急に目の前が暗くなったり、倒れそうになったりすると、何が起きたのか分からず、不安になる方も多いと思います。
立ったときに目の前が暗くなる症状には、一時的な血圧低下や脱水、血管迷走神経反射などさまざまな原因があり、まれに不整脈や心臓の病気が関係していることもあります。
また、起立性調節障害の方でも、急に立ち上がったときや起き上がる際に、このような症状がみられることがあります。
本記事では、立つと目の前が暗くなる原因や考えられる病気、その治療法について解説します。あわせて、起立性調節障害でみられる症状の特徴や、ほかの病気との違いについても解説していきます。
なお、実際に意識を失った場合や、胸痛、強い呼吸困難、激しい動悸、片側の麻痺、突然の激しい頭痛などを伴う場合は、速やかに医療機関を受診してください。
立ったときに目の前が暗くなる症状が続く場合、起立性調節障害が関係していることもあります。
朝起きられない症状や立ちくらみ、倦怠感なども伴う場合は、起立性調節障害のセルフチェックも参考にしてください。
「立つと目の前が暗くなる」原因
目の前が暗くなる感覚は「眼前暗黒感」と呼ばれることがあります。特に、立ち上がったときに一時的に目の前が暗くなり、ふらつきや気が遠くなる感覚を伴う場合は、血圧の低下などによって脳への血流が一時的に減少している可能性があります。
ただし、目の病気や神経の病気によって視界が暗くなる場合もあります。立ち上がったとき以外にも繰り返す、片目だけ見えにくい、視界の異常が長く続くといった場合は、眼科や脳神経内科などへの相談も検討しましょう。
立ったときに目の前が暗くなる主な原因について、詳しく解説します。
心臓や血管などに問題がある循環器疾患
私たちの体内では、心臓がポンプのように血液を送り出すことで、各臓器に酸素や栄養が届けられています。
不整脈や弁膜症、心筋症などによって心臓から送り出される血液量が低下すると、脳への血流が一時的に不足し、目の前が暗くなる、ふらつく、意識が遠のくなどの症状が現れることがあります。
運動中に症状が出る場合や、胸痛、息苦しさ、激しい動悸などを伴う場合は、循環器疾患の可能性も考えて医療機関を受診することが大切です。
循環血液量の低下
心臓の働きに問題がなくても、体内を循環する血液量が減少すると、脳へ十分な血液を送りにくくなります。
循環血液量が低下する主な原因としては、発汗や下痢、嘔吐、水分摂取不足による脱水のほか、急な出血などが挙げられます。
また、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、月経などによって慢性的な出血が続くと、鉄欠乏性貧血を起こし、立ちくらみや倦怠感、息切れなどにつながることもあります。
血管迷走神経反射
心臓の働きや血液量に大きな問題がなくても、自律神経の反応によって血圧や心拍数が低下し、脳への血流が一時的に減少することがあります。これを血管迷走神経反射といいます。
注射や採血、痛み、強い緊張、長時間の立位、暑さなどがきっかけとなり、吐き気や冷や汗、顔面蒼白、目の前が暗くなるなどの前触れが現れ、その後に失神することがあります。
このような前触れを感じたときは、無理に立ち続けず、転倒する前に座るか横になることが大切です。
薬の副作用
血圧を下げる降圧薬や、尿量を増やす利尿薬などの影響によって血圧が下がり、立ったときに目の前が暗くなることもあります。
降圧薬の作用が強く出ると低血圧を起こすことがあり、利尿薬の使用中に水分が不足すると脱水につながる可能性があります。
薬を服用し始めてから症状が現れた場合や、薬の変更後に症状が強くなった場合は、自己判断で服用を中止せず、処方した医師や薬剤師に相談しましょう。
起立時の血圧調節
横になった状態や座った状態から立ち上がると、重力によって血液が下半身に移動し、心臓に戻る血液量が一時的に減少します。
通常は、こうした変化に合わせて自律神経が働き、心拍数や血管の収縮を調節することで、血圧と脳への血流を維持します。
しかし、起立時の血圧調節がうまく機能しないと、脳への血流が一時的に減少し、目の前が暗くなる、ふらつく、立ちくらみがするなどの症状が現れます。
起立性低血圧や起立性調節障害では、このような体位の変化に伴う症状がみられることがあります。
「立つと目の前が暗くなる」場合に考えられる病気
