起立性調節障害とは

中学生で乗り物酔いが続く原因とは?対処法・考えられる病気を解説

この記事の監修者

医師 錦惠那

医師 錦 惠那

内科一般・腎臓内科・透析科・産業医
保有資格:日本内科学会内科専門医・日本医師会認定産業医
2018年から起立性調節障害患者の診療を行い、累計30人以上の起立性調節障害患者を担当。

一般社団法人 起立性調節障害改善協会

中学生になると、学校行事や部活動、塾などでバスや電車に乗る機会が増えます。しかし、そのたびにひどい乗り物酔いに悩まされる子どもも少なくありません。

特に成長期の子どもは自律神経の働きが不安定になりやすく、車や電車の揺れに体が敏感に反応してしまうことがあります。吐き気や頭痛、めまいなどの症状が出ると、勉強や人間関係にも影響が出かねません。

この記事では、中学生に多い乗り物酔いの原因や仕組み、日常生活でできる対策、必要に応じた医療機関の受診について、わかりやすく解説します。子ども本人だけでなく、保護者や学校関係者にも知って頂きたい内容です。

中学生で乗り物がひどいのはなぜ?原因とは?

まずは、原因について解説していきます。

自律神経の乱れ

中学生は思春期にあたり、体と心が大きく変化する時期です。この時期は自律神経のバランスが崩れやすく、体温調節や内臓の動きをコントロールする機能が不安定になりがちです。乗り物の揺れや加速・減速にうまく対応できず、酔いやすくなるのです。

とくに睡眠不足やストレスがあると、さらに自律神経が乱れ、乗り物酔いを引き起こしやすくなります。体調管理や生活リズムを整えることが、症状の軽減につながります。

三半規管の過敏さ

耳の奥にある「三半規管」は、体のバランスや動きを感じ取るセンサーのような働きをします。中学生はこの器官がまだ発達途中で、刺激に敏感になりやすい時期です。

乗り物に乗ると、目から得る情報と三半規管が感じる動きにズレが生じ、このギャップが酔いを引き起こします。本を読んだりスマホを見たりしていると、さらに感覚のズレが大きくなり、症状が悪化することがあります。

視覚と体の感覚のズレ

乗り物酔いは「見えている景色」と「体が感じる動き」にズレがあることで起こります。たとえば車の中で本を読んでいると、目は動きを感じないのに、体は揺れを感じている状態になります。このズレが脳に混乱を与え、気持ち悪さや吐き気を引き起こすのです。

中学生は感覚のバランスを取る力がまだ未熟なため、こうしたズレに弱く、酔いやすくなります。前を向いて遠くを見るなど、視線の工夫で軽減できることがあります。

心理的な不安や緊張

「また酔ったらどうしよう」という不安があると、実際に酔いやすくなることがあります。中学生は感受性が強く、学校行事や人間関係で緊張しやすいため、精神的な影響が体に出やすい時期です。

乗る前から「酔うかもしれない」と心配しすぎると、それがきっかけとなって本当に気分が悪くなることもあります。リラックスできる音楽を聴いたり、深呼吸をして気持ちを落ち着けると、症状が和らぐことがあります。

空腹・満腹など食事のタイミング

乗り物に乗る前の食事内容やタイミングも大きな影響を与えます。空腹のまま乗ると血糖値が下がり、酔いやすくなることがあります。

一方で、油っこいものや甘すぎるものをたくさん食べてから乗ると、胃が重くなり気持ち悪くなる原因になります。中学生は食事に無頓着なことも多いため、乗車前は軽めで消化のよいものを食べるよう心がけることが大切です。水分の摂りすぎにも注意しましょう。

中学生で乗り物がひどい場合の対処法とは?

