起立性調節障害の方の体験談

起立性調節障害を患っていたH.Nさん(中学校1年生 男性)の体験談

この記事の監修者

匿名(医師)

内科・小児科

起立性調節障害を患っていたH.Nさん(中学校1年生 男性)の体験談

子供の免疫機能は成人よりも低いため風邪を引きやすく、身体の骨格も未発達なので怪我にも弱いです。また、精神的にも未熟であり、何気無い環境の変化でも体調を壊したりしてしまいます。

だからこそ、子供は成人よりも体調不良になりやすく、病気によっては本人はもちろんのこと、親御さんにとってもとても辛い経験になってしまうこともあります。そんな時、親御さんは子供の病気のことをよく理解しておく必要があります。

さて、今回は小学校高学年から中学生にかけて、約10%が罹患すると言われている起立性調節障害(OD)という病気についてご紹介します。この病気は、まさに本人やその家族を苦しめる病気の代表格と言えます。

起立性調節障害は身体の急激な成長期に、交感神経や副交感神経などの自律神経の発達が追いつかないことで、脳への血流が低下しやすくなってしまい、起立時や午前中にめまい、ふらつき、腹痛、嘔気など様々な症状をきたす病気です。

起立性調節障害に伴う多彩な症状ももちろん厄介なのですが、それ以上に厄介なのは治療方法や経過などに子供によって大きな個人差がある点です。自然治癒する子もいれば、中には重症化して進学に影響が出るような子供もいるから厄介なのです。

そこで、少しでも病気に打ち勝つためには、起立性調節障害に苦しむ他の子供や家族の境遇を知り、他の人たちがどのような治療や対策を行っているのかを知ることも非常に重要なことだと思います。

今回の記事では、多くの起立性調節障害の子供に対して医師として診療してきた筆者が、実際に起立性調節障害の治療に取り組んだ患者様を例に実体験をご紹介いたします。今回の記事が皆様の治療の一助となれば幸いです。

起立性調節障害を患っていた「H.N」さんの特徴

私が診察させて頂いたH.Nさんは、当時中学1年生の男の子でした。小学生の時は水泳やバスケットを習っていてスポーツ万能な子供だったそうです。また勉強も得意で進学塾に通い、地元でも有名な秀才だったそうです。

親御さんから聞く本人の印象は、活発で元気がよくヤンチャですが、親御さんから言わなくても勉強には取り組む意識の高い子供だったそうです。友人関係も良好で、クラスの中心にいるような子供だったそうです。

筆者が初めて対面したときの第一印象も親御さんから聞いた本人像と一致していました。年頃のせいもあってなかなか目を合わせて話してくれませんでしたが、自分のことをしっかりと口にして伝えられる男の子でした。

出生後の発達や発育に関しては全く問題ありませんでした。小児期にアレルギー性鼻炎や喘息で苦しんでいたそうですが、現在は特に症状を認めず、吸入薬などの治療はすでに終了しているとのことでした。

当時、地元でも有名な進学校に受験で合格し、通い始めたばかりの時期でした。

起立性調節障害を患ったきっかけ・症状・対策・経過等

H.Nさんが最初に症状を自覚したのは中学1年生の4月頃でした。中学受験に合格し、自宅から電車で1時間近くかかるやや遠方の中学校に通学するようになっていましたが、毎朝満員電車で座るのも難しかったそうです。

ある日、朝から倦怠感を感じていたそうですが、そのまま通学したところ電車内で突然のふらつきを認め、その場で倒れてしまったそうです。数分後に意識が戻りましたが、ふらつきが改善せず周囲の人によって駅の医務室に連れて行かれました。

連絡を受けた親御さんがすぐに駆けつけましたが、H.Nさんが起き上がろうとすると症状が継続していたため、そのまま車で近隣の病院に行くことにしました。小児期から喘息でお世話になっていたかかりつけの病院を受診したそうです。

この時、H.Nさんの症状は若干の嘔気と起立時に増悪する強いふらつきを認めていました。また、意識消失時に側頭部を地面に打ちつけてしまいタンコブが出来ていました。

受診したかかりつけの病院では、数分間の意識消失があったことや現在の症状を伝え、問診や身体診察、血液検査、心電図検査や頭部CT検査を行ったそうです。当日には頭部CT検査の結果が明らかになり、側頭部のタンコブ以外に異常は認めませんでした。

