「夜なかなか眠れない」「寝ても途中で目覚めてしまう」このような症状にお悩みの方も少なくないのではないでしょうか?
眠れないと感じる方の多くは、寝付きが悪くなる入眠困難や、寝ても睡眠中に起きてしまう中途覚醒などの不眠症状をきたします。不眠症状が継続すると身体の疲れは取れず、精神的ストレスも蓄積するため、日常生活にも支障をきたす可能性があります。
朝なかなか起きられず、日中も集中できないため、学校や職場での生活に支障を来している方もいるでしょう。これらの原因には、単なる生活習慣の乱れや精神的ストレスの蓄積などもあれば、睡眠時無呼吸症候群や起立性調節障害などの厄介な病気もあるため、早期に原因を把握し、適切な対応を取ることが肝要です。
本記事では眠れない原因について分かりやすく解説していきます。本記事を読むことで、眠れない原因や病気を把握し、早期から適切に対処していただければ幸いです。
眠れない原因
夜眠れないと睡眠時間が短縮し、日中の眠気や集中力の低下・ストレスの蓄積などさまざまな弊害が生じます。さらに、その状態が進行すると朝も起きられなくなり、通学や通勤にも影響が出るでしょう。
そこで、まずは夜眠れない原因を早期に把握する必要があります。夜眠れない原因は人によってもさまざまですが、多くの場合は不適切な就寝環境や生活習慣が原因です。
これらの原因は自覚できればすぐに改善可能なものも多いため、事前にどのような原因があるのかを把握しておくことが重要です。そこで、夜眠れない原因を8つ紹介します。
不適切な寝具の使用
不適切な寝具の使用は、夜眠れない原因となります。
不適切な寝具の使用によって睡眠中も身体に負担がかかり疲労が取れず、睡眠の質が低下することで精神的ストレスも発散されにくい状態となります。
高さの合わない枕の使用は気道狭窄を招き、睡眠中に取り込める酸素の量を低下させる可能性があります。特に、7cm以上の高さの枕は気道狭窄を招きやすいため、注意が必要です。
また、硬すぎる、もしくは柔らかすぎるマットレスの使用も身体には良くありません。睡眠中に身体にかかる圧力がうまく分散されず、痛みなどのストレスが加わってしまいます。身体にフィットする心地よいマットレスを使用しましょう。
不適切な就寝環境
不適切な就寝環境も、夜眠れない原因となります。
寝室が高温多湿、もしくは寒冷乾燥していると、寝苦しくてなかなか寝付けません。最適な湿度は40〜60%と言われているため、エアコンや加湿器を使用してちょうどいい湿度・温度を保ちましょう。また、その際部屋の換気も忘れないようにしましょう。
部屋の換気を怠ると、人の呼気に含まれる二酸化炭素が寝室内に充満します。二酸化炭素の濃度上昇は脳内での血管拡張をもたらし、頭痛や嘔気の原因となるため、寝つきが悪くなる可能性があります。
就寝前の運動・入浴
就寝前の運動・入浴も、夜眠れない原因となります。
通常、就寝直前から就寝後にかけて一気に深部体温が低下することが知られており、この体温低下が顕著であればあるほど、睡眠の質が向上することが知られています。
しかし、就寝直前の激しい運動や入浴は体温を上昇させてしまい、就寝後にも体温低下が得られにくくなるため、睡眠の質が低下すると言われています。
具体的な目安としては、運動は少なくとも就寝の2時間以上前には終わらせ、就寝の1.5〜2時間前までにぬるま湯で10〜15分ほどの入浴がおすすめです。逆に、適切な時間や負荷の運動・入浴は睡眠の質を向上させるため、眠れない方は是非実践しましょう。
音刺激・光刺激・振動
睡眠中の音刺激・光刺激・振動も、夜眠れない原因となります。
電車や工事の音・振動がうるさい、カーテンが無くて光が入る、などの刺激が気になって寝付けない経験は誰しもあるのではないでしょうか?
