「起立性調節障害の診断基準を知りたい」と思って検索された方へ。
本記事では、起立性調節障害の診断基準を紹介しながら、どのような症状が当てはまるのか、また診断を受ける際の流れについて解説します。自分やお子さんが当てはまるのか不安な方は、まずは基準をチェックしてみてください。
起立性調節障害の診断基準とは?
起立性調節障害の診断基準は、主に下記に示す3つのステップから成り立ちます。
- 下記に示す11の症状のうち、3つ以上、もしくは症状が強い2つ以上当てはまる場合に疑う
- 各種検査でその他の基礎疾患の可能性を否定する
- 新起立試験を行い、起立性調節障害のサブタイプに合致するか判定する
それぞれについて解説します。
起立性調節障害を疑う11の症状
起立性調節障害を疑う11の症状は下記の通りです。
- めまいや立ちくらみ
- 起立時の失神
- 気分不良
- 原因不明の動悸や息切れ
- 特に午前中に調子が悪く起床困難
- 顔面蒼白
- 食欲不振
- 腹痛
- 倦怠感
- 頭痛
- 乗り物酔い
上記症状のうち、3つ以上、もしくは症状が強い2つ以上当てはまる場合は、起立性調節障害を強く疑います。
基礎疾患の除外
起立性調節障害(OD)と診断するためには、まず他の病気を除外することが重要です。なぜなら、倦怠感やめまい、起床困難といった症状は、OD以外の疾患でも見られることがあるためです。
医師は、必要に応じて以下のような検査を行います。
- Holter心電図
- 脳波検査
- 血液検査
- 尿検査
- 胸部レントゲン検査
これらの検査を通じて、甲状腺機能異常、鉄欠乏性貧血、うつ病、心疾患、てんかんなどの神経疾患を否定していきます。
一般的に、起立性調節障害では検査で明らかな異常は認められないのが特徴です。そのため、もし異常所見が見つかった場合には、他の基礎疾患の可能性を考慮し、さらなる精査や専門医による診察が必要になります。
新起立試験によるサブタイプ判定
各種検査で他の病気が否定された場合、新起立試験を行い、体位変換に伴う脈拍や血圧の変動を確認します。その結果から、起立性調節障害は次の4つのタイプに分類されます。
<起立直後性低血圧>
起立後の血圧回復に25秒以上かかる場合、または20秒以上かつ起立直後の平均血圧が60%以上低下した場合に診断されます。
<体位性頻脈症候群(POTS)>
起立後3分以降の心拍数が115bpm以上、または起立中に心拍が35bpm以上増加する場合に診断されます。
<血管迷走神経性失神>
起立中に血圧が低下し、意識を失うタイプです。
<遷延性起立性低血圧>
起立後3〜10分の間に、収縮期血圧が起立前より15%以上、または20mmHg以上低下する場合に診断されます。
これらの基準をもとに、最終的に起立性調節障害の診断が行われます。
また、診察前にご家庭でできる方法として、代表的な11の症状に基づくセルフチェックがあります。気になる症状が複数当てはまる場合は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
世代別に起立性調節障害の診断方法を解説
世代によって起立性調節障害の診断方法や症状の現れ方は若干違いがあります。
ここでは、各世代での診断方法を紹介します。
【小学生】起立性調節障害の診断方法
小学生で起立性調節障害(OD)が疑われる場合、まず新起立試験で体位変換に伴う血圧・脈拍の変化を評価します。あわせて医療機関では、専用ベッドを用いて上体を段階的に起こし、ヘッドアップティルト試験で血圧や脈拍の推移を連続的に測定し、自律神経機能をより精密に確認します。
特に小学校高学年は身体の急速な発達に自律神経の成熟が追いつかず、ODを発症しやすい時期です。類似症状を呈する他疾患との鑑別も必要なため、年齢や症状に応じてこれらの検査を組み合わせ、慎重かつ体系的に診断を進めます。
【中学生】起立性調節障害の診断方法
中学生は思春期に入り、ホルモンバランスが不安定になりやすく、これに伴って自律神経の働きも乱れやすい時期です。そのため、起立性調節障害(OD)が発症・悪化しやすくなります。
さらに、小学生の頃とは違い、親子の距離感が変化し会話が減少する傾向があるため、保護者が症状に気づきにくいこともあります。
診断の際に注目したいのは、睡眠のリズムです。ODでは朝に症状が強く、起きられない一方で、夜になると体調が回復して眠りにつけなくなることが多く見られます。したがって、就寝時間や起床時間を丁寧にチェックすることが診断の手がかりとなります。
中学生の場合は学業や生活リズムへの影響も大きいため、保護者は日々の生活習慣を観察し、必要に応じて医療機関に相談することが大切です。
【高校生】起立性調節障害の診断方法
高校生の起立性調節障害(OD)の診断では、学業の遅れに注目することが重要です。小中学生と異なり、高校生は義務教育ではないため、出席状況や成績は進級や進学に直結します。
ODを発症すると、朝の起床困難や通学への支障が生じるほか、登校できても午前中は集中力が低下しやすいため、授業の理解度が下がり学業に遅れが出やすくなります。
これまで特に学習面で問題がなかった生徒が、突然大きな遅れを見せ始めた場合は、背景に起立性調節障害が隠れている可能性を考える必要があります。身体症状だけでなく、学業の変化も診断の糸口となるのです。
【大学生】起立性調節障害の診断方法
起立性調節障害(OD)は小学生や中学生で発症しやすい病気であり、大学生で新たに発症するケースは稀です。むしろ注意すべきは、小児期に改善していた症状が、大学進学などの環境の変化をきっかけに再び悪化するケースです。
大学生になると生活リズムの乱れや新しい人間関係、学業の負担など精神的なストレスが増える傾向にあります。起立性調節障害はあくまで身体疾患ですが、こうしたストレスによって自律神経のバランスがさらに乱れ、症状が進行することがあります。
そのため、過去に起立性調節障害の既往がある学生では、「再発」や「悪化」への注意が必要です。環境の変化に伴って体調が急に悪化した場合は、早めに医療機関での診察を受けることが望まれます。
【大人】起立性調節障害の診断方法
大人の起立性調節障害(OD)の診断では、起床時だけでなく仕事中の体調変化に注目することが重要です。特に長時間のデスクワークでは脳血流が低下しやすく、めまいや倦怠感といった症状が現れることがあります。
さらに、上司や部下との人間関係によるストレスや、過重労働による生活リズムの乱れも症状を悪化させる要因となります。小児や学生に比べて大人は生活環境や責任が複雑であるため、症状が長期化・重症化しやすい傾向があります。
もし継続的に体調不良を感じている場合は、まずセルフチェックを行い、症状が複数当てはまる場合には早めに医療機関を受診することが大切です。
起立性調節障害の症状が出たら何科に行くべき?何科で診断される?
