総務省情報通信白書の調べによると、スマホ保有率は年々増加傾向にあり、インターネットやスマートフォンの普及に伴い、いまでは誰もが場所や時間に囚われず自由にゲームをできるようになっています。
非常に便利になった一方で、厚生労働科学研究の研究では、2012年と比較して2017年のインターネットの病的使用が疑われる割合は中学生・高校生男女ともに増加しており、ゲーム依存が問題視されています。
これを受け、2019年5月、世界保健機関(WHO)では、ギャンブル依存と同様にゲーム依存を新たな病気として、国際的に統一した病気の基準である「国際疾病分類(ICD)」のなかに加えました。
ゲーム依存に対して世界各国で様々な取り組みが行われており、例えば中国では18歳以下の利用者に対し、オンラインゲームを1日3時間以下に制限し、制限時間を超えると自動的にシャッ トダウンしたり、ゲーム内の報酬を無効化するよう義務付けています。
ゲーム依存は放置すれば悪化していき、親のお金を勝手に課金したり、学業や生活に大きな支障をきたし、人格形成にも悪影響を与えるため、早期から適切に介入することが重要です。
そこでこの記事では、ゲーム依存症の子どもに対して親ができることや、治し方について詳しく解説します。ぜひご一読ください。
ゲーム依存症の子どもの治し方とは?
現状、ゲーム依存の治療に関する研究の蓄積は乏しく、標準的な治療法は確立されていませんが、放置すれば症状は悪化し、社会生活に大きな支障をきたすため、早期から対策することが肝要です。
ここでは、ゲーム依存症の子どもの治し方について詳しく解説します。
ルールを子どもと一緒に設定する
ゲーム依存を治すためには、子どもがゲームを行う時間や場所を、子どもと一緒に設定することが重要です。
ゲーム依存から離脱するためには、親が勝手に作ったルールに従わせることが重要なのではなく、子どもがルールを自主的に守れるようになることが何より重要なためです。
1日のうちで何時間、どこでゲームをするのか、本人が守れる程度のルールを設定しましょう。またルールは簡潔なものが守りやすく、例えば「夜何時以降はゲームはしない」などのように設定すべきです。
また、ルールを決めると同時に、ルールを守れなかった際のペナルティーも決めておくと良いでしょう。ペナルティーがなければルールを作っても守る意味がないためです。ペナルティーもルールと同様に、本人が納得行く程度に抑えましょう。
ルールにせよ、ペナルティーにせよ、親が一方的に設定すれば、子どもにルールを守る習慣が身に付かないため、必ず子どもと一緒に設定することが大切です。
ゲーム以外の時間を増やす
ゲーム依存を治すためには、ゲーム以外の時間を増やすことが重要です。ゲーム以外の時間を増やすことで、新しい趣味や関心事、興味が芽生え、ゲーム依存から離脱できる可能性があります。
そのためには、ゲームやスマホに頼らない運動・外出・旅行、もしくは勉強などがおすすめです。スマホやゲームに触れる時間から子どもを切り離すだけでも効果があります。
ゲーム依存では朝起きられなくなったり、性格が攻撃的になるなど、行動面・心理面でも異変をきたすため、ゲーム以外の時間を増やすことでこれらの改善も期待できます。
コミュニティーに参加する
ゲーム依存を治すためには、同じような境遇の子どものコミュニティーに参加することが重要です。同じ境遇に苦しむ仲間とコミュニティーを作ることで、一人では実感できない楽しさを経験できたり、どのようにしてゲーム依存から離脱できたか体験談を聞くこともできます。
これは、アルコールや覚醒剤などの依存症においても同様に行われている治療法です。集団で運動や食事を行うことで低下したコミュニケーション能力や体力の改善も見込めます。
医療機関やデイケアなどでこのようなサービスを提供しているため、一度検索してみると良いでしょう。
医療機関に入院する
上記のような方法でも症状が改善しない場合、医療機関に入院することを検討すべきです。医療機関ではある程度強制的にスマホやゲームなどを行えないようにすることができます。
具体的には、約2ヶ月間ほどの入院期間で、その間はスマホやゲームと距離をとり、医療従事者や家族との対話の時間に当てます。また、退院後のゲームとの向き合い方やゲーム依存についての知識を身につける時間にするのも良いでしょう。
この入院のためには、事前にしっかり子どもの理解を得ること、また実施している医療機関が限定されることには留意すべきです。
ゲーム依存症の子どもに親ができることとは?