そのほかの診察、検査でも明らかな異常は認めず、貧血なども認めませんでした。そこで、主治医からは心臓の病気の可能性があると伝えられ、心臓をさらに詳しく検査するため、後日超音波検査を受けることになったそうです。

その日は特に薬などは処方されず、自宅でゆっくり休んで経過を見るように言われたそうです。実際に、帰宅してからは夜になるにつれて症状は改善していき、H.Nさんも一時的な症状だと安心していたそうです。

しかし、翌朝になると再び同じようなふらつき、嘔気に襲われてしまい、途中で倒れてしまうことの恐怖から通学は断念し、その日は学校を休むことにしました。翌日、病院を再受診し心臓超音波検査を受けました。

心臓超音波検査の結果、明らかな心臓の形態異常などは認めず、心臓病の可能性も否定されました。そこで、起立性調節障害の可能性を初めて示唆され、筆者の元に受診する運びとなったのです。

意識消失発作という症状の原因は主に心臓疾患、てんかん発作、自律神経の異常を疑います。心臓疾患やてんかん発作はすでに各種検査で否定されているため、自律神経の異常である起立性調節障害を強く疑いました。

その後、H.Nさんに対して新起立試験などを実施した結果、起立時の血圧低下と脈拍の変化を認め、新たに起立性調節障害の診断を下しました。

H.Nさんは、心臓病が否定され、起立性調節障害の診断を聞いて安心していた様子でした。そこからは起立性調節障害という病気の説明と、今後の治療について詳しく説明しました。特に、起立性調節障害の治療を行う上では親子ともに疾患に対する理解が非常に大切になってきます。

起立性調節障害の治療の基本は非薬物療法であり、日常生活においてどう行動を変えていくかが非常に重要であるため、本人や親御さんが疾患の特性を理解しておくことが非常に重要なのです。

具体的な非薬物療法の内容として、起立時の脳血流低下を防ぐためにゆっくり立ち上がること、立ち上がったとしても前傾姿勢を保つこと、長時間の立位を避けることなどを指示しました。

またH.Nさんの場合、通学中の電車でどうしても長時間立位の時間が発生してしまうため、症状がある程度改善するまでは通学が高いハードルになるとを感じていました。

そこで、親御さんには学校と密に連絡を取り合ってもらい、通学や学校での過ごし方などについても相談してもらうように指示しました。

H.Nさんの場合、ある程度症状が改善するまでは親御さんの車で通学することを許可してもらい、学校内で症状が出た時の居場所として保健室を利用することも許可してもらいました。

非薬物療法を開始してしばらくは中々症状が改善せず、通学しても午前中は保健室で休みながら勉強したり、症状が強い日は午後登校になってしまいました。しかし、治療開始から2ヶ月が経過した頃には徐々にふらつきの頻度が減っていきました。

電車通学の再開を目標にして、自宅で行える簡単な筋力トレーニングなども指示した結果、治療開始から3ヶ月目で無事に電車通学を再開できました。症状が出現しそうな時は、足をクロスに交差して下肢に血流が取られないように対応するよう指示しました。

中学1年生の夏頃には病院への通院も不要になり、その後の進学、進級に影響を与えることなく治療を終えられました。

効果があった対策

H.Nさんの場合、朝の通学に大きなハードルがあったため、親御さんの努力や学校側の協力的な姿勢がなければ治療はさらに難渋していた可能性が高いと思われます。

またH.Nさんにとって、学校内での意識消失を非常に恐れていたため、学校内に本人が安心できる居場所(保健室など)を作ることができたのも治療を行う上では非常に重要なポイントでした。

起立性調節障害と戦うには本人の努力はもちろんのこと、家族や学校、友人など周囲の人たちからの協力が必要不可欠であり、今回の一例を経験して改めてそのことを実感できました。

まとめ

今回は、筆者が診療させていただいた起立性調節障害のH.Nさんについてご紹介しました。

H.Nさんの場合、非薬物療法の中でも行動療法が改善に与えた影響はそこまで大きくない印象でしたが、家族や学校が密に連携してH.Nさんの安心できる環境を作り出せたことが非常に有効だったと感じています。

起立性調節障害への治療法やその効果は本当に個人差が大きく、どの治療がどう効果を示すかはやってみないとわかりません。本記事を読むことで、皆さんの治療の一助となれば幸いです。

起立性調節障害は症状や経過が人によって異なるため、多くの体験談を知ることがみなさんの治療の糸口になるやもしれません。下記記事では他の体験談についてよくまとめられています。ぜひ参考にしてみてください。

 

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