起立性調節障害の症状が出た時、何科に受診すべきか把握していない方も多いのではないでしょうか?また、受診すべき診療科は年代や年齢によって異なることをご存知でしょうか?
自分の考える診療科に行っても場合によっては「専門外です」と言われ、受診できない可能性もあるため、事前に年代別の受診すべき診療科を把握しておきましょう。
小学生の場合
小学生(6〜12歳)の場合は、まず小児科を受診することが基本です。起立性調節障害は特に小児期に発症しやすく、報告によれば小学生のおよそ5%が発症しているとされます。そのため、多くの小児科医が診療経験を持っており、適切に対応できる体制があります。
受診の際は、これまで通院歴のあるかかりつけ医に相談するのが安心です。かかりつけ医がない場合は、通いやすさも考慮して地域の小児科を受診すると良いでしょう。早期に診断を受けることで、生活への影響を最小限に抑えることができます。
中学生の場合
中学生(12〜15歳)の場合も、基本的には小児科を受診することが推奨されます。小児科の対象年齢には明確な規定はありませんが、一般的には中学3年生までを対象としている医療機関が多いのが現状です。
起立性調節障害は中学生に特に多く見られ、約10%が発症すると報告されています。そのため、疑わしい症状がある場合は、これまで通院歴のあるかかりつけ医か、通いやすい小児科を受診するとよいでしょう。
また、中学卒業後も症状が続いている場合、一定の回復が見られるまで引き続き診てもらえる小児科もあります。現在通院している小児科に、継続受診が可能かどうかを確認しておくと安心です。
高校生の場合
高校生(15〜18歳)の場合は、基本的に成人と同じ内科を受診することになります。ただし、起立性調節障害には「必ずこの科で診る」といった決まりがないため、症状の出方に応じて適切な診療科を選ぶことが重要です。
- ふらつきや失神が主な症状:神経内科
- 血圧や脈拍の異常が主な症状:循環器内科
- 嘔気や腹痛など消化器症状が強い場合:消化器内科
- 心理的・精神的な不調が目立つ場合:心療内科
このように症状によって受診すべき科は異なります。最終的には、各診療科での診察や検査を経て起立性調節障害の診断に至ることが多いため、まずは自分の症状に近い内科系の診療科を選んで受診するとよいでしょう。
大学生の場合
大学生の場合も高校生と同様に、症状に応じた内科を受診することが基本です。自分がどのような症状で困っているのかを整理し、それに合わせて診療科を選びましょう。
- めまい・失神が目立つ場合:神経内科
- 血圧や脈拍の異常が気になる場合:循環器内科
- 胃腸症状(嘔気・腹痛など)が強い場合:消化器内科
- ストレスや気分の落ち込みが中心の場合:心療内科
もし自分ではどの診療科に行けばよいか判断できない場合は、総合病院の一般内科を受診すれば適切に振り分けてもらえるため安心です。
大人の場合
大人の場合も、高校生や大学生と同様に、症状に応じた内科を受診することが基本です。
- めまい・失神が中心の場合:神経内科
- 血圧や脈拍の異常が目立つ場合 循環器内科
- 消化器症状が強い場合:消化器内科
- ストレスや精神的な不調が強い場合:心療内科
ただし、大人は子どもと違い、仕事や家庭の事情で簡単には休めないケースも多くあります。起立性調節障害は人によって治療期間が異なり、長期にわたって通院が必要になることもある病気です。
そのため、無理なく通い続けられるように、会社や自宅から近く、アクセスの良い医療機関を選ぶことが大切です。
起立性調節障害は非薬物療法で根気強く治療を続けていきましょう
適切な診療科を受診し、早期に起立性調節障害(OD)と診断されたとしても、すぐに病気が治るわけではありません。特にODには特効薬が存在せず、治療の中心は非薬物療法を根気強く続けることです。
具体的な取り組みとしては、次のような方法があります。
- 姿勢を工夫し、脳血流を保つ:長時間の起立を避け、こまめに休憩をとる
- 規則正しい生活習慣:バランスのとれた食事、十分な睡眠を心がける
- 軽い運動:可能であればウォーキングやストレッチなど無理のない範囲で体を動かす
- 心理的サポート:カウンセリングなどで精神的な不安やストレスに対応する
多くの場合、起立性調節障害は自然な経過の中で徐々に症状が改善していきます。それまでの間は、焦らずに非薬物療法を継続し、病気とうまく付き合っていくことが大切です。
さらに具体的な治療法やセルフケアの工夫については、下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
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【参考文献】
起立性調節障害サポートグループ