- 子供がなかなか夜眠れない
- 朝起きるのが怠そうで学校に遅刻する機会が増えた
このようなお悩みを抱える親御さんも少なくないと思いますが、その場合子供がなんらかの病気を発症している可能性があるため、注意が必要です。
最初は生活習慣の乱れなどが原因であることも多いですが、中にはうつ病や睡眠時無呼吸症候群などの病気を発症して不眠に陥る子供も少なくないため、子供の不眠症状は軽視しないようにしましょう。
症状が重症化すると学校への通学が困難となり、進学や進級、最悪の場合将来の進路にまで影響する可能性があるため、早期から適切に対処することが重要です。
そこでこの記事では、子供が眠れない時に考えられる病気やリスク、そのほかの原因や対処法について詳しく解説します。この記事を読むことで原因に合わせて適切に対処できるようになるため、ぜひご一読ください。
子供が眠れないのは病気?潜んでいるリスクとは?
子供のうちに眠れない期間が長引くと、身体の成長に必要不可欠な成長ホルモンの分泌が低下して身体が成長できなくなったり、免疫力が低下して風邪や病気を発症しやすくなってしまうため、注意が必要です。
多くは生活リズムの乱れや一時的なストレスが原因であることが多いですが、不眠症状が遷延する場合は何らかの病気を発症している可能性もあります。中には放置すると命に関わるような病気もあるため、早期発見して適切に対処する必要があります。
ここでは子供が眠れない時に疑うべき病気とそのリスクを5つ紹介します。
睡眠時無呼吸症候群
子供が眠れない時に疑うべき病気の1つが睡眠時無呼吸症候群です。睡眠時無呼吸症候群はその名の通り、睡眠中に気道が狭くなることで一時的に呼吸が弱まる、もしくは完全に止まり、うまく酸素を取り込めなくなる病気です。
睡眠中に十分量の酸素を取り込めないために、脳や身体が休息できず、夜間の中途覚醒が増加して著しく睡眠時間と睡眠の質を低下させます。その結果、起床時や日中には過度な眠気を認め、学校生活にも支障をきたす可能性があります。
気道が狭くなる原因は肥満が主ですが、子供の場合は巨舌や小鰐、扁桃肥大、アデノイドなどの解剖学的要因で気道が狭窄することもあり、どんな子供でも発症する可能性のある疾患です。
原因によって取るべき対策も異なるため、子供が睡眠中に大きなイビキをかいたり、時折呼吸が止まっている場合は早急に医療機関を受診させることがおすすめです。
睡眠相後退症候群
子供が眠れない時は睡眠相後退症候群の可能性があります。睡眠相後退症候群とは、入眠時間と起床時間がそのまま遅い時間帯にスライドしてしまう病気であり、主に体内時計が乱れてしまうことが原因です。
体内時計は日常生活のさまざまな事象を受けて常に適正化されますが、逆に不適切な行動を行うと容易にずれてしまいます。例えば、深夜までスマホゲームを行ったり、土日の朝は昼過ぎまで眠っていたりすると、体内時計が乱れていきます。
その結果、夜眠れなくなり学校に遅刻するなど、日常生活に支障が出てしまいます。睡眠相後退症候群は軽度であれば自身の生活習慣や睡眠習慣を見直すことで改善が見込めるため、早期から対策することが重要です。
夜驚症
子供が眠れない時に疑うべき病気の1つが夜驚症です。夜驚症は小児に多い睡眠障害の1種であり、比較的入眠から時間の経たないうちに極度の不安から目を覚まし、悲鳴をあげて怖がったり心拍数や血圧の増加を認めます。
一見覚醒しているように見えるため、親御さんは声をかける方も多いですが、あくまで子供はノンレム睡眠の最中でこちらの声かけを理解できず、数分後に再度睡眠すると覚醒時にはその出来事を覚えていません。
多くの場合は成長とともに自然軽快していくため、特別な治療などは必要ない病気ですが、まれに症状が重篤で日常生活に支障をきたすケースもあるため、その場合は睡眠外来などを受診する必要があります。
ムズムズ脚症候群
