起立性調節障害は、自律神経である交感神経と副交感神経の調整がうまくいかないことで、立ち上がったときなどに血圧や心拍数の調節が乱れ、さまざまな不調が現れる病気です。特に思春期の子どもや若年層に多く見られ、「朝起きられない」「学校に行けない」といった生活への影響が問題になることもあります。
発作と呼ばれる症状の悪化時には、めまいや動悸、強いだるさなどが突然起こり、本人も周囲も戸惑いや不安を感じやすくなります。発作自体は命に関わることはまれですが、正しい理解と対処が重要です。
本記事では、起立性調節障害の発作時に着目し、よく見られる症状や対処法を中心に解説していきます。
起立性調節障害の発作時に見られる症状
起立性調節障害の発作時に見られる症状を5つ解説します。
めまい・立ちくらみ
起立性調節障害の発作で最もよく見られる症状が、立ち上がった瞬間や立位を保っているときに起こるめまいや立ちくらみです。これは、立位時に脳へ十分な血液が送られなくなることで生じます。
目の前が暗くなる、視界が狭くなる、ふらっとする感覚として自覚されることが多く、ひどい場合には一時的に倒れてしまうこともあります。貧血と誤解されがちですが、血液の量ではなく血圧調節の問題が原因である点が特徴です。
動悸・息苦しさ
発作時には心臓がドキドキする動悸や、息がしづらい感覚を訴えることがあります。これは血圧を保とうとして心拍数が急に上がるために起こります。本人は「心臓の病気ではないか」「パニックになったのでは」と強い不安を感じることも少なくありません。
しかし多くの場合、心臓自体に異常があるわけではなく、自律神経の過剰な反応によるものです。不安が症状をさらに悪化させることもあります。
強い倦怠感・脱力感
起立性調節障害の発作では、急に体から力が抜けたような強い倦怠感や脱力感が現れることがあります。「立っていられない」「横になりたい」と感じるほどで、周囲からは怠けているように誤解されることもあります。
しかしこれは本人の意思とは関係なく、自律神経の乱れによって全身の血流やエネルギー供給がうまくいかなくなっている状態です。無理に頑張ろうとすると症状が悪化することがあります。
頭痛・頭がぼーっとする感覚
発作時には、締めつけられるような頭痛や、頭に霧がかかったようなぼーっとする感覚が出ることがあります。集中力が低下し、会話や作業が難しくなる場合もあります。これも脳への血流低下や自律神経の乱れが関係しています。
「考えがまとまらない」「意識が遠のく感じがする」と表現されることもあり、学校生活や仕事に大きな支障をきたす原因となります。
吐き気・腹部不快感
自律神経は消化管の働きも調節しているため、発作時には吐き気や胃のむかつき、腹部の不快感が生じることがあります。実際に嘔吐するケースもありますが、多くは強い気持ち悪さとして現れます。精神的な緊張や不安が重なると、消化器症状がより強く出ることも特徴です。
起立性調節障害の発作が起きたときの正しい対処法
起立性調節障害の発作が起きたときの正しい対処法を5つ解説します。
まず安全な姿勢をとり、無理に動かない
発作を感じたら、まず転倒を防ぐことが最優先です。可能であればその場に座る、横になるなどして安全な姿勢をとりましょう。立ったまま我慢したり、無理に歩こうとすると失神や転倒の危険があります。
横になる場合は、足を少し高くすると脳への血流が改善しやすくなります。「少し休めば大丈夫」と無理をしないことが、回復を早める重要なポイントです。
水分・塩分を補給し、体を落ち着かせる
水分不足は発作を悪化させる大きな要因です。可能であれば水や経口補水液を少量ずつ摂取しましょう。医師から指示がある場合には、塩分補給も有効です。一度に大量に飲む必要はなく、ゆっくりと体に入れることが大切です。
