起立性調節障害(大人)

漢方薬はどれがいい?大人の起立性調節障害。漢方薬のメリット・デメリット

この記事の監修者

医師 錦惠那

医師 錦 惠那

内科一般・腎臓内科・透析科・産業医
保有資格:日本内科学会内科専門医・日本医師会認定産業医

 

漢方薬はどれがいい?大人の起立性調節障害。漢方薬のメリット・デメリット

起立性調節障害は、自律神経系である交感神経と副交感神経のバランスが崩れることで起こる病気ですが、治療には薬物治療と非薬物治療があります。

大人の場合は、単純な起立性調節障害ではなく、背景に別の疾患が隠れている場合もありますので、必ず受診し、別の疾患が隠れていないことを確認することが大前提です。

薬物治療については、西洋医学で使用される薬剤と東洋医学で使用される薬剤(漢方薬)の2種類があります。

今回は、起立性調節障害の治療に使われる漢方薬について解説します。

大人の起立性調節障害における漢方の治療法

中医学では、起立性調節障害は気や血の不足(気血両虚)、さらには気の滞り(気滞)などが複雑に絡み合って起こる複合的な病態と考えられています。

そのため、治療は不足した気、血を補い、気の滞りを解消する生薬が配合された漢方を使用します。よく使用されるものには、以下のものがあります。

半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)

体力がなく、冷え症で胃腸が弱い人のめまいや頭痛などに使用されます。

<効果が期待できる症状>
めまい、立ちくらみ、頭痛

<副作用>
発疹、蕁麻疹

小建中湯(しょうけんちゅうとう)

体質虚弱で疲労しやすく、血色がすぐれず、腹痛、動悸、倦怠感などがある方に使用されます。

胃腸の調子を良くすることで、体質を改善し、特に腹部症状の改善に役立ちます。

<効果が期待できる症状>
腹部症状

<副作用>
偽性アルドステロン症、ミオパチー、発疹・発赤、かゆみ

柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)

古くから風邪によく使用されてきた漢方薬ですが、起立性調節障害に対しては、特に不安や不眠など精神症状の改善に役立ちます。

<効果が期待できる症状>
不安、不眠、精神症状

<副作用>
間質性肺炎、偽性アルドステロン症、ミオパチー
肝機能障害、黄疸、発疹・発赤、かゆみ、下痢便秘などの消化器症状

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

貧血傾向や冷え性があり、比較的体力の低下した方(特に女性)に使用されます。

血液の巡りをよくし、全身倦怠感、めまい、立ちくらみなどの改善に役立ちます。

<効果が期待できる症状>
全身倦怠感、めまい、立ちくらみ

<副作用>
発疹・発赤、かゆみ、肝機能障害
食欲不振・悪心・腹痛・胃部不快感などの消化器症状

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

消化機能が衰え、食思不振や全身倦怠感が著しい虚弱体質の方に使用されます。

胃腸の消化・吸収機能を整えることで、疲労感の回復や食欲増進の働きがあります。

<期待できる効果>
疲労感の回復、食欲増進

<副作用>
間質性肺炎、偽性アルドステロン症、ミオパチー
肝機能障害、黄疸、発疹・発赤、かゆみ、下痢便秘などの消化器症状

苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)

比較的体力が低下しており、めまい、立ちくらみが強い人に使用されます。

水の代謝を良くすることで循環を改善し、めまい、頭痛などの症状改善に比較的即効性があります。

<効果が期待できる症状>
めまい、頭痛

<副作用>
偽性アルドステロン症、ミオパチー、発疹・発赤、かゆみ

上記の漢方薬は、起立性調節障害により出現した症状、随伴症状、もともとの体質などを診た上で、適切な漢方薬が処方されます。

漢方薬と漢方以外の薬の違い

起立性調節障害に対し使用する薬で漢方薬以外には以下のようなものがあります。

◆血圧が下がることを防ぐ/血圧を安定させる薬

  • ミトドリン塩酸塩(メトリジン)
  • メチル硫酸アメジウム(リズミック)

◆脈を安定させる薬

  • プロプラノロール塩酸塩(インデラル)
  • ビソプロロールフマル酸塩(メインテート)

◆貧血などを改善させる鉄分やビタミン剤

これらの薬剤と漢方薬との大きな違いは、服薬のタイミングです。

西洋医学で使用される薬は基本的には食後に服用するものがほとんどですが、漢方薬は食前や食間に服用することが基本です。

食前とは食事の30分程前、食間とは食後2~3時間を指します。どちらも空腹時であり、空腹時に服用することにより、漢方薬がより効果的で安全に吸収されます。

漢方薬と漢方以外の薬のメリット・デメリット

薬物治療を行う場合、一般的には西洋医学で使用される薬から試すことが多いですが、症状の改善に乏しい場合などに漢方薬を併用することがあり、副作用が比較的少ないことがメリットの一つです。

漢方薬は植物や動物、鉱物などから生成された生薬ですので、確かに、副作用は比較的少ないですが、副作用がゼロではありません。最も有名な副作用としては、甘草が含まれる漢方薬でみられる偽性アルドステロン症です。

甘草の主成分であるグリチルリチン酸の大量摂取により血圧が上昇し、体内のミネラル分の一種であるカリウムが低下することで、筋力低下や手足のけいれん(ミオパチー)、むくみなどが出現します。利尿剤との併用で副作用はさらに出現しやすくなるため、注意が必要です。

また、漢方薬使用による間質性肺炎も少ないながら報告があります。

間質性肺炎とは、関節リウマチなどの膠原病や薬剤、アレルゲンなどが原因で肺胞と肺胞の間の組織が炎症により固くなり(線維化)、ガス交換機能が低下し、肺活量低下、呼吸困難や咳嗽などを引き起こす病気です。

西洋医学で使用される薬も漢方薬もともに副作用があることは覚えておいてください。

医療機関での処方箋が必要な西洋薬とは異なり、漢方薬はドラッグストアなどでも購入することが可能ですので、すぐに受診が難しいような場合は便利かもしれません。

以下の記事では、起立性調節障害で使用される漢方薬以外の薬について詳しく解説していますので、ぜひご参考になさってください。

 

 

【参考】
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)

トトノエライト なおくん

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