中学生で乗り物がひどい場合の対処法について、3つの観点から解説していきます。

乗り方や座る位置を工夫する

乗り物酔いを防ぐには、座る位置や姿勢がとても重要です。車の場合は前の座席、バスなら前方、電車なら進行方向を向いた座席に座ると揺れを感じにくくなります。

また、遠くの景色や進行方向を見るようにすることで、目と体の感覚のズレが少なくなり、酔いにくくなります。窓を少し開けて新鮮な空気を取り入れたり、音楽を聞いてリラックスするのも効果的です。読書やスマホは控え、なるべく頭を動かさず静かに過ごすのがポイントです。

事前の体調管理と食事の工夫

乗り物に乗る前は、体調を整えておくことが大切です。前日はしっかり睡眠をとり、朝食は軽く消化の良いものをとるとよいでしょう。空腹すぎても満腹すぎても酔いやすくなるため、適度な食事が効果的です。

油っこい食べ物や甘いお菓子、炭酸飲料は避け、できれば出発1時間前には食事を済ませておきましょう。水分補給も大切ですが、一度に大量に飲むのは控えましょう。体調を万全にしておくことで、酔いにくい体を作ることができます。

薬の活用や医師への相談

どうしても乗り物酔いがつらい場合は、市販の酔い止め薬を活用するのも一つの方法です。中学生でも服用できる年齢に達していることが多く、年齢に合った薬を選ぶことで症状をやわらげることができます。服用のタイミングは「乗る30分前」が基本です。

また、薬を飲んでも効果が薄い、頻繁に吐いてしまうなどの症状がある場合は、小児科や耳鼻科で一度相談してみましょう。身体的な問題や自律神経の不調が隠れている可能性もあります。

中学生で乗り物がひどい場合に考えられる病気とは?

中学生で乗り物酔いがひどい場合に考えられる病気について、代表的なものを3つ解説していきます。

前庭機能障害

耳の奥にある「前庭」は、体のバランスを保つ働きをしています。この前庭に何らかの機能異常があると、少しの揺れでも過敏に反応し、強い乗り物酔いを起こすことがあります。

子どもは成長過程で前庭機能が不安定な場合もあり、一時的に症状が出ることもありますが、あまりにも日常生活に支障をきたす場合は耳鼻科での検査が必要です。バランス感覚の訓練や内服薬で症状が改善することもありますので、早めの対応が大切です。

自律神経失調症

思春期の中学生は、自律神経のバランスが乱れやすい時期です。自律神経失調症になると、ちょっとした刺激で吐き気や頭痛、めまいなどの症状が出やすくなり、乗り物酔いもひどくなる傾向があります。

疲れやすい、朝起きられない、気分の浮き沈みが激しいなどの症状がある場合は、自律神経の乱れが背景にある可能性があります。心療内科や小児科で相談し、生活リズムを整えることが重要です。ストレスや不安を軽減するサポートも必要です。

片頭痛

中学生で頻繁に乗り物酔いをする場合、小児型の片頭痛が隠れていることもあります。片頭痛の前兆として、車酔いのような吐き気やめまいが出るケースがあり、特に母親や家族に片頭痛持ちがいる場合は遺伝の可能性もあります。

発作的な強い頭痛を伴うことが特徴ですが、頭痛がなくても「前兆」だけで終わることもあります。小児科や頭痛外来で相談することで、適切な治療や予防薬の使用が検討されます。早めの受診が安心です。

もしかしたら起立性調節障害かも

中学生になってから急に乗り物酔いがひどくなった、バスや電車に乗るたびに気分が悪くなる――そんな症状があるとき、単なる「酔いやすい体質」ではなく、「起立性調節障害」が関係している可能性があります。

起立性調節障害とは、自律神経である交感神経と副交感神経の働きが乱れ、血圧や心拍数の調整がうまくできなくなる病気で、特に思春期の子どもに多く見られます。朝が苦手、立ちくらみ、頭痛、倦怠感などがよくある症状で、午後になると体調が良くなる傾向があるのも特徴です。

自律神経が不安定になると、乗り物の揺れにも過敏に反応しやすくなり、ひどい酔いや吐き気を引き起こすことがあります。「緊張しやすい性格」や「体力がない」などと誤解されることも多く、本人がつらさを訴えても理解されにくいことがあります。

もし乗り物酔いに加えて、朝の不調や体調の波があるようなら、一度小児科や内科で相談してみましょう。適切な生活指導や治療によって、症状は改善が見込めます。早めの気づきが、子どもの生活と心の安定につながります。

以下の記事では、起立性調節障害のセルフチェックに関して詳しく解説していますので参考にしてみてください。

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