吐き気が強い場合は無理をせず、落ち着いてから少しずつ補給します。
呼吸を整え、回復を待つ時間を確保する
動悸や息苦しさがあると、呼吸が浅く速くなりがちです。意識してゆっくりと深い呼吸を行うことで、自律神経が落ち着きやすくなります。「今は発作で、一時的なもの」と理解するだけでも不安が軽減します。回復には数分から数十分かかることもあるため、焦らず休む時間を確保することが重要です。
周囲に状況を伝え、ひとりで抱え込まない
発作時は「迷惑をかけてしまう」と感じて我慢してしまう人も少なくありません。しかし、周囲に状況を伝えることで安全が確保され、精神的な安心にもつながります。
学校や職場、家族には、起立性調節障害の発作が起こりうることを事前に伝えておくと、いざという時に助けを得やすくなります。ひとりで抱え込まないことが大切です。
発作が落ち着いたら、経過を振り返って記録する
発作が治まった後は、簡単な記録を残しておくことが今後の治療や症状改善に役立ちます。
- いつ、どこで、何をしていたか
- 回復までにかかった時間
- 睡眠不足、疲労、気温、ストレスなど、きっかけになりそうな要因
これらをメモしておくことで、発作の傾向が見えてきます。記録は医師への相談時に重要な情報となり、生活改善のヒントにもなります。
病院を受診すべき発作の目安と検査・治療の流れ
病院を受診すべき発作の目安と検査・治療の流れを解説していきます。
病院を受診すべき発作の症状目安
発作が繰り返し起こる場合や、日常生活や学校生活に支障が出ている場合は、医療機関の受診を勧めます。
また、失神を伴う、胸痛が強い、安静にしても回復しないといった症状がある場合は、他の病気が隠れていないか確認する必要があります。「成長期だから仕方ない」と自己判断せず、専門的な評価を受けることが大切です。
病院で行われる主な検査内容
病院ではまず問診と身体診察が行われます。その後、血圧や脈拍を測定し、立位での変化を確認します。必要に応じて血液検査、心電図、心エコーなどを行い、貧血や心臓疾患など他の病気がないかを調べます。
これらは起立性調節障害を診断するためというより、他の疾患を除外する目的が大きい検査です。
起立性調節障害と診断されるまでの流れ
診断は、初診での問診をもとに、他の病気を除外したうえで行われます。代表的な検査として起立試験があり、横になった状態から立ち上がった際の血圧や脈拍の変化を測定します。受診時には、過去の発作の記録、起こりやすい時間帯、生活リズムなどを伝えると診断の助けになります。
起立性調節障害の治療方法
治療には薬物療法と非薬物療法がありますが、治療の基本は非薬物療法である生活指導です。十分な水分・塩分摂取、規則正しい睡眠、無理のない運動が重要となります。症状が強い場合には、自律神経の働きを助ける薬が処方されることもあります。
治療は一人ひとり異なり、症状の程度や生活環境に合わせて調整されます。すぐに完全に治る病気ではないため、継続的なフォローが大切です。
受診後の経過と長期的な向き合い方
起立性調節障害は、短期間での改善を焦らないことが重要です。症状には波があり、良い時と悪い時を繰り返しながら徐々に安定していくことが多いです。家族や学校、周囲の理解と配慮は回復に大きく影響します。
特に親の立場では「怠けではない病気」であることを理解し、責めずに見守る姿勢が大切です。本人が安心して生活できる環境づくりが、長期的な改善につながります。
起立性調節障害の発作体験談と改善事例
- 起立性調節障害の発作は本当に改善するの?
- 起立性調節障害の発作時にはどのように対処すべき?
