起立性調節障害とは

思春期の子どもがイライラする原因を男女別に解説!抑える方法も紹介

 

この記事の監修者

医師(匿名)

医師歴:10年
勤務病院:某3次救急病院

一般社団法人 起立性調節障害改善協会

 

  • 中学生の子供が常にイライラしているのは思春期の影響?
  • ちょっとしたことで子供と喧嘩になってしまうため、思春期の子供のイライラの解消方法を知りたい

このようなお悩みや不安を抱えている親御さんも少なくないでしょう。

特に小学生高学年〜中学生にかけて、心と身体が徐々に子供から大人へと変化を迎え、自我を確立する過程で子供達の精神面や行動面にもさまざまな変化が生じます。これをいわゆる思春期と言い、多くの親御さんを悩ませる生理現象とも言えます。

思春期の子供とうまく接していくためには、親御さん自身が思春期に対する正しい知識を持ち、適切な接し方を知っておくことが重要です。接し方を誤れば、子供との関係性が更に悪化する可能性もあるため、注意が必要です。

この記事では、思春期のイライラの原因を男女別に詳しく解説します。また、思春期のイライラを抑える解消法も紹介するため、ぜひこの記事を参考に、子供との穏やかな日常を取り戻しましょう。

思春期のイライラは何が原因?男女別に解説

思春期に差し掛かった子供がついイライラしてしまう原因は1つではなく、さまざまな要因が複雑に絡み合って生じています。ただし、その原因を親御さんが理解できていないと子供の態度の変化に驚いたり、悲しい気持ちになってしまいます。

最悪の場合、叱責してしまい親子関係に亀裂が入ってしまう可能性もあるため、ぜひこれを機に思春期の子供のイライラの原因を把握しておきましょう。ここでは、男子と女子に分けて解説します。

男子の場合

男子の場合、思春期になると言葉や言動が暴力的になり、物を投げたり壊すなど、言動がわかりやすく変化します。また、自分の部屋に閉じ籠ったり、家族との時間を共有しないなど、家族に一定の距離を置くようになることも少なくありません。

これまでのかわいかった子供が、急に反抗的・暴力的になったり、距離ができてしまうのは、男子特有の思春期のためです。ここでは、その原因を5つ紹介します。

性ホルモンのバランスの変化

男子の思春期の原因として、性ホルモンのバランスの変化が挙げられます。この時期になると、脳の視床下部と呼ばれる部位から黄体形成ホルモン放出ホルモンが分泌され、それが思春期の始まりです。

放出された黄体形成ホルモン放出ホルモンは、下垂体を刺激することで黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンの分泌を促します。この黄体形成ホルモンによって精巣から男性ホルモンであるテストステロンが分泌されます。

このテストステロンこそ身体を男の子から男性に変化させるホルモンであり、テストステロンが全身に作用することで髭が生えたり、声変わりなどの第二次性徴を発現させているわけです。

テストステロンによる急激な身体の変化によって心身が不安定な状態になるため、イライラや不機嫌の原因となります。ただし、これは誰しもが経験する成長の過程であることは理解しておく必要があります。

・子供扱いに対する苛つき

男子の思春期の原因として、周囲からの子供扱いに対する苛つきが原因として考えられます。この時期、身体付きや声質の変化などによって周囲からは大人になったと言われる機会が増える一方で、まだまだ子供扱いされるシーンも少なくありません。

大人へと成長している過程で、大人と子供の間で揺れ動いており、心身ともに不安定な状態です。変に子供扱いすると怒りや不満の原因となるため、子供扱いせず、子供の変化に合わせて親御さんの対応も変えてみると良いでしょう。

また、子供扱いはされたくない一方で、子供は自分からは甘えたくなる時もあるため、その時は子供の甘えたい気持ちを受け止められるようにしておくと良いでしょう。

部活などによる友人との仲間意識の構築

思春期に男子がイライラする原因の1つが、周囲の子供達との仲間意識の構築です。この時期、子供は親から徐々に離れ、部活動や放課後の遊ぶ時間など、同性の仲間との時間が増える傾向にあります。

