- 最近子供の様子がおかしく、集中力がなくなって落ち着かない様子が散見される
- 子供が一人でいる時に誰かと話していることがあるけど、これって病気?
このような子どもの変化に悩んでいる親御さんも少なくないでしょう。
集中力の低下や落ち着きのなさ、独り言などは、睡眠不足や強いストレス、不安など、さまざまな理由でみられます。そのため、こうした様子だけで統合失調症と判断することはできません。
一方で、周囲に誰もいないのに声が聞こえる、誰かに見張られていると強く感じる、話のまとまりがなくなる、これまでできていた日常生活を送れなくなるといった変化が続く場合は、統合失調症を含む心の病気が関係している可能性があります。
統合失調症は、幻覚や妄想、考えをまとめにくくなる症状、意欲や感情表現の低下などがみられ、学校生活や人間関係に影響することがある精神疾患です。
10代から20代に発症することが多いとされていますが、症状の現れ方や発症時期には個人差があります。早い段階で適切な支援や治療につながることが大切です。
この記事では、思春期における統合失調症の症状や原因、対処法について詳しく解説します。
思春期の子どもに集中力の低下や登校困難がみられ、朝起きられない、立ちくらみ、倦怠感などの身体症状も続く場合は、起立性調節障害が関係していることもあります。
朝起きられない症状や立ちくらみ、倦怠感などを伴う場合は、起立性調節障害のセルフチェックも参考にしてください。

思春期の統合失調症の特徴とは?どんな症状が出る?
思春期に発症する統合失調症でも、基本的な症状は成人の統合失調症と共通しています。ただし、症状の現れ方や経過には個人差が大きく、必ずしも典型的なパターンをたどるとは限りません。
統合失調症の経過は、症状を理解するために、前駆期・急性期・回復期・安定期などに分けて説明されることがあります。ただし、各時期の境界は明確ではなく、行き来したり、一部の症状だけが現れたりする場合もあります。
ここでは、それぞれの時期にみられることがある症状を解説します。気になる変化が続く場合は、家庭だけで統合失調症と判断せず、子どもや思春期の診療に対応している精神科などへ相談しましょう。
統合失調症以外にも、思春期にはさまざまな心の病気がみられることがあります。思春期にみられやすい精神疾患について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。
前駆期
前駆期とは、わかりやすく激しい精神症状をきたす急性期の手前で、さまざまな非特異的な前駆症状をきたす期間です。症状が非特異的であり、本人や家族も含めて最初は誰も精神疾患とは思わないため、内科を受診することが多いです。
具体的な症状としては、落ち着かない・不安や焦燥・集中力の低下・抑うつ気分・不眠などです。また、この時期には短期間もしくは間欠的に、急性期で生じるような妄想や幻覚、支離滅裂な思考などが軽度に生じることもあります。
後から考えれば、この時期の症状が統合失調症の前駆期であったと認識できますが、この時点で統合失調症を強く疑うのは困難です。また、再発する時にも前駆期の症状が出現するため、知っておくことで予防に有用です。
急性期
症状が強く現れる時期には、幻覚や妄想、まとまりにくい思考などの、いわゆる陽性症状が目立つことがあります。
幻覚の中では、実際には周囲に誰もいないのに声が聞こえる幻聴が比較的多くみられます。自分の言動を批判する声や、複数の人が自分について話しているような声が聞こえる場合もあります。
妄想とは、事実とは異なる内容を強く確信し、周囲が説明しても考えを変えることが難しくなる状態です。代表的なものとして、次のような内容があります。
- 誰かに見張られている、危害を加えられると感じる
- 周囲の会話やテレビの内容が自分に関係していると感じる
- 自分の考えが他人に知られている、操作されていると感じる