このような不安やお悩みを抱く親御さんも少なくないでしょう。
起立性調節障害の発作はさまざまな原因で生じ、発作時の適切な対処法や改善方法も人によって異なります。他の子供の発作に対する対処法を知ることで、自分の子供の改善に役立てることができるため、ここでは起立性調節障害の発作体験談と改善事例 を3つ紹介します。
10歳女子:生活習慣の見直しで改善した事例
10歳女子のAさんは以前から生活習慣の乱れが目立ち、朝食を抜いたり、土日に昼まで寝るなど、食事や睡眠が乱れていたそうです。親御さんが注意してもなかなか治らず、部活動にも所属していないため、運動習慣もありませんでした。
ある日の朝、起床時にめまいやふらつきを認めましたが、少し体調が良くないだけと判断してそのまま登校したところ、通学路を歩いてる途中でめまいが悪化し、その場でしゃがみ込んでしまいました。
その日は母親が迎えに来て学校を休みましたが、夜になると症状は改善したため、やはり一時的な体調不良と思い安心していたそうです。しかし、翌朝以降、毎朝のようにめまいやふらつきが頻発するようになり、その姿を見た親御さんが心配して病院に連れて行きました。
病院で血液検査や問診、身体診察を行った結果、検査値に大きな異常を認めず、起立性調節障害の可能性が非常に高いことを知られたそうです。重病でないことに安心した一方で、Aさんの生活習慣に問題があることを指摘され、食習慣や睡眠習慣を正すように指示されました。
それから、1日3食、バランスの取れた食事を摂取し、起床時間・就寝時間を一定に保つように生活習慣を整えたところ、徐々にめまいやふらつきの程度や頻度が低下し、2週間ほどで一人でも通学できるまでに改善したそうです。
これをきっかけに、それ以降はできる限り生活習慣に注意し、運動も定期的に行うように意識しているそうです。
11歳男子:飲水療法で改善した事例
11歳のB君はサッカー部に所属し、毎日のようにサッカーを楽しむ活発な男の子です。毎日3食、たくさんのご飯を摂取し、夜も早い時間帯に寝る、いかにも健康な生活を送っていたためか、11歳に入ってからは身長が急激に伸びていました。
とある日、授業が終わって椅子から立ち上がると、動悸と息苦しさ、めまいを自覚し、立っていられなくなったそうです。再度椅子に座ると症状が落ち着く、また立ち上がると同様の症状が繰り返したそうです。
それ以降、同様の症状が頻発し、特に午前中は症状が重いことが多く、保健室で休む機会が増えて行きました。学校側から親御さんに連絡が入る機会も増え、親御さんが近隣の小児科に連れて行ったところ、起立性調節障害と診断されました。
B君の場合、生活習慣自体には特に問題はないものの、急激な身長の伸びによって脳血流が低下しやすい状態であるため、症状を抑えるためにはしっかり飲水するように指導されました。
1日1.5〜2L近くの水分をこまめに摂取し、特に朝は起き上がる前にコップ一杯分の水を飲んでから起き上がるように工夫したところ、動悸や息苦しさ、めまいを認めなくなったそうです。
部活動で汗をかく機会も多いため、症状改善以降も毎日十分量の水分を摂取するよう心がけているそうです。
12歳女子:発作時の記録を記録を付けることで改善した事例
12歳の女子であるCさんは中学受験を控えており、毎日学校と塾で勉強漬けの日々を過ごしていました。食事や睡眠は規則正しいものの、受験が近づくにつれて徐々にストレスが溜まっていったそうです。
とある日の午前中、突然めまいや動悸を自覚し、その場で動けなくなってしまったそうです。1日で症状は改善せず、その日を境に毎日のように症状を繰り返すようになり、通学や通塾にも支障を来すようになりました。
徐々に外出や通学への不安感が増え、「外で発作が起きたらどうしよう」と考えてしまうと、そのストレスでさらに症状が起こりやすくなっていたそうです。
勉強が手に付かなくなっていたため、医療機関に受診したところ、受験のストレスに伴う起立性調節障害の可能性が高く、発作への恐怖心やストレスを除去するために発作時の記録を付けるよう指導されました。
発作が起きやすい時間帯や状況、その際の対処法などを毎回記録したところ、特に午前中、屋外で症状が出やすく、一定時間座ることで発作が改善することを把握できたそうです。
自分なりに対処法を把握できたことで不安が軽減し、自分でコントロールできる感覚が安心感や自信となり、それに伴い発作も起こりにくくなったそうです。
数ヶ月で起立性調節障害の症状も自然に軽快し、症状改善によってどうにか受験も乗り越えられたそうです。
異変を感じたらすぐに病院へ受診を
起立性調節障害は、発作の出方や症状の強さに波があり「しばらく休めば大丈夫」と思いがちですが、重症化すると日常生活や学業に支障をきたすこともあります。めまいや動悸、強い倦怠感が続く場合は、早めに近くの医療機関を受診しましょう。
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早期発見と適切な治療が、回復への第一歩です。無理をせず、体のサインを見逃さないようにしましょう。