また、眠っている間に自覚することは少ないですが、周囲からの音刺激・光刺激・振動は身体にインプットされ、脳で情報として処理されています。その間、脳は不必要な情報を処理するため、うまく休めません。
カーテンや耳栓など、ちょっとした工夫でも大きく環境を変えることができます。極力周囲の騒音や振動を避け、光が入らないように部屋の環境を整えましょう。
就寝前のスマホいじり
就寝前のスマホいじりは、夜眠れない原因となります。人が夜に眠くなるのは、日中に太陽光を浴びて体内でセロトニンと呼ばれるホルモンを分泌しているからです。
体内で増加したセロトニンは、夜間に光刺激が少なくなると松果体という部位でメラトニンというホルモンの原料となります。このメラトニンこそが睡眠を誘うホルモンであり、自然な入眠には必要不可欠です。
そのため、日中に外に出ず、夜にスマホいじりをしていると、メラトニンがうまく分泌されず、夜眠れない原因となります。少なくとも就寝の2時間前にはスマホやPC の光刺激を控えましょう。
肥満
肥満も夜眠れない原因となります。
肥満の方は首回りにたくさんの脂肪がついているため気道が狭窄しやすく、いびきをかきやすくなります。いびきをかくと、その音や苦しさから熟睡できず、すぐに起きてしまう方も多いでしょう。また、寝れたとしても睡眠中に取り込める酸素の量が低下するため、脳は十分に休むことができず睡眠の質は低下します。
一般的に、肥満の評価には体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)によって算出されるBMIと言われる指標が用いられます。BMI25以上は肥満のため注意が必要です。食事や運動に気を使い減量に努めましょう。
アルコール・喫煙・カフェイン
就寝前のアルコール・喫煙・カフェインの摂取も夜眠れない原因となります。
寝付けをよくするためにアルコールを摂取する方もいますが、アルコールに含まれる覚醒作用・利尿作用によって中途覚醒が増え、かえって睡眠の質は悪化します。
また、アルコール摂取や喫煙は気道の浮腫を招き、肥満と同様にいびきの原因となるため、注意が必要です。長期的には睡眠の質を低下させるため、過剰な飲酒・喫煙は控えましょう。
さらに、コーヒーやお茶に含まれるカフェインには神経興奮作用があり、夜眠れなくなる原因です。就寝前は水か、カフェインの含まれていないデカフェの飲料を摂取するようにしましょう。
ストレス
ストレスの蓄積も、夜眠れない原因となります。
「仕事でミスをしたから明日上司に会うのが怖い」「転倒した際にぶつけたところが痛くて眠れない」「将来のことについていろいろ考えすぎて眠れない」このような精神的・身体的ストレスは睡眠の妨げとなります。
眠るためには副交感神経が優位となる必要がありますが、過剰なストレスは交感神経を活性化させてしまうため、体が睡眠傾向にならず、目が冴えてしまい就寝できなくなります。
また、一度気になり始めると眠れないこと自体がストレスとなり、さらに交感神経を活性化される悪循環に陥るため、ストレスを溜めないことが重要です。
関連記事:眠れない時におすすめの飲み物7選|控えるべき飲み物も紹介
眠れない場合の対策
これまで眠れない原因について紹介しましたが、これらの原因はどれも自身のちょっとした意識の変化で改善できるものが多いです。就寝環境を見直し、生活習慣を整えることで改善できます。
また、生活習慣の改善は肥満解消にもつながるため、睡眠にとっては良い効果が期待できます。下記記事では、さらに詳しく眠れない時の対処法について解説しているため、気になる方は是非参考にしてください。
眠れない時に考えられる病気
生活習慣・就寝環境を整えても夜なかなか眠れない場合、なんらかの病気を発症している可能性もあります。背景に病気がある場合、セルフケアだけでは改善が難しいため、医療機関での適切な治療が必要となります。
中には、放置すると命に関わるような病気もあるため、早期に対策を取ることが重要です。そこで、眠れないときに考えられる病気を紹介します。
睡眠相後退症候群
睡眠相後退症候群とは、その名の通り、睡眠相(就寝時間から起床時間までの期間)が遅い時間に後退し、夜眠れず朝起きられなくなる病気です。
人の体にはサーカディアンリズムと呼ばれる体内時計が存在し、1日25時間周期でカウントしていますが、実際は1日24時間のため、本来であれば毎日1時間ずつ睡眠相が後退するはずです。
