中学生の子どもも大人と同じように頭痛を持っている場合があります。ある統計では、中学3年生では男の子の約5人に1人が、女の子の約4人に1人が小児片頭痛を持っているとされています。
頭痛と言われると、片頭痛などが想起されますが、思春期に多い起立性調節障害でも頭痛が見られることが多いです。したがって、中学生の子どもが頭痛を頻繁に訴えている場合、起立性調節障害の恐れもあります。
こちらの記事では、中学生の子どもの頭痛について解説していきます。
中学生で頭痛がする原因
頭痛が見られる病気は多岐にわたります。慢性頭痛で多いのは片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛の3つが良く知られています。
片頭痛で頭痛が見られるメカニズムは、収縮した脳血管が急激に拡張し血流が一気に流れることで痛みが出現すると言われています。
緊張型頭痛は後頚部の筋肉の凝りにより血流が悪くなるために頭痛が出現します。群
発頭痛は目の奥の血管が拡張することで頭痛が起こるとされています。頭痛が出現するメカニズムには血管や脳圧、神経伝達物質、筋肉などが深く関与しています。
脳への血流は体を循環する血流量や体位によって変化し、自律神経により調整されています。したがって、自律神経のバランスが崩れることでも頭痛は出現します。
また、気温や気圧によっても頭痛が見られることがあり、雨天や曇りも注意が必要です。
中学生で頭痛がする時に考えられる病気
頭痛がする時に考えられる病気としては以下のものがあります。
片頭痛
詳しいメカニズムは不明ですが、脳血管が拡がることで頭痛が引き起こされると言われています。
誘因はない場合も多いですが、よく知られているものとしては、飲酒や空腹、チョコレートやワイン、ナッツ類の摂取、睡眠不足や過眠、天候や気温の変化、ストレス中やストレスから解放された後などに頭痛が見られることが多いです。
やや女性に多く、生理周期や女性ホルモンとの関与も指摘されています。片頭痛ですが、片側だけにとどまらず両側のこめかみが心臓の拍動に従ってズキンズキンと痛みます。
光や音、臭いに敏感になることもあります。発作は数時間から長ければ数日継続することがあります。
緊張型頭痛
後頭部から首、肩などの筋肉の緊張により起こる頭痛で、片頭痛とは異なり、基本的には両方が痛みます。
最近では、スマートフォン操作による姿勢の悪化が原因でこの緊張型頭痛が見られているケースが増えています。
うつ病
起床時に頭痛がある人では、うつ病や不安障害、不眠などが多いと欧州5か国の共同電話調査により判明したことが米国医師会により発表されました。
うつ病は気分が強く落ち込み、何事にも意欲が出なくなり、睡眠や食事などへも影響を与える病気です。不眠や過眠により頭痛が出現したり、体の色々な不調が見られます。
起床時や午前中が特に不調であることも良くある特徴の一つです。
脳腫瘍
脳腫瘍には良性のものから悪性のものまであります。年齢によりなりやすいものもあります。
小児では神経膠腫(しんけいこうしゅ)、胚細胞腫瘍(はいさいぼうしゅよう)、髄芽腫(ずいがしゅ)、頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)、上衣腫(じょういしゅ)の5つがよく見られます。
なかでも神経膠腫の発生頻度が高いです。大人では、神経膠腫、中枢神経系原発悪性リンパ腫、髄膜腫(ずいまくしゅ)、下垂体腺腫(かすいたいせんしゅ)、神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)、頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)、転移性脳腫瘍などがあります。
症状としては、脳内に腫瘍ができることで脳圧が上昇する頭蓋内圧亢進、また、腫瘍ができる部位により視力の障害、耳鳴り、性腺機能障害、麻痺など様々な症状が見られます。
頭痛は脳腫瘍の患者さんの30~60%程度に見られると言われております。また、早朝に見られる頭痛(morning headache)は30%前後と報告により頻度はまちまちです。
中学生の頭痛の治し方
上記でご紹介した頭痛がする場合に考えられる病気についての治療法をそれぞれ解説していきます。
片頭痛
