長時間立っていられないのはなぜ?
それ、体力や根性の問題ではないかもしれません。
- 朝礼や通学電車で立っていられない
- レジや接客で立ちっぱなしがつらい
- 倒れそうになるのに、周りには元気そうに見える
こうした悩みは、甘えや体力不足ではなく、体の調整機能の不調が原因のことがあります。特に思春期の子どもから若い大人に多いのが、起立性調節障害(OD)です。
こちらの記事では、「長時間立っていられない」症状について、考えられる原因、対処法、受診の目安、実際の改善事例までをわかりやすく解説していきます。
長時間立っていられない原因・考えられる病気
長時間立っていられない原因・考えられる病気を5つ解説していきます。
起立性調節障害(OD)
私たちの身体には、生命維持のための様々な代謝活動の調整を行う自律神経があります。自律神経には交感神経と副交感神経があり、それぞれがバランスとって働いています。交感神経は心拍を増やし、血圧を上昇させ、体を活発にさせます。副交感神経は心拍を減らし、体を休めます。
起立性調節障害とは、自律神経である交感神経と副交感神経のバランスが乱れることが原因で、立ったときに血圧や心拍数をうまく調整できない状態になる病気です。重力の影響で血液が下半身にたまり、脳への血流が一時的に不足することで、めまい・動悸・気分不良などが起こります。
一般的に、睡眠中は副交感神経が優位に働き、早朝起床後、活動時は交感神経が優位に働きますが、早朝起床時の交感神経の活性化が追い付かず、朝起きられない、特に午前中は体調が悪いというのも典型的です。
「思春期の病気」というイメージがありますが、大人でも起こることはあります。特に、疲労やストレスが重なると症状が目立つことがあります。
▼よくある特徴
本人はとてもつらいのに、外からは分かりにくいため、誤解されやすいのも特徴です。
貧血・低血圧
血液中で全身に酸素を運搬する働きがあるヘモグロビンの濃度が低下することで、全身で酸素が不足している状態です。
貧血の原因は様々であり、年齢や性別によっても異なります。成長期の場合は相対的に鉄の需要が増えることに起因し、女性の場合は月経、30-40代の働き盛りの世代では胃潰瘍や十二指腸潰瘍、加齢に伴い悪性腫瘍や血液疾患の可能性も考えられます。
貧血により立ちくらみやふらつきが起き、長く立っていられない状況にも陥ります。また、血圧が低いことで、全身の血のめぐりが悪くなり、脳への血流が低下することでもふらつきやめまい、体のだるさなどが見られます。
血圧・心拍の調整異常
立った瞬間・立位保持時に心拍や血圧の調整が追い付かない場合、長く立っていることができません。
一般的に座っている時、血液は重力に従い下肢に溜りやすくなっています。この状態から立ち上がるには、交感神経の働きによる下肢血管の収縮や下肢の筋肉によるポンプ作用により、重力に逆らって血液を心臓へ戻し、脳への血流が低下しないように私たちの体は自動調整をしています。
このため、倒れることはありません。しかし、何らかの原因で交感神経の作用が不足すること、立ち上がる際や立っている間に脳への血流が低下し、めまい、立ちくらみなどの症状が出現します。
心臓・循環器系の病気
心臓は全身へ血液をめぐらせる重要なポンプです。このポンプ自体に不具合が発生すると脳を含め全身に血液をめぐらせることができなくなってしまい、ふらつき、失神、立ちくらみ、長時間立っていられないことになってしまいます。
ポンプの不具合とは、具体的に心臓の筋肉の問題、心臓の弁の問題、心臓を栄養する冠動脈の問題などがあり、いずれに早期に対応する必要があるものです。動悸、胸が苦しい、胸の痛み、動くと息苦しいなどの症状がある場合は早期の受診がとても重要です。
一時的な原因・体調要因
一時的な体調不良でも同様の症状が出ることがあります。
夏場や体調不良で食事摂取ができない場合、睡眠不足で疲労が蓄積している場合、迷走神経反射といって注射や過度の緊張などで気分が悪くなることあります。
長時間立たなければいけない場面での対処法は?