しかし、通学や通勤、日中の太陽光や規則正しい食事などの外部刺激によってサーカディアンリズムはリセットされるため、日々同じような時間に起きて、寝ることができます。
夜のスマホいじりなどによって寝付けなくなると、朝起きられなくなり、規則正しい生活や太陽光などの刺激が少なくなるため、サーカディアンリズムのズレを修正できなくなり、睡眠相後退症候群に至ります。規則正しい生活を送るように心がけましょう。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群も夜眠れなくなる原因となります。睡眠時無呼吸症候群は、気道狭窄によって睡眠中に取り込める酸素の量が低下する病気です。
気道が狭くなるため、呼吸が弱くなる、もしくは一時的に完全に止まる状態です。脳が十分な酸素を得られず、休むことができないため、睡眠の質は低下します。中には、途中で起きてしまう方もいます。
さらに、低酸素のストレスが長期間継続すると高血圧や糖尿病・脳血管障害や心疾患の発症リスクを増加させることも知られており、早期から適切な対策が必要となる病気です。
うつ病
夜眠れない場合、うつ病の可能性もあります。うつ病は脳内のセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質が減少することで、抑うつ気分や興味の減退などさまざまな症状をきたす疾患です。
元々の性格や遺伝も影響し、外部からのストレスによって発症することもあります。うつ病に罹患すると、不眠症状はもちろんのこと、人によっては過眠症状をきたすこともあります。
うつ病も早期から適切な治療を行うことが重要となるため、不眠症状以外にさまざまな精神症状を認める方は早期に医療機関を受診しましょう。
自律神経失調症
自律神経失調症も眠れないときに考えられる病気の1つです。自律神経失調症とは、なんらかの原因で自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスが乱れてしまう病気です。
自律神経は相互に影響し合いながら、血圧・脈拍・体温・睡眠・排尿・排便などさまざまな生理機能をコントロールしているため、自律神経が乱れることで出現する症状もさまざまです。
通常の睡眠中は副交感神経が優位となり、朝の覚醒に向かうにつれて交感神経が活性化しますが、自律神経が乱れることで入眠困難や中途覚醒も増加します。
>>自律神経失調症とは?治し方や原因、症状、セルフチェックについて解説
脳卒中
脳卒中も眠れないときに考えられる病気の1つです。脳卒中は、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の総称であり、脳の血管になんらかの異常が生じて脳細胞が障害される病気です。
前述したサーカディアンリズムなどを司る睡眠中枢は脳の視床下部と呼ばれる部位に存在し、脳卒中によって視床下部が障害されると睡眠のリズムが崩れて入眠困難に至ります。
また、脳卒中によって筋肉が麻痺すると気道が狭くなりやすくなり、肥満などを伴わずに睡眠時無呼吸症候群を併発する可能性もあるため、注意が必要な病態です。
放置して進行すると命に関わる病状に悪化する可能性もあるため、可及的速やかに医療機関を受診しましょう。
関連記事:眠れない時に考えられる6つの病気-セルフチェックや生活上の注意点を解説
もしかしたら起立性調節障害の可能性がある
夜眠れない場合、起立性調節障害の可能性もあります。起立性調節障害は、特に小学生高学年から中学生で発症しやすい身体疾患で、自律神経の乱れによってさまざまな症状をきたす疾患です。
自律神経失調症と違い、起立性調節障害は特に起床時や午前中に症状が強く、夕方以降は症状が改善するため、眠りにくくなる点です。生活に支障が出るため、早期発見・早期対策が重要です。
そこで、起立性調節障害はご自宅でセルフチェックも可能です。起立性調節障害のセルフチェックについては下記記事で詳しく解説されているため、ぜひ参考にして早期発見に務めましょう。
>>起立性調節障害のセルフチェックリスト(子ども)|すぐにできる診断テスト
また、子供に多い病気ですが、大人でも発症するリスクはあるため注意が必要です。
発症して通勤に支障をきたす方も多いため、早期発見が重要です。大人のセルフチェックについては下記記事で詳しく解説されています。
>>眠れないまま朝になった時の対処法を5つ解説|仕事や学校はどうするべき?
関連記事:眠れない時は病院を受診するべき?症状別に受診したほうがよい場合を解説