- 睡眠薬を飲んでも眠れない時はどうすればいい
- こんなに不眠症状があるのは何かの病気なの?
このようなお悩みをお持ちの方も少なくないでしょう。
睡眠薬は医師の指示に従い、用法用量通りに内服すれば不眠症改善のためにとても有用な医薬品ですが、睡眠薬は長期で内服すると耐性がついてしまうため、飲んでも眠れなくなることがあります。
耐性が生じて内服量をどんどん増やしてしまう方もいますが、根本的な解決にはなりません。睡眠薬を飲んでも眠れない場合、その原因を突き止め、原因にあった適切な対処法を実践することが肝要です。
この記事では、睡眠薬を飲んでも眠れない時の原因や対処法、背景に隠れている可能性のある病気について詳しく解説します。この記事を読むことで、睡眠薬に頼らない安眠を目指せるため、ぜひご一読ください。
睡眠薬を飲んでも眠れない時はどうするべき?対処法とは?
眠いのに寝付けない時や寝ていても途中で起きてしまうと、身体や精神はともに十分には休めず、本人にとっては大変辛い状態です。そこで、睡眠薬の使用は1つの選択肢ですが、睡眠薬を飲んでも眠れない時もあります。
これは睡眠に対する知識や認識が不足しており、より良い睡眠を得るための準備不足であることが原因として多いです。睡眠の質を向上させるためには、日頃からの生活習慣を見直し、改める必要があります。
ここでは、睡眠薬を飲んでも眠れない時の対処法を5つ紹介します。不眠症状にお悩みの方は、ぜひ参考にして実践してみると良いでしょう。
日中に運動する
睡眠薬を飲んでも眠れない時は、日中に運動することがおすすめです。日中に運動することで自律神経が整い、また身体に程よい疲労感が残るため、夜になると自然な眠気が誘われます。
また、日中に屋外で運動することで太陽光をたくさん浴びると、体内でトリプトファンを原料に大量のセロトニンが生成され、そのセロトニンが夜間に睡眠ホルモン「メラトニン」の原料となるため、心地よく寝付けます。
注意点として、就寝の2時間前以降に運動すると、深部体温が上昇してかえって睡眠の質を低下させることが知られているため、安眠のためにも運動は日中に終わらせておくことが肝要です。
就寝環境を見直す
睡眠薬を飲んでも眠れない時は、就寝環境を見直しましょう。睡眠にとって就寝環境の質は非常に重要であり、就寝環境が劣悪だとなかなか寝付けなかったり、寝ても途中で目覚める原因となってしまいます。
マットレスや枕など、使用している寝具の固さや高さが適切か確認し、寝室の温度や湿度が心地よい設定になっているか確認しましょう。また、防音や防振、遮光などが十分であるかも重要です。
就寝環境は気付いて自覚できれば改善は比較的容易であるため、ぜひこれを機に見直してみると良いでしょう。
薬の飲み方や種類を主治医に確認する
睡眠薬を飲んでも眠れない時は、薬の飲み方や種類を主治医に確認しましょう。睡眠薬の飲むタイミングや量が不適切な場合、思ったような効果が得られないことがあるためです。
また、自身の症状に合っていない睡眠薬を内服している場合、睡眠薬の効果が不眠症状と合わず、かえって日中の眠気を引き起こす原因にもなるため、必ず一度主治医に確認して見直す必要があります。
人によっては自己判断で内服量を増やしたり、入眠するためにアルコールと共に内服する人もいますが、かえって睡眠の質を低下させる原因となるため、控えましょう。
飲食の内容を確認する
睡眠薬を飲んでも眠れない時は、自分の飲食の内容や時間帯を確認することも重要です。実は食事内容は睡眠にとって非常に重要であり、その内容や摂取時間によって睡眠の質も左右されます。
就寝直前の暴飲暴食は深部体温を上昇させ、就寝中に身体の中に体温がこもってしまうことで睡眠の質が低下することが知られています。また、アルコールやカフェインには中枢神経系を興奮させる作用があり、睡眠の質を低下させるため、就寝前の摂取は控えるべきです。
逆に、乳製品には多くのトリプトファンが含まれているため、普段から摂取することでメラトニン産生が促され、より良い睡眠が得られる可能性が上がります。
スマホいじりをやめる
睡眠薬を飲んでも眠れない時は、就寝直前のスマホ・PCの操作は控えましょう。これらの電子機器から発せられるブルーライトは脳を刺激し、睡眠ホルモンであるメラトニンの産生が抑制されるためです。
本来、就寝前に暗闇刺激がなくなると体内で生成されたセロトニンが脳の一部である松果体に取り込まれ、メラトニンを合成することで眠くなりますが、ブルーライトはこの反応を抑制するため、眠れなくなります。
少なくとも就寝の2時間以上前にはスマホやPCの操作は控え、早めに寝室で目を閉じることが重要です。
睡眠薬を飲んでも眠れない原因とは?