長時間立たなければいけない場面での対処法を5つ解説します。
「立ちっぱなし」を前提にせず、途中で休める環境を作る
起立性調節障害などで長時間立っていられない場合、「立ち続けるのが当たり前」という環境そのものが症状を悪化させます。実は、環境を調整すること自体が治療の一部と考えられています。
学校では朝礼や集会の際に椅子を使わせてもらう、職場ではレジ業務や作業の合間に短時間座れるよう相談するなど、「少し休める」工夫が重要です。無理を続けると、めまいや動悸が強くなり、回復までに時間がかかることもあります。
医師の診断や説明があると、周囲の理解を得やすくなり、本人の心理的な負担も軽減されます。「立てない=怠けている」ではなく、体の特性に合わせた配慮が必要だという意識を共有することが大切です。
立つ前・立っている最中に血流を促す動きを取り入れる
長時間同じ姿勢で立ち続けると、重力の影響で血液が下半身にたまり、脳への血流が不足しやすくなります。そこで大切なのが、立ったままできる小さな動きを意識することです。
かかとの上げ下げや足踏み、軽い体重移動を行うことで、足の筋肉がポンプの役割を果たし、血液を心臓へ戻しやすくなります。周囲から目立たない程度の動きでも十分効果があります。また、「じっと立つ」ことを避け、同じ姿勢を続けないことがポイントです。
めまいや動悸が出る前に、こまめに動く習慣をつけることで、症状の予防につながります。
朝の動作をゆっくり行い、急に立ち上がらないようにする
特に、起立性調節障害がある場合、朝は血圧や心拍数の調整が特にうまくいかず、急に立ち上がることで強いめまいや動悸が起こりやすくなります。
起床後はすぐに立ち上がらず、布団やベッドの上で足首を動かしたり、軽く体を伸ばすなどして、体を目覚めさせることが大切です。その後、一度ゆっくり座ってから立つようにすると、体への負担を減らすことができます。
朝は時間に追われがちですが、余裕をもって行動することで、症状の出現を防ぎやすくなります。朝の過ごし方を工夫することは、1日の体調を整える第一歩にもなります。
体調や症状を周囲に伝え、無理をしない選択をする
「立っていられない」「気分が悪くなる」といった症状は、外からは分かりにくく、誤解されやすいものです。そのため、体調や困っている状況を、家族や学校、職場の人に言葉で伝えることが大切になります。無理をして我慢を続けると、症状が悪化し、回復までに時間がかかることもあります。
必要に応じて医師の説明や診断書を活用し、配慮をお願いするのも一つの方法です。無理をしない選択は甘えではなく、自分の体を守るための大切な判断です。
つらくなる前に座る・横になるなど早めに対処する
めまいや動悸、頭がぼーっとする感じが出てから我慢を続けると、症状が一気に強くなることがあります。大切なのは、「少し変だな」と感じた段階で、早めに対処することです。可能であればすぐに座る、横になる、足を高くするなどして体を休めましょう。横になることで、脳への血流が回復し、症状が落ち着きやすくなります。
「もう少し頑張れる」と無理をするより、早めに休む方が回復も早く、日常生活への影響を最小限に抑えることができます。
病院を受診すべき症状の目安・検査の流れは?
病院を受診すべき症状の目安・検査の流れを解説します。
受診を検討すべき症状の目安
長時間立っていられない状態が続く場合、「少し様子を見ればよくなるだろう」と我慢してしまう人は少なくありません。しかし、症状が繰り返し起こる、日常生活に支障が出ている場合は、早めの受診が大切です。特に、立っているとめまいや動悸、息苦しさ、気分不良が起こり、座る・横になると楽になる場合は、体の調整機能に何らかの不調が起きている可能性があります。
また、朝に症状が強く、学校や仕事に行けない日が増えている場合も、受診を考える目安となります。さらに、動悸が強い、胸の痛みを伴う、失神したことがある場合は、別の病気が隠れていることもあるため、自己判断せず医療機関に相談しましょう。
医師に相談することで、原因を整理し、適切な対処法や環境調整のアドバイスを受けることができます。
何科を受診すればいい?