これは、思春期の不安定な感情や心理状態を、同学年の子ども同士であれば共有でき、分かち合えると考えるためです。しかし、ここで子供は自分の家庭以外の価値観をはじめて認識します。

新たな価値観が吹き込まれ、自分の価値観が少しずつ変化していく中で、自分を創った親御さんの価値観から脱却したいと考えるため、少しずつ親御さんと距離が開いていくのです。

ただし、これは否定すべきことではなく、子供の自我に多様性を与えるため、子供の成長にとって必要であることと理解しましょう。

身体の変化に心が追いつかない

思春期に男子がイライラする原因の1つが、急激な身体の変化です。先述したように、テストステロンの影響を受けて身体にはさまざまな変化が、急激に生じます。

まず精巣が肥大することで陰嚢が膨らみ、陰茎が長くなって陰毛も生えはじめます。その後、ヒゲや脇毛が生えて、射精できるようになります。

このような身体の変化に心の成長が追いつかず、身体が変化していく不安感や違和感で精神的に不安定な状態となるわけです。また、身体の変化に嫌悪感を抱き、人知れず葛藤している子供も少なくありません。

ボキャブラリーが少ない

思春期の男子がイライラする原因として、ボキャブラリーが少ないことが挙げられます。この時期の子供は、大人と違って自分の感情を適切に相手に伝えられるほどのボキャブラリーは持ち合わせていません。

そのため、本当は考える時間が欲しいからそっとしておいて欲しいだけなのに、つい「うざい」「話しかけないで!」のようなきつい口調で会話してしまうのです。

このような短絡的な言葉は、受け取る側にとっては暴力的に感じてしまうため、イライラしていると感じてしまうでしょう。

異性への意識が強まる

思春期は同性相手には仲間意識を持ち、異性に対しては性的興味を持ち始める時期です。これまでは男女分け隔てなく遊べていたのに、急に異性のことを強く意識してしまい、さまざまな心の葛藤を抱いて戸惑う時期です。

恋愛に発展し、異性との恋愛に悩んでイライラする子供もいれば、逆に恋愛感情がなかなか育めず、周囲とのギャップに悩む子供もいます。

また、特に男子は羞恥心が強く、自身の異性への興味を親御さんに察知されることを嫌います。そのため、子供が異性関係に悩んでいる場合は、慎重な対応が必要です。

女子の場合

女子の場合も、基本的には男子と同じような原因で思春期のイライラが生じますが、中には女子特有の悩みもあります。ここでは、女子が思春期にイライラする原因を5つ紹介します。

性ホルモンのバランスの変化

女子が思春期にイライラする主な原因は、性ホルモンのバランスの大きな変化です。男子同様、この時期の女子にもホルモンバランスに大きな変化が訪れます。

視床下部から分泌された黄体形成ホルモン放出ホルモンが、卵巣を刺激して女性ホルモンであるエストロゲンの分泌を促します。

このエストロゲンによって、乳房のふくらみや初潮(初めての月経)などの第二次性徴を発現させているわけです。これにより心身が不安定になることで、イライラしてしまいます。

月経・初潮

女子は思春期になるとエストロゲンの分泌が盛んになり、10〜16歳くらいの間にはじめて月経を迎え、精神的に不安定になるため、注意が必要です。

自分の身体に生じた変化に戸惑ったり、毎月来る痛みや倦怠感に悩み、イライラしてしまうことも増えてしまいます。また、初潮を迎えたことをなかなか親に言い出しにくいと考えている女子も多く、言い出せないことによってストレスを抱えてしまうケースも少なくありません。

身体の変化に心が追いつかない

男子同様、女子の体も女性ホルモンの分泌によって変化しますが、その急激な変化に心の整理が追いつかないことも思春期のイライラの原因です。

乳房が膨らみはじめ、陰毛が生え始めると急激に身長も伸び始める時期に差し掛かります。その後、初潮を向けて脇毛が生え、14〜15歳に達する頃には成人と同じくらいの乳房の大きさになります。