子供が眠れない時に疑うべき病気の1つがムズムズ脚症候群です。ムズムズ脚症候群とは、じっとしていたり入眠しようとした時に下肢に虫が這うような不快感、チクチク感、ピクピク感を感じることで眠れなくなる病気です。
原因はドーパミンの分泌不全や鉄不足、妊娠、慢性腎不全、糖尿病などが可能性として挙げられますが、明確な原因や病態は不明であり現在に至るまで解明されていません。
下肢の不快感によって毎日寝不足になると、日中の学業や登校にも支障をきたすため、厄介な病気です。さらに、精神科や心療内科での薬物療法が長期間必要となることも多く、気長に治療を継続する必要があります。
うつ病
うつ病=中高年の病気と思われがちですが、実はうつ病は子供でも少なくない病気です。うつ病は脳内におけるノルアドレナリンやセロトニンの分泌不全が病態と考えられており、遺伝的要因や激しいストレスなどの環境要因で子供でも発症します。
不眠症のほかに、過眠症状など反対の症状をきたしたり、食欲や意欲の減退・体重減少・抑うつ気分など、さまざまな精神症状をきたします。
うつ病と気づかずに放置すれば、学校への登校が困難となるだけでなく、最悪の場合希死念慮や自殺企図も起こりうるため、うつ病による不眠の場合は早急に医療機関に受診し、適切な医療を受ける必要があります。
子供が眠れない原因とは?
子供が眠れない多くの原因は、上記で紹介したような疾患ではなく、普段の生活習慣や環境に問題があります。疾患の場合は病態に合わせて医療機関での治療が必要となりますが、生活習慣や環境に問題がある場合は自身で改善可能なことも多いです。
ここでは、子供が子供が眠れない原因を3つ紹介します。子供の生活や環境に当てはまっているものがないか確認し、もし当てはまっている項目があればぜひ改善を目指しましょう。
環境の変化によるストレス
子供が病気以外で眠れなくなる原因として、環境の変化によるストレスが挙げられます。子供は精神的にもまだ成熟しておらず、日常生活のさまざまなシーンでストレスを感じやすいです。具体的にはクラス替え、進級や進学、受験、対人関係、親子関係、思春期などが挙げられます。
ストレスが溜まると自律神経の機能が乱れ、自律神経は睡眠周期を司っているため、連動して睡眠周期も乱れてしまうことで不眠に陥ります。
通常、夜間の就寝時には副交感神経が活性化することで身体が「おやすみモード」に入りますが、ストレスによって持続的に交感神経が活性化することで身体がおやすみモードに移行できなくなるのです。
子供がストレスを溜め込まないように、定期的に発散させてあげたり、話を聞いてあげると良いでしょう。
就寝環境の問題
子供が病気以外で眠れなくなる原因として、就寝環境の問題が挙げられます。就寝環境は睡眠と密接な関わりを持ち、不適切な就寝環境では睡眠の質が低下し、眠れない原因となります。
部屋の温度や湿度が不適切・遮光や防音が不十分・振動が伝わる・寝具の硬さが不適切などの要因で睡眠の質は顕著に低下し、子供の不眠の原因となるため注意が必要です。
就寝環境は比較的容易に改善できるため、ぜひこれを機に見直してみると良いでしょう。
スマホなどの影響
子供が病気以外で眠れなくなる原因として、スマホやPCの影響が挙げられます。近年では小学生や中学生でもスマホやPCを触る子供が増え、特に深夜までスマホやPCを触る子供が問題視されています。
就寝前にPCやスマホから発せられるブルーライトは脳内におけるメラトニン合成を抑制し、このメラトニンは安眠を誘うホルモンであるため、メラトニン合成が抑制されることで眠れなくなるわけです。
そのため、少なくとも就寝の2時間前までにはスマホやPCを触るのは控えることが重要です。
子供が眠れない場合の対処法
子供が眠れない場合、一過性の症状なら問題ないですが、長期的に眠れない症状が続くと心身の成長に支障をきたし、十分身体が発達しなかったり、学業に支障をきたして将来の進路にも影響します。
