起立性調節障害とは

血管迷走神経性失神とは?治し方や原因、症状、セルフチェックについて解説

2023年11月16日

この記事の監修者

医師 錦惠那

医師 錦 惠那

内科一般・腎臓内科・透析科・産業医
保有資格:日本内科学会内科専門医・日本医師会認定産業医
2018年から起立性調節障害患者の診療を行い、累計30人以上の起立性調節障害患者を担当。

一般社団法人 起立性調節障害改善協会

 

  • 長時間立っていて突然倒れたことがある
  • ストレスを感じると脈拍が変化し、フラフラすることが多い

このような症状にお悩みの方は血管迷走神経性失神の可能性があります。

幅広い年齢で発症し、失神によって頭部や顔面をぶつければ二次的な被害が生じる可能性もあるため、血管迷走神経性失神の疑いがある場合は日常生活に不安を覚える方も多いでしょう。

血管迷走神経性失神とは、なんらかの原因で迷走神経が過剰に活性化してしまい、末梢血管の拡張や脈拍の低下に伴い脳血流が低下し、失神などを引き起こす病気です。

血管迷走神経性失神にはその場で症状を緩和できる治療法や、長期的に発症を予防するための日常生活からのケアなど、自分自身でできる対策はたくさんあるため、早期発見・早期介入が重要です。

そこでこの記事では、医師である筆者の経験をもとに、血管迷走神経性失神の原因や病態を解説し、セルフチェック法や治し方についても紹介します。

この記事を読むことで、血管迷走神経性失神を疑う場合に受診すべき診療科や入院の必要性など、より具体的な知識を得ることもできます。ぜひご一読ください。

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

血管迷走神経性失神とは

血管迷走神経性失神とは

血管迷走神経性失神とは、過度の緊張やストレスなどが原因で自律神経の調節がうまくいかずに血圧が低下したり、脈拍が低くなることでふらふらしたり失神することです。

自律神経には2種類あり、体を活動的にしたり、ストレスなどに反応して血圧や脈拍数をあげる交感神経と、体を休める働きがある副交感神経があります。この2つの神経の調整が崩れてしまうと体に様々な不調が出現します。

迷走神経とは脳神経の一つで、肺や心臓、腹腔内の臓器へ分布し、呼吸や消化機能の調整を行っている神経であり、副交感神経に分類されます。

過度の緊張やストレスなどが刺激になり、副交感神経である迷走神経が活性化してしまうことで血圧低下、脈拍数低下を来し、結果的に失神してしまうこともあります。

基本的には、過度の緊張やストレス、疼痛などが原因になりますが、糖尿病や不整脈などの循環器疾患、脳腫瘍やてんかんなど脳神経疾患でも自律神経の異常を来すことがありますので、背景に疾患が隠れていないか注意する必要があります。

血管迷走神経性失神と起立性調節障害との違い

起立性調節障害も自律神経である交感神経と副交感神経のバランスが崩れることでめまいや立ちくらみ、ひどいと失神を引き起こす病気です。

ここでお気づきかもしれませんが、どちらも自律神経のバランスが崩れることが原因で症状を来しており、非常に似ていますよね。

では、血管迷走神経性失神と起立性調節障害に違いはあるのでしょうか。

起立性調節障害は血圧や心拍の変化様式で4つのサブタイプに分類されます。それぞれ起立後の血圧や脈拍によって規定されていて、起立直後性低血圧、体位性頻脈症候群、血管迷走神経性失神、遷延性起立性低血圧の4種です。

血管迷走神経性失神は起立性調節障害に含まれている概念と理解すると良いでしょう。違いの一つとしては、起立性調節障害は病気であるのに対し、血管迷走神経性失神は緊張やストレス、疼痛などが原因で健康な人にも起こります。

血管迷走神経性失神の原因

血管迷走神経性失神の原因

一般的には、過度な緊張やストレス、疼痛、怒りや憎しみなどの感情、恐怖感などが原因になることが多いです。これらの要因が刺激となり健康な人に起こることが多いです。

しかし、症状が繰り返し起こっている場合、自律神経障害を来す疾患が隠れていないかを一度確認する必要があります。

自律神経障害を来す疾患は、糖尿病や甲状腺の病気、不整脈などの循環器疾患や脳腫瘍などの脳神経疾患などがあります。

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血管迷走神経性失神はアルコールが原因で起こる?

血管迷走神経性失神は、アルコールが原因で生じやすくなります。お孫さんの結婚式で久しぶりに飲酒をした高齢者が、そのまま結婚式で失神してしまった、というのは珍しい話ではありません。これは、アルコールの薬理作用によって血圧低下や迷走神経反射が生じやすくなるためです。

アルコールの代謝産物アセトアルデヒドによって交感神経が活性化され、常に脈拍が増加した状態となるため、脈拍を安定化させるために迷走神経反射が生じやすい状態となります。

また、アルコールの薬理作用で血管も拡張した状態です。通常であれば、血管拡張に伴う血圧低下に対しては脈拍の増加で低下した血圧を補いますが、アルコール摂取時はすでに脈拍が増加した状態のため、うまく血圧低下を脈拍で補うことができません。

その結果、脳血流が一時的に低下してしまい、失神やめまい・ふらつきなどの症状が出現するわけです。特に高齢の方は若年の方と比較して神経機能が低下しているため、過剰なアルコール摂取には注意しましょう。

