起立性調節障害の方の体験談

起立性調節障害を患っていたR.Nさん(中学校3年生 男性)の体験談

この記事の監修者

匿名(医師)

内科・小児科

 

起立性調節障害を患っていたR.Nさん(中学校3年生 男性)の体験談

「金銭的に貧しくお金がない」「仕事が思うようにいかない」「友人からいじめられている」など、これらの悩みは生きている上で誰もが一度は経験したことがあるものだと思いますが、中でも多くの人間にとって最大の悩みは健康面における悩みです。

年間約3万人の自殺者がいる日本において、自殺の一番の理由は健康面における悩みです。さらに、それが大切に育ててきた子供の健康不良ともなれば、自分自身のことよりも辛いと感じる親御さんも少なくないと思います。

親御さんにとって大切なお子さんの健康は必ず守るべきものであり、いざ子供が体調不良になったときにはありとあらゆる手段を用いてでも治したいと考えるはずです。しかし、そんな親心を弄ぶような病気が起立性調節障害(OD)なのです。

起立性調節障害は肉体が急激に発達する小学校高学年から中学生にかけて発症しやすい身体疾患であり、特に午前中や起床後にめまい、ふらつき、腹痛、嘔気、嘔吐など様々な症状をきたす病気で、多くの面でとても厄介な病気です。

その理由は、それぞれの子供によって発症する症状や経過、さらには治療方法に個人差があるからです。そこで、起立性調節障害の子供を持つ親御さんは、他の起立性調節障害の子供たちの様々なパターンを知っておくことが重要です。

そこで本記事では、多くの起立性調節障害の子供に対して医師として診療してきた筆者が、実際に起立性調節障害の治療に取り組んだ患者様を例に実体験をご紹介いたします。

起立性調節障害を患っていた「R.N」さんの特徴

私が診察させて頂いたR.Nさんは、当時中学3年生の男の子でした。小学生の時からサッカーに取り組み友人も多く、中学入学後もサッカー部で主力で活躍し、勉学も非常に優秀な子供だったそうです。

親御さんから聞く本人の性格は、とても明るく自分のことを家族に積極的に話してくれるような子供だったようですが、筆者と初めて対面したときには少し表情が暗く、親御さんから聞く本人像とギャップがあると感じました。

過去の病気と言えば、小児期に喘息発作を何回か引き起こし救急搬送されたくらいで、その後は現在に至るまで発作は認めていないそうです。指摘されているアレルギーや、内服中の常用薬などもありません。出生後の発育や発達も健康そのものでした。

起立性調節障害を患ったきっかけ・症状・対策・経過等

<中学3年 9月>

R.Nさんが最初に症状を自覚したのは中学3年生の9月上旬でした。3年間注力してきた部活動を引退し、本格的に高校受験に取り組み始めた頃に徐々に症状が出現したそうです。

発症当時は特に午前中に気分不快感や立ちくらみやめまいが強く、徐々に通学も辛く感じていったそうです。症状が辛いからか食欲も低下してしまい、部活動を行っていた時と比べてとても活力が低下してしまったそうです。

また逆に、午後になると活力が出てきてしまい、夜間に眠れなくなってしまう症状にも悩んでいました。

当時の親御さんのR.Nさんに対する印象は、大好きな部活が終わって勉強漬けの日々に嫌気がさしてしまったのだろうと、比較的軽く考えていたようです。しかし、徐々に症状が悪化していき、9月下旬には通学中に倒れて救急搬送されてしまいました。

その際、救急病院では心電図検査、血液検査、身体診察が行われ、徐脈と血圧低下を認めたことから疲れによる迷走神経反射の診断となりました。これをきっかけに、親御さんの中でも不安が強まっていったそうです。

救急病院では「迷走神経反射は一過性のもの」と説明を受けたにも関わらず、その後も症状が改善することはなかったため、セカンドオピニオンで他病院を受診することになり筆者の元に受診する運びとなりました。

初めて筆者の元に受診された時、R.Nさんは中学3年生の10月頃で、すでに高校受験が数ヶ月後に迫っている時期でした。救急搬送されて以降、失神することはありませんでしたが、めまいや気分不快感はむしろ増悪傾向にありました。

受験勉強に対する焦りと、悪化していく症状にとても不安感を抱いている印象でした。そこで、まずは前医での迷走神経反射という診断に対して、改めて検査をやり直すことにしました。

