起立性調節障害とは

不安障害とうつ病の違いとは?併発しやすいのか専門家が解説

 

この記事の監修者

医師(匿名)

医師歴:10年
勤務病院:某3次救急病院

一般社団法人 起立性調節障害改善協会

  • 子供がストレスや不安を抱えやすく、日常生活にも支障が出ている
  • ちょっとしたことで食欲がなくなったり、不眠に陥っている

このような症状を抱えている場合、不安障害、もしくはうつ病を発症している可能性があります。

どちらの疾患も精神疾患の1つであり、症状も類似点が多く、さらには併発する可能性も高いため、時に両者は見分けがつきにくいです。しかし、どちらも発症すると人とのコミュニケーションや学校生活・学業などに悪影響を及ぼし、場合によっては不登校などに陥るリスクもあるため、注意が必要です。

重症化を未然に防ぐためにも早期発見・早期治療が重要であり、両者は特徴や症状の出方に違いもあるため、この記事では両者の違いや特徴・セルフチェック方法などについて詳しく解説します。この記事を参考に、不安障害とうつ病をセルフチェックし、早期から正しい治療を受けられるようにしましょう。

不安障害とうつ病の違いとは

結論から言えば、不安障害とうつ病の違いは症状の出方と発症のきっかけです。どちらもストレスの蓄積や遺伝・元来の性格などが発症のきっかけとなりえますが、うつ病では脳内での神経伝達物質の分泌に変化をきたします。

セロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質が減少することで、さまざまな心理的症状が出現することが知られており、これは不安障害にはない変化です。

また、うつ病では気分の低下や抑うつ、意欲の低下など、心理的変化は認めるものの、身体症状に乏しいですが、不安障害では精神的不安感と共に、動悸・息切れ・眩暈・発汗・振戦など、さまざまな身体症状をきたします。

このように両者には、症状や原因に明確な違いがあります。ここからは、さらに詳しくそれぞれの疾患の特徴を押さえていきましょう。

不安障害の特徴

不安障害とは、過度な不安によって心と身体のバランスが乱れてしまい、不安や冷静さの欠如などの精神心理的な症状はもちろんのこと、発汗や動悸・眩暈などのさまざまな身体症状をきたす疾患のことです。

不安障害といっても、その症状の出方によって大きく下記の4つに分類できます。

  • 社会不安障害:人前や人目に対して過剰に緊張してしまい、そのことを考えるだけでも動悸や息切れが出るほど緊張してしまう。
  • 全般性不安障害:生活上のありとあらゆること(家族や学校生活・友人関係・将来のことなど)が全体的に不安で気になってしまい落ち着かず、安眠できなくなる。
  • パニック障害:特に誘因なく、突如急激な不安感と共に激しい動悸や発汗・呼吸困難など、身体症状の発作が起こり、発作がいつ起こるかわからない不安感を抱く。
  • 強迫性障害:特定の行為や出来事に過剰に不安になり、その行為を繰り返し行わないと不安でいてもたってもいられなくなる。

上記4つの不安障害はそれぞれ合併して発症しやすく、併発するとそれぞれの症状も悪化しやすくなると言われているため、早期に発見し、それぞれの症状にあった適切な対応が必要です。

うつ病の特徴

うつ病とは、先述したように脳内の神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンが減少することで、さまざまな心理的症状が出現する病気と考えられています。

うつ病で生じやすい症状は主に下記の通りです。

  • 毎日気分が落ち込む
  • 興味の減退
  • 食欲低下や体重減少
  • 不眠もしくは過眠
  • 易怒性
  • 易疲労感
  • 自信の低下
  • 集中力の低下
  • 希死念慮
  • 自殺企図

うつ病はやる気の問題や根性でどうにかなるような病気ではなく、精神疾患としての治療が必要な病態です。放置したり対策が遅れれば重症化して、最悪の場合死に至る可能性もあるため、早期発見・早期治療が求められます。

また、うつ病=中高年の病気と思われがちですが、実は小児期でも発症しやすいことが知られているため、子供でも注意が必要です。

不安障害とうつ病は併発しやすい?