立ったときに目の前が暗くなる症状は、一時的な血圧低下から心臓の病気まで、さまざまな原因で現れます。
特に症状を繰り返す場合や、実際に意識を失ったことがある場合は、自己判断せず医療機関で原因を確認することが大切です。
不整脈
不整脈には、脈が速くなる頻脈性不整脈と、脈が遅くなる徐脈性不整脈があります。脈が極端に速くなったり遅くなったりすると、心臓から脳へ十分な血液を送りにくくなり、眼前暗黒感やふらつき、失神などが現れることがあります。
動悸や息苦しさ、胸部の不快感、脈が飛ぶ感覚などを伴うこともあります。運動中に症状が出た場合や、意識を失った場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
弁膜症
心臓には左右それぞれに心房と心室があり、全部で4つの部屋に分かれています。心臓の各部屋の間や、心室と大血管の間には弁があり、血液が一定の方向へ流れるように調節しています。
弁膜症は、弁が開きにくくなったり、しっかり閉じなくなったりする病気です。進行すると心臓から送り出される血液量が低下し、息切れや動悸、胸痛、むくみのほか、眼前暗黒感や失神がみられることがあります。
心筋症
心筋症は、心臓の筋肉に異常が生じ、心臓の働きが障害される病気の総称です。肥大型心筋症や拡張型心筋症、拘束型心筋症などがあり、遺伝的要因が関係するものや、ほかの病気に伴って生じるものもあります。
症状がない場合もありますが、進行すると動悸、息切れ、胸痛、むくみ、眼前暗黒感、失神などが現れることがあります。特に運動中の失神や、家族に若年での突然死を経験した方がいる場合は、医療機関での詳しい検査が必要です。
出血
けがなどによる急な大量出血が起こると、体内を循環する血液量が低下し、目の前が暗くなる、冷や汗が出る、意識が遠のくなどの症状が現れることがあります。
一方、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、月経などによる慢性的な出血では、鉄欠乏性貧血を起こすことがあります。慢性的な出血は外から確認できないこともあり、黒い便や吐血、強い腹痛などがある場合は注意が必要です。
貧血のセルフチェックについては、下記の記事も参考にしてください。
脱水
発汗や下痢、嘔吐、水分摂取不足などによって脱水になると、体内を循環する血液量が減少し、立ったときに血圧が下がりやすくなります。
特に夏場は熱中症に注意が必要です。熱中症は屋外だけでなく、高温多湿な室内でも起こります。めまいや頭痛、吐き気、大量の発汗、倦怠感などを伴う場合は、涼しい場所へ移動して体を冷やし、水分や塩分を補給しましょう。
もしかしたら起立性調節障害かも
目の前が暗くなる眼前暗黒感は、脳への血流が一時的に低下したときにみられる症状の一つです。さまざまな病気で現れますが、起床時や起立時など、体位の変化に伴って症状が出る場合は、起立性調節障害が関係している可能性もあります。
起立性調節障害は、立ち上がったときの血圧や心拍数などを調節する働きがうまく機能しないことで、立ちくらみやめまい、動悸、倦怠感、頭痛、朝起きられないなどの症状が現れる病気です。
通常、立ち上がると血液の一部が下半身へ移動しますが、自律神経が心拍数や血管の収縮を調節することで、血圧と脳への血流が維持されます。起立性調節障害では、この調節がうまく働かないため、立ったときに目の前が暗くなったり、ふらついたりすることがあります。
対策としては、医師の指示に基づいて水分や塩分を適切に摂取する、急に立ち上がらずゆっくり動く、無理のない範囲で運動するなどの非薬物療法が基本となります。症状の程度に応じて、薬物療法や学校・家庭での環境調整などを組み合わせることもあります。
ただし、起立性調節障害だと思っていても、貧血や不整脈など、別の病気が関係している可能性があります。症状を繰り返す場合や日常生活に支障が出ている場合は、医療機関を受診しましょう。
起立性調節障害でみられる症状について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。
「立つと目の前が暗くなる」ときの対処法・治療法
立ったときに目の前が暗くなった場合は、無理に立ち続けないことが大切です。転倒によるけがを防ぐため、その場で座るか、安全な場所で横になりましょう。可能であれば足を少し高くし、症状が落ち着くまで急に立ち上がらないようにします。
