心電図検査、新起立試験などを行いました。

血液検査や心電図検査でこれといった異常は認めませんでしたが、新起立試験で起立時の血圧低下と脈拍の変化を認め、ODと確定診断を下しました。

ODはあくまで身体疾患ですがストレスによって症状が悪化することがあり、よく適応障害やうつ病と誤診されやすい病気です。しかし、「午後になると改善する症状」というODの特徴は他の疾患には特異的ではありません。

E.Tさんの場合も、症状が午前中に強く、午後になると改善するという特徴から診断に至りました。

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

治療内容・治療後の経過

ODの診断がついたところで、まずはクリニックから処方されていた抗不安薬を中止しました。精神疾患に対する薬は自律神経のバランスを乱す作用を含むものもあり、ODにはかえって良くないことも少なくありません。

次に、ODはあくまで身体の成長による身体疾患であり、ストレスややる気の問題ではないということを理解してもらいました。その上で、治療には特効薬など存在せず、身体の成長がある程度落ち着くまで非薬物療法が治療の中心となることを説明しました。

非薬物療法を行う前に、ODの病態をしっかり理解してもらうことも重要です。症状出現の最大の原因は脳血流の低下に伴うものです。そのため、日頃から脳血流を意識して非薬物療法に取り組んでもらうことが治療効果にも影響します。

実際に筆者がE.Tさんに勧めた非薬物療法としては、起床時の立ち上がり方に注意すること、自宅での過ごし方を決めること、食事をしっかりと3食摂取することなどです。

ODは脳血流の低下が主な原因であるため、いかに日常生活で脳血流が低下しないように行動を気をつけるかが重要です。寝ている状態から立ち上がる際に、血液が重力に従って下肢の方向に多く取られてしまうため、特に立ち上がり方には注意が必要です。

朝起きたら横になったまま、まずは横向きやうつ伏せに体位変換し、症状が出ないことを確認します。また、起床前に水分摂取もしておきましょう。

睡眠中は知らぬ間に発汗しているため、起床時は脱水になりやすく、脳血流が低下しやすい状況です。

水を飲んだ後、ベッド上で上半身だけ起こし、症状が出ないことを確認します。問題なければ、片足ずつゆっくりとベッドの脇に下ろし、座位の状態でも症状が出ないことを確認し、そこから30秒〜1分ほど時間をかけてゆっくりと立ち上がるように指導しました。

立ち上がった後、頭を高い位置に置くと症状が出やすいため、極力前傾姿勢を保ち、頭を低い位置に置くように指導しました。また、E.Tさんの場合、電車内などでの長時間の立位で症状が出やすいため、両足をクロスして下肢への血流を減少させることも指導しました。

次に、E.Tさんには自宅での過ごし方をしっかりと決めるように指示しました。これは、E.Tさんの生活リズムがODによってかなり崩れ始めていたからです。特に午前中に症状が強く、午後に改善することが生活リズムの乱れる原因です。

E.Tさんの場合、元々は早起きであったにも関わらずODの症状によって朝はほとんど起きられなくなっていました。昼過ぎに起きて、夜になると症状が改善して逆に眠れなくなってしまう日々を過ごしていました。

そこで、起床時間、朝食時間、昼食時間、夕方の軽い運動、夕食時間、就寝までの過ごし方、就寝時間などを厳密に決めて、それに従って自宅で療養するように指導しました。特に、夜間不眠はメラトニン分泌の低下の可能性があります。

ヒトは日中に太陽光を浴びることで体内でセロトニンと呼ばれるホルモンが分泌されます。このセロトニンが夜間になると光刺激がなくなることで体内でメラトニンに変換され、このメラトニンこそが睡眠を誘うホルモンなのです。

そのため、日中に太陽光を浴びること、夜間に光刺激を浴びないことがメラトニン分泌において非常に重要です。ODの子供ではそのどちらもが難しくなるため不眠に陥りやすくなるのです。

また、E.Tさんは食事のリズムが完全に乱れ、夕方以降に軽い食事を摂取する日々を過ごしていました。偏った栄養と不十分な食事摂取量は自律神経の成長を妨げ、症状の増悪につながってしまいます。

そこで、E.Tさんの親御さんに協力してもらい、毎日3食、しっかりとタンパク質や鉄分、ビタミン類の豊富な食事を摂取するように指導しました。特にタンパク質は自律神経の成長には必要な栄養素です。

以上の非薬物療法を実施し、比較的早期に起立時にめまいやふらつきは改善しました。しかし、睡眠時間の乱れだけはなかなか改善せず、夜になかなか眠れないため朝も早起きできない日々が続いていまいした。

治療開始から2ヶ月が経過した頃には自宅での運動ができるまでに改善しましたが、睡眠時間のずれ込みが改善せず学校に復帰できずにいました。そこで、光療法を導入しました。

光療法は、午前中から特殊な器具を用いて脳や体に光刺激を与え、日中の体内におけるセロトニン分泌を促進させる治療法です。光療法導入から1ヶ月経過したころ、徐々に就寝時間も早くなり、起床時間も早まりました。

最終的には、治療開始から4ヶ月以上経過した夏休み明けにようやく学校に復帰でき、半年経過した頃に治療は終了となりました。

効果があった対策

E.Tさんの場合、高校への進学という環境の変化によってODの症状が悪化していた可能性はありますが、早期診断がついたことで早期から非薬物療法を導入できました。特に、立ち方を変えたことや自宅での過ごし方の指導は効果的でした。

しかし、睡眠習慣の乱れだけは非薬物療法では結果が出せず、もっと早期から光療法でテコ入れするべきだったと感じています。

→自宅にいながら朝日と同等の光を浴びる方法はこちら

トトノエライトの光を浴びる女性

まとめ

今回は、筆者が診療させていただいたODのE.Tさんについてご紹介しました。

ODは小学生から中学生にかけて発症しやすい疾患ですが、E.Tさんのように高校生で発症することも珍しくありません。また高校生での発症の場合、進学や進級に関わり、場合によって将来を左右する事態にもなります。

E.Tさんの場合、途中で夏休みを挟んだことや光療法によるテコ入れもあったため、進級に影響することなく治療を完結することができました。改めて、ODには非薬物療法や光療法が肝要であることが再認識できる一例でした。

ODは症状や経過が人によって異なるため、多くの体験談を知ることがみなさんの治療の糸口になるやもしれません。下記記事では他の体験談についてよくまとめられています。ぜひ参考にしてみてください。

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光を活用せずに起立性調節障害を改善に導くのは難しい
https://odod.or.jp/kiritsusei-toha/od-5193/
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