不安障害とうつ病は併発しやすいことが知られています。どちらも元来の性格や気質・遺伝などの素因が発症に関わるため、不安やストレスを感じやすい性格の方はどちらも発症するリスクが高まります。

また、不安障害を発症して常に不安感や悩みを抱えている状態が続くと、多大な精神的エネルギーを奪われてしまい、その結果精神が磨耗してうつ病を発症しやすくなるわけです。

実際に、不安障害の方がうつ病を併発する割合は約70%、逆にうつ病の方が不安障害を併発している割合も約40%と言われており、相互に発症するリスクが高いです。

併発するとそれぞれの症状が悪化しやすいことも知られており、やはり何らかの心理的変化や身体症状を認めた場合は、早期に医療機関を受診して適切に対応することが肝要です。

不安障害・うつ病のセルフチェック

繰り返しになりますが、不安障害やうつ病は早期発見が重要です。しかし、両者の症状は類似点も多く、自分では判断できない!という方も少なくないでしょう。

そこで、ここでは不安障害・うつ病のセルフチェック方法をそれぞれ紹介します。自宅でも簡単に実施できるため、ぜひこれを機にチェックしてみましょう。

不安障害のセルフチェック

前述したように不安障害は大きく4つに分類でき、それぞれの病態によって出現する症状も異なります。ここでは、それぞれの特徴的な症状を踏まえたチェック項目を紹介します。

  • 特に理由のない漠然とした将来への不安に悩んでいる
  • 公共の場や人前での食事に不安を覚える
  • 人前に立ったり、人前で電話をするのが苦手
  • 不安が強く、夜眠れない
  • 疲労感が強い
  • 最近、集中力・記憶力が低下している
  • 落ち着きがない
  • 自分のことを噂されていると過度に心配してしまう
  • 鍵の閉め忘れや手の汚染などが気になって、その思考から抜け出せない
  • 急に発汗や動悸が出て、身動きがとれなくなることがある(パニック発作)
  • パニック発作が出るか気になって、人前に出るのが怖い
  • 上記のような症状が1回ではなく、半年以上継続して出ている

上記チェック項目に当てはまる数が多い人ほど、何らかの不安障害を発症している可能性が高く、注意が必要です。特に、項目9に当てはまる方は強迫性障害、項目10や11に当てはまる方はパニック障害の可能性が高いです。

それ以外の項目に多く当てはまる場合は、社会不安障害や全般性不安障害の可能性があります。あくまで簡易的なチェックであるため、必ず正確な診断をつけるためにも医療機関を受診しましょう。

うつ病のセルフチェック

うつ病のセルフチェックには、簡易抑うつ症状尺度(Quick Inventory of Depressive Symptomatology:QIDS-J)を用いることが一般的です。

この評価尺度では、寝つき・夜間の睡眠・早朝の覚醒・過眠・悲しい感情・食欲低下もしくは増加・体重の減少もしくは増加・集中力・自分に対する見方・死や自殺についての考え・興味・疲れやすさ・身体の活動性・落ち着きなどの項目をそれぞれ点数化します。

より点数が低いほどうつ病の可能性は低く、点数が高いほどうつ病の可能性が上がるため注意が必要です。うつ病は放置すれば自殺の可能性もあり、不安障害よりも早期発見が重要であるため、ぜひこれを機にセルフチェックしてみましょう。

※ 参考文献:厚生労働省

もしかしたら起立性調節障害かも

不安や抑うつ気分があり、不安障害やうつ病と思ったら、もしかしたら起立性調節障害の可能性もあります。起立性調節障害とは、身体の急激な成長に対して自律神経の成長が追いつかず、自律神経のバランスが乱れることで動悸や発汗など、さまざまな症状をきたす疾患です。

不安障害やうつ病はストレスによって症状が悪化する、あくまで精神疾患ですが、起立性調節障害は自律神経の乱れが病態であるため、あくまで身体疾患の1つです。

しかし、起立性調節障害は精神的ストレスで自律神経の乱れがさらに悪化し、症状が増悪する可能性があり、不安障害と同様にストレスによって動悸や不眠・発汗などの症状が出現する可能性のある病気であるため、しばしば混同されやすい病気でもあります。

もし起立性調節障害と気づかずに重症化してしまうと、本来朝に活性化すべき交感神経が活性化しないことで、脳血流が低下してめまいやふらつきが出やすく、登校や出勤が困難になるため、日常生活に大きな支障をきたします。

本記事で不安障害やうつ病のセルフチェックに当てはまる項目が多い方は、一緒に起立性調節障害もセルフチェックしておくことを勧めます。

下記の記事では、子どもにおける起立性調節障害のセルフチェック方法を詳しく紹介しているため、ぜひ一度チェックしてみましょう。特に子供の場合、症状が悪化して不登校などになれば、進級や進学にも支障をきたし、将来の進路にも大きく影響するため、早期発見によって重症化を未然に防ぎましょう。

また、起立性調節障害は身体の急激な成長で発症しやすく、小児に多い疾患ではありますが、大人でも発症することが知られています。大人で発症すると仕事や社会生活に大きな支障をきたし、子供よりも苦労する可能性があります。

やはり早期発見が肝要であるため、ぜひ下記の記事を参考に、大人における起立性調節障害をセルフチェックしてみましょう。

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