ゲーム依存症は子どもの問題だけではなく、親にもできることはたくさんあります。むしろ、親との距離感や家庭環境が子どもをゲーム依存に導いてしまう可能性もあるため、親子関係は非常に重要です。
ここでは、ゲーム依存症の子どもに親ができることについて解説します。
家庭での時間を楽しい時間に変える
ゲーム依存症の子どもに親ができることとして、家庭での時間を楽しい時間に変えることが挙げられます。家庭内に問題を抱えている子どもは内向的に育ってしまい、ゲーム依存に陥りやすい傾向にあるためです。
特に、父親が不在で母子家庭で育った場合や、父親が威圧的で子どもが萎縮して育った家庭ではゲーム依存に陥りやすい傾向にあり、注意が必要です。
逆に、子どもにとって家庭での時間が楽しい時間に変われば、ゲーム依存から離脱できる可能性があります。具体的な方法としては、「家族みんなで夕食を食べ、その間は家族全員デジタ ル機器やテレビをつけず,歓談する」などのルールを作ると良いでしょう。
子どもの意見に耳を傾ける
ゲーム依存症の子どもに親ができることとして、子どもの意見に耳を傾けることも重要です。頭ごなしに子どもの行動を否定してしまうと、さらなる家庭内の問題(暴力など)に発展し、より問題が深刻化するためです。
また、なぜ子どもがゲーム依存に陥ってしまっているのか、子どもの感情を理解することも重要なので、まずは対話を試みましょう。子どもの意見や納得を大事にして、遮らずにしっかり話を聞くことが重要です。
さらに、長期的にこのような姿勢で子どもと接して行くためには、家族自身にもある程度心の余裕が必要となるため、ストレスを家庭外でうまく発散することも重要です。
毅然とした態度でダメなことはダメと伝える
ゲーム依存症の子どもに対して、親は毅然とした態度でダメなことはダメと伝えましょう。先述したように、子どもも納得の上で定めたルールを子どもが守れなかった場合、ペナルティーを与えることがゲーム依存からの離脱には非常に重要だからです。
自らの子どもに罰を与えるのは心苦しさもあるかと思いますが、もしここで親がペナルティーを実行できなかった場合、ルール設定は無意味と化し、これまでの努力は水の泡です。
「ルールだからね」と優しく声をかけた上で、しっかりペナルティーを実行しましょう。
ゲーム依存症の子どもにやってはいけないNG習慣
ゲーム依存症の子どもに対して、親の行動1つで良い方にも悪い方にも導けます。間違ってやってはいけない対応をしてしまうと、症状が悪化してしまう可能性もあるため、注意が必要です。
ここでは、ゲーム依存症の子どもにやってはいけないNG習慣を3つ紹介します。
ゲームの時間をご褒美にしない
ゲームの時間をご褒美にすることは絶対にNGです。何かをしたご褒美にゲーム時間を与えてしまうと、ご褒美を得ることが目的となってしまい、ルールを守るという本来の目的を見失うためです。
一番重要なのは、親子がともに解決するための方向に向かって努力することであるため、ゲーム時間で子どもをコントロールしようとすると、子ども自身が治療の目的を見失います。
ゲーム時間は与えるものではなく、事前に定めたルールを守れなかった場合のペナルティーとして奪うものであると覚えておきましょう。
不用意にゲームを取り上げる
不用意にゲームを取り上げることも絶対にNGです。子供の理解なくゲームを奪ったとしても、子供がルールを守れるようになったわけではないので、結局またゲームを得れば依存状態に戻ってしまうためです。
むしろ、取り上げることで子供の暴力行為が出現するリスクもあるため、ゲームを取り上げるのは事前に定めたルールを守れなかったときに限定して、不用意に取り上げることは避けましょう。
頭ごなしに否定しない
頭ごなしに子供のゲーム依存を否定するのは絶対にやめましょう。ゲーム依存に至るにはさまざまな原因が考えられ、頭ごなしに否定したところでそれらの原因が解決されなければ依存から脱却できないからです。
元々の内向的な性格やパーソナリティー障害、もしくは家庭内不和など、先天的な原因や環境要因もゲーム依存の原因となるため、まずは子供と対話して、なぜゲームに依存してしまうのかお互いに話し合うことが重要です。
また、背景に何らかの病気が隠れている可能性もあるため、頭ごなしに否定することは絶対に避けるべきでしょう。
もしかしたら起立性調節障害かも
子供が夜遅くまでゲームしていて、朝は起きられない場合、ゲーム依存の可能性もありますが、もしかしたら病気の可能性もあります。
特に、このような症状で注意すべき疾患としては起立性調節障害が挙げられます。起立性調節障害とは、子供が成長する過程で身体の急速な発達に対し、自律神経の成長が追いつくことができず、さまざまな症状をきたす疾患です。
自律神経は睡眠・体温・血圧・脈拍・排尿・排便などさまざまな機能の調節を担っているため、自律神経が乱れることでこれらの機能が障害されます。午前中や起床時に強いめまいやふらつき・体動困難などによって朝に起きられなくなります。
また、夜になると症状が改善するという特徴があり、元気になってゲームをしてしまうことで夜更かしする子供も多いです。これらの特徴が、一見するとゲーム依存に見えてしまうこともあり、よく誤診されます。
しかし、起立性調節障害は依存症とは全く異なる、身体疾患です。ゲーム依存とは治療法も対策も全く異なるため、早期にしっかり診断して適切な治療を行うことが重要です。
特に、子供の場合放置すれば通学や学業に支障をきたし、進学・進級にも影響が出る可能性があるため、早期発見が重要です。下記の記事では、子供の起立性調節障害に対するセルフチェック方法が詳しく解説されているため、ぜひ参考にしてください。