血管迷走神経性失神の症状

血管迷走神経性失神の症状

血管迷走神経反射は、突然失神することもある一方で、失神前に何かしらの前触れ(前駆症状)を自覚する方もいます。

下記に特徴的な前駆症状をご紹介します。

  • 冷や汗
  •  物が二重に見えたり目の前が真っ暗になる
  • 頭痛や頭の重さ
  • 吐き気や嘔吐
  • 腹痛

学生で良くある状況としては、朝礼で突然意識を失い倒れてしまうことが有名ではないでしょうか。

これら以外にも、採血や予防接種をした後に倒れてしまったり、長時間尿意や便意を我慢した後に排泄をし、その後に数分程度意識が消失することもあります。

血管迷走神経性失神で入院することはある?入院が必要な場合の症状

通常、血管迷走神経性失神だけで入院することは稀ですが、頻回に症状を繰り返す場合や失神によって外傷を負った場合は入院することもあります。

血管迷走神経性失神を頻回に繰り返す場合、一過性に脳血流が途絶しやすい病気が背景に隠れている可能性があり、具体的には、糖尿病・不整脈・心臓弁膜症などが挙げられます。

重度の糖尿病では自律神経の機能が乱れ、血管迷走神経性失神が頻発する原因となるため注意が必要です。また、心房細動などの不整脈では心臓の拍動リズムが不安定であり、心臓に十分血液が溜まっていない状態で空打ちしてしまうため、脳への血流が低下してしまいます。

心臓の弁が狭くなったり、もしくは弁としての機能を果たさず血液が逆流してしまう心臓弁膜症の場合も、脳血流が低下しやすく、症状が悪化すると失神をきたす病気です。これらの病気が背景にある場合は失神を頻回に繰り返すため注意が必要でしょう。

また、失神の際に頭部や顔面を打撲してしまうと、最悪の場合くも膜下出血や脳出血・硬膜外血腫・硬膜下血腫などの脳外科病変を併発する場合があり、緊急性を要するため入院が必須となるでしょう。

最悪の場合、救命のために当日緊急手術となる可能性もあるため、失神から大事に至る可能性もあり注意が必要です。

血管迷走神経性失神のセルフチェック

以下のような症状がある場合は血管迷走神経性失神の可能性あります。一度セルフチェックしてみてください。

  • ストレスや疲れがたまっていると体の不調が出やすい
  • 人込みや満員電車で気分が悪くなる
  • 長時間立っているとめまいやふらつきなど気分が悪くなる
  • これらの症状が温かい・暑い時にはより出現しやすく悪化しやすい
  • 神経が繊細で真面目な人ほど見られやすいとも言われています

血管迷走神経性失神の治し方

前駆症状が見られた場合は、すぐにその場にしゃがみこむことでその後の失神を防ぐことができます。

しゃがみ込んだり、壁にもたれたり、横になってみてください。

少しすると気分も改善してくることがほとんどですので慌てずに対応しましょう。少し改善したら水分を少し摂取するといいでしょう。

何度も繰り返す場合、背景に糖尿病や循環器疾患、脳神経疾患などがないか、受診し検査をすることが必要です。

疾患の可能性がない場合は、規則正しい生活リズムを心がけ、十分な睡眠・休養をとり、ストレスを抱え込まない生活を送ることが重要です。

血管迷走神経性失神は何科の病院に行くべき?

血管迷走神経性失神の場合、必ずしも受診すべき診療科が決まっているわけでありませんが、強いて言えば、循環器内科か脳神経内科、もしくは家の近くの一般内科への受診を検討しましょう。また中学生以下の子供であれば近隣の小児科への受診が良いでしょう。

上部で解説したように、血管迷走神経性失神の病態は自律神経と呼ばれる神経が関わり、血管の拡張や脈拍の低下によって脳血流が低下する病気です。

そのため、背景に不整脈や心臓弁膜症がある場合は循環器内科が、てんかんなどの病気がある場合は脳神経内科がより専門とする病態であるため、循環器内科や脳神経内科に受診することが理想的です。

一方で、発症時点ではどのような病気が背景に隠れているかまではわからないため、失神以外に疑わしい症状が他にない場合は家の近くの一般内科への受診を勧めます。血管迷走神経性失神は一回の受診で改善するような病気ではないため、定期的に通いやすい病院の方がいいでしょう。

どの診療科に行っても、さまざまな検査や診察所見から重篤な病気の有無をチェックされ、血管迷走神経性失神の診断に至るという点では変わりありません。

血管迷走神経性失神だけでなく起立性調節障害の治し方も把握しておこう

血管迷走神経性失神と非常によく似た症状をきたす疾患として、起立性調節障害が挙げられます。

起立性調節障害は身体の急速な成長に自律神経の発達が追いつけず、自律神経のバランスが乱れてさまざまな症状をきたす身体疾患です。どちらも自律神経の乱れが原因であり、起立性調節障害の4つのサブタイプのうちの1つが血管迷走神経性失神です。

起立性調節障害では、起立時や起床時に脳血流が低下してしまうため、午前中にめまいやふらつき・倦怠感・失神など症状をきたすことがあります。また、他にも腹痛や嘔気など消化器症状をきたすこともあります。

通常なら起立時や起床時に脳血流が低下すると、自律神経が活性化して血管収縮や心拍の増加によって脳血流を維持するように働きますが、起立性調節障害ではこのような生体反応が起こらないため、脳血流が低下するわけです。

そのため、起立性調節障害の治し方としては、長期的には乱れた自律神経を整えることが重要であり、短期的には脳血流を低下しないように日常生活で注意することが重要です。

具体的には、症状が出たときに頭を低い位置に下げる・脱水を避けるように水分摂取をこまめに取る・規則正しい食生活や睡眠によって自律神経を整えることなどが挙げられます。

下記の記事では、起立性調節障害の治し方についてさらに詳しく解説しているため、症状にお悩みの方はぜひ参考にしてください。

 

【参考】
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)

起立性調節障害(OD)改善ガイドブック

トトノエライトプレーン

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