ロキソニンやアセトアミノフェンなどの鎮痛薬の使用は頻回使用を避ければ推奨されています。ロキソニンの頻回使用は薬物乱用頭痛と言って頭痛を悪化させてしまうため注意が必要です。
発作時には、血管の拡張を抑え、神経終末からの神経ペプチドの放出抑制・三叉神経核における痛みを伝える経路を遮断することで頭痛を抑えるトリプタン製剤の使用が効果的です。
発作時には光や音の刺激がない部屋で十分な休養をとる必要があります。また、日ごろより十分な睡眠時間を確保しストレスを溜めないように心がけましょう。
緊張型頭痛
首などの筋肉に負担がかからないように寝具の見直し、スマートフォン操作などでの長時間の同一姿勢を控えることなどが必要です。
また、運動不足により筋力が低下することでも首や肩に負担がかかりやすくなるため、適度な運動も重要です。
痛みが強い場合は鎮痛薬を使用することもあり、その他場合によって筋弛緩薬や抗うつ剤、抗不安薬が一時的に使用されることもあります。
うつ病
抗うつ剤などの薬物療法に加え、心と体を休養させることが重要です。
脳腫瘍
良性か悪性か、また腫瘍ができた部位、病期にもよりますが、基本的には腫瘍を取り除くための外科手術が行われます。頭蓋内圧を下げるためにステロイドや高浸透圧利尿剤を使用することもあります。
すぐにできる対処法
頭痛は主に頭の中になんらかの異変が生じて引き起こる症状であり、緊急性の低い一次性頭痛(片頭痛・群発頭痛・筋緊張性頭痛)と緊急性の高い二次性頭痛(脳梗塞・脳出血・クモ膜下出血)に大別されます。
二次性頭痛の場合は頭痛のみならず意識障害などを引き起こすため、緊急での医療機関への受診が必要となります。二次性頭痛の多くは高血圧や糖尿病などによる動脈硬化が原因となるため、日常生活から食事や運動に気を使いましょう。
一方で、一次性頭痛はストレスや生活習慣で生じやすいことが知られています。
例えば、筋緊張性頭痛は長時間のデスクワークで首回りの筋肉が凝り固まることで血流が悪化して生じます。腕や肩を回して時折首回りの筋肉をほぐすように心掛けましょう。
また、片頭痛は脳の血管が拡張することで頭痛が生じることが知られています。片頭痛には前兆となる症状がありますが、前兆症状が出た時は入浴を控え、光や音などの刺激を避け、静かな暗い場所で安静に過ごしましょう。本格的な発作症状を予防できる可能性があります。
本格的な発作が出た場合は、薬を内服するか、薬以外の対処法としては、安静になって頭部を冷やすことがオススメです。冷却することで脳の血管が収縮し改善する可能性があります。
片頭痛発作に誘因はない場合も多いですが、飲酒や空腹、チョコレートやワイン、ナッツ類の摂取、睡眠不足や過眠、天候や気温の変化、ストレス中やストレスから解放された後などに頭痛が見られることが多いため注意しましょう。
もしかしたら起立性調節障害かも
自律神経は脳血流にも関連しており、自律神経の不調は頭痛などの不調を来す原因になります。
起立性調節障害とは、自律神経である交感神経と副交感神経の働きのバランスが崩れることでめまいやふらつき、たちくらみ、頭痛、腹痛など様々な症状を来す病気です。体が大きく成長し、ホルモンの変動が大きい思春期に多くみられます。
一般的に、私たちは朝起床頃より交感神経が優位になり、午後になると徐々に副交感神経の割合が増加していき、夜間には交感神経の働きは弱くなり、就寝が近くなる頃には副交感神経が優位に働き、睡眠中体を休めます。
起立性調節障害の子どもは交感神経と副交感神経の働きのバランスに不具合が生じ、適切に神経をスイッチすることができないため、色々な症状に悩まされます。
特に、朝は活性化されるべき交感神経がうまく活性化されないために体はなかなか覚醒状態にはなりません。朝起き上がることができず、起きたあともめまいやふらつき、頭痛、吐き気など体調不良が続きます。
時間とともに症状は和らぎ、午後からの活動は特に問題ないことが多いです。したがって、起床時や午前中にひどい頭痛が見られた場合には、起立性調節障害の可能性があります。
起立性調節障害の子どもは緊張状態が続くことでストレスにより自律神経に更なる乱れが起こりやすく、頭痛が持続する傾向にあります。
下記の記事では起立性調節障害のセルフチェックをすることができます。ぜひ参考にしてみてください。
基本的には、頭痛が長く続いている場合には必ず受診してください。また、経験したことのない程の強い頭痛が見られた場合には早急に医療機関を受診しましょう。