本人にとって幻聴や妄想は現実の体験として感じられるため、頭ごなしに否定したり、無理に考えを訂正させたりすると、不安や警戒心が強まることがあります。
また、考えや話がまとまりにくくなったり、周囲とのコミュニケーションが難しくなったりすることもあります。学校生活を続けることが難しくなる場合もありますが、影響の程度には個人差があります。
本人が自分や他人を傷つけるよう指示する声を聞いている、自殺をほのめかしている、著しい興奮や混乱がある場合は、一人にせず、速やかに医療機関へ相談してください。
回復期
治療によって幻覚や妄想などの強い症状が落ち着いてくると、心身の疲れや意欲の低下が目立つことがあります。
具体的には、表情や感情表現が少なくなる、以前まで興味のあったことを楽しめない、人との関わりを避ける、自分から行動を始めにくくなるなどの症状です。これらは陰性症状と呼ばれます。
また、記憶力や注意力、計画を立てて行動する力などに困難を感じ、学校生活や日常生活に影響する場合もあります。
ただし、こうした状態には統合失調症の症状だけでなく、心身の疲労、抑うつ状態、薬の副作用などが関係している可能性もあります。本人の努力不足と決めつけず、主治医に状態を伝えながら、休養や活動量を調整することが大切です。
慢性寛解期
回復期を経て、病前とほぼ同程度まで回復するか、何らかの後遺症を残すものの病状が固定化される時期を慢性寛解期といいます。
この時期、発症した患者の1/3は大きな改善が得られ、もう1/3は幾らかの改善は見られるものの、再発したり後遺症を残します。残りの1/3では重度かつ永続的な無気力状態となり、回復できなくなってしまうため注意が必要です。
思春期の統合失調症の原因とは?
では、なぜ統合失調症という病気を発症してしまうのでしょうか?結論から言えば、統合失調症の原因は現在の医療技術を持ってしても解明されていません。
しかしながら、徐々にその病態も解明されつつあり、元来の統合失調症にかかりやすい体質(これを脆弱性と呼ぶ)と、そこに加えて何らかの環境要因が加わることで発症すると考えられています。
ここでは、思春期の統合失調症の原因について詳しく解説します。
ドーパミンの過剰放出
脳内部における神経伝達物質、ドーパミンの放出を調整する抗精神病薬が統合失調症に有効であることから、統合失調症にはドーパミンが関与していると考えられてきました。
近年の医療技術の進歩によって、脳の線条体と呼ばれる部位においてドーパミンの過活性を認めたことから、この仮説は立証されましたが、なぜそのような反応が生じるかの原因は依然として不明です。
遺伝的要因
統合失調症の発症には少なからず遺伝的要因が関与していると考えられています。一般の人の統合失調症の発症率は約1%であるのに対し、両親や兄妹が統合失調症を発症している人の発症率は10%と高いことからも遺伝的要因が強く示唆されます。
さらに、一卵性双生児の場合は50%と高い発症率を示すため、注意が必要です。この背景には脳の脆弱性に関わる遺伝子が存在すると考えられており、数多くの研究が行われていますが、依然として発見できていないのが現状です。

妊娠や出産時のストレス
統合失調症の発症には、妊娠中や出産時におけるストレスが関わっていると考えられています。特に、妊娠中期の母親のインフルエンザ感染や分娩中の低酸素、低体重での出生、母体と胎児の血液型不適合など、周産期に関わるトラブルが発症リスクを増大させると考えられています。
一方で、産後の子育てや家庭環境が発症に関与しているという根拠は得られておりません。
外部からのストレス
上記で示したような要因によって統合失調症に対する脆弱性を持つ人が、何らかの外部ストレスを与えられることでより発症・再発しやすくなると考えられています。
統合失調症の発症リスクとなる代表的な外部ストレスは、10代前半での大麻(マリファナ)の使用です。他にも、貧困や家庭環境の崩壊、転校などのストレスがきっかけで発症する可能性があるため、注意が必要です。
思春期の統合失調症の対処法とは?