睡眠薬は特に内服し始めは効果を実感しやすいですが、内服期間が長期化するとさまざまな理由で効果を実感しにくくなり、飲んでも眠れなくなります。
ここではその原因を3つ紹介します。
睡眠薬に耐性がついている
睡眠薬を飲んでも眠れない場合、耐性を獲得してしまっている可能性があります。睡眠薬には、長期内服で徐々にその効果が得られにくくなる、いわゆる耐性がついてしまうことが知られており、長期内服者は注意が必要です。
特に、現在でもよく使用されるベンゾジアゼピン系睡眠薬は耐性を獲得しやすいことが知られていますが、最近新しく開発された非ベンゾジアゼピン系睡眠薬、メラトニン受容体作動性薬剤、オレキシン受容体拮抗薬などの睡眠薬は比較的耐性が獲得されにくいことが知られています。
耐性がつくと自己判断で内服量を増やしてしまい、さらに頑固な耐性がつくという負のスパイラルに陥るため、長期使用する場合は耐性のつきにくい睡眠薬を使用することが肝要です。
睡眠薬の効果と不眠症状が合っていない
睡眠薬を飲んでも眠れない場合、睡眠薬の効果と不眠症状が合っていない可能性があります。睡眠薬にはその効果発現時間によって幾つかの種類があり、超短時間作用型・短時間作用型・中間作用型・長時間作用型と分類されます。
例えば、寝付きにくいけど一度寝れば熟睡できる人であれば、超短時間作用型もしくは短時間作用型が適切ですが、すぐ寝れるけど途中で起きてしまうような人には超短時間作用型もしくは短時間作用型は不向きです。
一方で、長時間作用型は夜間安定して効果を発揮するため、早朝に覚醒して寝れなくなる人には適していますが、効果が持続してしまい翌日に眠気を引きずってしまう可能性が高まります。
このように、自身の不眠症状にあった睡眠薬を選ばないと、かえって睡眠リズムを崩して眠れなくなってしまうため注意が必要です。
不適切な生活習慣によって睡眠が妨げられている
睡眠薬を飲んでも眠れない場合、不適切な生活習慣によって睡眠が妨げられている可能性があります。先述したように、睡眠には食事や就寝環境などさまざまな要因が影響するため、これらの要因によって睡眠薬の効果を感じにくくなる可能性があります。
例えば、入浴は心身の疲労を軽減し、リラックス効果もあるため安眠に良いとされますが、就寝直前に入浴すると深部体温が上がってしまい、睡眠にとって逆効果です。
また普段から睡眠時間が不規則であったり過度なストレスを溜め込んでいる場合も、自律神経のバランスが乱れることで睡眠薬の効果が減弱する可能性があるため、注意が必要です。
安眠を得るためには、普段から生活習慣を整え、睡眠にとってよい日常を送る必要があります。
睡眠薬を飲んでも眠れない時に考えられる病気とは?