身体つきが女性的に変化することで、ふっくら・ぽっちゃりしてしまうことも、子供によってはストレスを感じる原因です。

人目を強く気にする

特に女子の場合、思春期になると人目を強く気にする傾向にあります。これは、自分をある程度客観的に評価したり、俯瞰してみることができるようになるためです。

オシャレに気を使うようになったり、お化粧に興味を持つなど、見た目を気にするのもこの時期です。

一方で、気になる相手や友達からどう見られているのか過剰に気にしてしまい、それがかえってストレスとなることも少なくありません。イライラの原因となるため注意が必要です。

友人関係に悩む

女子が思春期にイライラしている場合、友人関係に悩んでいる可能性があります。友人たちの中で自分の立ち位置を認めてもらう、いわゆる承認欲求が芽生え、友人との関係でも気を使うことが増えるためです。

共通の話題をチェックしたり、多数派の意見に従い自分の意見を我慢するなど、グループ内での立ち位置を確立するためにさまざまな我慢や気遣いをしているため、それがストレスになっている可能性もあります。

自宅に帰った時に、友人関係の悩みやストレスが噴出してしまい親御さんにイライラをぶつけてしまうわけです。

思春期のイライラを抑える解消法とは?

親御さんが無防備に思春期の子供と接する場合、イライラをぶつけられて親御さん自身もイライラしてしまうでしょう。場合によっては、叩いてしまったり心無い言葉をぶつけてしまい、親子関係に深い亀裂が入る可能性もあります。

そのため、思春期の子供との適切な接し方を事前に把握しておくことが重要です。ここでは、思春期のイライラを抑える解消法を3つ紹介します。

過干渉を避けて見守る

子供が思春期でイライラしている時は、過干渉は避けて遠くから温かく見守りましょう。子供がイライラしているのを見ると、何かあったのではないかと不安になってつい干渉してしまう親御さんも少なくありませんが、かえって逆効果なので控えるべきです。

また、暴力的な言葉を吐く子供にイライラして、喧嘩に発展する可能性もあるため、やはり過干渉は避けるべきです。無理に突き放す必要もないですが、程よい距離感で子供と接することがお互いにとって良いのではないでしょうか。

子供の成長と受け止めて喜ぶ

子供が思春期になると、自身の子育てや教育方針が間違っていたと嘆く親御さんも少なくありませんが、思春期を何もネガティブに捉える必要はありません。

ホルモンバランスの変化や自我の確立によって心身にさまざまな変化をきたし、心身の状態が不安定になってしまうだけなので、あくまで生理現象の1つとも言えます。

むしろ、思春期を経て大人になっていくわけですから、成長の1つの過程として楽しめると良いでしょう。

こまめに褒める

イライラを解消する方法として、子供のことをこまめに褒めてあげることも重要です。思春期の子供は、自分を客観的に評価する能力が育った分、自分が周りからどう思われているのか考えすぎてしまう傾向にあります。

その結果、ストレスが溜まってイライラしてしまうため、解消するためには子供の自己肯定感を高めてあげると良いでしょう。そのためには、朝の早起きや宿題の取り組みなど、日常的な些細なことから褒めてあげると良いでしょう。

一方で、子供に気を使いすぎてしまうことも良くないため、あくまで子供の良い点を褒めて伸ばすことが重要です。

もしかしたら起立性調節障害かも

思春期の子供がイライラしている場合、原因は必ずしも思春期だけではなく、もしかしたら起立性調節障害かもしれません。

起立性調節障害とは、小学生高学年から中学生にかけて、身体の急激な成長に自律神経の発達が追いつかないことでさまざまな症状をきたす疾患です。

身体の成長に心が追いつかないのが思春期であったのに対して、起立性調節障害は自律神経の成長が追いつかないことで発症すると考えられており、精神疾患ではなく身体疾患として認識されています。

主な症状はめまい・ふらつき・倦怠感・腹痛・嘔気嘔吐などが挙げられ、これらの症状が起立時や午前中に強いことから、一見すると朝学校をサボりたい怠け者のように映ることもあります。

成長の過程である思春期と違い、起立性調節障害は治療が必要な病気です。また、放置すれば重症化して進級や進学にも支障をきたす可能性があるため、早期発見・早期治療が肝要です。

下記の記事では、子供の起立性調節障害に対するセルフチェック法を詳しく紹介しているため、ぜひこれを機にご一読ください。

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