思春期の統合失調症に対してはいかに早期に適切な対処を行うかが、予後にとって非常に重要であることが知られています。
また、治療の目的は症状の改善はもちろんのこと、社会性の維持・再発予防・日常生活機能(ADL)の改善など、さまざまです。ここでは、思春期の統合失調症の対処法を4つ紹介します。
負担を減らして専門家に相談する
不眠や強い不安、集中力の低下、幻聴や被害的な訴えなど、これまでと異なる変化が続く場合は、学校生活などの負担を一時的に減らし、十分に休める環境を整えましょう。
本人が話す内容をすぐに否定したり、「考えすぎ」「気のせい」と決めつけたりせず、まずは不安やつらさを受け止めることが大切です。
そのうえで、児童精神科や精神科など、子どもや思春期の診療に対応している医療機関へ相談します。本人が受診を拒む場合は、まず家族だけで保健所、精神保健福祉センター、学校のスクールカウンセラーなどに相談する方法もあります。
薬物療法
統合失調症は歴とした精神疾患であり、努力や根性でどうにかなるような病気ではありません。そのため、特に急性期に進行すると出現する陽性症状の改善のためには薬物療法が必要不可欠です。
先述したように、統合失調症の陽性症状にはドーパミンの過剰放出が関わっているため、主に使用する薬剤はドーパミンの産生を抑えるリスペリドン、オランザピン、ペロスピロン、アリピプラゾー/レ、ブロナンセリンなどの非定型抗精神病薬です。
症状改善はもちろんのこと、継続して内服することで再発予防にもなります。一方で、ドーパミンの機能を抑制しすぎると、ドーパミンの分泌不全であるパーキンソン病で出現しやすい震え、筋硬直、不随意運動などの錐体外路症状が出現する可能性があるため注意が必要です。
専門である精神科医の指示した用法用量を守って治療継続していくことが重要です。
心理社会的な支援
統合失調症の治療では、薬物療法だけでなく、本人や家族への心理社会的な支援も重要です。
病気や治療について理解を深める心理教育、幻聴や妄想による不安への対処を考える認知行動療法、家族が適切な接し方を学ぶ家族支援などがあります。
本人の話を落ち着いて聞き、困っていることや希望を確認しながら支援を進めることで、治療を続けやすくなり、生活上の困難への対処にもつながります。
支援内容は本人の状態によって異なるため、医師や心理職などと相談しながら進めましょう。
リハビリテーション
思春期の統合失調症に対しては心理的・もしくは身体的なリハビリテーションも重要です。心理的リハビリテーションでは、患者の病気に対する理解を深めることで、抗精神病の用法用量を守ることの重要性や、ストレスから回避することの重要性などを理解してもらいます。
身体的なリハビリテーションとしては、社会や家庭に復帰する上で必要な日常生活動作の改善や、集中力・作業能力の回復を目指す作業療法などを行います。これらの治療は抗精神病薬と併用することで高い効果を発揮することが知られています。
もしかしたら起立性調節障害かも
思春期の子供がやる気がなくなったり、学校生活に支障をきたした場合、統合失調症ではなく起立性調節障害の可能性もあるため、注意が必要です。
起立性調節障害とは、身体の急激な成長に対して自律神経の成長が追いつかず、自律神経のバランスが乱れることでさまざまな症状をきたす疾患です。
特に、身体の成長著しい小学生高学年〜中学生で発症しやすく、まさに思春期で発症しやすい病気です。特に午前中に症状が強く、めまい・立ちくらみ・腹痛・嘔吐・起床困難などの症状をきたし、午前中は学校に行けない子供も少なくありません。
統合失調症の、特に前駆期の症状と類似点が多く誤認されやすいため、注意が必要です。一方で、相違点としては、起立性調節障害の場合は午後や夕方になると症状が改善するという日内変動があります。
基本的には自然軽快する病気ですが、人によっては重症化し、通学どころか進級や進学にも支障をきたす可能性があるため、注意が必要です。
統合失調症であっても、起立性調節障害であっても、やはり早期に適切な診断を行い、早期から治療介入することが肝要です。
統合失調症では本記事で解説しましたが、下記の記事では、子どもにおける起立性調節障害のセルフチェック方法を詳しく紹介しているため、気になる方はぜひ一度チェックしてみましょう。