そのため、子供が眠れない時は早期から適切に対処することが重要です。この記事では、子供が眠れない場合の対処法を3つ紹介します。ぜひこれを機に子供の安眠を取り戻しましょう。
規則正しい生活を心がける
子供が眠れない場合、まずは規則正しい生活を心がけましょう。先述したように、子供の不眠は普段の生活習慣が原因となることが少なくないためです。
乱れた食生活や不規則な睡眠時間は自律神経を不安定にし、正常な睡眠を阻害する恐れがあります。朝から規則正しく食事を摂取し、またその内容も栄養の偏りのない、バランスの良い食事を摂取させることが肝要です。
特に、牛乳やチーズなどの乳製品に豊富に含まれるトリプトファンは、睡眠ホルモンであるメラトニンの原料となるため、ぜひ日中に摂取すると良いでしょう。
ほかにも自律神経の安定のためにはタンパク質の摂取やビタミン類なども重要です。また、定期的に運動を行うことも自律神経の安定には有用であるため、ぜひ生活に取り入れると良いでしょう。
就寝前の入浴やスマホいじりを避ける
就寝前の入浴やスマホいじりを避けるのも、眠れない時の対処法の1つです。先述したように就寝前のスマホいじりは脳を刺激してしまい、メラトニンの分泌量を低下させるため、少なくとも就寝2時間前には控えるべきです。
また、湯船に浸かることで安眠できると考える方も少なくありませんが、半分正解で半分間違いです。睡眠の質は入眠直後の深部体温の低下によって向上すると考えられており、夕方くらいの入浴では程よく深部体温が上昇し、就寝時に急速に低下するため、睡眠の質が向上することが知られています。
一方で、就寝直前の入浴では深部体温が上がったまま、就寝後も低下しないため、睡眠の質が低下することが知られています。少なくとも、就寝の2時間前にはスマホいじりや入浴を済ませておくと良いでしょう。
医療機関を受診する
上記のようなセルフケアを行なっても子供が眠れない場合、医療機関を受診して原因を精査しましょう。背景に上記で紹介したような疾患が隠れている可能性があるためです。
夜驚症などが原因の場合は成長とともに症状が改善する可能性がありますが、原因疾患によっては医療機関での専門的な治療が必要となるため、注意が必要です。
特に、うつ病や睡眠時無呼吸症候群は対応が遅れると命の危険性が高まります。うつ病では自殺企図の可能性があり、睡眠時無呼吸症候群では持続的な低酸素状態のストレスによって高血圧や糖尿病などの発症リスクが増加してしまうことが知られています。
どちらも放置していい病態ではなく、また医療機関での専門的な治療が必要となる病態であるため、まずは医療機関を受診し、正確な診断をつけることが肝要です。
もしかしたら起立性調節障害かも
子供が夜眠れない場合、睡眠時無呼吸症候群やうつ病ではなくもしかしたら起立性調節障害の可能性もあります。起立性調節障害とは、身体の急激な成長に対して自律神経の成長が追いつかず、自律神経のバランスが乱れることで動悸や発汗など、さまざまな症状をきたす疾患です。
特に起立性調節障害は身体の発達する小学生高学年から中学生にかけて発症しやすい病気であり、朝や午前中には強い動悸や発汗・めまいなどの身体症状が、夜間には不眠症状が問題となります。
本来であれば午後や夕方には副交感神経が活性化して入眠するはずが、起立性調節障害では副交感神経ではなく交感神経が活性化してくるため、本来副交感神経が活性化することで眠くなるはずの夜間に、興奮してしまい眠れなくなってしまうのです。
発症後、早期対策できなければ日常生活に大きな支障をきたしてしまうため、早期発見・早期治療が肝要です。
下記の記事では、子どもにおける起立性調節障害のセルフチェック方法を詳しく紹介しているため、ぜひ一度チェックしてみましょう。
特に子供の場合、症状が悪化して不登校などになれば、進級や進学にも支障をきたし、将来の進路にも大きく影響するため、早期発見によって重症化を未然に防ぎましょう。