実際に意識を失った場合や、胸痛、強い呼吸困難、激しい動悸、反応が鈍い、片側の麻痺、突然の激しい頭痛などを伴う場合は、救急車を呼ぶことも検討してください。
症状の原因によって、必要な検査や治療は異なります。
不整脈の場合
動悸や息切れ、脈が飛ぶ感覚、気が遠くなるなどの症状がみられる場合は、不整脈の可能性があります。医療機関を受診し、心電図などの検査を受けましょう。
短時間の心電図検査で異常を確認できない場合は、24時間以上心電図を記録するホルター心電図などを使用して、症状が出たときの脈を詳しく調べることがあります。
治療方法は不整脈の種類や重症度によって異なり、薬物療法のほか、カテーテルアブレーション、ペースメーカー、植込み型除細動器などが検討される場合があります。
弁膜症の場合
弁膜症には、大動脈弁狭窄症や大動脈弁閉鎖不全症、僧帽弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症などがあります。
主に心エコー検査によって、弁の狭窄や逆流の程度、心臓にかかっている負担などを確認します。症状や重症度に応じて経過観察や薬物療法、カテーテル治療、手術などが検討されます。
心筋症の場合
心筋症には、肥大型心筋症や拡張型心筋症、拘束型心筋症などがあり、病型によって心臓に現れる変化や必要な治療が異なります。
診断には、心電図や心エコー、血液検査、心臓MRIなどが用いられ、必要に応じて心臓カテーテル検査や遺伝学的検査などが行われることもあります。
治療は病型や症状に応じて、薬物療法、カテーテル治療、ペースメーカーや植込み型除細動器、手術などを組み合わせます。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍の場合
胃潰瘍や十二指腸潰瘍では、みぞおち付近の痛みや吐き気などがみられることがありますが、症状がほとんどない場合もあります。
胃潰瘍では食後、十二指腸潰瘍では空腹時に痛みが出る傾向がありますが、症状だけで区別することはできません。診断には内視鏡検査などが用いられます。
治療では胃酸の分泌を抑える薬などを使用します。ピロリ菌感染が確認された場合は除菌治療を行うことがあり、非ステロイド性抗炎症薬などが原因の場合は、薬の見直しが必要になることもあります。
脱水症の場合
脱水を予防するには、こまめな水分補給が大切です。通常どおり食事がとれている場合は、水やお茶などで水分を補給します。
大量に汗をかいた場合や、下痢や嘔吐、食欲不振などがある場合は、水分と電解質を補給できる経口補水液が役立つことがあります。ただし、意識がもうろうとしている、自力で飲めない、嘔吐を繰り返すといった場合は、無理に飲ませず医療機関を受診してください。
糖尿病や高血圧、心臓病、腎臓病などがある方は、水分や塩分の摂取量に注意が必要な場合があるため、主治医に確認しましょう。
起立性調節障害の子どもについても、年齢や体格、持病などによって適切な摂取量が異なります。医師の指示に基づいて水分や塩分を摂取することが大切です。
熱中症の場合
熱中症が疑われる場合は、まず涼しい場所へ移動し、衣服を緩めて体を冷やします。意識がはっきりしていて自力で飲める場合は、水分や塩分を補給しましょう。
呼びかけへの反応がおかしい、自力で水分をとれない、症状が改善しない場合は、速やかに救急車を呼んでください。
予防のためには、暑さ指数や気温を確認し、暑い時間帯の外出や激しい運動を避け、エアコンを適切に使用することが大切です。
暑さに慣れる「暑熱順化」には、ウォーキングや入浴などで無理のない範囲で汗をかく方法があります。ただし、体調が悪い日や気温が高い環境では無理をせず、水分を補給しながら少しずつ取り組みましょう。
立ったときに目の前が暗くなる症状や立ちくらみ、倦怠感などがみられる場合は、起立性調節障害のセルフチェックも参考にしてください。
起立性調節障害の治し方や、家庭で親ができることについて詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。
【参考】
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社
小児心身医学会ガイドライン