血液検査や安静時心電図検査では特に異常を認めず、「午前中に症状が強い」というエピソードから迷走神経反射よりもむしろ起立性調節障害を強く疑う所見でした。

そこで、新起立試験などを実施した結果、起立時の血圧低下と脈拍の変化を認め、新たに起立性調節障害の診断を下しました。

迷走神経反射の症状が一過性であるのに対し、起立性調節障害の場合は肉体の急激な成長に自律神経の成長が追いつかない成長期にかけて症状が続きます。さらに、起床時や午前中に自律神経が乱れやすいため、症状に日内変動があります。

そこでまず、不安感の強いR.Nさん親子にODという病気がどのような病気か、どのような治療法があるか、どのような経過を辿る可能性が高いかなど詳しくご説明し、理解してもらうところから治療を始めました。

説明の上、疾患についての良好な理解が得られたため、起立性調節障害の治療で最も重要な非薬物療法についてご説明しました。起立性調節障害に対しては特効薬などがないため、肉体の成長に対し自律神経の成長が追いついてくるまで日常生活の送り方に気をつける必要があるのです。

特にR.Nさんは午前中や起立時の症状が強く、また夜間の不眠症状にも強く悩みを抱えていたため、午前中の起床の仕方や夜間不眠に陥らないようなコツを指導することにしました。

具体的には、起床前にしっかりと水分摂取をし、ゆっくりと座位になって症状が出現しないことを確認してから立ち上がることで脳血流の低下を抑えるように伝えました。また、立ち上がる際には極力時間をかけて、いきなり立ち上がらないように指導しました。

それと同時に食欲の低下も著しかったため、可能な限り日中に積極的な飲水や食事摂取を敢行するのも治療の1つであると伝えました。特に水分摂取が少ない場合、脳血流が低下しやすくなってしまうため注意が必要です。

立ち上がった後も脳血流が低下しないように、前傾姿勢を保ったり頭の位置を極力低い位置に持ってくるように伝えました。脚をクロスさせることで脳血流の低下を予防できることも伝えました。

これらの非薬物療法を行うことで、日中の活動度を上げて太陽光をしっかりと浴びることが不眠症状への対策において非常に重要です。日中に太陽光を浴びることで体内ではセロトニンというホルモンが分泌されます。

実はこのセロトニンが睡眠ホルモンであるメラトニンの原料となるため、日中に太陽光を浴びないと結果としてメラトニンの分泌量も低下してしまい不眠に陥ってしまいます。

以上の非薬物療法を実施してもらい、起床時の立ちくらみや気分不快感などは比較的早期からある程度改善されました。しかし、その後もなかなか食事摂取は進まず、以前同様の活動度を取り戻すには至りませんでした。

受験まで残りわずかしかないというプレッシャーが非常に強く、精神的ストレスもあいまって起立性調節障害の症状が遷延している状態であったため、心理カウンセリングも行って受験勉強よりも治療を優先することを打診しました。

ご両親や本人も納得してくれたため、受験勉強を打切り、結局R.Nさんは通信制の高校に入学することになりました。高校入学以降も通院は続きましたが、5月頃には症状も自然に軽快していきました。

効果があった対策

R.Nさんの場合、非薬物療法の中でも起立前の水分摂取や脚のクロスなどは一定の効果を示しましたが、正常な食欲や睡眠は戻らず、受験のストレスが非薬物療法を非常に邪魔していると感じました。

また、心理カウンセリングを行い、受験よりも治療を優先することに本人や両親が理解を示してくれたことは非常に良い点でした。ODは人によっては非常に症状が強いため、時にはどんなことよりも治療を優先しなくてはならない事もあるからです。

受験勉強にこだわって辛い症状に苦しみ、結局受験に失敗するという最悪の未来を避けることができたため、1つの選択肢として治療を優先することを提示できたのは良かったと感じています。

まとめ

今回は、筆者が診療させていただいた起立性調節障害のR.Nさんについてご紹介しました。

起立性調節障害は様々な症状によって子供を苦しめる厄介な病気であり、それは場合によって進学などの将来に関わる選択にすら影響を与えることもあります。

しかし、病気は病気であるため、子供によっては進学よりも治療を優先するという選択をする必要がある事もあります。今回のケースは、私にとっても改めて勉強になる症例でした。

起立性調節障害は症状や経過が人によって異なるため、多くの体験談を知ることがみなさんの治療の糸口になるやもしれません。下記記事では他の体験談についてよくまとめられています。ぜひ参考にして見てください。

 

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