生活習慣や就寝環境を整えた上で、睡眠薬を飲んでも眠れない場合は何らかの病気を発症している可能性が高いです。
病気を発症している場合はどんなに生活習慣や就寝環境を整えても不眠症状を改善することは困難であり、病気の原因をいち早く特定し、医療機関で適切な治療を受けることが改善への一番の近道です。
この記事では、睡眠薬を飲んでも眠れない時に考えられる病気を3つ紹介します。
うつ病
睡眠薬を飲んでも眠れない時は、うつ病を発症している可能性があります。うつ病は脳内でセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質が減少してしまう病気と考えられており、不眠症状をはじめとするさまざまな症状をきたす疾患です。
興味の減退や食欲の低下、抑うつ気分、不眠もしくは過眠、体重減少もしくは体重増加などが主な症状であり、夜眠れなくなってしまう人も多いです。不眠症状に対しては確かに睡眠薬で一時的な改善が見込めますが、うつ病そのものを治療できているわけではありません。
精神科や心療内科で適切な治療を受けないと徐々に症状は進行し、最悪の場合、希死念慮や自殺企図など、命に関わる事態にも発展しかねない病気のため、早期に医療機関を受診することが肝要です。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠薬を飲んでも眠れない時は、睡眠時無呼吸症候群を発症している可能性があります。睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に舌根が沈下することで気道が狭窄し、いびきをかくとともに取り込める酸素量が低下してしまう病気です。
睡眠中に取り込める酸素量が低下すると、脳は十分に休むことができず睡眠の質が低下し、また中途覚醒も増加することで不眠になります。
多くの場合は肥満が原因となるため、ダイエットなど自身の努力で改善を目指すことも可能ですが、小顎や巨舌、扁桃肥大、アデノイドなどの解剖学的な理由で気道が狭窄している場合は専門的な外科的手術が必要となります。
睡眠時無呼吸症候群を放置すると、持続的な低酸素のストレスによって高血圧や脳血管障害、心筋梗塞や心房細動などの心疾患の発症リスクが増加することが知られているため、やはり早期の治療が肝要です。
睡眠相後退症候群
睡眠薬を飲んでも眠れない時は、睡眠相後退症候群の可能性もあります。睡眠相後退症候群とは、入眠時間や起床時間が遅い時間にスライドしてしまう病気であり、つまりは普段得る時間に目が冴えて眠れなくなってしまう病気です。
体内時計が乱れてしまうことが原因であり、普段の生活習慣の乱れや運動不足、不規則な食事摂取などによって体内時計は乱れるため、発症初期であればセルフケアで改善を見込めます。
一方で、症状が悪化するとなかなか自身では改善困難であり、睡眠外来などで専門的な治療が必要となるため、注意が必要です。
もしかしたら起立性調節障害かも
睡眠薬を飲んでも眠れない時は、もしかしたら起立性調節障害かもしれません。起立性調節障害とは、身体の急激な成長に対して自律神経の成長が追いつかず、自律神経のバランスが乱れることで動悸や発汗など、さまざまな症状をきたす疾患です。
本来であれば朝に交感神経が活性化することで身体が起床モードに移り、逆に夜には副交感神経が活性化することで就寝モードに移り変わりますが、起立性調節障害では交感神経と副交感神経のバランスが乱れるため、朝に交感神経が活性化せず起きられなくなります。
逆に、夜に遅れて交感神経が活性化してしまうことで身体が就寝モードに移行できず、目が冴えて眠れなくなるのです。
起立性調節障害の不眠症状に対して睡眠薬を内服される方もいますが、根本の解決にはならず、むしろ朝の起床困難を助長する可能性もあるため、睡眠薬には頼らず早期から根本の治療を行うことが肝要です。
そのためには症状が重症化する前に治療すべきであり、早期発見が肝要であるため、ぜひ下記の記事を参考に、大人における起立性調節障害のセルフチェック方法を知っておきましょう。
また、起立性調節障害は身体が急激に発達する時期に発症しやすいため、大人よりも子どもで発症しやすい病気です。子供の場合、症状が悪化して不登校などになれば、進級や進学にも支障をきたし、将来の進路にも大きく影響するため、早期発見によって重症化を未然に防ぎましょう。
下記の記事では、子どもにおける起立性調節障害のセルフチェック方法を詳しく紹介しているため、ぜひ参考にして早期発見に努めましょう。