長時間立っていられない、めまいや動悸が続く場合は、年齢によって受診先が異なります。小学生から高校生までは小児科が基本で、起立性調節障害に慣れている医師も多いと思われます。成人の場合は内科を受診するとよいでしょう。
動悸や息切れ、胸の違和感が強い場合は、循環器内科を紹介されることもあります。
どの診療科に行けばよいか迷う場合でも、まずは身近な医療機関やかかりつけ医に相談することが大切です。
診察でよく聞かれること
長時間立っていられない症状で受診すると、医師はまず、いつ頃から症状が出ているのかを確認します。次に、立ったときや立ち続けたときにどのような症状が出るのか、横になると楽になるかなど、体勢による変化について詳しく聞かれます。
また、朝と午後で症状に差があるか、学校や仕事にどの程度影響しているかも重要なポイントです。あわせて、睡眠時間や食事量、水分摂取の状況、運動習慣などの生活リズムについても確認されます。
これらの情報は診断の大切な手がかりになるため、症状が起きる状況を簡単にメモしておくと、診察がスムーズに進みます。
検査内容と診断の流れ
長時間立っていられない症状で医療機関を受診すると、まずは問診をもとに、体の状態を総合的に確認します。そのうえで行われる基本的な検査が、血圧と脈拍の測定です。横になった状態と立った状態で数分間測定し、姿勢によって血圧や心拍数がどのように変化するかを調べます。これは、体が重力にうまく対応できているかを見るための大切な検査です。
次に、起立試験と呼ばれる検査が行われることがあります。これは、一定時間横になった後に立ち上がり、血圧や脈拍、症状の変化を確認するもので、起立性調節障害の診断に役立ちます。また、貧血や脱水、甲状腺の異常などが疑われる場合には、血液検査を行い、他の病気が隠れていないかを確認します。
これらの結果を総合して、症状の原因が起立性調節障害なのか、別の病気によるものなのかを判断します。診断がついた後は、生活習慣の見直しや環境調整、必要に応じて薬物療法について説明を受けます。
診断後の向き合い方
起立性調節障害などと診断された後は、症状と上手につき合っていくことが大切です。治療の基本は、まず非薬物療法と呼ばれる生活習慣の見直しです。十分な睡眠、水分や食事をしっかりとること、朝の動作をゆっくり行うこと、無理をしない生活リズムを整えることが症状の改善につながります。これらだけで症状が軽くなる人も少なくありません。
一方、日常生活に支障が強い場合には、血圧や自律神経の働きを助ける薬が使われることもあります。薬は症状を和らげるための手段であり、生活改善と組み合わせることが重要です。
また、本人の努力だけでなく、家族や学校、職場が症状を理解し、無理のない環境を整えることが回復を支えます。周囲の理解は、安心して治療を続ける大きな力になります。
長時間立っていられない体験談と改善事例
長時間立っていられない体験談と改善事例を3つ解説します。
33歳男性:環境調整と生活改善で改善
接客業で1日中立ち仕事。「体力不足だ」と思い込み、我慢を続けていました。朝食はコーヒーのみ、睡眠不足が続いていたそうです。
医療機関でODと診断され、こまめな休憩、朝食の改善、水分摂取を意識。職場にも相談し、短時間座れるようになったことで症状が軽減しました。
42歳女性:受診をきっかけに安心
パートと家事・育児で忙しく、立ち仕事中にふらつくことが増加。「貧血だろう」と放置していましたが、倒れそうになったことをきっかけに受診。
検査で貧血と血圧調整の問題が判明し、治療と生活改善で安心して働けるようになりました。
16歳男性:学校の配慮で改善
朝の電車や朝礼で立っていられず悩んでいました。部活はなく、朝食は抜きがち。
受診後、学校に相談し、朝礼で座れる配慮を受けることに。朝食をとるようになるなど、生活リズムも整え、徐々に症状が軽くなりました。
もしかしたら起立性調節障害かも
長時間立っていると、めまいや動悸、気分の悪さを感じてしまい、「体力がないだけ」「自分が弱いから」と思い込んでいませんか。しかし、こうした症状は、体の調整機能がうまく働いていないサインである可能性があります。
特に、立っているとつらくなり、座ったり横になったりすると楽になる場合は、起立性調節障害が関係していることがあります。起立性調節障害は、思春期の子どもに多いことで知られていますが、実は大人でも起こる病気です。
朝に症状が強く出やすい、午前中は調子が上がらないといった特徴があり、本人の努力だけでは改善しにくいことも少なくありません。「立っていられない」という症状は、決して甘えではなく、体からの大切なサインです。
気になる状態が続く場合は、一人で抱え込まず、医療機関に相談することが、安心への第一歩になります。
下記の記事では、起立性調節障害のセルフチェックについてわかりやすく解説していますので、是非一度ご一読ください。







